地球救済ハンター   作:ラグーン

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011 彼の名は

 

 

 本日の授業が全部終わって放課後。

 珍しく予定があるが心にモヤのような引っ掛かりがあって教室を出る気分じゃなかった。

 

『——なにが有ろうと自分を優先してください』

 

 昼休みシエル先輩から言われた言葉を思い出す。視線は十徳ナイフを仕舞っている鞄へと向かう。

 今日繁華街に向かうのを、やんわりと引き止められていたのは気のせいじゃない。

 人の多いあの街でなにかが起こる。なにかまではわからないがそれは間違いないはず。そんな危険地帯から遠ざけようとしたのは良心からだろう。

 顔見知りがこれから危険な場所に向かうと言ったらオレだって同じことをするさ。

 

「……焼きが回ったか?」

 

 これまで慎重に生きてきたつもりだ。石橋を何回も叩いて、危ない場所を徹底的に避けてきた。

 だというのに、どうして繁華街に行くと決意を固めて頷いてしまったのか。

 名前も知らない男に拘ったワケを説明できない。

 分自身の考えが読めない。本能とも違う。感情や勘と説明できない気味の悪い感覚。

 ……なんにしてもらしくない。日頃のオレなら、大人しくシエル先輩の警告に従っていただろうに。

 

 

「珍しいわね。不機嫌そうな顔をして」

 

 自身の思考を読めず苛立っているのが顔に出てようで、いつの間にか近づいてきた西九条に指摘される。

 

「わかってて近づいてくるのかよ。今のオレに近づくと火傷するぜ?」

 

「面白くない冗談ね。もっとマシな言葉選びなさいよ」

 

「辛辣なコメント!? えっ!? 罵倒するために話しかけてきたのかよ?」

 

「そんなわけないでしょ。人のことをなんだと思ってるわけ?」

 

 睨むと人を凍らせることができる氷属性の女性ですかね。人の頭を踏みつて見下している姿とかすっごく似合っていると思います。

 

「不思議とその頭に蹴りを入れたくなってきたわ。一発ぐらい、いいわよね」

 

「暴力反対! 敵意超えて殺意じゃん!」

 

「不快にさせるようなこと考えるからよ」

 

 誰が発端だよ、っと小言を吐き捨てる寸前にギロリと睨まれたので黙ることにした。

 はい。西九条さんは微塵も悪くありません。全ては私のくだらない妄想が原因でした。反省します。

 

「まぁ……茶番はこれぐらいにして。なんか話があるんだろ?」

 

「少し付き合いなさい。その様子だと、待ち合わせしてないんでしょ?」

 

「オッケー。借りも返したいから、自動販売機まで行こうじゃないか」

 

 なんのことか不思議そうにするが、昼間のことを思い出した西九条は呆れた顔を浮かべる。

 学生鞄を持って席から立ち上がる。話が終わると帰ることを察した西九条は一度鞄を取りに机に戻った。

 一緒に教室を出るの、ちょっとばかり気まずいので先に廊下に出て待っておくか。

 

「……よしよし。第一関門は突破だな」

 

「……次は第二関門。西九条センセならいけるいける」

 

 廊下を出る時に、オレを見ながら今宮と田中が声を潜めて話している姿が目に映る。

 怪しげな雰囲気から感じ取るに、話の内容は聞き取れなかったが何かしら企んでそうだな。

 

 ボンヤリとしながら西九条を待っていると鞄を持った彼女が教室から出出てきた。

 待っていたオレに、西九条がお待たせと微笑むなんてこともなく、お互い無言で目的地を目指す。

 

 他人から見れば気まずく映るだろうが、オレと西九条の最適な距離感はこの沈黙に尽きる。

 無闇に騒ぐのは彼女は好んでいない。

 今宮と田中が友達と馬鹿騒ぎする陽のタイプなら、西九条は静かに過ごす隠のタイプ。

 オレはどちらのタイプかと言われたら、おふざけの貴公子を外せば隠のタイプに当て嵌まるだろう。

 カテゴリーとしては同類。陽と陽が集まれば煩くなるように、隠と隠が集まれば必然として静かになる。

 

