倉端直太だって恋がしたい!   作:ひよちゃんLove

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chapter9-2『2人はバレバレ』

「お前、2週間経ってないのに良く復帰出来たな……」

 

「ああ……まあなんというか、完治だそうで」

 

「布良さんの看病が効いたか?」

 

「……無いとは言わんが、あんまり周りが色めき立つようなことは言うなよ?これでも一応隠してるんだから」

 

「分かってるよ。お前も布良さんも、そういうの苦手そうだしな」

 

 あれから数日くらいで佑斗が学院に復帰してきた……と聞いた時はそれはもうびっくりしたもんだ。

 なんと言っても、右腕が吹っ飛んだって聞いてるんだからいくら吸血鬼でもそんなに早く復帰なんてさすがに無理だろって思ってたワケでして。

 あんなボロボロだったのに今やピンピンしてる親友の姿に若干の生命の神秘とか吸血鬼ってエグいなみたいな他人事じみた感想を持ってしまう。

 

 ちなみに現在食堂に向かう途中で、後ろではひよ里と布良さんがなんか話してたりする。

 

「それで、六連くんの様子がどことなく心配だと?」

 

「うん。授業中以外は問題無いんだけど、授業中ずっとどこか上の空みたいな感じで……」

 

「何となく私もそう思ってました。いつも真面目なのにって」

 

「だよねえ……」

 

 どうやら佑斗が授業中ボーッとしてたことについて、2人とも何となく疑問に思っているってことらしい。

 まあそれは俺も思ってるから分からなくは無い、ただ俺はそこそこ理由は思い浮かんでるワケですが。

 

 

 

 

「授業についていけないー!?」

 

「お恥ずかしながら」

 

「六連くんにしては珍しいね、病院で勉強してたのに」

 

「してたつもりだったんだがなあ」

 

 そんなことだろうとは思っていたよ、俺は。

 食堂に着いて腰を下ろして話を聞いてみると、どうにもこの親友は授業が全く分からなかったと言っていた。

 アンナさんの警護任務とかジダーノ?だっけか?との戦いとかで頭一杯で勉強どころじゃなかったんだろうなあってのは割と想像付いた、真面目だからこそだよなあ。

 

「ふふふ、しっかりしてるように見えるんだけどなあ」

 

「そうか?」

 

「六連くんカッコイイから、黙ってると深いこと考えてるように見えるんだよ」

 

「カッコ良くはないだろ」

 

「急にこの空間だけピンク色に染まってね?」

 

「仲良いですよね」

 

 いくら他のみんなは知らないにしても、ここまでそう言う雰囲気出されると察しがついてもおかしくないんだけどそれは大丈夫なのかこの2人は。

 

「なにラブラブしてんの、ユート?」

 

「うわっ何だ急に」

 

「ふ、普通に勉強の話してただけだよ!?」

 

「ほーんとにー?」

 

 そんでその『みんな』の枠組みから多分だけどこの人だけ外れてるんじゃないかと疑ってる。

 困惑した様子が1つも無ければ驚いた様子も無い、いくらエリナちゃんでも付き合ってることを知らないならちょっとくらいリアクションがあるはずだしこの人だけこっち側で良いな、うん。

 ひよ里はちなみにまだ知らない。

 

 あと布良さん、それは普通とは呼ばないんだよ。

 

「倉端くんの言う通り、この卓だけ明らかにピンクオーラが出てるのよねえ」

 

「そんなんじゃないよ。久々の授業だから色々わかんなくてさ、布良さんに聞いてたんだ」

 

「あ、あああっあとでノーと貸すねっ」

 

「なんでユートが焦ってるの?」

 

 下手かこの2人は。

 仕方ない、ここはちょっとくらい助け舟を出してやっても良いかもな……親友の情けってやつだ。

 

「久々の学院ってことでテンションが乱高下してんじゃないか?」

 

「あと、事件現場ってこともあるかもね」

 

 お、矢来さんも助け舟出してくれたか、これで誤魔化せるかな。

 

「ま、まあな……無駄に元気が有り余ってるのもあるし事件現場としても思い出しちまうことは割とあるしな」

 

 全く、あとでジュースの1本くらい奢ってもらうからな。

 それにしてもこのままだとバレるのも時間の問題だと思うけど、それで良いんだろうかこの2人。

 

 あとなんかエリナちゃんがめちゃくちゃ弄ってるのをBGMに、既に大っぴらに付き合ってることを言ってある俺達はラブラブを敢行している。

 

「はい、あーん」

 

「あーん」

 

「美味しいですか?」

 

「うん、今日もおばちゃんのカレーライスは絶品だな。それにあーんが加わると更に美味しくなるな!」

 

「ふふっ、そうですか?それじゃもう一口」

 

 あんまりイチャイチャしすぎるとテロだのなんだの言われるからそんなにはしないけど、食堂では関係ない。

 普段真面目にしてんだからこれくらい許してほしいもんだ、まあその周りも許してくれてるからやってるんだけどな。

 

「直太と大房さんは相変わらずだな……」

 

「ふにぃ……ど、堂々としてる……」

 

「そりゃ俺達の関係性に隠すことなんて何も無いし」

 

「周りにも迷惑をかけないように、メリハリを付けていますから。これでテストの点数が下がるなんてことがあったら、それは真剣交際とは言えませんし」

 

「さすがひよ里ちゃん……」

 

「あれ?てかみんなは?」

 

 もちろん、お付き合いしてるのが影響して成績を落とすなんてことはあっちゃいけないのでその辺俺もかなり頑張ってる。

 って言っても、赤点ギリギリ回避組からThe平均レベルに上がったくらいでしかないけど。

 それでも親父とかからは

 

