倉端直太だって恋がしたい!   作:ひよちゃんLove

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chapter7-1『なんか不穏な空気』

「ふぁぁぁ〜……あぁ……」

 

「ねみぃ……」

 

「2人とも、今日はずっと眠そうでしたね〜」

 

「なんだよ、また風紀班の残業ってやつかー?」

 

「そうそう、残業がハードでな……ううっまだ目の前がピンク色だ……」

 

「はぁぁ……まさか居眠りで先生に怒られるなんて……」

 

 俺の家族が襲来してきたり、とんでもない流れからひよ里の家族へ挨拶したりが終わってやっと平和な時間が帰ってきた。

 このアクアエデンに来て2ヶ月、やっと色んなことに慣れてきて落ち着いてきたんだからそろそろ平和に過ごさせてほしいもんだ。

 

 まあ、風紀班はそうもいかないみたいだけど。

 ところで佑斗と布良さんは一体なんの残業をしてたらそんなにダルそうな感じになるんだ?

 いつもの残業だったら疲れた感じはしてても、ここまで本当にダメージが大きいって雰囲気でもないだろうに。

 

 ……いや視界がピンク色ってなんだよほんとに。

 

「布良さんがそんなの珍しいですよね。よっぽどの難事件を担当しているんですか?」

 

「難事件というか……あ、あはは」

 

「布良さんにはちょいと難易度高めだったな」

 

「あぅ、子ども扱いしないでよぉ〜」

 

「その会話で何見てたか察したわ」

 

 布良さんはあんまりエッチな話題を好まない。

 佑斗の言ってた『ピンク色』と『布良さんには難易度高い』と布良さんが言った『子ども扱い』のワードで全部察したわ。

 

「どんな事件なんですか?」

 

「そ、それはちょっと捜査上の秘密で」

 

「……予想だけなら俺、分かったかも」

 

「はぁ……そうだよな、お前なら分かるよな」

 

「ええ!?倉端くんは分かったの!?」

 

「アイツ『そういうこと』には昔から目ざといもんで……」

 

「あ、ああ〜……」

 

「え?直太くんは分かったんですか?ちょっと聞かせてください」

 

「ああ、良いよ。ちょいと耳貸してな」

 

「はい」

 

 ひよ里はその辺、もう結構大人の階段登ってても純情なのかほぼ察することが出来ないんだよなあ。

 いやーそこがかわいいんだしいつまでもそのままでいてもらいたいと俺は願ってるんだけどね。

 

 興味本位で俺に耳を貸してくるひよ里にごにょごにょと大抵の予想を伝える、大体話と疲労から察するに違法なエッチなビデオでも押収して中身を確認という名の2人きり鑑賞会でもしてたんだろうよ。

 だとするなら布良さんには心の底からお疲れ様と労りたい。

 

「え!?あ、あー……あ、あは、あはは……そ、そういう……こと、なんですか……?」

 

「まあその、その反応からして直太が何を言ったのかは分かるから言っておくと『否定はしない』とだけ」

 

「しかもほとんど徹夜で見ないといけない状態だったし……心も身体ももう無理ぃ……」

 

「やっぱりなあ。なんというか、お疲れ様」

 

「あ、ありがとう倉端くん……」

 

 そして案の定だった。

 ウチのひよ里も、大人の階段を登ってそういうことにも大分耐性は付いてきたって言ってもまだかなりウブで純情な反応……まあ今回みたいな顔真っ赤にして恥ずかし笑いとかするような子だけど、それの何倍もそういう耐性が無い布良さんがほぼ徹夜でそれを見てたんだとすると、なんというか仕事とはいえ少し可哀想に見えてくる。

 

 可哀想とは思うけど仕事は仕事だろうから、余計なことは何も言えないんだけどね。

 

「ま、まあ今日は巡回も無いし、厄介な仕事はさっさと終わらせるに限るってもんだ!な、布良さん?」

 

