倉端直太だって恋がしたい!   作:ひよちゃんLove

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chapter6-4『そっちの挨拶があるならこっちもあるよねえ!?』

「それで、なんで俺は一旦帰国する家族に肩を掴まれてるんでしょうか」

 

「そりゃお前、せっかくひよ里ちゃんが俺達に挨拶してくれたんだ。お前が挨拶に行く様子が無いから圧を掛けてるに決まってるだろ」

 

「そうよぉ、ちゃんと仕事もしてて将来を誓い合ってるなら早めに挨拶した方が良いわ。その方が向こうのご両親も喜ばれるわよ」

 

「そうだそうだー、ビビってると認めてもらえなくなるかもしれねえぞー」

 

「兄貴はとんでもないヤジを投げないでくれ!こっちはまだ付き合って1ヶ月なんだからもう少しじっくりとしたお付き合いをだな!」

 

 両親と兄貴がこっちに引っ越すことが決まった翌日。

 早くも家族は引っ越しの準備や周りへの挨拶、退職手続きなんかを済ませると言ってとんでもないとんぼ返りで今日帰国するらしい。

 やることがパワープレイすぎるのはいつものことだから気にしてないが、問題はここからだった。

 

 急に親父が「そうだ!」と言い出したかと思えば取り囲まれて、あっという間にこうして尋問というか圧を掛けられている。

 

 いやね、俺としても挨拶はもちろん後々しようとは考えてるし交際の報告も電話口とはいえ話して了承は得たには得たしさ。

 今はそれで良くない?まだ俺もひよ里も学生だし早まっても良いことは無いでしょ、それに交際したのだって1ヶ月前で……

 

 まあその、それなりにすることはしてるけど。

 

 って!そういう話じゃなくてだな!

 学生で交際1ヶ月で挨拶に行ってもって話だろ!

 この人達俺がモテなかったらモテなかったで結構な感じだったのに、いざ彼女が出来たら逆にそれか!?

 色々世話焼いてくれてるのは理解してるし嬉しくない訳じゃないけどさ!もう少し加減考えてってほんとさ!

 

「……」

 

「あの、ひよ里さん?こういうのはあまり真面目に考えなくて良いよ?世話焼きたいだかだろうし」

 

「いえ、今日は両親も休みです。挨拶に行くには絶好のタイミングです」

 

「ちょっ!?マジで言ってる!?」

 

「いずれ挨拶に行くなら今でも大丈夫だと思いますよ?両親も直太くんに助けられたエピソードは聞いてますし、お仕事も頑張ってるのは私が言ってますから!もう将来的なビジョンは見てくれてます!という訳なので!行きましょう!」

 

 ……なのにひよ里はまたノリノリなのか!?

 ひよ里がご両親に色んなことを話してるのは聞いてるし、初めての出会いと付き合うきっかけになったエピソードも話してるのは聞いてるけど、それで行くの!?ほんとに!?

 というか今から行くのか!?積極的すぎないかこの子……

 

「ちょっと待っ!ほんとに待って!まだ心の、心の準備が出来てない!」

 

「緊張してても許してくれます!それよりも直太くんの誠実さを見せつけましょう!」

 

「そ、そんなぁ!」

 

「頑張ってこいよ我が息子〜」

 

「あらあら微笑ましいわねえ」

 

「ハッハッハ〜お前は尻に敷かれるタイプだな!」

 

「お、覚えてろよぉぉぉぉぉ……」

 

 あとニコニコで見送ってくる我が家三人衆、お前らほんと覚えておけよ……絶対なんかしてやるからな!何も考えてないけど!

 

 

 

 

 

 

 

 

「良く来たね直太くん」

 

「いらっしゃい、そう緊張しなくて良いわよ」

 

 で、来てしまった訳なんですが、そうひよ里のご両親の家に。

 自立した生活をさせたいってことで小さめではあるけどひよ里に1つ家を貸して、ご両親はお義父さんが陰陽局で所属してる班の事務所の近くに住んでいる。

 たまにアレキサンドにも来るのでこれが初めて……って訳でもないんだけど、お付き合いをし出してからの顔合わせはこれが初めてで、なんだかめちゃくちゃ緊張してしまう。

 

 ご両親の性格は短い付き合いで見た限りだと、どちらもひよ里に似て温厚で仕事に真面目、落ち着いてお酒が飲めそうな人だなーっていうのが印象だった。

 

「い、いやさすがに緊張しますって……その、今日は将来的に結婚……を、2人で約束したので……ご、ご両親への挨拶をと……」

 

「偶然だけど、直太くんのご家族には挨拶をしたので。だったら私の家族にもちゃんと『将来的に結婚を誓い合いました』って報告は早めにしておくのが良いかなって思って」

 

「2人とも律儀なもんだ。挨拶なんてもう少し後でも全く問題無いのにしてくれるんだから、私はとても嬉しいよ」

 

「そうね、この調子なら学院卒業後数年で孫の顔が見れるかもしれないわ」

 

「そうだなあ、楽しみだ」

 

 もう挨拶とかそういう問題じゃなくなってるけど良いんだろうか。

 ノリノリで孫楽しみにしてるし、なんかもうアウェー気分で来たのに完全にホームのノリになってるよ。

 

「お、お父さんお母さん、さすがに子どもの話は早いよぉ……」

 

 あと顔真っ赤にして焦ってるひよ里がかわいすぎる。

 積極的なところもかわいいけれど、案外タジタジになることも多くて見ててとても眼福。

 知り合ってすぐは温厚で落ち着いた子なのかなーと思ってたし、実際温厚で落ち着いてるって言うのは間違いない。

 でも良く笑うし積極的だし顔もすぐ赤くするし近くで見ると年相応の女の子なんだよな。

 

 ……緊張するなって方が無理な話であるのは変わらないけど、事実として結婚する約束はしたし挨拶にいつか行くのは決まってたんだし、こうなったら腹を決めるしかない。

 

「……俺は、ひよ里がここにいる限りずっとアクアエデンを離れる気は無いです。いや、離れません」

 

「直太くん……」

 

 横で聞いてるひよ里が少し驚いた感じになってるけど気にしない。

 それにこの子だってここに俺を引っ張ってきたってことは、こういう俺の決意を聞きたいって思ってるはず。

 だったらやってやるしかないだろ?

