地球救済ハンター   作:ラグーン

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003 先輩

 

 

 みなさんお元気ですか? 私は元気です!! 

 

 食屍鬼(グール)とトンネルで目と目が合って、2日間ダウンをしていた天王寺君だよ! 

 美人な歳上の高校生のお姉さんと素晴らしい出会いはあったんだけどね? 

 しばらくあのゾンビ君が夢に出るやら、肉類とか見ただけで吐きそうになるので学校休んでました。今でもちょっと肉を潰した生々しい感触残ってるけど! 

 

 本来の天王寺瑚太朗に比べたら、しばらく寝込む方が全然マシだったりするんだけどね? 

 彼は自ら希望して海外の紛争地へと向かい、そして本物の銃で人を撃ってきた。

 ガイアの使役する魔物と戦うことはあれど、己の意志で初めて人を殺した時の彼はそれはもう酷かった。

 食事を取ろうとすれば吐き気に襲われ、人を殺した自責に駆られて己の頭に拳銃を突きつけた。

 自殺しようとした直前に、紛争地で親しくなった1人の少女が止めて彼は踏み止まったんだが。

 

「おっと……そらそろ準備しないと遅刻する」

 

 時刻は六時五〇分。

 軽く背伸びをしてベットから出る。寝巻きを脱ぎ、制服へと袖を通し、優雅に鼻歌を歌いながら勉強机の近くにある学生鞄を手に持つ。

 時間としては充分猶予がある。しかし、慌ただしく準備をするのはエレガントじゃないね。

 

 階段を降りてリビングに向かうと、職場へ向かう準備をしている両親とバッタリと合う。

 

「おはよう瑚太朗。体調はもう大丈夫なのかい?」

 

「もちのろん。完全復活パーフェクト天王寺さ!」

 

「冗談を言えるぐらいには元気になったのね。私たちもう仕事に行くから戸締りお願いね?」

 

「お任せくださいませ。マダム」

 

 息子の体調が万全になり、憂いが晴れて職場に向かう両親を手を振りながら見送った。

 1人になって静かになったリビング。

 机の上に帰りが遅くなると書き置きと一緒に置かれていたパンを頬張る。

 昔から多忙な両親だ。忙しいのに2日間も看病に付きっきりにさせて申し訳ない。しばらくは家事をお小遣いないしでこなしましょうかねぇ。

 

「さてと。情報収集のお時間っと……」

 

 リモコンを使って消されていたテレビを付ける。

 ボタンをポチポチ押して、適当にチャンネルを変えるが特に目に止まるニュースはない。

 数日前に遭遇した食屍鬼(グール)の死体に関するニュースは流れていない。

 2日間ニュース観れてないから、その間に流れたりしてないかなぁ……? 

 

「あれぐらいの不意打ちで死んだり? いやないだろうなぁ……」

 

 楽観的に考えるが、それはないだろうと否定する。

 背後から思いっきり血液のバットで殴ったが、アレぐらいの一撃で殺せたとは到底思えない。

 

「……これ以上踏み込むはマズい」

 

 人に擬態した死者を探すことも考えるが、その案を頭を左右に動かして振り払う。

 食屍鬼(グール)が居るということはそれを作った親、吸血鬼がこの街に潜伏しているということ。

 今回は偶然なんとかなっただけ。次は体液操作だけで乗り切れるとは限らない。

 体液操作は汎用が広いが火力が心持たない。

 この前のように自分の血を操り武器に変化させたり、血流を操って顔の輪郭を変えたり、薬物への耐性が多少あったり物凄く便利だけど。超能力としてみたら地味なのだ。

 欠点はもちろんある。自分の血しか操れないのと使いすぎたら貧血になるのだが、一度書き換えたら2度と戻れないリライト能力に比べたら遥かにマシよね。

 

「まっ。誰かがなんとかしてくれるでしょう」

 

 犯罪を見かけたら警察に通報するように、人ならざるもを刈りとる組織がこの世界にも存在する。

 組織名は聖堂教会。昨日のような化け物を排除することを目的としている。代行者と呼ばれる戦闘員が事件解決のために動いているはず。

 素人が出しゃばるのはただの邪魔なので、プロにお任せして平穏な暮らしを満喫しましょうねー。

 

「ん。そろそろ出るか」

 

 残りの食べかけの食パンを口の中に放り込み、冷めたコーヒーで一気に流し込む。

 洗面台で歯を磨きながら身嗜みを整える。うむ。惚れ惚れとするぐらいイケメンだよねこの顔。

 

「戸締りは全部ヨシ! そんじゃ行きますかぁ」

 

 窓の鍵ヨシ! 戸締りヨシ! 最近は治安が悪いからね! 施錠はしっかり確認しないとネ! 