「そ、そうだね。お仕事が少ない日にさっさと終わらせて……うぅ……がんばろー……」

 

「え、えっと、その、い、色々察しましたけれど……こ、こういう時こそ元気が大事ですよ!疲れた時こそ、元気を出しましょう!」

 

「う、うん、そうだよね……よし。がんばろー!」

 

「うん、布良さんはやっぱり元気なのが一番です」

 

 そんな時にこの根っからの癒し系であるひよ里の激励を受けると、疲れた身体に染み渡るんだよなあ、癒しが。

 癒し系で気遣いも出来てその場にいるだけでもリラックス出来る上に可愛い!なんだこれ、最高か?あ、俺の嫁でした。

 

「それじゃ、私と直太くんもお仕事頑張ってきますので」

 

「まあ、完全に他人事の俺が言えることじゃないかもしれないけどさ。2人とも無理はすんなよ。そんじゃ」

 

「また明日〜」

 

 

「……なんか彼女が出来てからの直太がめちゃくちゃ輝いて見えてて正直羨ましいよ俺」

 

「分からなくは無いなあ。ひよ里ちゃんも目に見えて楽しそうな時が増えたし。私も恋人が出来たら少しは変わるのかなあ」

 

 

 ……それと1つ言いたいことがある。

 佑斗にせよ布良さんにせよ相性最高の異性が隣にいることに早く気がついてほしいってことだ、どっちも一番プライベートでも話してる異性だし仕事だってコンビ組んでるし、息も合ってるしもうこれ以上の相性の異性っていないでしょ冷静に考えてさ。

 

 

「さてと、今からなら放課後デート気分で居ても間に合うよな?」

 

「あんまりのんびりし過ぎるのもダメだとは思いますが、少しくらいなら問題無いと思いますよ。私としても直太くんと一緒の時間が増えるのは嬉しいですから」

 

「ぅえへへ」

 

 まあそういうのは本人達が気付いて何とかしていくしか無いから、俺は何にも言わないけど……早めに気付いてくれることを願っておくとしよう。

 それよりもアレキサンドに向かうまでの間でも放課後デートを楽しもう、ちょっとした時間でも恋人の時間ってのは貴重だからな。

 

 と、ウキウキ気分でいた時だった。

 

「ん?」

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、今なんか動いたような……ッ!?」

 

 暗闇の中で何か動いたような気がした……と思った瞬間、黒ずくめの男達が飛び出してきた。

 

「きゃっ」

 

「案の定襲ってくんのかよ!!俺はそういう訓練受けてない一般人側なのにさ!!」

 

 しかも複数人いる、そんで近くにいた俺達や多分観光客だろう数人を襲うように飛びかかってきた。

 逃げようにもこの一瞬で察した、絶対あっちの方が強い。しかも多分吸血鬼だって動きだ。

 とにかくせめてひよ里を守るくらいはしないとな、だって俺はひよ里の彼氏なんだから。

 

「ごめんひよ里、ちょっと血貰うぜ」

 

 ひよ里がこくりと無言で頷きさっとうなじを出す。

 本当は違法吸血になるけど、今はそんな違法だの合法だの細かいこと言ってる場合じゃない。

 ちょっとでも生きて帰れるように瞬時に吸血する、もう少し余裕があったら気遣いもしたかったけど今は速さ重視だから、帰ったらちゃんとフォローするから許してくれよな!

