第五航空戦隊記   作:ジャーマンポテトin納豆

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珊瑚海を超えて

 

 

 

翔鶴の修理と、補給、補充を終えて五航戦は再びラバウルに錨を降ろしていた。

 

「司令、我々の任務とはなんなのでしょう?」

 

「ソロモン諸島攻略の支援だ」

 

「ソロモン諸島?」

 

「正確にはガダルカナル島という島だ」

 

「聞いたことの無い島ですね……」

 

「まぁ、知らなくてもしょうがない島だ」

 

「余程小さい島なのでしょうか?」

 

「いいや、逆だ。かなり大きい。ここにニューカレドニア進出の為の前進拠点と飛行場を設置する。そのためにここを占領する」

 

「そんな遠くにまで行って、補給は保つのでしょうか?」

 

「中部と北太平洋の作戦が全部無くなったから、その分を全部回せる。補給線も護衛艦隊を丸ごと二個艦隊投入して維持する。それに戦略上どうしてもニューカレドニアは獲らないとならない」

 

「なるほど。では我々の久々の任務はガ島攻略支援と言うわけですね」

 

「そうだ」

 

ラバウルに錨を降ろし、陸軍の協力を得て歩兵二個連隊を基幹とし、そこに陸軍から野砲と榴弾砲を合計十九門と九七式中戦車二〇輛、海軍から重榴弾砲八門を加えた部隊を送り込むこととなった。

飛行場や諸々の設備や施設の設営隊は海軍から編成され、鹵獲建設機械や建設車両、機材を多数出し、ついでに一二〇〇名ほどの陸戦隊も送り込む。

 

陸軍部隊は日本軍の中では割と重装備、重火力となる編成だ。

元々歩兵と若干の野砲のみを送り込むに止まっていたのだが、流石に野砲や重榴弾砲が全く無いというのは如何なものか、となった。

そこで重巡の改装などで余剰となっていた十五.五cm砲を流用して榴弾砲に出来ないか、となったのである。

 

巡洋艦は二隻の建造が進められているが、主砲四基となる。

しかも二〇.五cm砲なので十五.五cm砲は搭載されない。大和型戦艦も搭載、あるいは搭載予定だった十五.五cm砲を全て降ろして十二.七cm連装高角砲を片舷十六基という、とりあえず載せられるだけ載せてしまえ、状態になった。

 

なので最上型重巡と大和型戦艦の十五.五cm砲は十八基分が丸々余っているのである。砲身数で行くと五十四本。

これを放置するのは勿体無いが、かと言って搭載する巡洋艦を建造する余裕は無い。

ならば陸戦用兵器に転用出来ないか、となったわけである。

 

結果生まれたのが十五.五cm重榴弾砲というわけである。

急造品ではあるが、わりかし纏まった性能がある。問題は七トンにもなる重量だが、これは輓馬牽引はどうやっても無理なので、牽引車を用意して機械牽引になるので解決した。

 

九.三mにもなる長砲身から撃ち出される砲弾は最大射程二万七〇〇〇mを超える。

基本的には陸戦用なので対地榴弾が主に配備され、それに加えて製造したは良いが搭載艦艇が無くなった事で余っていた十五.五cm砲用三式弾、対戦車用に二〇発ほどの徹甲弾が配備される。

 

砲弾運搬は、徹甲弾で約五十六kgにもなる砲弾を人力や輓馬で運ぶのは効率が悪いので砲弾運搬車を作って解決した。

積載量五tなので、榴弾が主力だからざっくり一〇〇発ほどを搭載出来る。

 

海軍から、米軍から鹵獲したり小松製作所で生産された建設車両を多数出して速やかに陣地構築、飛行場設営を行えるように手筈を整えている。

 

 

 

ガダルカナル島攻略部隊

 

第五航空戦隊

 

空母

翔鶴 瑞鶴 瑞鳳

 

戦艦

金剛 榛名

 

重巡

摩耶 鳥海

 

軽巡

天龍 龍田 由良

 

駆逐艦 

第六駆逐隊

暁 雷 電 響

第七駆逐隊

朧 曙 漣 潮

第八駆逐隊

朝潮 大潮 満潮 荒潮

第十五駆逐隊

黒潮 親潮 早潮 夏潮

第六一駆逐隊

秋月 照月 涼月 初月

 

潜水艦

十六隻

 

第五航空戦隊支援隊

 

特設水上機母艦

神川丸

搭載機 零式水偵 九機

 

タンカー四隻

輸送船四隻

駆逐艦四隻

 

 

輸送船団

 

第五護衛艦隊

第六護衛艦隊

 

第一〇一号輸送船 一万トン級

第一〇二号輸送船 一万トン級

第一〇三号輸送船 一万トン級

第一〇四号輸送船 一万トン級

第一〇五号輸送船 一万トン級

第一〇九号輸送船 一万トン級

第百十七号輸送船 一万トン級

第百十九号輸送船 一万トン級

 

第三福龍丸

金剛山丸

赤城丸

美保丸

安房丸

大天丸

柳河丸

玉鉾丸

国陽丸

 

タンカー 二隻

 

第101号型輸送艦 九隻

 

二十七隻

 

陸上部隊

陸軍

歩兵第二十八連隊 兵員二四〇〇名

歩兵第百二十四連隊 兵員二五〇〇名

独立工兵第二十六連隊 兵員一〇〇〇名

 

野砲 十三門

九十一式榴弾砲 六門

九七式中戦車 二〇輛

トラック 四十二輛

 

海軍

陸戦隊 一二〇〇名

牽引車 八輛

砲弾運搬車 一〇輛

トラック 二〇輛

 

十五.五cm重榴弾砲 八門

十二cm高射砲 三十二門

二十五mm三連装対空機銃 一〇基

二十五mm単装対空機銃 二十七基

 

建設車両

ブルドーザー 米国製五輛

       日本製五輛

 

ショベルカー 米国製四輛

       日本製三輛

 

ダンプトラック 米国製三輛

        日本製六輛

 

転圧車 米国製七輛

    日本製七輛

 

伐採機 米国製一〇基

    日本製一〇基

 

総人員 七六〇〇名

 

 

