倉端直太だって恋がしたい!   作:ひよちゃんLove

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chapter11-5『深まる疑念と悩み』

「非常事態宣言……流石にそりゃ出るよなあ」

 

 テレビから流れてきたのは『アクアエデン非常事態宣言、正体不明のテロリスト・自称金敘俊(キム ソジュン)と他数十名による犯行か。数十名の足取りは未だに掴めず』という報道だった。

 本土のテロや大型犯罪に詳しい専門家を名乗る男性は

 

「数十名もいて足取りが掴めないのは流石におかしい、違和感を覚える。本当にただのテロリストか疑わしいところである」

 

 と言っている。

 確かに普通の人間ならあの人数で足取りが掴めないなんてそんなことになる意味が分からないからなあ、そりゃ疑わしいなんて言うのは当然の話で。

 そんでもってその人の見解が間違いでないのもまたなんというか……『普通のテロリスト』じゃないのは『吸血鬼』だからそこまでの情報を知ってる側からしたら正解と言えなくもない。

 

「ごめんな、ひよ里。時間取らせて」

 

「何の問題もありませんよ。それよりも直太くんが気になってること、引っかかってることを教えてもらえませんか?」

 

 俺はあの後じっくり今までの色んな引っかかる点やその後に貰った証言なんかを擦り合わせて、やっぱりこれは相談するべきだとおもいいたってすぐにひよ里を呼んだ。

 時間が経つに連れて疑念がどんどん大きくなって、『まさか』が『もしかして』になってしまったのが一番の要因だった。

 アレキサンドに来てたあの吸血鬼……最初会った時も何か初めて会った気がしなかったのも含めて、俺はきっと真相を知るべきなんだろう。

 

「……まあまず結論から話すけど」

 

「はい」

 

「俺やっぱりさ、アレキサンドに来てたあの吸血鬼さんが怪しいと思うんだよ」

 

「あの方が……ですか?」

 

「うん」

 

「理由を聞いても大丈夫ですか?」

 

「勿論」

 

 ひよ里は疑いも信じることもせず、ゆったりと構えて俺の話を聞く準備を整えている、正直めちゃくちゃ嬉しい。

 この子はちゃんと俺のことは信頼している、それでいて俺が佑斗や周りと比べてちょっと抜けてることも知ってるからしっかりと理由を聞いた上で納得したいんだろうな。

 あと、あの吸血鬼には俺もひよ里も良くしてもらってたし、そういう恩義を含めてもあまり疑いたくないってのは分かる。

 俺だって疑いたくなかったし。

 

「まずやっぱり佑斗の証言『とんでもない威圧感』ってところだよな。俺らがアレキサンドで身を持って体験したあの威圧感も、全身がビリッとして動けなくなるレベルのモノだったからな。そこが1点最初に引っかかった」

 

「あれは……確かに凄かったです。人間の私でも同じくらい怖かったですから」

 

 あの威圧感はまともに正面から受けてたら普通の人間なら気絶してたんじゃないかってレベルだったからな。

 受けてたのが仮にも狩人だったからあの程度で耐えられたんだろうけど、そう思うと狩人めちゃくちゃ強くない?

 あんなん受けて数分後には和解して酒飲み交わしてるとかどんな精神力してたら出来るのか知りたい、俺は絶対に無理だって。

 

「2つ目はかなり『そうなんじゃないか』って思わないといけない感じの情報で、『長身黒髪若い青年で表情は飄々としてた』って、まあ……そっくりだよなあって」

 

「それだけ聞くとピッタリ……ですよね。特に表情は特徴的でしたから」

 

 一番の決め手は間違いなくここだった。

 特徴がまんまアレキサンドに来てたあの吸血鬼そのまま過ぎて、聞いた時は思わず二回聞き返したのを覚えてる。

 信じたくはないけど、そこまで合致してたら『まさか』と言うよりも『人違いであれ』と思っちまうレベルだ。

 

 だけど……今回の報道を見て、思い出したことがある。

 それが3つ目の話だ。

 

「それと3つ目、まずは足取りが掴めないって話だけど……ここまで来ると認識?を分からなくさせる能力を持ってる吸血鬼が配下にいるんじゃないかって思うんだよ」

 

「認識阻害……あまり馴染みの無い能力ですがいてもおかしくはないんじゃないでしょうか。でも数十人と建物を一度にしてるということは相当強い能力で、且つ相当な吸血をしているんじゃないかと……」

