倉端直太だって恋がしたい!   作:ひよちゃんLove

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chapter7-2『親友のヒミツ……?』

「ええ?またアイツ怪我したのか?」

 

 佑斗がまたもや怪我をした、というのを聞いたのは俺とひよ里が黒ずくめの男集団に襲われた2日後の話だった。

 何の任務かは相変わらず捜査上教えられることはなかったものの、犯人グループとの交戦中に撃たれて怪我をしたらしい。

 まったく親友としては気が気でないけど、風紀班はこういう仕事ってのは知ってるから若干慣れてきてしまってるかもしれないな。

 

「うーん、そうでしたらお見舞いに行きたいところなんですけど……」

 

「ごめんねぇ、やれることはしておきたいからってデスクワークしてるから。それに上手くいかなかったって結構ピリピリしてるみたいで」

 

「佑斗がか?仕事してんのはさておいても、アイツが大事な任務の失敗とはいってもピリピリとかイライラしてんのは相当珍しいな……結構長い付き合いだけど、アイツが怒ってる姿なんて片手で足りるくらいしか見たことないぞ」

 

 怪我してもすぐに治るならあまり気にしなくなったのは吸血鬼の回復能力の高さなのかねえ、まあそれは良いんだけど。

 気になったのは布良さんの言ったことだった。

 

『それに上手くいかなかったって結構ピリピリしてるみたいで』

 

 この言葉が妙に引っかかって抜けない。

 っていうのも俺が佑斗と、他の寮の人達よりもだいぶん長い付き合いだから覚えた感覚なんだけどアイツは自分が失敗したって思った時はピリピリやイライラとかよりも先にひたすらテンション低く落ち込んでたり、逆に奮起して次こそは!ってやるかの二択が多かったからだ。

 そもそもだけどそれ以外含めてでも佑斗が怒ってる姿を見た回数なんて本当に片手で足りるくらい、それこそ3回も無かったんじゃないかって思ってるくらいだ。

 

 そんな佑斗が任務でイライラするなんて、重要任務だとしてもちょっと違和感を覚えるフレーズだった。

 

「そそそ、そうかなっ!?六連くんだって怒ることの1つや2つくらい……あれ?」

 

「そう言えば六連くんが怒ったりするところ、見たことない気がします」

 

「た、たしかに……怒ってるところ、私も見たことないかも……」

 

「だよなあ」

 

 ほら、ひよ里どころか最初に喋ってた布良さんでさえ見たことないなんて言ってるしやっぱり違和感覚えるよなあ。

 

 ……ん?

 

「ん?」

 

「どうかしましたか?」

 

「い、いや……」

 

 あれ?だとしたら布良さんの言葉ってなんかおかしくね?

 だって今佑斗はちょうどそうやってピリピリしてて、だからあんまり寮には近付かない方が良いってことなんだよな。

 だったらなんで布良さんまで見たことないって話に混ざってきてるんだ?話がややこしいことになっててそろそろ頭が痛くなってきた。

 

 どっちにしろ何か隠してそうな気がするから後でちょっとだけ様子、見に行くかなあ。

 今日は俺だけシフト無いし、暇もあるからな。

 でも本当にちょっとだけだからな、ちょっとだけ、俺が見ちゃいけない資料とか広げてたらそれこそまずいしそれでごまかしてるならそれはそれで納得はするし。

 

「と、とにかく今はそっとしておいてあげて、ね?」

 

「まあ、そこまで言うなら仕方ないか」

 

「ですね。人には人の事情というものがありますから」

 

 ただ、捜査してるから書類とか見ちゃいけないものが広げられてて都合が悪いなら布良さんはちゃんと言ってくれるタイプだからなあ。

 とりあえずあんまり布良さんを裏切りたくもないし、寮には入らず、チャイムだけ鳴らして一応声だけ聞いて見舞っておくくらいにしておけば布良さんだってそんなに怒ったりはしないでしょ。

 

 俺だって親友なんだから心配が勝っちゃうんだよね、だから今回だけは許してくれよ、布良さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そう言えば今日は佑斗以外は仕事か」

 