輸送船六隻に陸軍歩兵連隊がそれぞれ三隻づつ分乗する。

工兵連隊は二隻の輸送船に分乗し、甲板上と船倉に大発動艇を装備しているのでそれを用いてガ島への上陸支援を行い、上陸作戦完了後はそのまま飛行場設営と陣地設営に従事する。

 

他の輸送船には飛行場や陣地設営の為の資材と、当面の間の物資と航空機用燃料が積み込まれている。

 

ガダルカナル島はソロモン諸島全域とニューカレドニア、バヌアツへの補給拠点となるから最初から大部隊を送り込んで体制を整えておく。

砲弾、銃弾、燃料、食料、水から始まり製氷機や冷蔵庫、発電機などの機材類も多い。

それに加えて医薬品がとても多い。

ガダルカナル島に限らず、ニューギニアやソロモン諸島は伝染病や感染症の宝庫だ。

だから医薬品を大量に持ち込んでおかないと将兵が病で倒れ、戦えないなんてことになるからである。

 

第一〇一号型輸送艦は、早い話が戦車揚陸艦である。

開発自体は割と前々からあったが、建造自体は年に数隻止まりだった。しかし今回はまともな港湾設備の無い砂浜への上陸を、歩兵から戦車、高射砲、輜重兵まで全員がやらねばならない。

なので揚陸を容易たらしめる為に投入が決定された。

第一〇一号型輸送艦には陸軍の戦車が一〇輌づつ、二隻に歩兵小隊と共に搭載され、残る七隻に海軍の車両が搭載される。

 

 

 

「我々五航戦の目的は輸送船の護衛をしつつ、ガダルカナル島に上陸した味方設営隊と陸軍部隊が飛行場の設営と防御陣地の構築を終え、防衛体制が整うまで近海に留まって制空権と制海権を維持することだ」

 

「飛行場完成後、ラバウル経由でまず零戦五〇機が進出します。その後に一式陸攻、九六陸攻を合わせて四〇機が進出。後々航空部隊は増強されますが、第一陣で進出する航空機は以上です」

 

「索敵や哨戒はどこがやるのですか?」

 

「ツラギにはすでに九七式飛行艇を含めた索敵網があります。防空の攻撃はガ島が、索敵と哨戒はツラギが、というように役割を分担しています」

 

「飛行場完成まではざっくり二〜三週間と見ている。第一飛行場は一五〇〇m級滑走路を三本、七〇〇m級滑走路二本を備えた大規模飛行場として完成する予定だ。第二飛行場は一五〇〇m級滑走路一本、二〇〇〇m級滑走路一本、七〇〇m級滑走路二本を備える、こちらも大規模飛行場として完成する予定だ」

 

「我々はこれが完成し、陸軍部隊の防衛体制が整うまで留まります。問題は敵が出てくるかどうかです」

 

「少なくとも米空母は出て来ないでしょう。先の珊瑚海海戦で空母のみならず艦載機や搭乗員にも大打撃を負っています。修理と補充に暫く掛かります。出て来たとしても一隻が精々でしょう」

 

「問題は敵の戦艦です。既にノースカロライナ級戦艦を二隻、サウスダコタ級戦艦を二隻、南太平洋へ送り込んで来ているようです。対して我々は金剛、榛名に加えて大和があります。数は三対四となりますが艦の性能を見るに我が方の不利でしょう」

 

五航戦には大和が派遣され、行動を共にしていた。

というのも、他の戦艦は全部どこかしらの航空戦隊に配備されている上に、米海軍の新型戦艦に対抗するのは難しいと判断された。

そこで山本さんが大和をこっちに回すよう手配をしてくれたのである。

 

「大和一隻で見れば敵戦艦二隻ぐらいと同時に撃ち合えるが金剛と榛名が厳しい」

 

「早い段階で察知出来ないのでしょうか?」

 

「潜水艦隊や飛行艇、艦攻で索敵、哨戒網を広げる予定だが、夜間は航空機が使えない。潜水艦頼みになってしまうし、ソロモン諸島は島やら岩礁やらが大小様々多い。隠れながら接近されたら目視だろうが電探だろうが早期発見は難しいだろう」

 

参謀長達が色々と意見を言い合うが、敵水上打撃部隊が接近して来た場合どうすべきかを中々決定することが出来ない。

というより現有戦力で敵艦隊と夜戦はかなり難しい。倍の戦艦と殴り合いをやれるのは大和型戦艦ぐらいだ。

長門、陸奥でも米海軍の新型戦艦の相手は厳しいだろう。

長門や陸奥よりも艦齢が高い、防御力と攻撃力に劣る金剛と榛名では瞬く間に粉砕されてしまう。

 

これで四航戦辺りと一緒になっていれば良かったが、彼らは五航戦が本土にいる間、ニューギニア方面で動いていたので、入れ替わりで本土にて整備中だ。

だから我々五航戦と大和だけでなんとかするしかないのである。

 

現在の連合艦隊旗艦はつい最近就役したばかりの大和型戦艦二番艦『武蔵』となる。

大和がこっちに派遣されるので、交代で就任したわけである。武蔵は現在トラック諸島に錨を降ろしている。

 

 

 

ラバウルから輸送船団を伴いながら三日間。

道中で敵に襲われることも無く、無事にガダルカナル島に到着した。上陸地点はタサファロング岬となる。

 

タサファロング岬は急深海岸になっており、輸送船を海岸近くで投錨、揚陸作業が出来る場所だ。

元々上陸地点はタサファロング岬の他に西に約三〇km先にあるカミンボ湾があったが、タサファロング岬に決定された。

 

タサファロング岬は上陸後の前進などの行動が容易な場所だが、敵の襲撃を避けることが出来る場所が全く無い。

カミンボ湾は揚陸地点には適しているが、問題は陸路が酷いことだ。悪路曲折の上に河川が多数あって障害になる。しかも海岸に暴露していて行動は丸見え、運搬に適さない。

 

そこで上陸地点をタサファロング岬に決定し、その上陸中や設営中を我々五航戦で守る、となったのである。

 

 

結局敵艦隊は姿を現すことは無かった。

まず最初に第一〇一号型輸送艦が海岸に向かって前進し、接岸。工兵隊と建設車両、護衛する為の戦車、歩兵を一五〇名上陸させる。

上陸した工兵隊はジャングルを切り開き、揚陸地点を確実なものにする。

 

