盗賊の少女とドロスの英雄   作:ヽ(´▽`)/

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第十五話

あれから、かなりの時が過ぎ去った。

アグライアとオルフェウスは度々その教育方針の違いから論争を起こしていたが、結局は二人ともセファリアのために自分が出来ること、教えられることの全てをセファリアに施そうとしていた。

 

そんな二人の様子を見たセファリアは、まるで自分に両親がいるみたいだと感じた。

結局、セファリアがオルフェウスと出会ったその時に抱いていた期待は、半分は叶えられたが、もう半分は裏切られた。

その内容は、以前の永劫回帰と同じことだ。

セファリアは彼の名乗りに違わぬ手腕を目にして、その手練手管を本人から直々に教わることができることに感激したが、それと同時に彼の英雄らしからぬ言動に心底驚き、理想と現実のギャップに悩まされたのだ。

例えば、彼がカイザーから任された役割もその一つだ。

カイザーの命を受け無慈悲に裏切り者を粛清する刃として動いていた彼について、『剣旗卿がカイザーの剣ならば、神速卿──オルフェウスは彼女が後ろ手に隠し待つナイフだ』と、人々はそう言った。

そして、それは彼自身が望んだ役割でもあった。

カイザーはその存在を人々に明かしておきながら、巧みに相手の意識をそのナイフから逸らし、最も致命的な瞬間にそれを差し向けるのだと。

元々英雄と呼ぶには我欲の強い彼は、市民から黄金裔とは別のナニカとして扱われていた。それは、ケリュドラへの畏敬とも違い、ただ強い力を持っただけの怪物のような扱いだった。

それを見た彼女は、以前と同じように

 

「あたしが、アンタを英雄にしてやる!」

 

そう啖呵を切った。

それを聞いたオルフェウスは、少しの間目を見開いて固まったがその後

 

「はっ、出来るもんならやってみな」

 

そう言って笑った。

そこからさらに時が過ぎ、第一次火を追う旅が終わった直後、元老院殺害の容疑をかけられたオルフェウスはその場で一人の元老院を殺害し、オクヘイマから追放された。

そして、数十年の時が経ち、それを追うようにセファリア──サフェルがオクヘイマから去ろうとしたその時。

 

「おう、セファリア。お前もオクヘイマを離れるのか?」

「…っ、オルフェウス!?アンタ、オクヘイマを追放されたんじゃ……」

「あぁ、その通りだ。だが、俺の神速を前に、真の意味で俺をオクヘイマから締め出せる奴はいない。楽勝に入れたぜ。……んで、ほんとにここを離れていいのか?」

「……離れないといけないの」

「アグライアの奴が寂しがるぜ?」

「……それでも──」

「やらなきゃならねぇことがあるんだな?」

 

オルフェウスは、サフェルの瞳を覗き込むように目を合わせて問う。

彼女は、控えめに首を縦に振って答えた。

 

「……うん」

「わかった。……金織の機嫌は俺がなんとかしておいてやるさ。その代わり、二つ約束しろ」

「なに?」

「一つ、何かあったらすぐ助けを呼べ。俺はオンパロス中を走り回ってるから、わかりやすいとこに目印を立てておけばすぐに駆けつけられる。んで、二つ目、これが一番大事だ。心して聞けよ」

 

オルフェウスの勿体ぶったような態度に少し焦れながら、サフェルは次の言葉を待った。

 

「やると決めたからには、絶対にしくじるなよ」

「……っ、わかった」

「よろしい、それじゃあ行ってこい。どんな些細なことでも、手が足りなくなったら呼べよ?」

「なんども言わなくてもわかってるってば。……行ってきます」

 

サフェルはそう言って、聖都に背を向けた。

彼女は飛翔する幣を指で弾き、風の如き速度で消えて行く。

アグライア、サフェル、そしてオルフェウス。モネータの金糸が繋いだ三人は、同じ志を持ちながらも、選んだ方法の違いから散り散りとなった。

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