 2日間寝て、起きて、寝ての堕落した生活おかげか足取りは軽い軽い。

 空なんて健康体へと回復したのを祝福するかのように雲一つもなく晴れやかだ! 

 

 

 バス停までのんびり歩いていく。自宅から在籍している中学校までバスを使えば片道二十分。

 現在の時刻が七時三〇分なので、バス停まで徒歩五分かかるが総耶中学の朝礼には間に合う計算。

 目的地のバス停に辿り着く。丁度いいタイミングでバスも停まっており、列の最後尾に並んで乗車する。

 

(あの人とどうやって会おうか? 思い出したけど、どこで待ち合わせするとかも決めずに別れたよな……)

 

 なんなら2日間は私室で寝込んでもいたから、約束をすっぽかしたと勘違いされてる可能性も……? 

 まずい。これ非常にまずいぞ! 可愛い高校生と約束を破ったと勘違いされるのは嫌だな! 

 さ、探すか? 顔とか、特徴は覚えてるし……? 1000万も人口のある東京都内中でどうやって……? 

 

(……リ、リライト使っちゃう?)

 

 瑚太朗君はご近所さんの、幼馴染の飼っている犬が脱走した時に、犬部屋に残っていた体毛の臭いを嗅いで見つけた実績ありますし……? 

 ……彼女の匂いがする持ち物持ってない! あのハンカチは洗濯してこの鞄に入れたんだよ! 

 ええい!! このポンコツめ!! ……い、いや、こんな理由で超人になるとか恥晒しだこの馬鹿野郎! 

 

「ふ、ふふふ……グッパイ……オレの青春……」

 

 目的地に辿り着いたので、さっきまで軽い足取りが嘘のような重い足取りでバスから下車する。

 さらば青春。全ては幻。そう、儚い夢。たった1日だけ許された奇跡の出会いだったのさ……。

 

「……泣けるぜ」

 

「——朝から落ち込んでどうしたんですか?」

 

「どうしたもなにも、一昨日に出会った——」

 

 不貞腐れて顔を伏せて通学路を歩いてたら、優しい声をした誰かに話しかけられた。

 隣にいる誰かに落ち込んでいる理由を話そうと顔を上げれば()()はそこに居た。

 

「おやおやー?まさか先輩である、私の顔を忘れたんですか天王寺君?」

 

「まさかその逆!ついさっき()()()()()のことを考えてたんですよ!なんなら先輩に見惚れてました!」

 

「ふふふっ。それなら良かった。天王寺君に忘れられてたらショックで寝込んでいたところです」

 

 口元を抑えくすくすと笑いながら冗談を言う彼女の名前は()()()()()

 青髪のショートカットに、トレンドマークの眼鏡。総耶中学の3年生。影では裏の生徒会長とか。

 オレを見かけたら話しかけてくれて、何かと気にかけてくれる、正に女神のような()()だ。

 

「体調を崩していると聞いていたので、元気に登校しているのを見つけて安心しちゃいました」

 

「……その言葉を聞いて涙が出てきそう。先輩に心配されるとか一生分の運使ったんじゃないかって……」

 

「大袈裟ですよ!?……まったく。天王寺君はすぐ茶化すんですから」

 

 シエル先輩に対しては冗談二割、本心八割りだったりするんですけどね?

 この口の軽さは長所であり、本音が伝わらない欠点でもあると司書さんから酷評もらってるがネ。

 

「これだけ元気いっぱいでしたら、一昨日のお礼をしないとですね!」

 

「一昨日……?」

 

「一昨日、天王寺君は私を助けてくれたじゃないですか!忘れていたんですか?」

 

「まさか!姫を護るのは騎士(ナイト)の勤め!あれぐらいどうってことないんで。むしろ当然ですよ」

 

 そうだそうだ。一昨日シエル先輩を助けたんだっけ……?あの悪しきオーラを放つ怪物から。

 歯を見せて爽やかに笑いながら、貴女を助けるのに理由はいらないと想いを伝えてサムズアップ!!

 これは決まったんじゃないか!?

 シエル先輩も「やだ!私の後輩かっこよすぎ!」ってときめいたんじゃない!?

