倉端直太だって恋がしたい! 作:ひよちゃんLove
「おいおい大丈夫なのかよ、レナの遺体見つかっちまったって話だろ?風紀班は厄介だぞ、きっと俺達まで辿り着いて来る」
「キミのような用心深い吸血鬼は好きだけどこれはこの僕がわざと風紀班に見つかるようにやったことさ、本当は全て食べてしまうことだって出来たけれど作戦のためにわざわざ仕向けたんだ、キミが気にするようなことは何一つないから安心するといいよ」
「わざとやったこと?」
「ああそうさ」
不法滞在者……IDの申請が通っていない吸血鬼が固まって過ごしてる、と言われている開発地区の一角。
その中でも目立たないくらいの大きさの廃倉庫で2人の男が箱に腰を下ろしながら話をしていた。
警戒心の高そうな男は見るからに大柄で筋肉質のスキンヘッド、対して「わざとやったことだ」とニヒルな笑みを零している男は長身ながら細身でメガネ、スーツを身にまとった如何にもどこにでもいそうな真面目な若いサラリーマン風の風貌だった。
「僕は別に逃げも隠れもしない、寧ろ見つかってくれて好都合とさえ思っているよ。何故ならば僕はこの世界の王となる存在だからね。この世界に実際にその器を持った吸血鬼がいると証明するにはまずは恐怖心を煽るところから始めるのが妥当だよ。それに望外にも吸血鬼の血がこれだけ手に入ったんだ、あの男は失敗したけれど他の男が身代わりに吸血鬼になってくれたからやりやすくなった。実際、僕の手下は増えているんだろう?」
「まあな。本土の浮浪者や扱いやすそうな人間をメインに今は選別して吸血鬼化させているところだ。時期に不法滞在者として上陸させ紛れ込ませる手筈になっている」
「うん、素晴らしいよ。さすが純吸血鬼、元人間の無能共とは違ってキミはとても有能だ。力もある上に警戒心も高く統率能力も指示出しも出来る、それに僕の思想に賛同もしてくれる。人間じゃあ絶対に相容れられないことでもキミは必ず手を貸してくれる、境遇が似てるというのもあるだろうけど力を持たない人間に従うなんて僕からしたらバカバカしいにも程があるからね。それでも僕がゆっくりとことを進めているのは恐怖心で支配して、僕が王様だと知らしめるためだけどね」
サラリーマン風の男は特段に饒舌だ。
見た目からすると寧ろ寡黙そうな風貌をしているが、一度喋り出すとまるでいつまでも喋っているかの如く喋り続ける。
だが大柄な男は動じない、その動じなさは2人の付き合いの長さを示していた。
「俺もアンタも、ゴミみてぇな人間に支配されるのが気に入らない。そこで意気投合して手を組んだ、この世界を吸血鬼の世界に変えるために。ゴミみてぇな人間を1人残らず消し去るために」
「そうだとも。人間って言うのはゴミだよ、カスだよ、ゴミカスだよ。僕達吸血鬼のことなんて実験動物か厄介な猛獣くらいにしか考えてない、少し人間と性質が違うだけで人間と同じように物を食べ、笑い、悲しみ、衣食住をして、人間と全く同じ姿で過ごすと言うのに誰も彼もが僕達を迫害しそして裏切る。人間とは本質としてそういう生き物なんだよ。だからこの世から人間を消し去って僕達だけの楽園を作るのさ。まだまだそれには吸血鬼の血が足りてないけどね」
「だがレナの分で4.5Lくらいは手に入ったからな。今まで集めた分でならアクアエデンに住んでる人間と観光客くらいなら余裕で全員吸血鬼化は出来るんじゃないか?」
「まあ増やそうと思えば死んだ吸血鬼を引き取ったり、こちら側に着かない吸血鬼を殺してしまえば血なんていくらでも手に入るからね。世界最大級の吸血鬼のための都市、アクアエデン。ここを支配してしまえばあとはここを城にして王として君臨し、吸血鬼を送り出し世界中の人間を恐怖で支配して消し去ることが出来る。僕ほどの吸血鬼になれば200年以上をゆうに生きてきたというとてつもない回復能力を持つ荒神小夜でさえ、どうあっても勝てないんだから」
「まあ、違いない。お前の力は誰にも止められやしないだろうさ」
彼らは人間を特別、それも過剰に忌み嫌っていた。
そしてサラリーマン風の男は自分を『この世界の王』とさえ、豪語していた。その目には1点の曇りさえ存在しない。
『この世界の王』になるため、吸血鬼最大の都市であるアクアエデンさえ陥落すれば実現可能になると彼は話す。
事実、ここアクアエデンには違法滞在している吸血鬼だけでも100人をゆうに超える人数が暮らしていると言う。
一気に数百、数千の、それも人間を遥かに超える身体能力と異能を持ち得る軍隊が侵攻してきたら、それも真っ暗闇でさえ自在に動けるような目を持つ軍隊だとしたら、いくら数万の人間の軍隊と言えど侵攻する側の指示次第では一瞬で壊滅するだろう。
