倉端直太だって恋がしたい! 作:ひよちゃんLove
「直太……よりにもよってお前まで吸血鬼になるなんて」
「それはこっちのセリフだぜ佑斗……」
親友も吸血鬼になってます……なんて聞かされて信じられる訳が無かったんだが、こう、実物を持ってこられると現実を直視しちまうんだよな。
どうしてお前まで吸血鬼になってるんだって言いたいが、時系列としては佑斗の方が先に吸血鬼になってるんだっけか。
はぁ、どうしてこう俺達って一蓮托生みたいにセットで着いて来ちまうんだろうかね。
いやまあそれそのものは嬉しいんだけど、同時に巻き込まれなくても良くない?とはなる。
取り敢えずは案内は夜になってから、というのもあって吸血鬼の弱点やら何やら色々説明した後先生はどっかに行った。
そして残されたのは俺と佑斗、そんで大房さん。
「そんで?この子を助けた拍子に吸血鬼の血を大量摂取して吸血鬼になったと」
「そんなところだな。ま、最初カーテン開けた時は目が弾け飛ぶかと思ったけど慣れればヴァンパイア生活も悪くないって聞いたしいんじゃね?」
「俺も似たようなもんだな。っと、えーっと、確か大房さんだっけ?」
「はい、大房ひよ里って言います。普段はカフェバーのアレキサンドで仕事をしてます。昨日は倉端さんに危ないところを助けていただいて……」
「俺は六連佑斗、この隣のとは一応親友やってる。大概お前もお人好しだよな、直太」
「お前もだよ佑斗」
「はは、だな。なんというか、コイツバカでちょっと変なところもあるけど良い奴だから良かったら仲良くしてやってな」
「はいっ」
あ、そう言えば吸血鬼は労働義務があるって話だし参考までに仕事何してるのかとか聞いてなかったけどバーで働いてるのか……背丈こそちょっと小さいけど清楚で落ち着いてて朗らかな雰囲気だし、店員さんとしていてくれたらめちゃくちゃ癒されそうだな。
てか毎日でも通いたい。
「へへ、この後の街案内もよろしく〜。そういや佑斗も誰かに街案内してもらうのか?」
「ああ。……俺とお前が助けようとしたあの子にな。あの子もどうやら吸血鬼だったらしい」
「というと、赤い髪を三つ編みにしてたあの人か!」
「そうそう。お前のドMに引かずにドS発言を繰り返してたな。確か……矢来さん、だったかな」
「あ、それ私の知り合いです」
「え、そうなの!?」
「世間は意外と狭かったなあ」
しかも大房さんがいなければ『ご主人様』呼びしたいくらいの大恩のあるあの人まで吸血鬼とな!?
これはなんというか、もしかして運命なのでは?
友達や家族にも会いに来てもらえれば良いだけだし、もしかしてメリットの方が多いんじゃないか?
「はぁ……」
「ん?どうしたんだ佑斗?溜め息なんて吐いて。これからバラ色のヴァンパイアライフが待ってるってのに」
「バラ色なんて浮かれてるが、これから住む場所と仕事探しもしないといけないんだぞ。まだまだ環境に慣れてないってのにこれから憂鬱だよ。まあそんな弱音言えるのもあの子がいないからだけど」
「あーそうかぁ……なんか話聞いてるとあんまり待遇良くなさそうだからなあ。お互い苦労するかもな」
と思ったが、そういやデメリットも多かった。
先生の話では吸血鬼の存在を知ってる人間の多くは差別的な見方をしてるっぽくて、住む場所や仕事もどうやって手に入れるかってなりそうなんだよな。
ううーむ、これはどうしたもんか。
「あ、あの……倉端さん」
「大房さん?どったの?」
「その……ですね」
そうして2人でちょっとブルーになってると、不意に大房さんがちょいちょいと俺の袖を摘んで話し掛けてきた。
え、なにその仕草めちゃくちゃ可愛いんですけど、俺惚れちゃうよ良いの?とはいえ嫌われたくないからお友達でじっくり行ければそれで良いけどさ。
「よ……良かったらわ……私と一緒にお仕事して、私の家で一緒に住みませんかっ」
「…………ヒョ?」
あれ?俺は今何を聞いたんだろう。
俺の耳は腐ってしまったんだろうか、いいやこんな可愛い子の声を聞けているんだから腐ってるなんて有り得る訳がない。
だとすればこれは現実?
『私と一緒にお仕事』も『私の家で一緒に住みませんか』も!?
幻聴じゃなくて現実!?これが!?
「だ……ダメ……です、か……?」
しかもそんな不安そうな目で聞かれてこれが何かの冗談か幻聴なんて思えたら多分俺は俺を殺してると思う。
「ぜっ是非ともッ!!」
「わわっ……ほ、本当ですか……?」
「勿論!あ……で、でも俺なんかで良いの?」
「はいっ!あのっ、助けていただいたっていうのもあるんですけどそのっ、話していて楽しくて、もっと仲良くなれたらなって思ってて、それで……」
「……ですって。聞いたか佑斗」
しかも理由が恩以外にも純粋に仲良くなりたいからとか、おいおいおいおいマジかよそれは。
今まで一度もモテた試しの無い俺にこんな積極的に友達になってくれようとする女の子がいるだなんて!奇跡か!?