 

「ふふふふっ。冗談が相変わらず上手いんですから」

 

「……さいですか」

 

 残念ながらこの想いは隣に居る人には伝わっていないようです……。

 なにが悪いのぉ?なにがダメなのぉ?あれか?この口が悪いのか?このお調子者が悪いんですか?

 会話に花を咲かせながら校門を潜る。下駄箱で靴から上履きへと履き替えて再度廊下で集まる。

 

「お昼休みに会いに来ますね。それではまた後で、天王寺君」

 

「わたくしこと天王寺瑚太朗もちろんお待ちしておりまーす!!」

 

 登校した他の生徒の目の前だろうとお構いなしに声を張り上げる。

 シエル先輩はそれを相変わらずなんですからっと、苦笑いを浮かべて手を振りながら去っていった。

 

 周囲と生徒から視線が痛いが知ったことか!男子生徒諸君羨ましいだろう!?

 この学園の屈指の美少女であり、誰も彼もから頼られている物腰柔らかいシエル先輩と親しいのが!!

 

(これは最高の1日になりそうだ♪)

 

 自分のクラスまで上機嫌に絆ステップで向かう。

 本来は絆ステップという3人が肩を組んで友情を深める素晴らしいものが元ネタだ!

 やってくれる相手がいないので本領は発揮せず劣化であるが、機嫌が良いと表現するにはピッタリだ!

 

 所属しているクラスの引き戸を開けて、そのまま絆ステップで自分の席へと辿り着く。

 クラスメイトから視線が集まるのはよくある事なので気にしないノーネ。

 

 

「やけに上機嫌じゃないか。天王寺」

 

「機嫌がいい理由を知りたいかな?次期剣道部キャプテンと名高い伊藤君」

 

「伊藤じゃねえよ!田中だよ!」

 

 クラスメイトでそれなりに親しい伊藤君、じゃなかった剣道部のエース田中君が声を掛けてくる。

 田中君は気さくな性格をしているが、剣道をしている時の雰囲気は全然違うのが特徴。

 声出しの時とか威圧感が半端じゃない。テンション上がったらチェストォォォォと奇声あげまする。

 初めて聞いた時普段とギャップが違い過ぎてちょっと怖かったです……。

 そんな田中君が朝から機嫌がいい理由を知りたいと懇願してくるので教えることにしよう。

 

「今日のお昼休みにシエル先輩が会いに来てくれるんだよ……オレに!この天王寺瑚太朗に!」

 

「うざ。めちゃくちゃうざ。お前シエル先輩絡むと、うざさ倍増するよな……」

 

 めちゃくちゃ鬱陶しそうな顔をして、もう喋らないでほしいと視線で訴えられた。

 いやぁ、だってねぇ?学園でも男女問わず人気のあるシエル先輩ですよ?

 そんな人からまた会いましょうね、って言わらたら心がぴょんぴょんするじゃー!!

 

「実際羨ましいもんだぜ。天王寺のどこがいいんだか……」

 

「まるで良いところなんてないみたいに……」

 

「このクラスの女子で付き合いたくないランキング1位はお前だぞ」

 

「……その情報まったくの初耳でございますが?」

 

「日頃の行動を振り返ることをオススメしとくぜ」

 

 田中君からの密告のダメージが大きすぎて天井の染みが滲んで見えるなぁ……。

 あれ?このクラスの女子から実は嫌われたりしてたりしてた?いやいや、いやいやいや……。

 

「……これが若さか」

 

「おふざけの貴公子だろうと現実逃避するんだな。そんで?あのシエル先輩どうやって仲良くなったのよ?秘密にしとくから教えてくれよ」

 

 そうかそうか。田中君はオレとシエル先輩がどうやって出逢ったのかを知りたいのか!

 ……ん?そういえば、オレとシエル先輩はいつ、何処で会ったんだっけ?

 

「どうしたんだよ?難しい顔を浮かべてよ。ははーん?さては、シエル先輩との思い出を忘れたな?」

 

「オレとシエル先輩の想い出を語るには10年早いんだよ。田中君が成人したら教えてあげるさ……」

 

「10年いらねえじゃねえか。というか、交流続いてる前提なのかよ」

 

 妙な違和感というか、なにか奇妙な感じがするが大したことはないだろう。

 違和感を振り払って、田中君とくだらない談笑を担任の先生が入ってくるまで続けた。

 

◇◇◇

 

 さてさてさーて!お昼休みのお時間だ!

 授業から解放されたのなら、こんなところからはおさらばさ!