 お目当ての自動販売機へと辿り着く。鞄から財布を取り出して1000円札を入れる。

 小銭を作りたかったし、ついでにコーヒーを飲んで気持ちをリセットさせたい。

 

「好きなの選んでいいのよね?」

 

「どうぞどうぞ。一番安いのから、一番高いのまで。選り取り見取りってね」

 

 奢る側の言質を取ると、見るからに高そうな果汁飲料を躊躇なく押す。

 迷いなく高いの選ぶのかよ。文句はないよ? むしろ奢り甲斐があるとすら感じる。

 奢ると言った時に、安いの選ばれる方が遠慮されているようで個人的には複雑なんだよね。

 んー、微糖かブラックどちらを選んだものか。昼休みにはブラックにしたし微糖でいっか。

 

 コーヒーを買うと、西九条は隣にあるベンチに座り先ほど買った飲み物へと口をつけていた。

 ベンチに座るのを一瞬考えるが、隣に座ると別の理由で心臓の鼓動が速くなりそうなのでやめよ。

 自動販売機の側面に背中を預けて、鉢を開けてカフェインを口から摂取する。

 

「それで? 話って?」

 

「大した中身はないわ。放課後時間あるかどうかの確認」

 

 ……なんて? 聞き間違いで、オレの耳が壊れてなかったら放課後暇なのか訪ねてきましたよね? 

 いや、自分の聴覚が壊れてる可能性もある。この短時間でイカれることはないが、もしもがある。

 

「……オッケー、西九条。もう一度説明してくれ」

 

「だから——今から時間があるかって訊いてるのよ」

 

 眉を顰めて二度も言わせるなと、険しい視線もセットで返ってきたが耳は正常のようだ。

 西九条からのお出かけのお誘いに頭が一瞬止まるが、首を左右に振って無理矢理起動させる。

 

「……まぁ、うん、無理。人と会う約束あるのよ」

 

「そっ。初めから期待してなかったけど」

 

「そんで? どんなカラクリが隠れてるわけよ。西九条がオレを誘う理由なんてないだろ?」

 

「田中と今宮に頼まれたのよ」

 

 あの2人がコソコソ話してたの納得した。西九条に頭を下げて遊ぶ約束取り付けたかったのか。

 察するに放課後遊びに誘っても、自分たちでは断られると考えた末の行動だろう。

 断り続けているオレが100パーセント悪いんだが、努力の方向性間違ってるよ。

 

「適当にあしらえばよかっただろ」

 

「田中から必死に頼まれたのよ。付き合ってる彼女に贈り物をしたいから、女の子が好きそうなもの教えてほしいって。まぁ田中の付き合ってる子は知ってるし、少しは協力してあげてもいいかなって」

 

「へー。それだと今宮は野次馬ってところか」

 

「そうよ。遊ぶ気満々。天王寺を誘ってくれってしつこかったし。傷の舐め合いでもしたかったんでしょ」

 

「今宮と慰め合うの勘弁。じゃあ、西九条は両手に花……いや、両手に薔薇ってこと。おめでとう」

 

「今宮と田中タイプじゃないから。それと、さっきの二度と言わないで。心底不愉快で腹立つ」

 

 次言ったら殺すと、剥き出しの殺意にこくこくと無言で頷くしかない。命は大切にね! 