「状況は?」

 

「余り進んでませんね。ジャングルが想定していたよりも深いんです。だから切り開くのに思いの外時間が掛かってます」

 

「そうか……。どれぐらい日数が掛かるか?」

 

「この調子だと飛行場適地まで切り開くのに二週間は掛かりますね。そこから敵地を切り開いて、となると最低でも二ヶ月は掛かりますね」

 

「そんなにか」

 

「はい」

 

陸軍工兵隊の連絡官と会話はしながら、想定よりも時間がかなり掛かっているという状況をどうにかするべく頭を捻る。

 

「爆薬を仕掛けて、というのは?」

 

「持って来た量では足りません。吹き飛ばせたとしても大したものじゃありません。道を切り開いて飛行場適地もとなると、今ある爆薬の最低でも四倍は必要です」

 

うぅむ、と参謀達が唸る。

時間が掛かれば掛かるほど、敵艦隊の脅威は大きくなる。敵の空母も五航戦しかいない今、修理も完了して襲い掛かってくるかもしれない。

 

「それなら、艦砲射撃で吹き飛ばすというのは?」

 

「それなら可能でしょうが、大丈夫なんですか?」

 

「全部は無理だが、揚陸地点の周辺ぐらいなら砲弾もそこまで沢山必要にはならん」

 

「ありがとうございます。では、海岸より幾らか奥に行ったところを狙って撃ってもらえますか」

 

「了解した。上陸した部隊を一旦離れた場所に退避させてくれ。味方撃ちだけはやりたくない」

 

「了解しました」

 

陸軍の士官服を来た人間が、空母の艦橋にいるというのは中々違和感があるなぁ……。

 

「工兵隊に土壌を調べてもらえるように言ってくれ。硬いか柔らかいかぐらいでいい」

 

「了解しました」

 

二時間ほど掛けて土壌を調べたところ、連絡があった。

 

「連絡がありました。地面は軟地盤のようですね。これと砲撃になんの関係が?」

 

「地面が柔らかいと落下角が浅いと信管が起爆しない可能性がある。だから落下角を深く取って、真上から落とすようにするんだ」

 

「なるほど、そう言う理由でしたか」

 

何やらしげしげと頷いている。

 

「大和に通信を。揚陸地点周辺に砲撃。落下角を深くして弾着するように砲撃を加えて、工兵隊のジャングル開拓を手伝ってやるんだ」

 

「了解。……大和から返信。更地にして見せます、だそうです」

 

すぐに大和が砲撃を始めた。

流石は四十六cm砲だ、離れていてもかなりの音と閃光だ。

 

双眼鏡を覗くと上陸地点の二〇〇mほど先に綺麗に着弾していく。

落下角もしっかり深く取られているようで、砲弾は全て炸裂して周りのジャングルを吹き飛ばしていく。上手く時限信管を調整し、空中で炸裂出来るように調整する。

用いる砲弾は三式弾と零式通常弾の二種になる。弾種としては三式弾が焼夷榴散弾、零式通常弾が榴弾となる。

各砲弾を各門五発づつ、計九〇発を撃ち込んだ。

 

「大和乗組員の砲撃の腕は中々だな」

 

「あれが陸軍の榴弾砲なら、戦いは簡単に終わるんですがねぇ……」

 

「陸戦の榴弾砲はせいぜい十五cmぐらいが良いところだからな。まぁ、仮にアレが榴弾砲だったとしても移動やらが出来なくて詰むだろうがな」

 

「海軍さんの十五.五cm榴弾砲、あれ量産出来ないんですか?」

 

「こっちもこっちで資材がカツカツでな。倉庫の中の分がとりあえずの生産数だ。陸軍に回せるかどうかは分からないな」

 

無理では無いが、かと言って陸軍に回せるだけの生産数を用意出来ないのである。

やろうと思えば出来なくはないが、そんな資材があるなら建造に回せ、と軍令部が認めないだろう。

だからある分だけでやりくりするしかない。

 

予備砲身分を含めて約一二〇門ほどの生産となるが、その内のどれぐらいを陸軍に回せるかはかなり未知数としか言いようがない。

 

「そうですか。まぁ野戦砲は不足してますが、砲弾はもっと足りていないと言う話ですから、変に砲弾の種類が増えるよりはマシかもしれませんね」

 

陸軍の砲生産数は中々少ない。

元々は砲兵の近代化計画があったが計画を進めていた最中に日中戦争を始めてしまった。

お陰で資材も金も日中戦争に注ぎ込む事になり、砲兵の近代化計画は頓挫したのである。

 

 

大和による砲撃で上陸地点を粗方更地にすると、工兵隊と海軍設営隊が均し始めた。

二、三日もすると揚陸した物資集積所となる空き地を完成させ、すぐに島の内陸部に続く道を作り始めた。

その間に輸送船から大発動艇や小発動艇、輸送艦に物資を積み替えて揚陸作業を進める。

トラックがあるから陸地での物資の移動は比較的楽になる。

 

毎分のように、輸送船から大発動艇や小発動艇が海岸とを往復し、輸送船の横に付けた第一〇一号型輸送艦が輸送船からクレーンを使って物資を積み替えて満載すると海岸に向かっていく。

第一〇一号型輸送艦は大発動艇などに比べると積載量が桁違いに多く、一回で沢山運べる。

だから物資揚陸作業をすぐに終えるために態々大変な洋上での物資積み替え作業をしてでもやっている。

 

海岸の物資集積所は海から見ても空から見ても、丸分かりで敵からすれば格好の標的にしかならない。

木箱に梱包された爆薬、弾薬、砲弾、食糧、医薬品、ドラム缶に入れられた燃料や機械油や飲料用清水、蚊取り線香などなど様々な物資が山積みにされている。

一応、擬装網を被せてから海岸付近に広がる椰子林から葉やら幹やらを切り取って来て隠す努力はしているが、量が量なだけにあんまり意味は無い。

 