 

「おい。天王寺!!お前にお客さんだぞ!」

 

 椅子から立ち上がれば、親切なクラスメイトから敵意剥き出しであの人が来たと報告が。

 クラス中の男子から嫉妬の視線が集まってきたのでわたくしは退散退散!!

 あっ、田中君誘うの忘れてな……まぁ、アヤツは最近できた彼女と一緒に食べるだろうさ。

 廊下に出ると、そこには可愛らしい風呂敷に包んでお弁当を持っているシエル先輩の姿。

 

「天王寺君はクラスメイトのみなさんから大人気なんですねー」

 

「身の危険を感じるぐらいには大人気。これから一緒にお昼ご飯の前に購買寄ってもいいっすか?」

 

「大丈夫ですよ!天王寺君、お昼ご飯は購買で買ってるんですか?」

 

「うちの両親は共働きで毎日忙しそうに仕事向かうんで、いつも購買で買ってるですよ」

 

 自分で昼食用意してもいいが、家事をして貰っているお小遣いから出すわけになるのでちょっと……。

 夕食もレンチンタイプや、惣菜弁当が多いから作り置きってのもできないものなのよねー。

 なるほどっと、顎に手を添えて神妙な顔でなにやら考え込むシエル先輩。なにしても可愛いなこの先輩!

 

 そうこうしていれば一階にある学食へと辿り着く。大体の生徒は学食のおばちゃんの元へと向かい日替わり定食を注文する。

 中学生となると育ち盛りですからね。それはもうモリモリ食べるってもんさ。

 まぁオレは節約のために購買で買うんだけど。なにかとお金使っちゃうから節約しなければならぬ。

 

「おばちゃーん!コッペパン一つと、ツナサンド一つ、そして缶コーヒー2本ご所望する!」

 

「はいよ。おや?今日は田中君じゃなくて彼女と一緒かい?」

 

「彼女だなんて……!私と天王寺君はただの先輩と後輩ですよ!」

 

 食い気味に否定されてとっても悲しい……。

 あっ、クラスの女子から付き合いたくないランキング堂々の1位を思い出して心の傷が……っ!

 ふふふ……天王寺瑚太朗の恋って、どうして前途多難の運命なのかしらね……?

 

「学食で昼食もいいですが、今日は部室の方で食べましょうか!」

 

「部室……つまり!2人きり!?これはもうデートと差し違えないのでは!?」

 

「それでは行きましょうか」

 

 勇気を持って出した言葉も微笑んで聞き流されてしょぼんなり……。

 ま、まぁ?シエル先輩と2人だけでお昼を一緒にできるんだから儲けものよ……っ!

 シエル先輩の後を追いかけるようについて行く。この方角は確か空き教室じゃなかったっけ……?

 目的地に辿り着けば、空き教室の鍵を何故か持っている先輩が鍵を開ける。

 そこまで不思議でないか。シエル先輩ほどの善人なら教員から預けられててもおかしくない。

 

「ゆっくりくつろいでくださいね!机と椅子があるぐらいですけど……」

 

「先輩が一緒にいるなら楽園っすよ。あっ、コーヒーあげます。ブラックですけど」

 

「これはこれは!お礼の件を話そうと思っていましたのに、また貰っちゃいましたね」

 

 う、ううん!嬉しそうに微笑むの可憐で胸がときめいちゃう!!

 待て待て待て!天王寺瑚太朗!あれ?ここまでちょろかった?そう!これはシエル先輩を独占してるシチュに舞い上がってるだけ!そうに違いない!!

 

「つ、机寄せるんで先輩は先に座っててください!」

 

 先に座ってくつろいでいてほしいと笑いながら慌てて誤魔化す。顔が赤くなってる気がするぅ!

 椅子と机はその辺に沢山あるが、敢えて一番遠い位置にあると使わずに放置されているのを取りに行く。

 う、うんん。落ち着け。素数を数えよう……!!素数は心を落ち着かせてくれる!

 

(あっ。この前手当してもらったハンカチ持ってくるの忘れてた……)

 

 ぶつぶつと素数数えてたら、先輩に切り傷を応急処置してもらったハンカチを鞄に入れっぱなしだ。

 今から撮りに行くと時間かかるし、放課後に探して渡せばいいか!

 

 胸の高鳴りが落ち着いてきたので机の上に椅子を乗せて、一緒に纏めて持っていく。

 から身体鍛えてる恩恵を感じるな。これぐらいなら楽ちん楽ちん!後3倍は持ってこいというもの!

