盗賊の少女とドロスの英雄 作:ヽ(´▽`)/
「──っ」
招かれるまま、彼が鍵を開けた古い部屋に入ったセファリアは思わず息を呑んだ。
そこに飾られていたのはいくつもの武器や道具、全て彼が使ってきたのであろうそれを見て目を輝かせたセファリアにオルフェウスは
「何から学びたい?……俺が教えられることは少ないが、ここにある全てを教えてやるつもりだ」
そう言いながら、机の上から細い棒を持ち上げた。
「なにそれ?」
「鍵開けの“魔法”だ」
「……また盗み?」
「あのなぁ、一口に英雄って言っても、みんながみんな正しい戦い方をするわけじゃない。正道を歩むためには道を踏み外さなければならないこともある」
「……そう、あたちたちはあなたのそういう所に、何度も助けられたよね。──会いにきたよ、オルちゃん」
背後、開け放たれたままのドアから声が響いた。
セファリアは聞き覚えのないその声に驚いて肩を跳ねさせたが、オルフェウスはその声にうんざりした様子でため息を吐いた。
「門と道の聖女が、今更なんの用だ?」
「火を追う旅に戻ってきてほちいの。みんなも待ってる」
「それは無理な相談だな」
その言葉にセファリアは心の底から驚いたような顔をして、オルフェウスの服の裾を引っ張った。
「なんで行かないの?アンタはドロスの最高の英雄なのに?」
「少しいざこざがあってな。……さっきも言ったような俺のやり方は、味方には不評だったんだよ」
彼の目元には確かな悲しみが浮かんでいた。
「……そう、なんだ」
「あぁ、だからこそ、俺はお前に俺のやり方の全てを教える。……お前は、それをうまい塩梅で使いこなして欲しいんだ。……俺みたいな過ちを犯さずにな」
「オルちゃん、それは──」
「あぁ、そうだ。俺の後継はコイツだ。時が来たら、コイツをオクヘイマまで連れて行く」
その言葉に、門と道の聖女と呼ばれた少女は何故か表情を暗くする。
しばらくして顔を上げると
「……わかった!オルちゃんが決めたんだもんね。あたちたちはプレゼントを用意して待ってる!」
そう言って門と道の聖女はオルフェウスの家を去っていった。
その悲しげな様子に、オルフェウスの後継という言葉にはその言葉以上の重い意味が込められているのだろう、とセファリアは勘付いていた。
しかし、彼自身がそれを明かさない以上、それは知るべきことではないのだろうと、それ以上追求することはしなかった。
「さて、伝えるのが遅くなって悪かったな。俺はお前を本格的に後継として育てる予定だ。……俺は数え切れない罪を犯し、黄金裔はみんな俺の罪を覚えている。お前に必要なのは、罪を覆い隠す嘘とそれすら隠し通す詭術だ。どうか、俺からそれを学んで、俺と同じ轍を踏まないでくれよ」
数秒の沈黙。
どう返答すればいいかわからないセファリアに、オルフェウスは彼女の頭を撫でて
「正直に言おう、俺はお前に期待してる。お前には俺を継げるだけの才能がある」
それは、彼が彼女に対して初めて発した、彼女が望む通りの言葉だった。