 

「なるほど……行方不明になってる狩人や民間人の数を考えると、出来ててもおかしくないなあ」

 

 まずは報道の話からだけど、数十人いて全く情報が無いってことはその認識阻害?だっけか。とにかく何か俺達の目を誤魔化せる能力持ちがいないと説明が付かない。

 多分風紀班でもそこは真っ先に挙げられてるんだろうけど……分かってても見つけられないってめちゃくちゃ辛いだろうなあと。

 

 それに命令違反をしてた20人の狩人以外の狩人も次々と行方不明になってて、あの3人の知り合いの狩人も遂に行方不明になったと連絡が来た。

 最後には打ち解けたのか仲良さそうに酒を飲んでた4人の姿が思い浮かぶからこそ、拉致したのが多分あの吸血鬼なんだろうと思うのが辛い。

 

 しかも話を聞くには人間は劣等種とか言って全人類吸血鬼化計画なんてしてる……じゃあ、あの光景は全部嘘だったってことなのか?

 暴力や暴言ではなく、威圧感こそ出してたけど酒を飲み交わしながら狩人達の話を聞いていたしとてもじゃないけどそんなとんでもないテロをするような吸血鬼には見えない。

 だから信じなかったし信じたくなかったってのが何よりも大きい。

 

 それでも今起きてることから目を逸らせない、逸らしたくないからこうして話してるワケだけども。

 

 さて、話に戻るか。

 

「そんで話を繋げるんだけど、俺とひよ里が変な集団に襲われた時あったじゃん?民間人が一緒に襲われたやつ」

 

「あの時は守ってくれて、本当に安心出来ました。突然でこわかったので……」

 

「ま、そりゃ未来の夫ですから!……っと、話を戻すとその時に戦った奴いたじゃん。そいつから感じた気配?というか雰囲気?があの吸血鬼と最初に会った時と感じたのとかなり似てた……というかそっくりだったように感じたんだよ。今思えば、だけど」

 

「そう、なんですか……認識阻害の能力を使えば別人に見せることも出来るかもしれないですから、有り得る可能性はあります」

 

「はぁ……だよなあ。あんまり信じたくないけど」

 

 それで繋がる話が、俺とひよ里が襲われたあの日。

 あの時確かに俺、ひよ里、そして一般人が黒ずくめの男達に襲われた……途中までは、それこそついさっきまではアンナ派閥の吸血鬼が暴走して勝手に騒動を起こしたか、必要犠牲として騒ぎを起こさせたかの二択だと思っていた。

 

 でもさっきの報道と、自分の予想を繋げて初対面の時だったはずのあの日の違和感を紐付けると……そういうことなのか?と言う予想に辿り着いた。

 気のせいかもしれないしただの予想、憶測でしかないけど全てが本当だとしたらこれも話が繋がる、繋がっちまうんだよ。

 タイミング的にもアンナ派閥の吸血鬼に容疑を擦り付けられるし、全てが噛み合うのがなあ……噛み合ってほしくなかったんだがなあ。

 

「……直太くん」

 

「なんだ?」

 

「もしも、もしも今回の騒動をあの吸血鬼さんが起こしてるとして。直太くんはどうするんですか?」

 

 でも頭抱えてる場合じゃない。

 もしもそうだったとしたら、いやそうなのかどうか分からないからこそ俺達はここにいられない。

 たとえそれがどれだけリスキーで危険なことだと分かってても、そんな理屈で止まれないことがある。

 

「勿論止める。んでまずは本当の首謀者確かめに行く」

 

「ふふ、そういうと思ってましたよ。もちろん私も行きますから」

 

「……ま、俺が言って止まる子じゃないのは知ってるからな。危ないのは承知だけど、絶対にオーナーにも佑斗にもみんなにも怒られるけど!一緒に怒られてくれるか?」

 

「当たり前です。私と直太くんは一蓮托生ですから。富める時も病める時も笑う時も怒られる時も、一緒です」

 

 一緒にいた方が把握してないところで攫われたりしないし安心だからなあ……なんて思ったりもしてしまったりして。

 

 後で怒られる時は一生として腹を括るしかないな、これは。

 

「そんじゃ……行きますか、顔を拝みに」

 

 ひよ里の手をギュッと握る。

 お互いその顔は、笑っていた。

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