 放課後、ひよ里はアレキサンドへ行き俺1人。

 ここの寮生はなんか都合が良いのか悪いのか全員仕事らしく、今はちょうど寮には佑斗が1人いる……多分。

 ただ、違和感を言うのであるなら外に停めてある車は誰のなんだろう……前佑斗を祝った時にはなかったはずだからそれ以降に誰かが買ったものかなにかなんだろうけど。

 

 いやでも免許持ってるのは佑斗だけなんだよな。

 しかもアイツ、車そのものは持ってないはずだし。

 

 うーん?なんかやっぱり引っかかるんだよなあ。

 

「まあいいや、インターフォン押せばとりあえず元気かどうかくらい分かるだろ」

 

 ポチッとな。

 

『はい』

 

「佑斗か?直太だよ。怪我したって聞いたから声だけでも聞いとこうかって思ってな」

 

『なんだ直太か。確かに怪我はしたがピンピンしてるぞ、復帰までには時間が少し掛かるみたいだが』

 

「そうか、なら良かったよ」

 

 聞こえてくる声は無理をしてる感じもなく、普通に普段通りの佑斗そのものって感じだった。

 だったら話してることも嘘じゃないはずだし、俺としてはまあ一安心は出来るか……ただ、元気というかいつも通りすぎるのがなんだかやっぱりこう、布良さんが何か隠してたのかも?なんて思ってしまう訳で。

 

 だから、ちょっとした好奇心が芽生えちゃうのは仕方ない話で。

 

「なあ佑斗」

 

『なんだ?』

 

「布良さんから聞いたぞ、任務失敗して今機嫌あんまり良くないって。お前がイライラするなんて珍しいな、本土でもそんなことほとんど無かったのに」

 

『は?怒る?俺が?』

 

「おう、そう聞いたぞ?」

 

『うーん?いや、そういうことは特には無いが……』

 

 あーやっぱり違ったか。

 おかしいと思ったんだよ、確かに佑斗は感情豊かだけど怒るということに関しちゃ全くと言って良いほど無かった。

 だからいくらなんでも、それこそ頼れる仲間もいる中でそうまでして怒りの感情をコイツが出すのか、と聞かれてストレートにイエスと答えられることはないんだよ。

 まあ、だとしてもここから先はあんまり踏み込んでも良くないだろうけど……

 

『カタカタ……』

 

 ん?いや、今確かにインターフォンの向こう側から何か音がしたような?気のせい……にしてはヤケにハッキリ聞こえたし、一体なんなんだ?

 は!?まさか幽霊!?しかも俺にだけ聞こえるタイプの!?

 そ、そそそそれだけは勘弁してくれ!

 

「ち、違うのは良いんだけどさぁ……」

 

『なんだ?どうした急に声震わせて』

 

「お前、なんか後ろで音してるけどこれって幽霊とかじゃ……ないよな?」

 

『えっ……』

 

「いやだから音……」

 

『……』

 

「おいなんか言ってくれよ!!」

 

 本当に幽霊なのこれ!?だとしたら俺卒倒しちゃうよ!?

 だから黙るのやめてよ!お前俺が幽霊苦手なの知っててそれしてんのマジで悪意しか感じないからな!?

 

『ゆ、幽霊かもな』

 

「おい絶対嘘だろそれは」

 

 でも佑斗の反応で確信した、これ幽霊じゃないな。

 誰か連れ込んでる……!?え!?布良さんいるのに!?てか寮に!?

 

「お前誰を連れ込んでる!?おい開けろ!」

 

『あーだから言いたくなかったのに……だー分かった、鍵開けるから入れ。その代わりここで見たことは秘密にしろ、良いな?』

 

「最初からそうしとけば良かったのに。ま、それくらい守るに決まってんだろ?ただでさえ俺自身が秘密だらけだってのに……」

 

 でも秘密を共有してくれるってことはやましいことじゃなさそうだな……仕事関係か何かか?

