ウマ娘 Shout of SOUL   作:D-ケンタ

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エピローグ

―――芝の香り。

 

―――観客の声。

 

―――風の感触。

 

暮れの刺すような冷たい空気が、今は心地良い。

五体を刺激する全てを感じながら、アタシは歩を進める。

電灯の人工的な光から、太陽の光へと切り替わり、アタシ達は……ターフへと上がる。

 

 

ドリームトロフィーへの参戦を決めてからというもの、アタシのスケジュールはかなりキツイものとなった。

そりゃそうだ。喉鳴りの手術を終えた後、落ちた筋肉を戻すためのリハビリから始まり、ターフに戻るためのトレーニングを行うんだ。今までのような感覚でトレーニングできないことに苛立ちを感じながらも、アタシは少しずつ調子を戻していった。

全ては、あの英雄様に礼をするためだ。

ちょうどいい事に、同期に喉鳴りから復帰した奴がいたから、色々リハビリについて聞けたのは不幸中の幸いだったがな。

そういえば、復帰に向けたトレーニングの最中、うちのチームに新メンバーが入った。

 

「ディーレ先輩の走りに感激して、トレセン学園に来ました!先輩と同じ天皇賞を目指します!よろしくお願いします!」

 

先輩が一番驚いていたなぁ。まあでも、自己肯定感が低いところも先輩らしいと言えばらしいけど。

 

「私たちハーツ先輩に憧れてこのチームに入りました!夢はダービーを穫ることです、よろしくお願いします!」

「そんな大層な目標はないっすけど―――なんか同期に無性に勝ちたい奴がいるんすよねぇ……大物喰いの極意、教えてくださいっす」

 

何故かは知らんが、こんなアタシでも影響を与えられていたらしい。正直ビックリした。

けど、何かコイツラには運命的な何かを感じるんだよなぁ……まあいいか。こうも慕われると、悪い気もしないしな。

そんな後輩達の戦績はと言うと……はじめはパッとしない成績だったな。

だけど……。

 

『二人旅から一人旅!黄金を打ち負かす驚異の大逃げ!大波乱の春の天皇賞――っ!!』

 

『イスラボニータがもう一度差し返す!イスラボニータが差し返す!しかし唯一無二の走り!悲願のダービー制覇――っ!!』

 

『突き抜けた突き抜けた!ジェンティルドンナ二番手!末脚爆発っ!見たかこの破壊力――っ!!』

 

アイツらもまた、レースの歴史に爪痕を残していった。

後輩達のこんな走りを見せられて、黙っていられるほど、アタシは腑抜けちゃいない。

奴との再戦に向けて、より一層トレーニングに励んだ。

そして……ついにこの時が来た。

 

 

『さあ、ついにやってまいりました。冬の祭典ウィンタードリームトロフィー!世間では世代対決と呼ばれる今回、各世代を代表する猛者達が集いました』

 

『喉鳴りを発症するも克服し、春秋マイル王に輝いた不屈の闘神ダイワメジャー。皐月賞、天皇賞と同じ7枠14番に入ります』

 

『長期休養から復活した、最強の大王キングカメハメハはダービーと同じ6枠12番』

 

『豪州に響く弾き語り、菊花賞ウマ娘デルタブルースは大外18番』

 

『唯一の地方からの参戦。2番には世界に轟く道営のエース、コスモバルク』

 

――――――

 

『長きに渡りトゥインクルシリーズを盛り上げた名バイプレイヤー、トウカイトリック。8枠15番』

 

『オークス、そしてアメリカンオークスを制した女王、シーザリオは2枠4番へ』

 

『耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、悲願のG1を制したエイシンデピュティが9番へ入ります』

 

――――――

 

『そして!最後に紹介するのは、皆様お待ちかねのこの二人!』

 

照らす光が電灯から太陽へと変わると同時に、割れんばかりの大歓声が身体を打つ。

 

『シンボリルドルフ以来の無敗の三冠を達成し、世界にその名を轟かせた日本レース界の英雄!ディープインパクトっ!!』

『そしてそのディープインパクトに国内で唯一の敗北を刻み、世界の強豪達へと挑んだ覚醒の咆哮!ハーツクライっ!!』

 

最後に紹介されたアタシ達を、一際大きな歓声が迎える。

こんな歓声、昔のアタシじゃ想像もつかなかったな。

 

『何の偶然か、それとも必然か。二人共あの時と同じ、ディープインパクトは3枠6番、ハーツクライは5枠10番へと入ります』

 

風に吹かれて芝が揺れる。それによって舞い上がった芝の香りが鼻孔をくすぐる。

自然と、ディープと視線が合った。

 

「漸く、この時が来たな」

「そうだな。悪ぃな、時間かかっちまって」

「気にするな。こうして再び私の前に立ってくれたのだから」

 

そう言うとディープは左手を差し出してきた。

……どうやら考えてることは同じみたいだな。

 

「完膚なきまでに叩き潰してやる」

「やってみろ。ハナすらかからねぇくらいぶっちぎってやる」

 

握り合う手に力が入る。アタシの眼にも、コイツの眼にも、今はお互いしか映っていない。

手を離し、ゲートに向かう。やれることは全てやってきた。

あとは……全力をぶつけるだけ!

 

『全ウマ娘がゲートに収まりました。この歴史的な一戦の開始を、日本中……いや世界中が、今か今かと待ち望んでいます!』

 

スタートを待つ間、こんなアタシに付き合ってくれた皆の顔が頭をよぎる。

ムード。ディーレ先輩。ピア先輩。ヒシアマゾンさん。そしてトレーナー。

思えば良い人達に恵まれたものだ。お陰でアタシはここまで来れた。

 

『冬の祭典、ウィンタードリームトロフィー。歴史に残る決戦が今―――』

 

世界に再び見せてやる。アタシの……ハーツクライの走りを!!

 

『スタートしました!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンディングテーマ

「うまぴょい伝説」

作詞・作曲・編曲 本田晃弘

ハーツクライ ディープインパクト ダンスインザムード イングランディーレ ユートピア デルタブルース コスモバルク キングカメハメハ ダイワメジャー トウカイトリック エイシンデピュティ シーザリオ ウィジャボード コリアーヒル ハリケーンラン エレクトロキューショニスト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生きていれば、時に大きな壁にぶつかることもある

走っていれば、努力と結果が結びつかないこともある

だが、決して諦めるな

世間の声に、強敵に、何より自分に負けるな

時には膝をつくこともある

だけど

挫けず立ち上がり続けた先に見えるものが必ずある

怖気づくな、喰らいつけ、前に進め

そしていつか、世界中に響かせてやれ

お前達の……心の叫び(ハーツクライ)を!!

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