ちょっとチヤホヤされたいだけなのに、ボディがつよつよ美少女すぎる 作:ウメー
この世界に転生した当初、私は転生者の御多分に漏れず冒険者となった。
生きていくうえで、それが一番簡単な選択肢だったというのもあるし。
やはり転生者なら一度は冒険者にならないといけないだろう、という思いもあった。
最初のうちは厄介な男に食い物にされるのではないか、チート美少女過ぎて周囲から排斥されるのではないかと警戒していたが。
幸いにも、気の合う仲間に恵まれて、私はパーティを組むことができた。
その時にパーティを組んだのがミラスタシアだ。
といっても、その時の私はフードで顔を隠していたし、ミラスタシアも自分が吸血鬼であることは隠していたが。
ほかにも、実は王族のお姫様な少女や、平凡な村娘とパーティを組んで私は冒険者をした。
思えば、あの頃が私にとっては最も素朴で、楽しい時間だったかもしれないな。
――この世界は、創造の女神と破壊の女神が、自身の退屈を慰めるために作ったのがこの世界だといわれている。
退屈を紛らわせるために、彼女たちは人間の運命を劇的なものとなるよう定めた。
「運命に導かれる」というのは、端的に言えば女神によって世界を揺るがす大事件に放り込まれることを指す。
そうしていくつもの大事件を駆け抜けた人間は、やがて世界を救うのだ。
これが、S級冒険者と呼ばれる存在の誕生経緯である。
当然ながら私たちのパーティも様々な事件に巻き込まれ、強くなっていった。
私としては、できるなら運命に導かれたくないし、逃げ出したいのだけど。
逃げた先でなんやかんや事件に巻き込まれるものだから、周囲からはしょうがない奴だと思われていただろうな。
ともあれそうして事件を解決していると、やがて私がS級冒険者になった。
私のチート美少女ボディは、運命にも愛されていたのだ。
これで少しは落ち着けるかとおもったらそうはいかず、私はそれからも事件に巻き込まれ続けることになる。
同時に、仲間たちもいろいろな事件に巻き込まれ、それを解決しているうちに。
気が付けば、全員がS級冒険者になっていた。
そうなると、今度は彼女たちにも立場というものが生まれてくる。
一人は言うまでもなく王女様だし、ミラだって特別な吸血鬼のお姫様だ。
平凡な村娘のあの子は、特にそういうしがらみもないけれど。
彼女は特別”冒険者”であることに憧れと自負を持っていて、今日も世界各地を飛び回っている。
そうなると、今度は私が一人残される形になってしまう。
私は平穏な生活が好きなのだ。
彼女たちのように、劇的な生活は送れない。
結果私は、正体を偽って一人の”ユウ”として暮らすことにした。
美しすぎる美貌のせいで、相変わらずトラブルは絶えないけれど。
認識をちょっとごまかす魔術のおかげで、私がユウ・シノノイであるということはばれずに済んでいる。
ただ、それでもこうやって事件はどこからともなくやってくる。
今回はやってきたS級冒険者がミラだったから、直接私を巻き込まないでくれるだろうけれど。
結局何かしらの形で、事件には巻き込まれるのだろうな。
ああ、私の穏やかな生活は、いったいどこへ行ってしまったのだろう。
〇
「おーねーえーさーまーーーー!」
再開してそうそう、ミラは私の胸に飛び込んできた。
満面の笑顔で、犬歯をむき出しにして。
その様子は、一言でいえば――大型犬。
「あいたかったですわー! あいたかったですわー!」
ああ、いつものようにぶんぶんと揺れるしっぽが幻視される。
人懐っこい笑みと、全身から幸福を表現するこの感じ。
実に、ミラらしいミラである。
だてに、仲間内で正体を犬の獣人だと思われていたわけではない。
ミラは出会った当初、わかりやすく正体を隠していたのだが。
誰一人としてそれが吸血鬼だと思っていなかったのだ。
「落ち着いてミラ、人が見てるかもしれないからさ」
「きゅうん……」
まぁ、こんないかにも犬っぽい挙動をするのでさもありなん。
正体を明かした本人は、吸血鬼だとかけらも思われていなかったことにむくれていたけれど。