 

「はぁ、行くの嫌になってきたわ。……なんで用事あるのよ。今宮ぐらい引き受けなさいよ」

 

「怒る矛先を間違えないでくれ。そんなに嫌なら田中と2人で行けよ」

 

「彼女が目撃したら勘違いするでしょ? 馬鹿なの?」

 

「……うん。ドンマイ!」

 

 田中の話を引き受けた時点で、今宮もセットで付いてくるのが確定していて詰みだったのさ。

 情に絆される相手を選ぶべきだったのだよ。その面倒見の良さが将来に繋がるわけなんだが。

 

「3人で買い物ねぇ。羨ましいことで……場所は繁華街、だよな?」

 

「そうね。休日なら隣町も候補に上がったけど、平日だと帰りが遅くなるから自然と繁華街になるわ」

 

 それがどうかしたのっと、不思議そうに首を傾げる

 西九条に誘われた時から嫌な予感はしていた。平日の放課後に近場の商業施設に寄れるのは繁華街だ。

 違っていてくれと藁にもすがる思いで訊いたが、悪い予感とは的中してしまうもの。

 

「……西九条。一つ頼みがあるんだ」

 

「なに? 話だけは訊いてあげなくはないけど……」

 

「……今日繁華街に行くの中止するよう2人を説得してほしい」

 

「は? なんでよ?」

 

 彼女の疑問と反応は正しい。突然と繁華街に行くのを中止しろって理由も話さず言われたらそうなる。

 説明をすればと考えるが、繁華街に吸血鬼が潜んでる荒唐無稽な話を彼女が信じるものか。

 知識があるかないかで信憑性は大きく変わる。化け物が潜んでいると話してもふざけるなと激怒か、馬鹿馬鹿しいと失笑されるかのどちらかだ。

 手っ取り早いのは目の前で魔術を使用することなんだが……超能力は使えても魔術は使えない。

 厳密に言えば才能があるかも分からないが、この状況では使えないことに変わり無い。

 異端という意味では超能力もだが……これは西九条が誰かに話す可能性があって迂闊に行動に移せない。

 

「黙ってないでワケを話してくれない?」

 

「行方不明事件が続いてるだろ? まだ解決してない。繁華街は避けた方がいいんじゃないかなって」

 

「夜ならともかく、夕方よ? 人通りの多い場所で拐われることなんてあるワケないじゃない」

 

 結局オレは——話せなかった。

 

 解決していない行方不明事件を口実にするが、案の定説得に失敗する。

 引き留められる手札は持ってるのに、異物であることをバレてしまうのを恐れている。

 人間社会においてオレは欠陥だ。2つの超能力なんて生活していく上では邪魔なだけ。

 人間は異物には敏感で、異端を排除するのが最も優れている種族だ。

 超能力がバレてみろ。徒党を組んで石を投げて、普通という輪から弾き出されるぞ。

 ……彼女たちの命と自分の将来を天秤に掛けて、自己保身を選ぶ自分が浅ましいくて嫌になる。

 

「……西九条」

 

「自分で伝えなさいよ」

 

「あの2人が素直に頷くわけない。意固地になって逆効果だ」

 

「私が言っても変わらないわよ。都合のいい時だけ頼るのやめてよね」

 

「今頼れるの西九条だけなんだよ。頼む……っ!」

 

「ちょっと!? 頭なんて下げないでよっ!? ああもうっ! 私が悪者みたいに見えるじゃない!」

 

「……頭下げても足りないなら土下座だってする」

 

「教室ならともかくここではぜったいにやめて! ……わかったわよ。言えばいいんでしょ」

 

「に、西九条……っ!」

 

「止められる自信ないから期待はしないで。それと、また奢ってよね。失敗しても奢ってもらうから」

 

「ああ! 何回だろうか、何十だろうが奢るさ! やっぱ西九条は最高だ! ほんっと頼りになるぜ!」

 

 声がデカいと怒る彼女の顔は薄らと赤かった。慌てて謝ればため息を零されるが許してくれるようだ。

 同性だったら感激のあまり抱きついていた。オレが女の子だったら男前っぷりに惚れてたぜ。

 

「それと連絡先も追加してくれ。何もなかったら削除していいからさ」

 

「はいはい。好きにしなさいよ」

 

 理由も聞くのも面倒なのか、諦めた顔で携帯を出してお互いに連絡先を交換する。

 保険にしては頼りない手段だが、現状のオレに出来ることになるとこれが限界だ。

 確実なのはシエル先輩に連絡入れて、3人繁華街に近づかないよう暗示をかけてもらうことだが、あの人に今連絡しても多分繋がらないだろう。

 

