盗賊の少女とドロスの英雄   作:ヽ(´▽`)/

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第九話

あれからしばらくの月日が経ち、オルフェウスの元で腕を磨いたセファリアは盗賊として名を馳せるようになった。

それと同時に、オルフェウスの罪はオクヘイマより外へ流れ出し、今やオンパロスのどこであっても、オルフェウスという名は英雄を騙った罪人を指す汚名となった。

 

「そろそろ頃合いか……?」

「ん?何悩んでんの?」

「……隠すことでもねぇな。セファリア、詭術の火種を継ぐ気はないか?」

「あ〜、火種。火種ねぇ……ひ、火種!?」

「おうおう、お手本見てぇなリアクションだな」

 

驚いたセファリアを半笑いで揶揄うオルフェウス。

一方のセファリアは火種という重要な物の話をまるで、日常の会話のようなテンションで切り出した彼に驚き半分呆れ半分で空いた口が塞がらない様子だ。

 

「まぁまぁ、そんな重く考えんなって。火種を受け継げば能力がもらえる代わりに、黄金裔っていう面倒な組織に身を置かなきゃならない。……メリットとデメリットはこんな感じだが、お前はどうしたい?」

「どうって……、そもそも詭術の火種はアンタが継ぐんじゃないの?」

「いや?そんな気は微塵もない。てか無理なんだよ、諸事情あって」

 

ははは、と渇いた笑いを飛ばすオルフェウスだったが、サファリアの顔を見て、射抜かれた足は関係ない、と一言だけ付け足した。

 

「……ほんとに、あたしが?」

「おう、お前だ。お前以上に適任はどこを探しても見つからねぇ」

「そう、ならあたしが継ぐ」

 

その言葉を聞くと、彼はその言葉を待っていたと言いたげに立ち上がって

 

「よし、んじゃあアグライアのヤツを呼んでこないとな」

「なんでアグライア?」

「一応指導者だろ、アイツ。だから、一応─────」

「呼ばれなくとも、聞こえていましたよ」

「……地獄耳だな」

「わかっていて言っていますね?」

「もちろん。んじゃあ、あとはお二人さんで話し合ってくれよ。俺は大仕事の準備があるんでな。あと、ドロスにはこいつを持って行け」

 

オルフェウスは机の上に一枚の地図を広げ、サファリアに宝石のついたネックレスを渡してその場を去った。

地図には一箇所だけザグレウスを意味するシンボルが刻まれており、詭術のタイタンの所在を表していた。

こうして、協議ののちにセファリアは彼女が育った場所──ドロスへと足を運ぶことになったのだった。

 

「お前は誰だ?」

「あたし?あたしは……」

 

セファリア、と名乗ろうとして躊躇った。

このドロスにいる人間ならばもしかしたら、セファリアの名を知っているかも知れない。

かつての自分が家を追われた時に追ってきた奴らの仲間はいまだにこのドロスに存在するのかもしれない。

 

「あたしはサフェル。このドロスの生まれで、神速の英雄の知り合いなんだけど──」

「……そうらしいな」

 

セファリアの首元から覗いたネックレスを見て、ドロスの盗賊は口を噤んだ。

 

「アイツを知ってるの?」

「あぁ、ここにいる奴らはみんなあいつに助けられた。じゃなきゃ盗賊の城なんて呼ばれるドロスで態々義賊なんてやってない。……それで、そのネックレスは助けられた全員からの感謝を込めて渡したものだ」

 

彼女はこうしてドロスの義賊たちの信頼を得て、三百の義賊をまとめ上げた。

そして、アグライアが合流し、後は英雄記に記される通りだ。

三百の義賊は無数の詭計でもって一柱のタイタンを閉じ込め、金糸がそれを縛り上げた。

 

『見事な騙しっぷりだったが…何故我を解放しない?宝の隠し場所全てに連れて行ってやると言うのに!』

 

引き攣った笑みを見せる神へ近づいた少女は言った。

 

「父さんに約束したの。“必ずアンタの汚名を濯ぐ”って!」

 

こうして、詭術の火種が継承された。

しかし、オクヘイマに帰ったその時、アグライアの表情は曇っていた。

 

「どうしたの?ライア。火種はここにあって、もうすぐ火を追う旅が再開できるっていうのに」

「……あなたの養父をオクヘイマから追放するための民会が、元老院の主催で始まろうとしています」

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