「正直率直に羨ましい。でもそれは直太が大房さんの信頼を勝ち取った証拠だからな。おめでとう」
「へへへ、やっぱ持つべきものは友だぜ!何か困った事があったら力貸すから、佑斗も頑張れよ!」
「前途多難になりそうだけど、まあ頑張ってみるわ」
まさかまさかこんなラッキーが降り掛かってくるとは。
もしかして俺の人生、いや吸血鬼生マジでとんでもない事になるんじゃないのか!?
そう思って夕暮れ空だろうカーテンの向こうに思いを馳せる。
……本当は今すぐにでも黄昏て格好、付けたかったなあ。
「ええっとですね、まずは街を案内する前に私の職場に行こうと思います。一応電話越しに許可は貰ったんですけれど、早めに挨拶しに行った方が良いと思って」
「おお!そりゃ良いね、確かバーで働いてるんだっけ、アレキサンド……だったっけ」
「そうです。倉端さんをアレキサンドで働かせたいって言うのは完全に私のワガママで言ってしまってるので、そこも含めて事情説明もしないと」
「お、俺の為にそこまで……ありがとう大房さん!あと俺の事は是非『倉端くん』でも『直太くん』でも呼びやすいように呼んでくれよな!」
「え!?良いんですか?……じゃ、じゃあ……その、倉端くん……から、始めても良いかな……?」
「もっちろん!」
何この子本当に可愛いんだけど。それにめちゃくちゃ真面目。
仕事の無い日なのに俺を職場に紹介してちゃんと顔通ししてくれるって言うし、呼び方も距離が縮まった気がして嬉しい。
「あ、ここです。ここが私の働いてる『アレキサンド』です」
「おお、オシャレだ……」
雑談を続けてると目的地に着いたらしい、オシャレで静かそうなバーが佇んでいた。
思ったより大人っぽい職場でなんだか俺が働けるのか?と少し身構えちまう、俺なんてつい昨日まではただの一般学生だったんだし。
「あら、ひよ里ちゃん。なぁに、早速連れてきてくれたの?」
「はい。完全に私のワガママで押し通してしまったので」
扉を開けると向こう側には想像通り超大人っぽいカウンター席やテーブル、そしてちょっと暗くて隠れ家みたいな雰囲気。
お、俺みたいなガキが来て良いんだろうか。
いやいや待て待て今雰囲気に飲まれちゃいけない、今話してるのは……多分店長?このバーにめちゃくちゃ似つかわしい妖艶な雰囲気の美人なお姉さんがいた。
「ほんと律儀よね〜そういうところが好きなんだけど。いらっしゃい、私は淡路萌香。ここアレキサンドの店長をやってるわ。貴方がひよ里ちゃんを助けてくれた王子サマってワケね?」
「え、えと、お、俺倉端直太って言いますっ!お、大房さんを助けたのは偶然ですし王子様ってガラじゃないけど……まあその、助けました、はい」
「助けられちゃいました」
せっかく働かせて貰えるんだからここで変に謙遜する事も無いか、と思って素直に答えた。
温和そうに笑ってくれてるし多分正解だったと思いたい。
「本当に、今回はウチの大切な店員を救ってくれてありがとう。急な話だったから驚きはしたけれど、この子があんなに一生懸命ワガママを言ってくるなんて初めてだからどんな子が来るか楽しみにしてたわ」
「ど、どうですか?その、俺は……」
「ふふ、そうね。まだまだ大人には程遠そうだけど、だからこそ安心してひよ里ちゃんを任せられそうって思ったわ」
よ、良かったあ……この反応を見る感じ正解だ。
これなら問題なく働けそう。よーし、この雰囲気に飲まれないように頑張らないとな。
「ありがとうございますっ!」
「ありがとうございます、オーナー」
「良いのよ、それより男っ気の無かったひよ里ちゃんがお熱になる男子には私も興味があるし」
「ピッ……そ、そんなお熱だなんて……」
「あれ?顔赤いけど大房さん大丈夫そう?」
「だ、だだだ大丈夫ですっ」
ほんと、どうなる事かと思ったけれどまずは仕事と住む場所はちゃんとゲットって事で。
兄貴、父さん、母さん……俺はこの地で生きていくよ、そして大房さんやご主人様含めまだ見ぬ彼女候補とも出会いまくって絶対バラ色のヴァンパイアライフを送るからな!
「ところで倉端くん?」
「はい、なんでしょうか店長」
「物は試しに、今から働いてみる……ってのはどう?」
「それじゃあ私も、その、倉端くんに色々教えたいからちょっとだけ……働いちゃおうかな?なんて」
「おお!」
そして早速、大房さんの制服姿も見れそうな事にも圧倒的感謝をするのだった。
倉端直太
ひよ里の提案で仕事先と住居を同時に手に入れ美少女と2人屋根の下で暮らす事になった、リア充は爆ぜてくれ
なおそんな状況でありながらも手広く彼女候補を探している
大房ひよ里
直太の優しいところと年相応なフランクさに好感度がうなぎ登り
六連佑斗
お前もこの後仕事と住居を手に入れます
淡路萌香
年相応に背伸びしてる感じとスケベな匂いを感じるも、誠実さはあると確信して雇用を決定した