カードゲームのカードが独り立ちしたって良いでしょ? 作:石焼きカイロ
「おい!アイツをなんとかしろ!」
突然の大声に驚いて、思わず振り返る。そこには男が立っていた。
「おい!聞いてるのか⁉︎さっさとなんとかしろ!」
…もしかして自分に言ってる?
その言葉につられて思わず前を見る。そこには骨の…恐竜?博物館で見るようなでっかい骨が堂々と立っている。…あれを?なんとかしろって?
なんで自分にそんなことを…?そもそもあの男は誰…?ここはどこ…?辺りを見渡してもよく分からない……わけもわからず、ただただそこに立っていると、前に立っているその大きな骨の後ろから呆れたような声がしてきた。
「…もしかして貴方、効果も読まずにカードを使ってるの?」
声の出どころを見ると黒髪の女の子が。どういう状況…?
そもそもカードって?それらしきものはどこに──
「うるせえ!デュエルなんてレアなカード出しときゃ勝てんだよ!」
「でも…そのクリーチャーは何もしてないように見えるけど…」
「あんだけコスト使ったんだ!テメェのデカブツをなんとかするくらい簡単だろ!」
あー、なんかすごい言い合ってる…でも、聞こえてきた単語…カード、デュエル、クリーチャー。
言葉から察するに、今のこの状況はカードゲーム関連のなにかだろうか。夢を見てるだけなのか…それとも近頃流行りの異世界転生というやつ…?
…それで、自分は目の前に立ちはだかる骨をどうにかすることを求められているらしい。
よくは分からないけど、言われたからにはなんとかするしかないのかな…
そろりそろりと目の前の骨に向かって近づいていく。
でもなぁ…何ができるとか分からないし…とりあえず殴ってみるとか…?
…頭を捻っても良い案が出なかった自分は、いつの間にやら持っていた杖?でとりあえず叩いてみることにした。
「あ?」
「うそ…」
──不思議なことに、目の前に立ってたでっかい骨が光の粒子となって消えていく。ほんとになんとかなるとは思わなかったなぁ…
「は、はははっ!俺の言った通りだろ!そいつくらいどうとでもできるってなぁ!」
「うっ…確かに予想外だけど、まだいくらでも巻き返せる…!」
「そういや、さっきのアイツはテメェのエースだったよなぁ?どうだ?今降参して、テメェのエース一枚寄越してくれりゃあ他は見逃してやるよ!ははははっ!」
…あーっと…もしかして自分って悪者側?…今からでも寝返れませんか…?
いや。いやいや… あの骨を消しちゃったのは自分だし今更どの面下げてって感じだし…で、でも────
「…私の相棒を、泥棒なんかに渡すわけないよねっ…!」
──元はといえば自分が招いた事態だし、責任くらいは取らないと…
それに、どうせ味方するなら泥棒の男よりも可愛い女の子が良いよね!…男は度胸!ええい、ままよ…!
そう意気込んで、自分は後ろの男に向かって歩き出す。
「…あ?なんだ?」
手の届く距離。息を吸って…思いっきり振りかぶって…フルスイング!
「がっ…⁉︎」
「へっ⁉︎」
杖が頭にクリーンヒット!男は倒れ、潰れたカエルみたいになった。
それと同時に、1枚のカードが足元に落ちる。拾い上げて中身を見てみると、可愛らしい魔女のイラストが描かれている。カードゲームで使うであろうカードだ。
この男が泥棒であるならこのカードも盗品。
それなら然るべき場所に届けるべきだろう。
そう思い、とりあえずポケットに…入れようとしてふと気づく。
今着ている服は、このイラストの女の子と似てないか…?
居ても立っても居られず、自分の身だしなみを確認する。
服装は…イラスト通りのいかにも魔女という帽子にローブ、その下にはシャツ、スカート、タイツ…ざっと見ても同じように見える。
自分自身の容姿はどうか…今まで気がつかなかったのが不思議なくらいの記憶よりも随分と長い髪は、カードの少女とまったく同じ灰色。他は──
「あの…」
…そういえば女の子が居るのを忘れてた。
いきなりローブを脱いでは着て、帽子を脱いでは被り、髪をいじったり…さっきまでの挙動不審な行動を思い返したら、急に恥ずかしくなってきて、誤魔化すように声のほうへ向き直る。
そういえば…さっきの相棒さんとやらを消しちゃったのは自分だった。まずは謝るべき…?いやでも、さっきのでチャラになったりしないかな…?気まずい…
某DCGの新弾記念も兼ねて。