ある程度物資を揚陸したら、次に陸軍歩兵連隊の上陸である。

切り開くにはとにかく作業員が沢山必要で、その為に歩兵をも動員してやるわけだ。

上陸した歩兵達は小銃や機関銃を撃って敵と戦うのでは無く、スコップやツルハシ、斧やノコギリを使ってジャングルと戦う事になったのである。

 

一週間ほどで全ての物資、兵員の上陸を完了させると、彼らを運んできた輸送船と輸送艦は、二個護衛艦隊にガッチリ守られながらラバウルに向けて出発した。

その翌日、五航戦各艦は支援隊より物資の補充を受け、久々に開かれることになった艦内酒保には羊羹などを始めとした甘味類から酒、タバコなどの嗜好品が数多く並び、乗組員達を喜ばせた。

私は羊羹と金平糖、日本酒二升、ビール三瓶、タバコを十二箱購入した。

 

 

陸で働く者達にも時折それら嗜好品が振る舞われる。これは士気の維持向上に大いに役に立ち、ある報告書では、

 

《嗜好品の配給や販売があった翌日の作業効率は数倍にも及び作業の進み具合が見てすぐに分かるほど違っていた。中でも人気であるのは甘味であり、配給毎の甘味の増量を願いたい》

 

と記されていた。

 

支援隊は船倉を空にするとラバウルに戻り、二週間後に第五護衛艦隊に守られた輸送船一〇隻と共に再びガ島へ戻ると大和、金剛、榛名用の主砲弾を満載して戻って来た。

 

海岸線の開拓と、櫛形波止場、飛行場適地まで伸びる六本の二車線自動車道が上陸してから十一日で完成するといよいよ飛行場建設に取り掛かる事になった。

 

飛行場適地辺りにも、大和、金剛、榛名の三隻で対地砲撃訓練、対地砲撃支援訓練と称しながら各門三〇発、三隻合わせて七五〇発を撃ち込む事になった。

 

流石に綺麗さっぱり、とは行かなかったがジャングルはかなり吹き飛ばされていたから、作業はかなり楽になっただろう。

実際に飛行場適地を切り開くのに掛かった時間は建設車両を交代で稼働させながらでも一週間ほどでしか無かった。

 

切り開いてから先ず建てたのは兵舎である。

今までは野営状態で、蚊帳を張っただけのお世辞でも良いとは言えない野晒し状態だった。だから衛生面、健康面からして先ず最初に兵舎を建てる必要があったのである。

兵舎を建てたら次は飯である。

烹炊所を建てて温かい食事を食べられるようにして、兵達の腹を満たす。

同時並行で擬装網と椰子葉を被せただけの、野晒し状態にある物資を入れておく倉庫を建ててから、倉庫に物資を総出で運び込む。

次に車両倉庫を建てるとようやく滑走路と格納庫や航空機用掩体壕の建設に取り掛かれるのである。

 

ここまで持ってくるのに掛かった時間は日数にして二週間弱、十六日である。

 

 

 

一ヶ月と一週間経って、ようやく第一飛行場の第一、第二滑走路が完成した。

この時、ガダルカナル島には陸軍から

三個歩兵連隊

一個独立工兵連隊

野砲 二十五門

九十一式榴弾砲 十一門

高射砲 二十七門

高射機関砲 二十六基

九七式中戦車 二十五輛

トラック 八十三輛

 

に増員となっていた。

 

海軍も、

陸戦隊 一四〇〇名

十五.五cm重榴弾砲 十二門

十二cm高射砲 三十六門

二十五mm三連装対空機銃 二十三基

二十五mm単装対空機銃 三〇基

 

牽引車 十二輛

砲弾運搬車 十五輛

トラック 四〇輛

 

ブルドーザー 米国製五輛

       日本製五輛

 

ショベルカー 米国製四輛

       日本製三輛

 

ダンプトラック 米国製三輛

        日本製六輛

 

転圧車 米国製七輛

    日本製七輛

 

伐採機 米国製一〇基

    日本製一〇基

 

にまで増えていた。

人員は陸海軍合わせてざっくり九〇〇〇名である。

 

既に第一飛行場の周辺には防御陣地やトーチカが多数設置され、鉄条網や地雷原の構築も進んでいる。

より内陸の山岳地帯には海岸から飛行場までを射程に収めた榴弾砲が設置されている。野砲は射程の問題から飛行場近くになる。

電探も二基が稼働し始めているから奇襲を受ける可能性も下がった。

 

更に一週間経つと、主滑走路三本が完成し、予備滑走路の工事に着手。

この段階でラバウル、ブイン経由で進出した零戦六十三機、一式陸攻三十六機、陸軍の一式戦三十六機の合計百三十五機が揃っていた。

 

ここまでくると艦隊が居なくても問題無いのだが、第一飛行場が完全に完成するまで五航戦は留まることになった。

 

上陸から一ヶ月半。

ガダルカナル島第一飛行場が完成し、第二飛行場の建設が着工式をやってから、それを見届けて五航戦はラバウルへ戻った。

 

 

 

 

 

1942年九月。

ガダルカナル島には陸軍六個師団、航空機約三二〇機が集結していた。

陸海軍はSN作戦、正式名称『サンタクルーズ諸島攻略作戦』と『ニューへブリデイズ諸島攻略作戦』を実施している最中である。

 

この作戦を実施する為に陸軍はガダルカナル島に第十七軍総司令部を送り込み、麾下に八個師団を加えていた。

二個師団はラバウル防衛に、残る六個師団で二つの諸島攻略をやろうとしていた訳である。

 

1942年九月七日、一航戦と二航戦は輸送船団を護衛しながらまずサンタクルーズ諸島の攻略に取り掛かった。

この作戦は二週間ほどで終了し、一週間空けてニューへブリデイズ諸島攻略に取り掛かった。

ここで米機動部隊が姿を現し、南雲司令率いる一航戦と二航戦は米空母三隻との間にエスピリトゥサント島沖海戦が繰り広げられた。

 

史実におけるミッドウェー海戦か!?と焦ったが、結果としては日本側は空母赤城と蒼龍が大破するも米空母一隻を撃沈、二隻撃破となった。

どうやら史実ではあっちこっちに引っ張り回され、碌な休みも無い上でミッドウェーに挑んだりしていた事が敗因の一つだが、一航戦と二航戦は五航戦が前線に出ている間、内地で休養と補充、訓練に明け暮れていた。なので英気は十分。

