ちょっとした息抜きというか、思いついたので供養…続くかは未定なのですよ。
「……ええ?」
スタンドミラーに映る幼い自分。
身長は五歳児の平均的身長。特徴的な明るい暖色系の髪色に吊り上がった目付きに琥珀色の瞳。
鏡に映る幼い顔が見事に引き攣っている。小さい子供が浮かべていいような顔じゃないねこれ。
落ち着いて状況を整理しよう。目が覚めたら、姿形が全く知らない人間へと変わっていたでござる。
我は誰だ、私は誰だ、俺は誰だと、この身体になる前の名前がうんともすんとも思い出せない……。
しかし、不思議なことにこの身体の持ち主。この子供が何者なのかを知識として知っている。
「……
天王寺瑚太朗。それが鏡に映る子供の名前。
詳しくは省くけれどいつか迎える滅びを避けるために、多くのものを自分自身すらも捨て去る運命が待っている男。そうなった経緯も分からないが、その男に自分は、いやオレは成っている。
転生か、それとも憑依?こうなった理由は覚えていないが前世の知識っぽいモノは残っているらしい。
「……悪い夢じゃないか?」
転生?憑依?はたまた生まれ変わりか?何にしても彼に成り代わるだなんて信じたくない。
どの世界だろうと彼の歩む道は、運命は過酷なのだと知識として把握している。
さまざまな世界の彼の結末を素晴らしいモノだと感じたが、それを体験したいかと言われたら話は別だ。
知っている人にとっては、主人公に成りたくないランキング上位にランクインするだろう。
「……ゴールしていいよね?」
超能力が使える?超人になれた?これから歩む未来を考えれば心が弾むどころか憂鬱。
体液操作にリライト能力?いやいや足りない。
リライト能力なんて命を削るじゃないか。命を消耗しない方法あるけど……一度片腕を切り落とされて瀕死にならないといけない。
「……数年ぐらい昏睡かぁ」
数年間は意識を回復しないし、副作用で人間を辞めて半魔物にもなります。……嫌だな。
リライト能力のため……というかそれ選択しちゃうと世界滅んじゃうよね。主にガイアが原因で。
「そうだ思い出した。ガイアどうしようかなぁ……」
自分の正体に深い絶望に襲われていたが、それに追い打ちをかけるようにガイアのことを思い出す。
環境保護団体マーテル。表向きは環境保護に、科学団体の一種の宗教を装っているが裏の顔を持つ組織。
その名前がガイア。彼らの理念そのものは多くの問題はあっても関わらなければ支障はないが、そこに所属している聖女派という派閥が大問題。
どれだけ問題なのかというと放置していたら、聖女派が原因で世界というか人類滅亡してしまうのだ。
「……はははは」
笑わないとやってられない。えっ?なんで人生こんなベリーハードになっちゃってるの……?
聖女派どうにかしないと生きてる内に人類滅亡。
止めるには対立組織に入隊するか、ガイアに入団してもう一つの派閥へ近づくかの2択。
第三の選択もあるが、地球救済ハンターこと、たった1人の最終決戦になるわけなんですが……。
今からどこかの嵐を呼ぶ五歳児に任せようよ。ハッピーエンドに導いてくれるって……。
「瑚太朗どうしたの?鏡の前でずっと睨めっこして」
「……ナンデモナイヨー」
家事をしていた瑚太朗の母上が、鏡とずっと睨み合いしているのを不思議そうにしていた。
自分がまだ何歳か知らないので、とりあえずニヘラっと笑いながら誤魔化した。
成長した瑚太朗君が見たら複雑な顔浮かべそう。原作の中学時代から両親と仲が悪いからな彼。
「お部屋で遊んでくるー」
「お熱下がったばかりだから気をつけるのよー?」
これ以上は母上に怪しまれる。リビングから退散することにしよう。
リビングから退散するため咄嗟に出た言葉だったが瑚太朗君にはもう私室があるようだ。実に羨ましい。
「それにしても高熱で寝込んでいたのか瑚太朗君。なにか関係があったり……?」
某スタンド漫画じゃあるまいし。そんな深い関係はないだろう……。