 入れてくれるだけ絶対秘密って訳でも無さそうだけど不都合はありそうな雰囲気だな。

 

 さて誰が出てくんのかね。

 

「やあ、倉端くん。驚いたかな?」

 

「あ、アンナさんかよ……」

 

「諸事情でちょっとの間寮にいることになってる。ただ、陰陽局が絡んでることだから無闇に言いふらせない案件でな」

 

「なるほどね、そんで布良さんも佑斗もごまかしたってことか」

 

 出てきたのは表向きのアクアエデン代表、アンナさん。

 何がどうしてそうなったのか全く分からんけど、陰陽局絡みで察せという佑斗の発言で何となく分かった気がするしそれ以上踏み込むことはしない。

 

「どうだい、しばらく誰も帰ってこないしお茶の1杯くらい」

 

「え?良いんすか?」

 

「それに君も私に何か話したいことがあるんじゃないのかい?例えば、君が吸血鬼になった直接の原因になった事件で、とか」

 

 ただ、話したいことがあるにはあるんだよな。

 それもアンナさんが話してた通りのことで。

 この人なら或いは、何か分かることがあるかもしれないし。

 

「……そうッスね。ちょっとだけお言葉に甘えたいですケド……大丈夫そうか、佑斗?」

 

「ちょっとだけだぞ。布良さんと美羽にバレたら後が怖いからな。アンナさんも、今日のことは秘密ですからね?」

 

「分かっているよ」

 

「それじゃ俺はお茶淹れてくるんで」

 

 佑斗も空気を察してかちょっとだけ許してくれた。

 この恩は忘れない、復帰してきたら学食奢るぜ。

 

「さて、それで何を聞きたいのかな?」

 

「まあ確定したい訳じゃないんスけど……俺が飲んだ血の持ち主の吸血鬼、不自然な欠損死体で発見されたらしいじゃないですか。血は全部抜き取られて、身体の一部がまるで切り取られたように無くなってたって」

 

「そうだったね。レナ・マンリエッタ・リエラ……彼女はかなり悪名高い犯罪組織の幹部に属して敵対組織もいたみたいだからね。遺体が上がってくることそのものは不自然じゃない。ただやっぱり、その状態があまりにもただの殺害とは言えないものだった」

 

「そういうことッス」

 

 ことんとお茶が置かれる。

 佑斗も空気になりつつもやっぱり情報共有されていることだからか、かなり気になってる様子だ。

 

「そんで、状況証拠と俺の足りない頭で考えたんスけど……これってワンチャン『ライカンスロープ』が殺ったんじゃないのって思うワケッスわ」

 

「して、その心は?」

 

「ライカンスロープは吸血鬼を食って能力を増やすんスよね?だとしたら不自然に欠損してるのはそいつが食ったから、血を全部抜いたのは俺や佑斗みたいに『人間から吸血鬼になる』ってのをして、能力を見極めて、良さそうならそいつを食うってことなんじゃないかって。

その可能性について、アンナさんがどう考えてるのかは聞いてみたかった」

 

「直太……」

 

 吸血鬼の血を大量に一気飲みすると俺みたいに吸血鬼になるんであるなら、そのレナって吸血鬼の血で吸血鬼を大量に増やしつつ良い能力が手に入ったらそいつを食う。

 ガチャ感覚で吸血鬼を増やしてる奴がいたって正直驚かない、だって高野みたいなヤベーのが普通にいるんだし。

 

「確かに可能性は低いながら無いとは言い切れない。状況証拠だけとは言ってもあまりにも当てはまるからね、用心するに越したことはないだろうね。でもあくまでも状況証拠だけだ、肩肘を張りすぎるのも良くない」

 

「……直太や直太の周りの人達、そしてアクアエデンのためにも必ず俺達が捕まえる。だから信じて待っててくれ」

 

「はぁ……まあ、一般吸血鬼の俺に出来ることなんて無いもんな。気楽に待つよ」

 

「それで良いと思う。せっかく充実した毎日を過ごしてるんだ、ちょっとだけ念頭に入れるだけで良い」

 

 ……答えとしては妥当、なのかな。

 多分最初から分かりきった答えだったんだろうけど、そんでもアンナさんみたいな詳しい人の口から聞けたから肩の荷がちょっと降りた気がする。

 

 そうだよな、あんなワケ分からん連中1人相手にすらひよ里を守るので精一杯だった俺が出来ることなんて無いもんなあ。

 

 なんか凄く無力感覚えるけど、腑に落ちた気分になった。

 ずずっーとお茶を啜って、切り替えていくことにしよう。

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