それに加えて私が前に山本さんに暗号が漏れているかもしれない、と警告した事で対策をしていた事も影響している。

 

米機動部隊は結果を受けて撤退。

赤城と蒼龍は駆逐艦八隻を護衛として伴いトラックへ入港、応急修理を施した後に本土へ帰還した。

修理には二ヶ月を要するとし、暫く前線から離れる事になった。

その二隻の代わりに四航戦が派遣されて穴埋めとなった。

 

五航戦はと言うと、長期外洋航海の上に出撃をしていた為、整備と補給の為に一航戦と二航戦にソロモン諸島方面の役割を交代して日本本土へ帰還していた。

 

雑ではあるが艦隊毎に休養と整備をローテーションを組んでいる訳である。

一航戦と二航戦が作戦を終了したら次は五航戦が前に出る番となる。しかしニューカレドニアの攻略を五航戦だけでやるのは兵力の観点から厳しく、そこで五航戦に加えて四航戦、三航戦と大和、武蔵が加わる。

 

四航戦は言わずもがなだが、三航戦は龍驤を旗艦とする艦隊である。

正規空母が配備されていないから艦隊規模は他に比べて小さい。

 

空母

龍驤

零戦二十四機 艦攻一〇機 艦爆一〇機

 

重巡

青葉 衣笠

 

軽巡

多摩

 

駆逐艦

八隻

 

支援隊

特設水上機母艦 國川丸

タンカー 三隻

輸送船 三隻

駆逐艦 三隻

 

以上の編成となる。

龍驤は甲板延長と艦載機格納庫の延長工事、島型艦橋へ置き換え、対空兵装強化などの改修を経ている。

艦載機数は四十四機となる。

 

三個航空戦隊で構成された空母七隻、戦艦六隻、重巡六隻を主力とした大艦隊となる。

 

 

バヌアツの攻略が完了してから一週間後。

ガダルカナル島から陸軍部隊を乗せた輸送船団を護衛しながらニューカレドニアを目指している。

 

「敵は出てくるでしょうか?」

 

「ニューへブリデイズ諸島で空母が全部やられたから、少なくとも空母は出てこないだろう。ただ、戦艦が出てくるかどうかだな」

 

「いるなら距離的にニュージーランドか、フィジー、ブリスベン辺りでしょうか」

 

「いずれにしても、仕掛けてくるなら夜だな」

 

戦艦四隻による夜襲は現在米海軍が取れる唯一の手段だ。

これを逃せばニューカレドニアは我々の手に落ちるし、そうすればオーストラリアは孤立する。

ニューカレドニアからならニュージーランド辺りまで丸々潜水艦の行動範囲になるし、それより先の南極大陸方面まで出て行く事だって可能だ。

ようは完全にオーストラリアが孤立する形になる。

それをなんとしてでも米軍は阻止したいはずだし、そうなればなけなしでも戦力を投入せざるを得なくなる。

例え直掩戦闘機が無い状態の戦艦だけでも、だ。

或いはそれすら無視して戦力温存に全ての余力を注ぐか。

 

来年になればエセックス級航空母艦やインディペンデンス級航空母艦が次々に就役してくる。

それを待てば1944年中頃には最大で十二隻のエセックス級と九隻のインディペンデンス級を戦線に投入することが出来る。

 

我々と同数程度の空母を揃えられる。

そうなれば大手を振って奪還作戦に乗り出せる。

 

「出てくるかどうか、可能性は半々だな」

 

「何故です?」

 

「1944年まで待てば、我々と同数程度の新型空母を揃えられるからだ。それに新型戦艦も数隻建造中だと言うから、戦艦戦力もある程度揃えられる。そうなれば戦艦を護衛に付けた立派な高速空母機動部隊の出来上がりだな」

 

「英海軍は動くでしょうか?」

 

「分からんな。少なくとも現時点でインド洋方面では英海軍の動きは殆どない。投入しようと思えばイラストリアス級を最大六隻こちらに投入出来るが対独戦もあるから多くても五隻だな」

 

来る可能性はある。

だが彼らとてむざむざ制空権の無い海域に戦艦を突っ込んで、随伴艦含めて一万人を超える乗組員の命を危険に晒す真似はしないはずだ。

新たに就役したサウスダコタ級二隻を合わせて、戦艦六隻だ。

 

各艦に二〇〇〇名を超える乗組員がいるとして、戦艦だけで一万二〇〇〇名を軽く超える。

そこに巡洋艦、駆逐艦の乗組員となれば一個艦隊で数万人だ。それを制空権も何も無い、我々が待ち構える海域に、勝算なんて碌に無い戦場に突っ込ませるだろうか?

我々が敵艦隊を、文字通り殲滅すれば数万人の乗組員は良くて捕虜、最悪鮫の餌か溺死だ。

追い詰められていたとしてもやりはしないだろう。

 

 

 

ともかく、敵が来ない可能性の方が高いのは間違いないが、必ず来ないとも言い切れないし、水上艦艇はまだしも潜水艦の脅威は未だ高いままだ。

 

「我々の補給状況はどうなっている?」

 

「ニューカレドニア島上陸部隊への補給は滞り無く。問題は輸送船の数が足りなくてガ島に物資が山積みになり掛けている事です」

 

「どう言うことだ?」

 

「それが、補給物資の桁を間違えて送った馬鹿者がいたようでして。弾薬と食糧が大規模作戦二回分ほど一気に送られてきてしまったらしいのです。どうも大陸方面とガ島方面の書類が何かしらのタイミングで混ざったらしいです」

 

「そんなことがあるのか…」

 

いや、本来ならばあってはならないことなのだ。

この事態が起きていると言うことは大陸で、どこかの陸軍部隊が物資欠乏に喘いでいるやもしれないのである。

 

とは言えども、こう言った事態が起きるのも無理もない。

なんせ開戦以来、あちこちに物資を送り込み、送られてくる資源の量まで数えたりして、陸海軍の補給将校は我々とは比較にならないぐらい忙しいのである。

人手を増やそうにも、補給を司る業務に携わることが出来るのは専門教育を受け、専門知識を有する者だけだからだ。

 

