カードゲームのカードが独り立ちしたって良いでしょ? 作:石焼きカイロ
遅筆すぎたので初投稿です。
街灯の明かりも届かない路地裏、そこには学生と魔女、ちぐはぐな格好の2人が立っていた。
「あの…」
「…」
「喋れる…?」
その問いかけに少しの間を空けて声が返ってくる。
「…失礼、少々考え事をしていてね。…どういった用件かな?」
「…えっと、あなたに色々聞きたいことがあって。取り敢えずえーっと…なんであの人に攻撃したの?」
そう傍らに転がっている男を見ながら言う。
「…」
その魔女は少し考える素振りを見せてから言葉を発する。
「それほど深い理由があるわけではないのだけれどね…強いて言うとするのであれば、君を助けるため…といったところかな」
「…いや、まあ、その…ありがとう?」
どうして見ず知らずの、しかも敵対者を助けようと思ったのか気になったが、少女は一旦その答えで納得しておくことにした。気になっていることが他にもあったからだ。
「…あなたってクリーチャー、なんだよね…?なんでデュエルが終わったのに出てこられてるの?」
「………」
そう問われたそのクリーチャーは腕を組み、目をつむった。
長い沈黙がその場を満たす。
「……………………」
「……?」
もしかして、聞いてはいけないことだったのだろうかと思い始めたころ、魔女はゆっくりと口を開いた。
「……その質問には答えることができそうもないんだ、すまないね…」
「…どうして?」
「…正直に言うと、その疑問に対しての答えを自分は知らない、ということだね」
「…あなた自身にも分かってないってこと?」
「ああ、うん。実のところ、君達が先程行っていたことも理解している、とは言い難いだろうし…それどころか自分自身のこと、名…」
そこまで言って、彼女はピタリと硬直する。その表情はいい考えを思いついた、とでも言いたげだった。
「…どうしたの?」
「……そうだ、少し質問をしてもいいかな?」
「…えっ?いきなりだね…何が聞きたいの?」
少女は少し身をこわばらせながら、そう聞き返した。
「そうだね…自分達はお互いの名前すら知らないだろう?」
「たしかにそうだけど…それがどうしたの?」
「君の名前を教えてくれないかな?…もちろん、君が嫌だというのなら、断ってくれても構わないのだけれど…」
そんな提案に、少し拍子抜けした様子で返答を返す。
「…そんなことでいいの?」
「…ここで会ったのも何かの縁、折角なら友人…とまでは行かずとも、顔見知りくらいにはなれないだろうか、と」
その言葉を聞いて、少し背筋を伸ばしながら少女は名乗る。
「…そうやって言われるとなんか緊張しちゃうな…えっと、名前は
「宵闇レイ…月並みな感想にはなるけれど、いい名前だと思うよ」
「あはは…ありがとう…えっと、じゃあ…あなたの名前も聞いていい?」
「…うん、ああ、いや、その…それは…構わないのけれど…」
「……?」
妙に歯切れの悪い返答に、レイは疑問を抱く。
「えっと…何か言えない理由でもあるの…?」
「…そういうわけでは…うん?…そうだ!もう随分と辺りが暗いけれど、帰るべき場所があるのではないかな?」
「たしかに家に帰らないとダメだけど…」
「…そうだね…じゃあ明日、此処に来れるかな?そのときに、改めて自己紹介をしようじゃないか」
その不自然な態度で、明らかに何かをはぐらかそうとしていることは理解できたが、その内容自体は確かだったので渋々、その提案に従うことにした。
「…分かった。時間は何時頃がいいとか、ある?」
「時間はいつでも構わないよ」
「分かった。じゃあ明日、お昼頃にまた来るけど…連絡とかどうしたらいいの…?」
「……早めに来て待つことにするよ。だからその辺りは心配しなくても大丈夫だね」
「まあ…あなたがそれでいいなら…」
疑問は尽きなかったが、レイはその解決を、明日の自分に任せることにした。
「じゃあ…また明日」
「うん、待ってるよ」
そうして、少女は帰路に就き、奇妙な対話の時間は終わりを告げた。
静まりかえった路地裏。そうしてあとに残されたのは、自らの名前を知らないことを慌てて誤魔化したクリーチャーと────
「あ」
────すっかり忘れられて、冷たいコンクリートの上でのびている男だけだった。
某DCGのリリース記念も兼ねて。