天王寺瑚太朗としての記憶もあるようで、見慣れた廊下を進みながら私室へと辿り着く。
中に入れば五歳児(?)には立派すぎる部屋。
見慣れたベット、子供机に椅子。多少は違いはあれど原作の天王寺瑚太朗の部屋が視線の先にはあった。
「とりあえず紙とペン。紙とペンはどこにある……」
小さな学習机の棚を開けてあれやこれやと探せば、お目当ての紙と鉛筆を発見。
字に残すのは避けた方がいいだろうけど、言語化して心をいい加減落ち着かせたいのだ。
「……情報整理、情報整理」
真っ白な紙に大雑把に現在の状況を書き上げる。
私は誰?→現在天王寺瑚太朗(?)→今後の目的不明
「……うわぁ」
我ながら頭がポンコツ過ぎてドン引きです……。
現在持っている情報がこれしかないから仕方ないんだけどね?だから私は謝らない。
だってこの世界が枝世界なのか、それとも現世なのかを判別ができる手段や材料が今はないのだ。
「枝世界なら最悪放置でも大丈夫だもんなぁ……」
枝世界とはありとあらゆる生態系、環境、世界を再現して、過去、未来、現在、全てを構築した人為的に造られた世界。簡単に言えばシュミレーションゲームのキャラの1人として操作されている。
この世界は要するに仮初。精密に造られた別世界。聖女派によって人類滅亡したところで、人類が消えたのでリセットして初めからが選択できる。
都合良くリセット権を与えられてるわけもなく、その権利があるのはこの世界の創造主だけ。記憶も都合よく引き継がれないので、強くてニューゲームなんてことは出来ないけど。
長々と語っているが、要するに人類が滅びたところで次のゲームが始まるので問題ないのだ。
現世の場合は勿論一発アウトでやり直しは不可能。地球上の生物は全滅endまっしぐら。
「なんにせよ。しばらくは命を大切にだな」
この幼い身体に出来ることなんて限られている。
いずれ鍵と遭遇するまでに活動方針の纏めてと、それまで身体を鍛えよう。
リライト能力を使えば人間を超越する力を簡単に手に入るがその代償は大きすぎる。
本来の彼のようにここぞという場面しか使わず、緊急事態に使うが丁度いい。私生活にも影響が出るし。
なのでトレーニングっすね。超人的な力を持ってるのに、元の体力少ないとか笑い物ですし!!
「中学生になるまで自由気ままにするかー」
鍵と初めて遭遇する時期はこの身体が中学生になった時ぐらいだろう。
しばらく自由気ままに生きるとしよう。それまでには今後どうしていきたいか考えと纏まるでしょ。
頑張れ!!未来のオレ!!この時期ぐらい現実逃避させてください本当に!!
「……はぁぁぁぁぁ」
現実逃避することを決めたわけだけど生い先真っ暗なのは変わらない。
頭の悪い文字が書かれた紙をくしゃくしゃに丸めているのは八つ当たりを含めた証拠隠滅。
物語の主人公は苦難が待っているのが既定路線。誰が好んで茨の道を歩きたいと思うっちゅうねん。
街の風景に溶け込む一般人が安泰だ。遠くから観客席に座って野次馬しているのが丁度いいだよ!!
「瑚太朗ー。おやつの時間よー」
やり場のない怒りの炎を燃やしていれば、母上からのおやつタイムのお誘いが。
回らない脳みそを沢山働かせたので糖分万々歳!!
ママン!!ナシ、むいてくれよ!っと心の中で叫びながらリビングへと向かうとしよう。
リビングに辿り着くと、テーブルの上にくし形切りされてお皿の上に林檎が並んでいた。
むぅ!梨ではなかったのね。林檎も大好きだからいいとしましょう。
ママン!ナシ、むいてくれよ!!は未来に合うであろう吉野っちに託すとしよう。
ソファーに座って林檎を食べながら、電源が付いていたテレビで退屈凌ぎでニュースを眺める。
『次のニュースです。総耶区で背中を刃物で刺される事件が——』
……総耶区?デジマ?嘘でしょう?えっ、Rewriteじゃなくてまさかの月姫?冗談でせう??
——ちゃ、茶番だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!