海軍では主計科となるが、主計将校は専門の海軍経理学校で学ばねばなることが出来ないぐらいなのである。

これは陸軍でも同様であり、そう簡単に人手を増やせないのだ。

 

だから彼ら補給将校は毎日毎日莫大な量の物資を管理する為に休み無く書類と格闘している。

だから疲れが溜まっているのも分かるし、事が起きた原因は人手を増やさない、増やせない上層部にあるとも言えるから仕方が無いと言えよう。

 

「流石に砲弾薬を雨曝しにしてはおけませんから、砲弾薬庫に入れられるだけ入れて、入り切らなかった分はそこらから木材を切り出して即席倉庫を仕立てて保管しているようです」

 

「余分に送られてきた砲弾薬は送り返すのか?」

 

「いえ、どうせなら次の作戦用に備蓄しておけ、とのことです。なんなら新しく弾火薬庫を建設する為の資材が送られて来ました」

 

補給、兵站とは一言で言ってもただ物資を送れば良いという訳では無い。

適切な物資を適切な場所、部隊に送ることが出来なければ意味が無い。

 

そして最大の要点は『送り過ぎてはならない』この一点である。

勿論物資が届かねばならないが、輸送能力を超える物資を考えも無しに送り込んでしまうと、必ず何処かで詰まってしまうのである。

早い話が、運ぶ者が居なければ、荷物を捌き送り届けられねば意味は無い。どれだけ大量の物資を用意したとしても意味が無いのである。

 

極端な話、物事は単純に考えればいい。要は失敗しなければ良いのだ。

だから補給線が脅かされたら、先ず何はともあれ食糧と医薬品だけは必ず送り込めばいい。砲弾薬は二の次、三の次だ。

兵站は組織の力、軍隊に於いては国力そのものを反映しているのだから、兵達を死なせなければそれでいいのである。

 

 

さて兵站では無く作戦、所謂実働の方に話を戻そう。

ニューカレドニア島攻略作戦には陸軍三個師団が主力となり、それに加えて後詰に三個連隊が加わる。

この作戦を支える為に五航戦、三航戦、四航戦、大和と武蔵が加わり支援する。

 

航空機の中継拠点であるから、少なくない敵機が待ち構えている可能性が高い。

とは言っても事前にモレスビーの方から豪州本土への爆撃を強化して陽動作戦を実施している。この陽動作戦には戦闘機七〇機、陸攻八〇機を投入する大規模なものだ。

目標はポート・ダーウィンを始めとした豪州北部全域になる。基本的には零戦の護衛が可能な範囲に限定しているが、それでもかなりの距離を稼げるし、作戦に投入されている一式陸攻は最高高度一万mを飛ぶことも出来る。

実用としては八〇〇〇mとかが限界だが、それでも現時点でこの高度まですぐに迎撃に上がって来ることが出来る航空機は存在しない。なので一式陸攻には高度八〇〇〇mで飛ばせ、零戦は四〇〇〇~五〇〇〇mで護衛に就かせるという形を取る。

 

この陽動作戦のお陰でどうやら敵は我々の豪州上陸作戦が本格的に動き出していると判断したらしく、かなりの数の航空機を豪州本土に送り込んで防備を固めている。そのためニューカレドニアからも幾らかの航空機が移動しているのを確認している。

それでもニューカレドニアに存在する敵機は多く見積もっても三〇〇機ほどだろう。

 

我々の航空兵力は三個航空戦隊で三八六機。

これに加えて各空母は露天繋止で各艦十二機づつの零戦を追加で搭載している。なので総機数四六六機になる。

これで零戦の機数は二七二機にまで増やすことが出来た。これだけ数を揃えておけば制空権の奪取は今までよりもずっと楽になる。

 

第五航空戦隊

翔鶴 搭載機数九十四機

零戦四十四機 艦攻二十八機 艦爆二十二機

 

瑞鶴 搭載機数九十四機

零戦四十四機 艦攻二十八機 艦爆二十二機

 

瑞鳳 搭載機数四十四機

零戦四〇機 艦攻四機(対潜哨戒用)

 

第四航空戦隊

隼鷹 搭載機数六十七機

零戦二〇機 艦攻二〇機 艦爆十五機

 

飛鷹 搭載機数六十七機

零戦二〇機 艦攻二〇機 艦爆十五機

 

祥鳳 搭載機数四十四機

零戦四〇機 艦攻四機(対潜哨戒用)

 

第三航空戦隊

龍驤 搭載機数五十六機

零戦三十六機 艦攻一〇機 艦爆一〇機

 

 

零戦二三二機 艦攻一一四機 艦爆八十四機

合計四六六機

 

以上が我々の総艦載機数となる。

零戦が半数以上を占めるが、その方が戦闘機のやりくりで苦労することが無い。艦攻と艦爆は敵の攻撃にしか使えないが、零戦は艦隊直掩、攻撃隊の護衛、制空権奪取と兎に角役割が多い。だからその役割の多い戦闘機の数を多くするのは一番簡単な勝率を向上させる方法なのである。

 

ニューカレドニアの敵機の数を考えれば二三二機の零戦は敵戦闘機を抑えて島上空から周辺に掛けての制空権を奪取するには必要不可欠だ。

 

 

「司令、もうそろそろニューカレドニア島沖二〇〇海里です」

 

「制空隊の準備は整っているか?」

 

「いつでも行けます」

 

「よし。では各艦艦首風上へ。制空隊発艦始め」

 

まず制空権を奪う為に零戦のみで編成された制空隊を発艦させていく。

 

制空隊

翔鶴 零戦二〇機 

 

瑞鶴 零戦二〇機

 

瑞鳳 零戦二〇機

 

隼鷹 零戦十二機

 

飛鷹 零戦十二機

 

祥鳳 零戦二〇機

 

龍驤 零戦二〇機

 

計 一二四機

 

 

 

第一波攻撃隊

 

翔鶴 

零戦八機 艦攻十二機 艦爆十六機

 

瑞鶴

零戦八機 艦攻十二機 艦爆十六機

 

瑞鳳

零戦四機

 

隼鷹

零戦四機 艦攻八機 艦爆一〇機

 

飛鷹 

零戦四機 艦攻八機 艦爆一〇機

 