「……ああ。そっか」

 

 ……冷静に考えると、昼休みシエル先輩に暗示をかけられる可能性もあったのか。

 情に訴えたり、説得するよりもそっちが確実。

 密室で2人きりだったのに、最後まで魔術を使われなかったの滅茶苦茶尊重してもらってるじゃん。

 約束とか関係なしにカレー奢る案件だろ。あの人には本当に頭が上がらないな……。

 

「どうしたのよ? 急に黙って」

 

「……緊急時とはいえ、西九条の連絡先を手に入れたのが感慨深くて」

 

「……用事ないのにも連絡掛けたら消すから」

 

 咄嗟に誤魔化したら、気持ち悪いモノを見るかのような目でドン引きされる。

 消していいって言ったのに残してくれるのかよ。なんだよ。結構優しいじゃねえか……。

 

「……まぁ。繁華街に行って身の危険を感じたら連絡をくれ」

 

「まるで駆けつけるみたいに言うじゃない」

 

「しないしない。友達が襲われてますって、専門家(スペシャリスト)に助けを乞うのがオレの役目」

 

「……呆れた。そこはオレが助けに来るって、カッコつける場面でしょ」

 

 うるせぇ。かっこ悪く見えるだろうが、オレが探すよりシエル先輩が探す方が絶対早い。

 探す方法自体はあるが、書き換え(リライト)使って西九条の匂いを覚えないといけない。

 貴女の匂いが付いた持ち物くださいとか頼んだら社会的に死ぬ。別に意味で社会から弾かれちまう。

 仮に実行に移して、あの2人にバレてみなさいよ。

 司書さんから地平の彼方まで蹴り飛ばされて、シエル先輩からパイルバンカー待ったなしだよ。

 

「そろそろ今宮たちと合流するから」

 

 ベンチから西九条は立ち上がって、中身が空っぽになった缶をゴミ箱へと棄てる。

 

「いいか? 繁華街に行っても人が多いところ通れよ。道を逸れて路地裏とか絶対に入るなよ。怪しい奴にも近づくな」

 

「わかってるわよ。……さっきの美味しかったわ。それじゃあ、また明日」

 

 ひらひらと手を振りながらオレの横を通っていく。

 すれ違う時に見えた彼女の横顔は小さく微笑んでいるように見えた。

 

 最善は尽くしたと。それなのに、胸の中にはどうしようもない不安が襲ってくる。

 自分の感情から目を背けるかのように、コーヒーを一気に飲み干すことにした。砂糖が入っているはずのコーヒーは、まるでブラックのように苦かった。

 

 

 ◇◇◇◇

 

「……ここだよな」

 

 繁華街にある、とある喫茶店の前に来ていた。

 看板には『Romanus』と書かれている。最近のおしゃれな喫茶店よりも古風で落ち着いた雰囲気。

 ……えーっと、読み方はロマヌス、で合ってるよな? 間違ってたら鬼電すればいいかっ!! 

 中学生が入るの場違いな気がするが、先に待っていると言うのだから腹を括ろう。

 

 意を決して扉を引く。

 店内は程よい広さで落ち着いた雰囲気は居心地が良さそうだと、そんな印象を抱いた。

 軽く店内を見渡せばカウンターにはいくつか椅子が並べてあり、カウンター席とテーブル椅子の2種類。

 カウンターには店主らしき眼鏡をかけた年老いた人物が立っていた。

 彼の背後にある棚には沢山のコーヒー豆が瓶に入って並んでいて、豆に凝っているが窺える。

 

「いらっしゃい」

 

 厳格そうなマスターだが、場違いだから帰れと追い出されるようなことはなかった。

 それ以降老人は喋ることはないので、好きな席に座れと好意的に捉えるとしよう。

 ここに呼び出した人物を探すために見渡すと、あっちも気づいたようで大袈裟に手招きする姿が映った。

 