だからこそ、彼らは最初にここを乗っ取ることを決めたのだ。
「ところでだが、本土にもいた狩人が本格的に陰陽局に加担してアクアエデンの吸血鬼を駆逐しようと動き出しているらしい。開発地区も何れは一斉摘発を受けるだろう」
「狩人か、実にナンセンスだねえ。僕達吸血鬼を
何を目的でここに来たか深入りせず、その代わり深入りさせない。そういう暗黙の距離感を作ればあとはお互い生きる術を協力して手に入れるそんな場所だ。そもそもアクアエデンは吸血鬼が住むには狭過ぎる、だから彼らのためにも僕が王となって吸血鬼が自由に幸せに暮らせる世界を作らないとならない。
狩人達はその見せしめとしてじっくりと痛め付けて痛め付けて、もう殺してくれと懇願されるまで痛め付けて、その後で殺す。僕らの同胞がどのような思いで死んでいったかを1人1人の魂にまで、死んでも思い出せるように刻み込むようにね。ああ、今から楽しみだよ、奴らをこの手で始末するのが」
「いつ来るのかは知らないが、出来ることなら……」
「そうだね、大切な僕の王国の国民になる純粋な吸血鬼達だ。助けられるなら助けてあげたいと思うのは当然だよ。尤も、しばらくは派手に動けないから近々摘発されると言うなら一旦は見捨てる他無いだろうけどね。その時はその時でアクアエデンの吸血鬼達や開発地区の吸血鬼達と仲の良い連中を焚き付けてこちらに着けてしまえば良いけどね。カンタンなものさ、民衆の心をこちらに着けることなんて。
それに奴らを排除すれば世界各国の吸血鬼は僕を支持するようになる、今まで最大の脅威と思っていた組織を壊滅させた英雄になるんだから」
しかしそんな彼らにも優先順位はある。
真っ先に抹殺対象となったのが、本土からアクアエデンの陰陽局に出航してきた吸血鬼狩りの一族である『狩人』。
彼らは吸血鬼というだけでそれらを排除しようとするため、それに抵抗した何人もの吸血鬼がそれだけで暴力を振るわれてきた。
理不尽な迫害……少なくともそうこの廃倉庫の男達が思っている事象の先頭に立っていたのは紛れもなく狩人の一族だった。
だからこそ、そんな一族を真っ先に排除し見せしめとすることで吸血鬼がこの世界を統べる狼煙とする、長身細身の男はそう語るのだ。
「だが狩人はヴァンパイアウイルスを破壊する銃弾を使う、お前が良くても俺や手下達ではリスクが高過ぎるぞ」
「だからそこは僕1人でやるさ、何事にも適材適所があるからね。僕の能力なら奴らくらいいくらでも相手に出来るからね。ああ、勿論キミ達は近付かないでよ?いくら王たる僕でも守れるものと守れないものくらいはあるんだから、完全に僕1人のシチュエーションじゃないと僕の大切な民を守れないよ」
「お前1人で、か。俺としては心配があるがそれが一番良いんだろうな」
「んふふ、それに狩人なんて言う傍若無人が勝手に暴れてくれれば何れここの吸血鬼だって反乱を起こすだろうからね。それに乗じてシレッと乗っかってしまえばその抗争をカモフラージュにして狩人達を拉致することなんてカンタンに引き起こすことだって出来る。
『意志無く』してその吸血鬼達は世界の王たる僕に協力する形になる、ここまで光栄なことも早々無いよ」
実際、アクアエデンの吸血鬼達はここに閉じ込められていることに対して不満が無い方が貴重なくらいには少ない。
自由な行動も出来ず、普通に過ごしていても差別的な視線を向けてくる人間はおり、更に現在吸血鬼狩りの一族まで来訪して来ている。
ここまで来たら、吸血鬼達による暴動が起きるのは最早キッカケ1つで簡単に開始される……その段階まで来ている。
そしてその状況になっていることには、殆どの吸血鬼も人間も気が付いていない。
「さてと、少し話してたら小腹が空いちゃったね。これでカリーナさんのところでチョコバナナでも買ってきてよ。お釣りはキミの分にして良いからさ。やっぱり考え事をしたあとは特段に甘い物を食べるに限るよ、それに彼らに恩を売っておくのは王としても必要不可欠なことだからね」
時計の針は、刻一刻と進んでいる。
長身細身のサラリーマン風貌のメガネ男
一見すると寡黙そうに見える見た目をしておりグレーのスーツを着込んでいる若そうな青年
しかし自身のことを『この世界の王』と自称し人類を滅ぼし吸血鬼だけの楽園を創造することを目標としている
めちゃくちゃ饒舌であり長いと300文字以上ずっと息継ぎ無しで喋ってるくらいにはアホほど饒舌、お前はレグルス・コルニアスかな?
大柄で警戒心の高いスキンヘッド男
青年の腹心のような存在であり、見るからに力が強そうな見た目だが力の強さは当然、警戒心、統率力、指揮官としての能力も高い
青年とは境遇が似ているらしく、人類を無条件で憎悪し滅ぼそうと画策している彼に加担している