 

「とと、お待たせしました!」

 

「これぐらい待っているうちに入りませんよ。それでは一緒に食べましょうか」

 

 シエル先輩の気遣いに全余が泣いた!!

 突然と暴露されたランキングで傷心しているオレにはかなり癒される。告白する?そしてフラれる?

 いやフラれる前提なのかよ。どう足掻いてもフラれる未来しか見えないもんな……泣けるぜ。

 

 持ってきた椅子に座り、いただきますと、両手を合わせてコッペパンの封を開けて齧り付く。

 うむ。いつもと変わらぬ味。親のコッペパンより食べたコッペパン。

 美味い美味いと食べていたら、シエル先輩から視線を感じる。

 

「昼食、それで足りますか?この時期の男の子は育ち盛りで沢山食べるので物足りなかったりしません?」

 

「ちょびっと足りませんが大丈夫っすよ。運動部に入ってる奴らに比べたら低燃費なんで」

 

 昼食は購買で買った惣菜パンを食べるのが日課。田中君からももうちょい食べれば?と言われるが、今更この習慣変えるのもちょいと面倒なのもある。

 まだ一昨日の件から完全に回復してないから、これぐらいが限界なのもあったりするんだけど……。

 

「物足りなかったら遠慮なく言ってくださいね?お弁当からお裾分けしますから!」

 

「お裾分け。ごくり……つまりシエル先輩の手作りを食べられる?」

 

「……手作りではなく冷食だったりします」

 

「シエル先輩の愛が込められているのなら、それは手作りと一緒ですよ!まぁ先輩の分を取っちゃうの気が引けるんで我慢しますけど……」

 

 ち、ちくしょう!!ちくしょう!!胃腸が完全体にさえなっていれば!!

 シエル先輩からあーんや、ワンチャン間接キスだって出来たかも知れないのにぃ!!

 悔し涙を流しながらコッペパンと、ツナサンドやけ食いして一気にコーヒーで流し込む。

 ……うぇ。気分悪い……吐きそう!!

 

 自業自得で口元抑えて青ざめていれば、程なくしてシエル先輩も昼食を食べ終わる。

 そして貰った缶コーヒーを開けて、そのまま本題の方へと入っていく。

 

「一昨日は本当にありがとうございました!そのお礼をしたいんですけど……天王寺君、休日時間有ったりしますか?」

 

「あります!めちゃくちゃあります!!なくても先輩のためなら時間錬成するっす!」

 

「そ、それなら今週の土曜日の学校終わりに一緒に遊びに行きましょう!いいお店を知っているんです!」

 

「今週の土曜日。オッケーです。この天王寺瑚太朗の魂に刻みましたよ」

 

 い、い、いやっほう!!シエル先輩とデートだ!

 これはデートだよね!?休日に一緒にお出かけなんて、それ以外の呼称ないのでは!?

 い、いかん……っ!頰が弛んでしまう!いや我慢しろとか言われる方が無理無理カタツムリ!!

 

「そろそろ昼休みも終わりますね。戸締りの方は私がしておきますので、天王寺君は先に戻っていてください」

 

「手伝いますよ?廊下走れば全然間に合いますし」

 

「廊下は走ったらダメなんですよー?それにここの鍵を職員室に返す必要もありますから」

 

「……承知しました。ですが姫!お困りであれば、この天王寺へとなんなりと申しつけてくださいね?天王寺瑚太朗は例え火の中、水の中、嵐の中だろうとシエル先輩へと駆けつけます!」

 

「ふふふふっ。その言葉に甘えて、いつか天王寺君呼びますね!」

 

 くすくすと楽しそうに笑うシエル先輩大好き……!

 ぶっちゃけ引かれないかと、ヒヤヒヤしながら喋ってたんだけどそんなことなくてよかった!!

 

 また会いましょうねっと、シエル先輩から見送られながらオレは部室を後にする。

 ……というかシエル先輩はなんの部活に入部してたんだっけ?

 まっ!いいか!大したことじゃないし!それよりも今週の土曜日が楽しみだぜひゃっほう!! 

 教室まで絆ステップ!今日は絆ステップのバーゲンセールだな!

 

 

 教室に戻ったら、クラスメイトの田中君がめちゃくちゃ幸せそうな顔をしてた。

 どうやら彼女から手作り弁当を貰ったとか。

 ムカついたので、対抗してシエル先輩とデートする話をしたらクラスの男子から殺気を向けられた。解せぬ。

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