倉端直太だって恋がしたい!   作:ひよちゃんLove

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chapter10-4『俺の能力、なんか変…?』

「はぁ……なんかめちゃくちゃなことになったなあ。俺の能力についてもそうだけど、それより佑斗関連がなあ」

 

「私は……もう、直太くんも、誰も傷付いてほしくないです……」

 

「俺に関してはマジで反省して気をつけるけど、ほんとにそうだよな……なんでこんなことになっちまったんだろ」

 

 先生との話が終わり、俺は大きくため息を吐き出す。

 先生を呼んできたあと友人は帰って2人きりとはいえ、あんな話を聞かされてはとてもじゃないけどラブラブな雰囲気にはなれない。

 何せ親友の身がめちゃくちゃ危ないことになってるという話だ、今回担当してくれた先生は風紀班派閥で内情に詳しかったおかげで、俺のややこしい事情も知っていて色々と教えてくれた。

 それは嬉しかったんだが、アンナ派閥の吸血鬼のリーダーがまさか扇先生で、佑斗を誘拐していたなんてなあ。

 

 なんつーか、あの人その一線は超えないと勝手に思ってたけど本当の意味で骨の髄までぶっ壊れてるらしい。

 最悪な気分だよ。

 

「わり、さすがに佑斗に連絡するわ」

 

「そうしてください。お互いに気が気でないと思いますから。ここなら下手に盗聴される心配も無いはずです」

 

「ありがと、助かる」

 

 しかしなんにせよ佑斗に連絡して安否確認くらいはしとかないと、こっちが気が気でないんだよ。

 てかあっちも無事なら俺の話は風紀班を通して聞いてるはずだしな、ひよ里の言う通り絶対気が気でないはずだ。

 ここは病院と言っても実質的に風紀班の管轄、だとするならアンナ派も狩人も手出しは滅多なことで出来ない。

 

 連絡をするなら今しかない。

 

 電話帳から親友の名前を呼び出す。

 

『直太ッ!?直太なのかッ!?』

 

「佑斗……!はぁ……お前無事だったんだな!良かったぁ……」

 

 1コールもしない内に親友の声が響く。

 その声は間違いなく俺のことを聞いていたという答えになるような、1秒でも早く無事な知らせを聞きたいと思ってただろうがっつき具合だった。

 俺も俺で安心して深い息を吐き出してしまう。

 

『それはこっちのセリフだ!!お前退魔弾を背中に直撃したんだろ!?大丈夫なのか!?』

 

「いやまあその話すると長くなるから一旦後でな?それより佑斗今どこにいるんだよ?……俺のいるところは一応風紀班の所有物件らしいし事前に風紀班が立ち入って盗聴の疑いも無し、周辺にも風紀班の人がいるから問題無いはずだけど……」

 

『今はカジノに匿ってもらってるところだ。……しかしアンナさんを守ってくれたのは本当に感謝してもしきれない、あの人はアクアエデンに必要不可欠だし、梓も良くしてもらってたからな。それにまだ本心も聞けてない。聞きたいことも、やってもらいたいことも山積みで恋人の恩人。無事で本当に良かったと心の底から思ってる』

 

「あの時庇えるのが俺しかいなかったからな、それくらい当たり前にやるって。おかげで俺もアンナさんも布良さんも無事、最高の結果を迎えられたんじゃないか?」

 

『無茶をしたことについては後々しっかり説教をさせてもらうが……梓も泣きながらお礼言ってたぞ、んでお前が無事であることをずっと祈ってた。後で良いから絶対連絡しとけよ?良いな?』

 

「布良さんにもめちゃくちゃ心配掛けたからなあ……もちろん、安心させたいし連絡しとくよ」

 

 布良さんにも凄く心配掛けてるだろうからちゃんと無事だったことを自分の口から言いたい。

 やれるならひよ里が電話を掛けてるんだろうけど、今の不安定な精神状態でそういう余裕はないだろうし、そもそも俺も無理させたくないから今だってギュッと手を握ってる。

 

『はぁ……多分お前は今後狙われると思うから一層気をつけろよ、今回のことで狩人のターゲットを庇ったのは陰陽局に把握されてるんだから』

 

「マジかよ、なんつー面倒な……」

 

「…………直太くん、まだ狙われるんですか?」

 

『のわっ!?お、大房さんいたんだ……いやそりゃいるか。……真剣に答えると『まだ』じゃなくて『これからが本番』というところだろうな』

 

 俺が今後狩人に狙われる……それはとてつもなく厄介で面倒なことと言うのを察するのに時間は要らなかった。

 何せアンナさんを助けたんだ、狩人目線俺はアンナ派閥としてあっちには認識されて新しいターゲットになるんだろうな。

 

 でも一番心苦しいのは、それを聞いたひよ里が泣きそうな声で佑斗にそれを問い掛けていたことだなあ。

 今回のことでも相当パニックになって精神がボロボロになってるのに、ここから更にまだ狙われる……いや、ここからが本当の意味で狩人に付け狙われるのだと言われたら動揺しない方が無理だ。

 

「こ、これからが……い、嫌ですっ!これ以上直太くんが傷付くのは……!今日のことでも頭がおかしくなりそうなのに……もしも『次』があって、それでもしも直太くんが……」

 

「ひよ里、ひよ里……大丈夫……大丈夫だから……俺はひよ里と結婚して、ヨボヨボの爺さん婆さんになるまで幸せでいて、それまで絶対に生きる。何があっても絶対絶対、生きて帰ってくる。頼む、俺を信じてくれ」

 

「……うぅ……直太くん……ごめんなさい……私……」

 

 だから今は全力で頭を撫でて、抱きしめて、安心させて、少しでもこの子の苦しみや痛み、恐怖を和らげることをしよう。

 これはアンナさんを助けた代償だ、あそこで無茶をしたらひよ里がこうなるのを分かっててやった俺の責任でしかない。

 だからこれは、俺が全て受け止めてこれから起こること全てに対して有言実行する以外残された道は無い。

 それ以外でひよ里を安心させる方法は無い。

 でも倉端直太、お前が男ならたとえどれだけ地獄でもちゃんと生きて帰ってきてこの子を幸せにするんだって何度だって口に出来るはずだ。

 何度だって立ち上がってみせられる、そうだろう?

