倉端直太だって恋がしたい!   作:ひよちゃんLove

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chapter6-3『家 族 来 訪②』

「それで、今映像で見てもらった通りそこの倉端直太の身体能力は最早人間の域を軽く出ておる。そしてその訓練に付き合っていた連中もみな吸血鬼じゃ。これでご理解していただきたい、彼奴は吸血鬼なのだ、と」

 

「まあその、見てもらった通り俺は吸血鬼になっちゃったってことだ。ただ、違法なことをしてなったとか、強制とか、なりたくてなったとか、そういうのじゃない。それだけは絶対言える」

 

「とりあえず直太が人間じゃなくなったってのは分かったし理由もお前が嘘つけるような頭持ってないのも分かってる。じゃ、じゃあなんでなったんだ?」

 

 嘘をつけるような頭を持ってないはめちゃくちゃ余計ではあるが、まあ兄貴の疑問は当然だ。

 そういうことをしてないのならどうして吸血鬼になんてなったのか、なってしまったのか……その説明も実はかねての市長側への申請だったからひよ里を連れてくるってのが通ったってのはここだけの話。

 

「それは、私からお話します」

 

「君は……大房ひよ里さん、だったね」

 

「はい。倉端直太くんが吸血鬼になった経緯は私を助けてくれた時の事故なんです」

 

 さすがに何がどうなってどう吸血鬼になったか、まで話すととてもじゃないけどややこしすぎて頭がパンクすると思うから省略。

 とりあえず分かりやすく説明してもらう。

 

「へぇ、直太が女の子をねえ」

 

「市長さん、アンナさん、それは本当なので?」

 

「ええ。当時現場に駆け付けた風紀班……警備隊の記録や、医者の記録も残っています」

 

「それに各人の証言もアリバイの有無も一致しておる。間違いないと自信を持って言わせていただく」

 

「ウチの子が人助けを……まあそれなら仕方ないわよねえ」

 

 全ての情報を言われたあとで口火を切ったのは母さんだった。

 それもいつものふんわりというか、天然そうなノリで、見たいテレビが見れなかった程度のノリで。

 

「つまり吸血鬼になったのは名誉の負傷って訳か、男なら女の子を助けるのは当然だしそれなら何も言わないさ」

 

「まあ、コイツが悪いことせずに真面目に生きてるならそれで良いんじゃね?」

 

「はは、変わんないなあほんと」

 

「随分とあっさりなんだね、君の家族」

 

「難しいことは考えない、良いことをしたか悪いことをしたかだけ考えて判断するのがウチの家族なもんで」

 

「うむ、良い家族に恵まれたな」

 

「良かった……直太くんの家族の人にも理解してもらえて」

 

 それに続くように親父と兄貴も似たようなことを言う。

 ウチはドが付くくらいの放任主義だ、本当に放任主義で済んでるのかどうかと言われたら何も言えなくなるくらいアバウトだ。

 それでもこういうところがあるから居心地が良いし、理解をしっかりとしてもらいたかった。

 だからこうして理解してもらえて、当然と思いながらもどこかホッとした気持ちになる。

 

「それで、ここまで聞いてもらった上で電話口でもお話したことをここで決めてもらうことになります。簡潔に言えば、ここアクアエデンで監視無しで住んでもらうか、移住は無しで本土の方で監視を付けながら生活をしてもらうか」

 

「……ほんっと、凄い二択だよ」

 

 って言っても、結局はこういう二択になるけども。

 本土で吸血鬼の存在をバラすのはアクアエデンからしても日本政府からしても面倒なことになるってのは理解してるけどさ。

 

「どうする?」

 

「そう言われてもねえ……」

 

 親父と母さんはかなり悩んでる様子。

 今の仕事を捨てるのもどうかとは思う反面で、何だかんだ言いつつ俺のこと考えてくれてんだよな。

 良い親を持ったよ、連絡してこない以外は。

 

「……ところで話は少し変わるんだけどよ」

 