祥鳳

零戦四機

 

龍驤

零戦四機 艦攻五機 艦爆五機

 

 

零戦三十六機 艦攻三十七機 艦爆六十一機

 

計一三四機

 

第二波攻撃隊

 

翔鶴

零戦八機 艦攻十六機 艦爆六機

 

翔鶴

零戦八機 艦攻十六機 艦爆六機

 

瑞鳳

零戦四機

 

隼鷹

零戦四機 艦攻十二機 艦爆五機

 

飛鷹

零戦四機 艦攻十二機 艦爆五機

 

祥鳳

四機

 

龍驤

零戦四機 艦攻五機 艦爆五機

 

零戦三十二機 艦攻六十一機 艦爆二十二機

 

計一一五機

 

 

艦隊直掩

 

翔鶴

零戦八機

 

瑞鶴

零戦八機

 

瑞鳳

零戦十二機

 

祥鳳

零戦十二機

 

龍驤

零戦八機

 

 

計四十八機

 

 

 

艦載されている零戦は全て三二型に換装されている。

二一型からの改良点は以下のようになる。

 

・翼端の切り落としと成形

・エンジン出力の向上

・それに伴う速度性能向上

・横転性能の向上

・主翼外板の厚みを〇.五mmにして急降下耐性の向上

・二〇mm機銃の携行弾数を一二〇発に増弾する

・新型の九九式二号二〇mm機銃の一部搭載

・一部機体には米軍重爆撃機への打撃力工場の為、三〇mm機関砲搭載型も存在する

 

これらが挙げられる。

改良によって空戦性能が良くなり、それに加えて二〇mm機銃の携行弾数も二一型の倍にまで増えているので継戦能力も高くなっている。

 

今のところ計画としてあるのは、来年から配備が進められる予定の新型艦戦の繋ぎや基地航空隊、後方部隊用に二〇mm機銃の携行弾数を二〇〇~二五〇発に増やすという計画がある。

門数自体を二門から四門に増やす計画もあり、現在本土で試作が進められている。

 

とは言え改良によるデメリットが全く無いということではない。

問題として燃料タンクの容量を減らしたことで航続距離と後続時間が低下している。と言っても海軍全体の基本方針として長距離での飛行は搭乗員の負担が大きく、その後の戦闘に大きな影響を及ぼすということで原則行わないとされている。なので戦術面での影響は少ない。

本土では新型艦攻と新型艦爆の開発も進められていて、同じく今年の終わり頃には量産体制が整って配備が進められる。

 

今回は対艦攻撃が主目的では無く、敵飛行場や敵対空砲、対空機銃、防御陣地などの対地攻撃が主になる。なので攻撃隊の武装は、艦攻が陸用八〇番、艦爆が陸用二五番を装備する。

主に艦攻は飛行場の滑走路や格納庫などの大きな目標を水平爆撃で叩き、艦爆は急降下爆撃で精密攻撃を行う。

 

 

 

制空隊の発艦が済んだ後、すぐに攻撃隊を飛行甲板に並べて発艦させていく。

その手際は見事なもので第一波攻撃隊の一機目が発艦してから最後の機が発艦していくまで十四分を切っている。まぁ、山口さん辺りはこれでも満足しないかもしれないだろうけれども。鬼多聞の異名は伊達じゃ無いのである。

 

なんにせよ、ニューカレドニアの敵飛行場を全て破壊してしまえば敵の反撃能力は無くなる。

偵察の結果ではニューカレドニア島には三箇所の飛行場が存在する。規模はそこそこで、その内の一箇所はどうやら我々のニューギニアやソロモン諸島進出を受けて急遽建設したものが一箇所と言う感じらしい。

 

各飛行場に八〇~一〇〇機ほどの敵機が駐機しているらしい。

豪州向けのB‐17やB‐24を始めとした陸軍機、F4Fと言った海軍機や海兵隊機が一時的に駐機して、そこから豪州へ飛んで行くという形であるらしい。

それら全てを合わせて最大三〇〇機程度と見積もられるわけである。

 

 

「第二波攻撃隊の発艦も完了しました」

 

「うむ」

 

「制空隊は艦攻や艦爆がいないので、速度を落とす必要が無いので一時間ほど飛行し、ニューカレドニア島に到達する予定です。制空隊に遅れること凡そ三〇分ほどで第一波攻撃隊、その三〇分後に第二波攻撃隊が攻撃を開始する予定となります」

 

「敵艦隊は?」

 

「船団護衛の為の駆逐艦などが若干存在するようですが、こちらの脅威となりそうな敵艦は存在しません」

 

「ふむ。と言う事は米海軍は温存策を採っているということだな」

 

「はい。司令が仰られた通り、米海軍は来年に戦力が整うまで戦力を温存するのでしょう。となれば来年中頃まで我々は妨害らしい妨害を受けずに軍事行動を進めることが出来ます」

 

参謀が言うように、実際米海軍の主力艦は出てこないだろう。

空母は全て損傷中だし、旧式戦艦群は軒並み真珠湾にその巨体を横たえている。新型の戦艦は六隻と数は揃っているが航空支援も何も無い中での作戦は一方的にやられるだけだ。

 

それは真珠湾での米戦艦やマレー半島沖でのレパルスとプリンス・オブ・ウェールズの結果が物語っている。

ついでに言っておくと史実での日本海軍の戦争末期の作戦行動の大半がそのようなものだった。米海軍は馬鹿の集まりではない。それぐらいは分かっているだろう。

 

 

 

制空隊は予定通り一時間ほど飛行して、ニューカレドニア島の四〇海里ほど手前で会敵、迎撃を受けたようだった。

敵機の数は殆ど全力迎撃に近い一〇〇機ぐらいらしく、数は零戦の方が多いらしい。

 

敵戦闘機を制空隊が抑えている間、攻撃隊はその戦闘空域を迂回してニューカレドニア島攻撃を開始。

第一波、第二波攻撃隊はそれぞれ三〇分ほど掛けて飛行場と対空砲や対空機関砲を潰して回り、三箇所の飛行場を全て無力化した。

港には複数の船舶が存在しているらしく、攻撃隊の護衛に就いた零戦が機銃掃射を仕掛けて脱出しないように牽制を加えたようである。

 