 ……声出さないのマスターが怖いからだろ。オレも臆病な自覚はあるけど、ああはなりたくないな。

 明日辺りにシエル先輩か、司書さんに日頃の態度に意見もらって改善しよう。そうしよう。

 

「いやー! 久々だね! 元気そうでなによりだよ!」

 

 男が座っているテーブル椅子の対面に座ると、人の良さそうな笑顔で友人のように話しかけてくる。

 

「そっちもね。会った時に比べたら顔色も良さそうだし」

 

「あの時は仕事が忙しくて寝不足でね。……あれ? 彼女は来てないのかい?」

 

「先輩は私用で来れないってさ。あの人もめちゃくちゃ忙しい人だし」

 

 それは仕方ないね、っと残念そうに肩を落とす。

 おい。あらかさまに態度違うくない? 気のせい? この男はシエル先輩を邪な目で見ているのでは? 

 

「……やっぱ処すか?」

 

「彼女が来て欲しかった理由これもあるからね!? 突然と敵意向けられるの心臓に悪いんだぞぉ!」

 

 シエル先輩がオレの手綱を握ってるみたいに言わないでくれませんか? 

 逆らえる自信あるのかと言われたらないですが……だって怒ったら怖いんだもん!! 

 

「……まあいいや。とりあえず好きなもの頼むから。奢りなんだからいいよな?」

 

「もちろんさ。だけどメニューに載ってるもの全部とかは無しでお願いするよ?」

 

「いやしないし、そこまで胃袋大きくないんで。つーか店の迷惑だからな、それ」

 

「……なんでだろ。君に常識を説かれるの納得いかないよ」

 

「おい。アンタの中でオレの印象はどうなってんだ」

 

 頰を掻きながら苦笑いで誤魔化される。

 仮にも恩人だというのに好印象を抱かれていないのだけはよーくわかった。

 決めた。一番高いのにしよう。奢る時は気前よく奢るのが気持ちいいのをオレは詳しいからな!! 

 

 メニューも決まったので、店員さんを呼んで一番高いデザートにコーヒーを注文する。

 奢る側の男の顔が頰を引き攣ってるように見えるが、そんなものは気のせいだろう。

 

「……ほんっと遠慮ないよね」

 

「これでも成長期だからな。最近はご飯も多くて食欲が止まらなくて」

 

 成長期というよりも、シエル先輩と一緒に食べてるからが大半を占めているだろうけど。

 司書さんとの外食は楽しくて美味いんだが、それ以上に彼女と一緒にいるのが楽しくて食が進む。

 シエル先輩の手作りが美味すぎるのだ。食生活を軽んじてたわけじゃないけど次の日の活力も全然違う。

 本音を明かせばほんっとうに毎日作って欲しい。365日カレーでも余裕でいけるいける。

 

「……そういえば僕ら自己紹介まだだったよね?」

 

 今日の夕食カレーにしようかなぁ、と考えていたら男が思い出したように聞いてくる。

 

「……そう、だな。お互いに自己紹介はしてない。この前はそんな暇もなく別れたし」

 

「そうだよね! よかった! 勘違いじゃなくて……ああ、いや、君の名前は連絡先で知ってはいるんだけどね。だけど、ほら、こういうのってきちんと自己紹介するのがマナーだろう?」

 

「そうっすね。お互い名前知らないの不便だし。まぁ連絡先に載ってる通り天王寺瑚太朗だ。名前でも苗字でも好きな方で呼んでくれ」

 

「それなら天王寺君で。それじゃあ次は僕の番だ。僕の名前は()()()——()()()()()()()()()。僕の名前周りは言いにくいで定評があるから、ロマンって呼ばれたりするんだ。気軽にロマンとも呼んでくれ」

 

 名前を名乗るの恥ずかしいなっと照れるように目の前の男——ロマニ・アーキマンは笑った。

 お互いに自己紹介をしただけなのに、世界の未来が確定した瞬間でもあった。

 

 ——未来はどうしようもないぐらいに理不尽で、深い絶望が待っていることが。

 

 

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