さすがに無理からぬことだと思う。
「それで、ミラ。今日はどんな要件で街に来たの?」
「あ、はいですわお姉さま。わたくし、野良の吸血鬼が出たということでそれを成敗しに来ましたの」
「吸血姫としてのお仕事ってわけだ」
「ですですですわ」
ホールでのあの存在感が嘘のように、二人きりになったときのミラは人懐っこい。
言動も、ちょっとだけ子供っぽくなって、二面性を感じるな。
「ただ、それなら少し不思議だね。私はこの街に来て結構になるけど、吸血鬼の噂なんて聞いていないよ」
「それはきっと、その吸血鬼が弱っているからですわね。隣町で吸活に勤しんでいたところを運命に導かれた冒険者に退治されて、逃げてきたわけですから」
「吸活て。いやわかるけども」
どうやら今回のミラは、吸血鬼の親玉として子分の後始末に来たらしい。
S級冒険者が出張る事件としては規模が小さいけれど、裏に何か潜んでる気配があるのかな。
「お姉さまは相変わらず、正体がバレるまでこの街にいるつもりなんですの?」
「まぁね。住み心地のいい街だから、できるだけ長くここにいたいと思ってるけど」
「……なるほど、そういうことでしたのね」
何が?
と、思うかもしれないが、実際私にはミラが何に気づいたのかはよくわからない。
なんだかミラは、私のことを深謀遠慮で動く策士かなにかと思っているらしい。
勘違い物の定番ってやつだね。
これ、結構な人間が私のことを誤解しているみたいなんだけど、訂正しても聞いてくれないというか。
結果として事実になってしまうから、訂正しても意味がないのだ。
世の勘違い系転生者は苦労してるんだなぁ、となってから身に染みて感じる次第である。
「一応言っておくけど、私はそこまで深く考えて行動してないからね」
「ええ、たとえ考えていなくともユウお姉さまの前で、狼藉を働けるものはおりませんものね」
「……そこは否定できないのが、少し悲しい」
でなければ、SSSSS級なんてバカみたいな称号与えられてないし。
これでもまだ、申告してない事件があるから抑えているほうだし。
へへへ。
「ともかく、お姉さまもお気をつけくださいませ、逃げ込んだ吸血鬼はともかく、その裏にいる”闇”はきっとお姉さまに手を伸ばしますわ」
「……多分、気を付けようがないともうけど、わかったよ」
私、そういう闇が魔の手を伸ばしていると、事前に気づけたことはないしね。
ともかく、久しぶりの再会はこうして結構手身近に終わった。
事件が解決どころか、始まってすらいないのだから当然である。
きちんと話をするのは、もろもろが終わったころになるだろうな。
〇
相変わらず変わっていないな、とミラスタシアは思う。
ユウと出会って数年、ミラスタシアの周辺はいろいろなことが変化した。
変わっていないのはユウくらいだ。
ユウの見た目は、十代半ばの少女に見える。
しかしその見た目が、成長した様子は一向にない。
一見すると人間にしか見えない少女なのだが、どうやらそうではないようだ。
もともと、些細なきっかけで人間をやめたり成長を止めるS級冒険者は多い。
ユウもその一人なのだと思えば、特に変なところはないのである。
ただ、大事なのはそんな見た目の変化のなさではない。
ユウのブレなさだ。
基本的にユウはものぐさで、面倒くさがりな少女である。
しかし、同時に一度「やる」と決めたことから逃げたことはない。
今回、彼女はあまりこちらの要件にかかわるつもりはないようだ。
だが同時に、「この街はよい街だからできるだけ長くいたい」とも言っていた。
すなわち、この街を守るためなら、彼女はなんでもするということだ。
きっと、本当の意味で「なんでも」してしまうのだろう。
ただ住みよい街だからという、それだけの理由で。
むかしからユウはそうだった。
ミラスタシアは、そんなかつての懐かしい思い出を、少しの間だけ思い返していた。
いろんなものがつよつよ美少女です。
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