 

『悪い、もう少しオブラートに包むべきだった』

 

「いや正直に言ってくれて良かった。ここで誤魔化されても俺にメリット無いし。……んじゃま、本題といきますか?」

 

『話してくれるなら聞こうじゃないか』

 

「もちろん、その情報共有も含めて色々と話したいことがあったからな」

 

 それはそれとして、今はそういう空気よりも俺の話だな。

 退魔弾に背中を確実に撃たれ、ヴァンパイアウイルスが破壊されて意識不明の重体だったはずが何故か一夜経たずに目が覚めて背中を撃たれた痛みだけで済んでる理由……そこには正に耳を疑うようなとんでもない事実があった。

 

 というか今でも俺は信じられてないし耳を疑ってるんだが……どうしたもんか。

 

「まず、俺がなんでこんなピンピンしてるかについてだが……」

 

 

 

「はぁ!?俺の細胞が退魔弾に打ち勝った!?」

 

「ええ。確かに君は退魔弾に撃ち抜かれヴァンパイアウイルスは破壊された。しかし処置の途中突然細胞が活性化し始め、破壊を食い止めたんだ。それに侵食された部分に関しても急速に生き残ったヴァンパイアウイルスが弾き出すようにして体外に飛び散り生き残ったものが体内を再侵食し、退魔弾の物理的な怪我以外は見る見る内に消え去った。私としても信じられないが、これが事実なんだ」

 

「俺の中の細胞……?」

 

 正直これを聞いた時俺が一番信じられなかったけどな。

 何せそんなアホな能力俺の中にあるはずがなかったからだ。

 

「時に倉端直太くん、君の能力はなんだね?」

 

「俺っすか?えーと……一応『任意で発動する反射』のはずですけど……」

 

「……だとするなら、君の『反射』はとんでもない広義に置ける『反射』なのかもしれない。その傷、任意で発動しなかったから付いた傷だろう?」

 

「はぁ、まあ」

 

「だとしたら末恐ろしい。何も発動しなくても君はヴァンパイアウイルスを破壊する成分を文字通り全て『反射』させたんだ。まるで撃たれた直後だったらその銃の持ち主に一直線に飛び散るようにして飛んで行ったからね」

 

「ええ……俺の体内、なんかおかしなことになってない……?」

 

 もう意味が分からなかった。

 反射の能力を使ってないのに反射してるってゲシュタルト崩壊も良いところだぞ頭が痛くなってくるわ。

 でも事実として俺は起きた時背中の激痛以外何の異常もなくピンピンしてたんだから、これを事実として認めない訳にはいかない。

 それになんにせよこれのおかげでひよ里の元に帰れた訳だし。

 

 

 

「……俺の身体も中々にヤバいらしいが、直太の方もかなり凄いことになってんのな」

 

「みたいだな。ラッキーだったけどなんでこんな能力になったのかは多分分からず仕舞いになるんだろうなあ。それとお前、今自分の身体もって言ったけど落ち着いたら絶対聞くからな?俺は話したんだから」

 

「うっ……分かったよ、あんまり気乗りはしないが話してくれた礼ってことにしといてやる」

 

「どんな話にせよ俺はお前の味方だから安心しろって!」

 

「そう言ってくれると心強いな」

 

 訳の分からない話だったと思うが、それでもしっかりと冷静に聞いてくれたのは助かった。

 って言うのも多分、佑斗自身やっぱり普通の吸血鬼とは違うなにかがあって、それがあるから俺の話も聞けたのかもしれないな。

 

 さてと、しかしここで長く話してるのもリスクなんだよな。

 いくら手出ししにくい場所って言ってもそれもいつまで出来るか分からないから、退院したらさっさと雲隠れしてほとぼりが冷めるまで隠れて過ごさないとな。

 

「よし、一旦話はここまでにするか。俺も佑斗も長電話はリスクだからな」

 

「お互い今は安全な場所と言っても、いつそうじゃなくなるか分からない。そうなると何れは場所も変えないと……」

 

「俺は退院したらオーナーが用意してくれてる空き倉庫の中にある部屋に隠れてしばらく過ごすつもりだ。ひよ里は……」

 

「着いていきます、当たり前じゃないですか。もう後悔なんてしたくないんです」

 

「……OK、そういう訳だから2人揃って行方不明になるからよろしく。これに関しちゃ行方不明になるのを知ってるのは今話したお前とひよ里と、部屋用意してくれたオーナー以外にはいない。場所をこれから知る、知ってるのはお前を除く2人ってとこだ」

 

「全部終わったら話すから、それまで死ぬなよ」

 

 ひよ里は覚悟を決めた顔をしてるし、バレたら危ないから本当は連れて行きたくないけどそこまで言われたら拒否出来ない。

 オーナー除くと場所まで知るのはひよ里ただ1人、どれだけ信頼してる人間相手でも情報は切るから本来はひよ里にさえ知られる予定は無かった。

 

 でも、もう泣かせたくないんだよな。

 

「死ぬ訳ねーだろ、俺はひよ里を幸せにするために何がなんでも死なないんだからな!」

 

 たとえこれからどんなピンチがあっても、絶対に諦めない。

 そう誓って、夜は明けていく。

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