盗賊の少女とドロスの英雄 作:ヽ(´▽`)/
「……ん」
セファリアは窓から漏れる朝日で目を覚ました。
部屋を出てリビングに向かうが、そこは静寂に包まれ、昨日のような明かりもない。
セファリアは声に出して彼を呼ぶが、答える者はいない。
また騙されたのだろうかと思うと少しだけ涙が出そうになった。
その時、家を揺らすほどの風が外から吹いたかと思うと、玄関のドアを開いてオルフェウスが帰ってきた。
その両手にはりんごが六つほど抱えられている。
「おはよう、食うか?」
「食べるけど……、どこから持ってきたの?」
「近くの果樹園だ」
「…………盗んでない?」
「盗みとは失礼な、代金は置いてきたっての。……半分くらい」
「盗ってるじゃん!」
「あそこの果樹園は俺がこの前暗黒の潮から守って場所だ、対価なしで救われると思ってんのか?」
当たり前のように言ってのけるオルフェウス。、
「……それ以上喋らないでくれない?」
「急に辛辣だなオイ!?」
彼が一言喋るたびに、セファリアの中にあったオルフェウスという英雄の像、正確にいうならば『闇より出でて、人を助け、名を名乗らず見返りを求めず闇に還る』というダークヒーロー的な英雄像がボロボロと崩れてゆく。
セファリアは目を覚ました時とは別の意味で涙が出そうだった。
「……なんでアンタみたいなのが英雄やってるのかますますわかんない」
「それは昨日も答えたぞ。そもそも、俺は元々マトモな英雄じゃないってくらいは知ってるだろう?」
「えっ?……そんな話聞いたことないよ?」
「英雄の話しか伝わっていないのか……?俺は元々大盗賊オルフェウスだ」
「えっ?盗みは二、三回で飽きたって──」
「そうだな。二、三回くらい都市国家の王の蔵から金銀財宝を盗み出して、飽きてやめた」
「……は、はぁ!?」
セファリアはこの家に来てから一番の大声を上げた。
「元犯罪者が英雄、なんて御伽話なんかでよく聞くだろ?」
「聞かないよ!」
「そうか。それなら俺が特例だって覚えとけ、特別な英雄様だってな!」
セファリアは深く、そして長くため息を吐いた。
すると、オルフェウスは唐突に真面目な顔でセファリアを見つめ始める。
「……な、何?怒らせちゃった?」
「ため息一つでキレるわけないだろ?そうじゃない。……コホン」
彼はわざとらしい咳払いと共にサファリアに近づいた。
どこか品定めをするように彼女を見つめ、しばらくすると何かを決めたように目を瞑り、そして
「…よし、決めたぞ。これからお前に、詭術の術を伝授しよう。俺の持ち得る全てを、お前に教え込んでやる」
そう言って、セファリアを手招いて家の奥の部屋へと向かうのであった。