「なんだ兄貴?」

 

「いや、その大房さんだっけ?お前が来る前に受けた説明では、住む場所と職場提供してくれたんだよな」

 

「そうなるな」

 

「2人暮らし、なんだよな」

 

「……そう、なるな」

 

 その点兄貴は考えることが2人より苦手な分追求することが多い。

 気になったところはなんでも聞いてくるし詰めてくる、正直言ってそういうところはちょっと苦手でもある。

 今回だってこっちから仕掛けようとしたのに兄貴の流れで言わされる羽目になるじゃんこれ、もう少し綺麗に収まってから言おうと思ったのに。

 

「……ズバリ、ご関係は」

 

「…………言って良い?」

 

「え?あ、はい。私もそのために来ましたから」

 

「…………ズバリ、結婚を前提にお付き合いしてる彼女」

 

「かかかっ彼女ォ!?お前にィ!?」

 

 絶対そういう反応すると思ったよコイツ。

 俺全然モテたことなかったもんな、ちくしょうめ。

 

「はぁ!?お前に彼女だと!?」

 

「しかもこんなに気立ての良さそうな子!?」

 

 親父と母さんも同じ反応になると思ったよ!

 そうだよなこと俺のモテないエピソードに関しては3人揃って毎月のように聞かされてたもんな!そりゃそうなるわな!でも本物の彼女なんですけどねえ!

 

「は、はい……その、直太くんの彼女……です」

 

「ほう、まさかもう彼女を作ってしまうとはね。それだけ彼女が

この生活をずっと支えていた、ということかな」

 

「うむうむ、青春というやつじゃな!若くて何より!」

 

 あと市長側の2人も興味深そうな顔つきでこっち見ないで、なんか恥ずかしくなってくるから。

 

「ほほ〜う、それじゃズバリ、直太の好きなところって?」

 

「ここでひよ里にそれ言わすのかよ……」

 

「悪ぃ悪ぃ、ちょっと好奇心が出てきちゃってよ。どう?」

 

 こんな人が何人もいる前でひよ里に恥ずかしいこと言わそうとするのはやめてあげてくれ。

 俺も恥ずかしいけどひよ里の方が恥ずかしいだろうし。

 

「そ、それくらいなら……」

 

 いや言えるのかよ!

 

「無理してない?」

 

「いえ、無理だなんて!それに、せっかくご家族に挨拶をするんですからこれくらい言わないとダメです!むしろ!」

 

 しかもノリノリなのかよ!

 

「え、えっとまずはやっぱり2回も私のために命を張って助けてくれたことが本当に大好きです。私のヒーローは直太くんしかいません。それにいつも明るくて場が明るくなるのも太陽みたいで好きですし、優しく接してくれますし、よく褒めてもくれますし。

それに私のお料理もたくさん美味しいって食べてくれて、お仕事も真剣にやってる姿がカッコイイですし……」

 

「お、OKOK分かったよ。それだけ言えるんなら間違いないな」

 

 んでもって兄貴の方がたじろぐ方なのかよ。

 これ全部事実だぞ、むしろもう少し誇ってくれよ。

 

「……母さん、これは決まりだな」

 

「ですねえ」

 

 一方少し離れた場所では親父と母さんが何か話していた。

 あの2人は人生の年季が違うからかここでたじろぐことはなかった、多分2人にもそういう時期があったんだろうなあ。

 

「おや、決まりましたか?」

 

「ええ。我々はこちらに移住しようと思います」

 

「せっかく息子の将来のお嫁さんがいるんだもの、近くで生活を見守れるならそれに超したことは無いですよ」

 

「本土に彼女がいる訳でもないし別に俺はどっちでも良いや」

 

「正直言うと、人手は足りなかったから本土に送り込むことにならなくて良かったと心の底から思うぞ……」

 

 いや決め手ひよ里なのかよ。

 それはそれで嬉しいから良いけど、めちゃくちゃあっさり決めやがったな3人揃って。

 