「お前が平均点を……?愛の力って凄いんだな」

 

 みたいなことを言われて感心されたりした。

 色々ツッコミたいところはあるけど事実なんで言い返さなかった。

 

 それはともかく、俺達がイチャイチャしてる間にそこのカップルを残して他のメンツは席を移したらしい、いなくなっていた。

 さてはエリナちゃんが空気を読んで移動したかな、あの子爆弾発言と同じくらい気遣いも得意だからな。

 

「あーみんなならなんか空気を読んだとか言って席変えてった」

 

「な、なんなんだろうね〜みんなして、あはは……」

 

「……あの、もしかして六連くんと布良さんってお付き合い……?」

 

「この通りひよ里にはバレバレですが、お二方」

 

「そんなにバレバレなのかよ俺達の雰囲気って」

 

「そそそ、そんな訳無いよぉ!だってちゃんと苗字呼びにして誤魔化してるし話すことにだって気を使ってたもん!」

 

 どう考えてもバレバレなんだけどなあ、この人達。

 苗字で呼び合ってるって言っても逆に言えばそれだけでしかない、だって明らかに復帰前と比べて距離感近いし……シレッと佑斗のことカッコイイとか言うし……これでバレないと思ってるの多分当事者だけだと思うぞ。

 ギリギリ稲叢さんは誤魔化せるかもしれないけどさ。

 

「少なくとも私は察せてしまうくらいには……その」

 

「そんなぁ!」

 

「一体何がいけなかったんだ……」

 

 多分、何がダメとかそういう次元じゃ無いんだけどなあ、なんて思いながら微笑ましく見守るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ〜。って確か……」

 

「やぁ。あの時はどうも迷惑を掛けたね」

 

「いやいやそんな。あの時仲裁に入ってくれなかったら面倒なことになってましたよ、絶対」

 

「はは、そうかな」

 

 放課後、アレキサンド。

 いつものように働いてるとあの日仲裁に入ってとんでもない圧を出していた男の人が再び来店してくれた。

 迷惑を掛けたって言うけど、確かにちょっとビビったけどそうしてくれなきゃ切り抜けられなかったと思うしそのおかげであの3人とは多少なり理解し合うことも出来た。

 

 ところであの3人の中で重傷を負ってしばらく入院してたあの狩人は少し前に退院して本土に帰国していった。

 狩人はやめる手続きが面倒な上に楓姫にも引き止められるだろうから時間は掛かるかもしれないが、年内には絶対辞めてこっちに引っ越してくると息巻いていた。

 もしもこっちに来てゆっくりと過ごすなら俺達が案内人になっても良いかもしれないな。

 

 だから、そういう全てのきっかけを作ってくれたのはこの人であって、そうであるから感謝したい気持ちしかない。

 

「それに、あの3人を止めてくれたおかげで3人は吸血鬼に対する差別的な見方を改めてくれて対等に話してくれるようになったんすよ。1人に関しちゃ、狩人辞めてこっちに引っ越して来ようかなんて言ってて。だから本当に感謝してるんすよ」

 

「…………そう」

 

「え……?あの、どうかしたんすか?」

 

 その感謝してることを伝えた瞬間だった。

 ほんの一瞬だけ、空気がビリっとした気がした……俺の気のせい……だとは思うんだけど、それにしてもちょっとおかしかった。

 

「ん?僕の顔になにか着いてるかい?それとも感謝に思いを馳せすぎて少しトリップしてしまったかな?でも感謝は大切な行いだよ、何せ言った方も言われた方も良い思いをするからね。そうすることで怒りや恨み、悲しみではなく笑顔で溢れた社会に生まれ変わって行くんだ」

 

「あ、そ、その!多分気のせいッス!でもそういう社会になるのは俺も賛成だな〜差別とかやっぱ無くなってほしい」

 

「そうだよね。あ、言ってなかったけど僕も実は吸血鬼なんだ」

 

「やっぱりですか。なんかあの時も人間が出せる圧じゃないよなーとは思ってたんですけど」

 

 ……いやいやさすがに思い過ごしだよな。

 だってこんなに良い人……というか吸血鬼だもんな。

 

「僕はね、吸血鬼が安心して暮らせる世の中を作りたいって思ってるんだ。だからあの時どうしても見過ごせなかった」

 

「いやマジで尊敬しますよ」

 

「はは、ありがとう。そしたら今日の注文はブルームーンを頼もうかな。前回も頼んだけどね」

 

 ほんと、こういう吸血鬼が世の中を変えてくれるならもう少し良い世の中になるんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました〜」

 

「また来るよ」

 

 扉を閉め、少し暑くなってきた外気温に溜め息を吐き出す男。

 

「『見方を改める』『対等に話してくれた』『差別が無い世の中』かぁ。キミはとても優しいんだろうね、それも一度害されても仲良くしようと思うくらいには。だけどそれは甘過ぎるんだ、吸血鬼がこの歴史の中でどれだけ人間に害されてきたか、そして僕達がどれだけ害されて来たか知らないから言える。人間という生き物はどれだけ優しそうに見えても、改心したように見えてもそれは上っ面でしかない。腹の中では僕達を排除することしか考えてない。だから害される前に排除するんだ。……見ておくと良いよ、僕の吸血鬼としての生き方をね」

 

 男の言葉はどこに届くでもなく夜空に消えていく。

 

『リーダー、そろそろ部隊がそっちに到着する』

 

「さあ、吸血鬼だけの楽園を作ろうじゃないか。そう、キミの言う『吸血鬼差別の無い世界』だって、そこに――」

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