 

「こんっっっのぉ!!」

 

「チィ!!なんだこのガキ!!」

 

 吸血したってのに相手の力強過ぎだろ、噴水を背にひよ里を隠して振り下ろされる腕に全身で耐えてるけど……

 

「きゃああああああああ!!」

 

 一般人の方にも何人か行って取り押さえてるからそっちは申し訳ないけど助けられそうにないな……でもこっちに来たのが1人で良かった、2人掛りだったら絶対耐えられてないってこれ。

 

「おい、目的は達成した。コイツには構わなくて良い」

 

「っく、了解」

 

 突然力が弱まったかと思えば男が飛び退いて、そのまま他の男に促されるがままにまた闇に消えていった。

 出てきてから多分1分も経ってないはず……でも、どう考えても俺の中の体感時間は数十分くらいのプレッシャーだった。

 

「でも……た、助かった……?ひ、ひよ里、怪我は無いか?」

 

「だ……大丈夫……です」

 

「よ、良かったぁ……」

 

 なんにせよ、彼女だけでも守ることが出来て安堵から腰が抜けて尻もちを着いてしまう、情けないけど許して。

 人だかりやこっちを気にする人もいるけどそんなの気にしてられるような精神状態じゃないんだよこっちは。

 

「風紀班です!何があったんですか?……ひよ里ちゃん!?」

 

「なにっ!?って直太も!大丈夫か!」

 

 そう言えばと思って周りを見渡すと、俺の彼女は自分も怖かったろうに被害に遭った女の人を心配してか肩をゆすっていた。

 ほんと、ウチの彼女は優しい子だよ……

 

 ひよ里の方は布良さんが対応するとして、俺は佑斗にあったことを言っておくとするか。

 

「お前……何があったんだ」

 

「急に黒ずくめの男集団が飛びかかってきて、俺達やそこにいた人を襲ったんだよ」

 

「六連くん……ちょっとだけこっちに」

 

「ああ。……なるほどな、やっぱり吸血鬼か。それに違法吸血ときたか」

 

 俺の予想は当たってたか、やっぱりあの集団は吸血鬼。

 それも辻斬りみたいに無差別に襲って違法吸血するなんて、なんて厄介で面倒な連中なんだ。

 

「って!?ひ、ひよ里ちゃん!?そ、その首筋、もしかしてひよ里ちゃんも……」

 

「あ、私のは直太くんが私を助けるために吸ったものなので大丈夫です」

 

「び、びっくりしたぁ……」

 

 あ、それはそれとして俺が吸血したのも見つかったらしい。

 一応報告はしとくかな、黙ってると面倒そうだし。

 

「緊急事態だったからひよ里を守る目的で吸わせてもらったぜ。実際こっちにも襲いかかってきてたしここは特例ってことで……報告しといてくれない?」

 

「それは……大丈夫だと思うが……どうだ、布良さん?」

 

「うん、状況を考えて六連くんが私の血を吸った時と同じだろうから大丈夫だと思う」

 

「ありがとう」

 

 さっすが布良さん、ちゃんと冷静に状況を見渡せてるぜ。

 こういう感じで枡形さんに報告が行くなら悪いことにはならないだろ、というか変な連中に襲われた上に違法吸血扱いされたら踏んだり蹴ったりじゃ済まないって。

 

「ひよ里ちゃん大丈夫?怪我ない?それに倉端くんも」

 

「だ、大丈夫です。直太くんが守ってくれましたから」

 

「俺は男が押し倒しに来てたから全身使って踏んばってた分、ちょっと腰とか痛いのと腕と足が痺れてるくらいだな。まあちょっとしたら治ると思うけど」

 

「無事で何よりだ」

 

「でも倉端くんもひよ里ちゃんも一応今日はお仕事休んで病院に行って。アレキサンドの方には連絡を入れておくから。あ、それじゃ私は主任にも連絡入れてくるから、ちょっとだけ2人の事任せていい?」

 

「ああ、それくらい任せとけ。それで直太、男達は何人いたんだ?」

 

「見えただけだと3人だな。俺に襲ってきたのが1人、観光客のお姉さんを取り押さえたのが1人、吸血っぽいことしてたのが1人」

 

 しかしやっと平和になったと思ったらこれかよ。

 もっとのんびり平和にイチャラブさせてくれよ……いくらなんでも治安悪すぎるだろ。

 

 この後来た救急隊に念の為と言われて1日潰れたのは言うまでもなく、俺はガックリと肩を落とすのだった。

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