「ということで、これからは家族共々仲良くしてくれると嬉しい」

 

「直太のことならいくらでも聞いてね」

 

「一応彼女いた経験あるから、恋愛相談しても良いしさ」

 

「皆さん……ありがとうございます!」

 

「余計なことはひよ里に吹き込むなよー?」

 

 そんな訳でして、近々俺の家族がこっちに引っ越してくることになった……と佑斗に話したらちょっと気まずい顔をしたのはまた別の話。

 

 そう言えば俺の家族と会ったことあったなあ、佑斗は。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、キミだけ残ったけれど何の話を聞きたいんだい?」

 

 あれからしばらくして、話も終わって無事解散!ということになったけど俺だけが残った。

 もちろんそれは市長サイドとしたい話があったからだった。

 

「俺が吸血鬼になるキッカケになった事件についてッスよ」

 

「ほう。何が聞きたいのかのお」

 

「扇先生から聞いてるんスよ、俺が飲んだ血の持ち主が割れてることも、当の本人が欠損死体として発見されてることも。ライカンスロープって存在の話も」

 

 あの事件の続報について、この前扇先生から聞かされていた。

 持ち主が欠損死体として見つかったこと、吸血鬼を食べる吸血鬼、ライカンスロープの存在のこと。

 

「つまり、俺が巻き込まれた事件はライカンスロープって奴が起こしたんじゃないかって話」

 

「……なるほどの。否定はせんよ、たださすがに憶測の域を出ない話じゃからな。何とも言えん。少なくとも、ライカンスロープが存在した形跡は歴史上に存在する、という感じじゃろうて」

 

「なるほど」

 

 だが、聞きたいメインの話は実はこれじゃない。

 先にこういう話を出しといて、後で多少なり信ぴょう性のある話を出してみる。こうすることでちょっとでも話を引き出してやろうってことだ。

 

「じゃあ、佑斗が複数の能力を使うのはなんなんスか?」

「……大方メインはこっちかな。確かに彼は複数の能力を使う、それも2つどころじゃなく現在少なくとも3つは確認されている。そして複数の能力を使うのはライカンスロープの特徴でもある。……正直な話、『可能性は限りなく低い』としか言えない現状だよ」

 

「可能性はあるってこと、か」

 

 にしてもちゃんとしたような答えを聞こうとは思ってない、というか分からないと思ったしな。

 ただ、ここまで聞けたなら俺は満足だ。

 

「お主、もしも彼奴がライカンスロープだとしたらどうする?」

 

「アイツは本土じゃ人間として過ごしてたし吸血鬼のことなんてサッパリ、だからもしもライカンスロープだったとして誰かを殺してるなんてそんなのありえないッスよ。

だから変わりませんよ、何も」

 

「……そうか」

 

 これはなんのため、と言われたら自分で自分を納得させるためにやってること、としか言えない。

 扇先生から聞いたことと、佑斗の話してたことが気になったから話してみて、可能性があるのかを聞いて、それで俺がどう思うか試してみたかったからやった、それだけだ。

 

 結果は全く変わらず、親友は親友のままだったけど。

 

「すみません、わざわざ」

 

「構わないよ。……どうかこれからも、仲良く」

 

「言われなくても俺と佑斗はどこまでいっても親友ッスよ」

 

 よし、これで俺の抱える問題はあと1つってところか。

 その1つが事件の犯人ってワケで、めちゃくちゃデカいんだけどね。

 

 もう面倒事には巻き込まれたくないから平和に終わってくれないかなあ、これ……




倉端直太
家族がアクアエデンに引っ越してきた
後はひよ里サイドのご両親に挨拶すれば外堀はコンプリート

大房ひよ里
ご両親への挨拶ってことでめちゃくちゃ気合いが入ってた
成功したのでホッとしている

倉端家
放置一歩手前の放任主義
ただ、ギリギリの塩梅はあるし家族愛もちゃんとある
それはそれとして連絡はしないし彼女が出来たことも疑う
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