 

「それに今働いてるアレキサンドもずっと続けていきます。まだまだ新人で分からないことも多いですけど、絶対ひよ里を支えられるくらい上手くなってみせます。

もちろん、結婚生活でも、結婚前の今もですけど」

 

 どこまで誠意が伝わるかなんて分からない。

 でも下手にごまかしたり取り繕った言葉なんて言ったところで伝わらないのなんて俺でも分かる。

 だから事実だけを、俺の本当の気持ちだけをぶつける。

 まっすぐな想いだけを伝える。

 

「……そうか、嬉しいよ。君を疑っていた訳では無いのだけれど、そういう言葉を聞きたい気持ちもあったからね」

 

「ひよ里から聞いてる話で信頼していたけれど、これなら安心してあなたにひよ里を託せそうだわ。この子、人間だけれど生活リズムは完全に吸血鬼に合わせてるから1人の外出も多くて心配なのよ。

でもあなたがいれば安心ね。ひよ里のこと、お願いするわ」

 

「任せてください、ひよ里のことは必ず俺が幸せにします!」

 

 そして最後は勢いが肝心!

 言いたいことは言えるタイミングで一気に言い切る、強引に言い切っちまえば恥ずかしくなんてないからな!

 

「は、恥ずかしい……でも、とってもかっこよかったですよ、直太くん。ありがとうございます、幸せにしてくださいね?」

 

 何とかこれでまとめ切った!ご両親にも認めてもらえて、ひよ里も喜んでくれて、もうこれ以上の評価は無いだろ!

 ここまで来ると自分で自分を褒めたくなる、良くやったよ俺。

 親父と母さんと兄貴の無茶ぶりから始まったこのひよ里のご両親への挨拶だけど、結果としてはやって良かったと思えた。

 何せ啖呵をきったんだから自分の逃げ道を無くすという意味では最高だし……いや逃げる気無いけどね?

 何をするにも将来へのモチベーションに繋がるんだから人生が楽しくなるはずだ、そうじゃなきゃここで暮らしてくなんて無理な話だろうし。

 

「さあて、直太くん」

 

「は、はい?」

 

「ここまで言ってくれたんだ、私達のことも構わず『お義父さん』『お義母さん』と是非呼んでくれたまえ!可愛い可愛い娘が連れてくる彼氏なんて、今まではどうやって追い払ってやろうか考えていたのだけれどね。今では君と語らってお酒を飲みたい気分にさえなってる。不思議なものだよね」

 

「お父さんったらひよ里から聞くエピソードや、監視カメラで覗き見ていた姿を見て『彼なら信頼出来る』『何とかしてひよ里の彼氏に出来ないものだろうか』なんてずっと言ってたのよー?」

 

「か、母さんそれは秘密って約束だったじゃないかぁ」

 

 温厚そうなお父さんなのに、娘が連れてくる彼氏には敵意剥き出しで戦おうとしてたのか……み、認められて良かったあ〜。

 というか、やっぱりこれは父親になると全国共通の認識になるのか?娘が出来たら俺も同じこと言い出すんだろうか……

 

 って今はそうじゃなくて!

 

 一気に距離詰めて来たよねお義父さん!

 温厚だけど積極的なのはお義父さん似なのか!?

 

「え、えーと……それでは、ごほん。お、お義父さん……」

 

「おお、おお!良いなあ、お義父さんって響き。ひよ里からはいつも言われているけれど、男の子はウチにはいないから新鮮な響きになるよ。しみじみとしてしまうね」

 

「あら、それじゃあ私も『お義母さん』と呼んでくれないかしら?」

 

「お、お義母さん……?」

 

「いいわねぇ確かにいいわこの響き。ねえ、今日はこのまま食べていかない?」

 

「え?い、良いんですか?」

 

「そりゃもう!だって直太くんは立派なウチの家族だもの!ねえ、ひよ里?」

 

「私が言うのもどうかと思うけれど、馴染むの早いよね……直太くん、大丈夫ですか?」

 

「もちろん!」

 

 なんか、ほんととても暖かい家族だなあ。

 いやウチもウチで良い家族だけどさ、こういう人達にもっと認められるように、そしてひよ里を幸せに出来るように1人前の漢ならないとな。

 

 よし、と改めて決意を固めるのだった。




倉端直太
挨拶はシンプルに勢いで本音をぶつけることで乗り切った
ちなみにひよ里との生活ではエロゲーが原作なので『やることはやっている』感じではある、そこは各々で想像してくれ

大房ひよ里
この1ヶ月、家ではゲロ甘生活が続いているが手料理は相変わらず辛いものばかり作っているらしい
最近直太が激辛にも対応してきたらしく、密かに喜んでいる

大房家
基本的に温厚な両親で吸血鬼だろうが人間だろうが気にしないタイプ
直太にお義父さんお義母さんと呼ばれてウキウキのご様子
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