「摩耶、鳥海、高雄、愛宕の四隻に駆逐艦八隻を付けて港湾を封鎖させよう。敵船舶が脱出しないようにな」

 

「了解しました。ではそのように連絡します」

 

「上空直掩に零戦を一個中隊ほど付けてやってくれ。飛行場を潰したと言っても万が一があるからな」

 

「はっ」

 

十二隻の分艦隊はヌーメア港を封鎖し、敵船舶の脱出を阻止。

その際に敵駆逐艦五隻との撃ち合いが発生したが零戦からの機銃掃射を受けつつ、しかも重巡が四隻もいるこちらとの撃ち合いは圧倒的に相手の不利だった。

ものの四〇分ほどで制圧すると敵駆逐艦四隻撃沈という戦果が加わった。

 

 

港湾封鎖をする分艦隊と我々は目的は変わらない。

飛行場を無力化し、船団を前進させる。

 

上陸地点はハーコート湾、ペ・ド・プロニー、ウワンヌの三箇所になる。

各地点に一個師団づつを上陸させ、各師団に一個連隊づつの後詰めが付く。

 

各地点には少なく無い防御陣地があるが、それを艦砲射撃で粉砕する。

ヌーメア港封鎖は引き続き重巡と駆逐艦で行い、他二箇所の砲撃が済んだら合流する。

陸上部隊の支援は艦載機が担当し、再び空母の護衛に戻る。

 

各師団は戦艦と艦載機の支援の下で大発動艇に分乗し、海岸を目指して進んでいく。

敵の銃火や砲火が火を吹いた瞬間、上空の零戦や九九艦爆が爆弾や機銃掃射を食らわせて沈黙させる。

 

海岸線の確保はそう手間取らず、海岸堡を得た。

物資と海軍から提供された十五.五cm榴弾砲を島の東西に五門づつ、それと戦車の揚陸を済ませて体勢を整えると内陸部へ進軍を開始。敵の抵抗は少なく散発的だ。どうやら島中央の山岳地帯に立て篭もる腹積りらしい。

 

戦艦六隻は敵が立て篭もる山岳部に向けて砲弾を叩き込む。

今回六隻には一式徹甲弾と三式弾、零式弾の三種類を積んできている。対地攻撃が主になると判断し、三式弾と零式弾を多めにしてあるから対地火力はかなり高くなる。

 

我々の真隣で砲撃をするものだから、大和や武蔵の砲撃音が我々を思いっきり揺さぶる。

一応、公的にはあの二隻の性能は機密だが、長門や陸奥の二隻の砲炎や砲煙、砲声と比べて明らかに違う。

皆、長門や陸奥よりも大きい主砲を積んでいると薄々気が付いているだろう。

皆には喋らないように徹底させているが長くはかくしておけないだろうな。

 

 

上陸から一週間でヌーメア全域を制圧。

二週間で敵が立て篭もる山岳地帯を除いてニューカレドニア島を制圧した。立て篭もる敵に対しては戦艦や重巡、陸軍の重砲の砲弾を叩き込みながら、包囲しつつ兵糧攻めをする。

どれぐらい掛かるか分からないが、無理に攻めて犠牲を増やすことは無い。

 

飛行場を復旧し、使用出来るようになるまで二週間だった。

ヌーメア港に停泊していた船舶、積荷は全て鹵獲となり、ついでに倉庫の中や燃料タンクに入っていた高射機関砲や高品質燃料も鹵獲出来た。

どうやらよほど慌てて逃げたのか、文書の破棄はされていたが物品の廃棄は全くされていなかった。

 

鹵獲品目は多岐に渡り、M1903小銃や新型半自動小銃M1ガーランド、M1919機関銃、M2重機関銃、手榴弾と言った歩兵用火器に始まり多数の迫撃砲や榴弾砲とそれらの砲弾薬に大量の高性能爆薬。

M4中戦車、M3軽戦車、M5軽戦車などの戦車や装甲車も多数。

他にも四〇mm高射機関砲や九〇mm高射砲、二〇mm対空機銃、対空電探などの対空火器も多数鹵獲した。

これら兵器類は一度本土にサンプルとして小数が送られて、技術研究用にされる。

 

取り急ぎ、有用であるとして本土で生産することになったのは四〇mm高射機関砲と二〇mm対空機銃だ。

陸軍では九〇mm高射砲が一式丸々、要地防空用としてコピー生産されるらしい。

 

海軍では九〇mm高射砲を除く対空装備がコピー生産されると決定された。艦艇用や飛行場防空の為に生産されるようで、搭載艦艇は多岐に渡る。

 

他にも食糧、医薬品、燃料などなど大量に鹵獲されたし、医薬品の中にはキニーネ剤に代わる抗マラリア薬が含まれていた。

これはすぐさま本土に送られて成分分析、組成式分析などに掛けられて日本でも量産体勢を整えることになった。

 

更に陣地構築のために地質学者や鉱山技師を送ったところ、どうやらニッケルとコバルトが大量に埋蔵されている可能性が非常に高いらしい。

これを採掘出来れば資源問題の一つが解決すると言っていたほどだ。ただ採掘設備一式を持ち込まねばならないので現実的には中々難しいかもしれない。

 

何はともあれ山岳地帯で敵が未だに抵抗を続けてはいるが兵糧攻めをされている中でそう何週間も保つとは思えない。

陸海空全てから砲弾や爆弾を降らされるのだ、ちゃんとした防御陣地があるなら別だが、陸と空からの偵察では大した防御陣地は無いとされている。実際、毎晩投降する米兵が後を絶たない。

捕虜の話によれば持ち込めた食糧、武器、弾薬は大した量ではないらしい。食事も一日一食、弾薬はそれぞれ携行した分だけだそうだ。

 

抵抗力は少ないが、無理して攻撃を仕掛けなくても食糧水がジワジワと無くなるし、そうなれば勝手に干上がり続ける。

そうすれば投降する兵も増えるだろうしそのうち組織的抵抗力を失う。そうなれば降伏も時間の問題だ。

 

陸海軍の共同方針として、積極的な攻撃は行わずに包囲をして爆撃と砲撃で締め上げると決まった。まぁ無理しないでゆっくり行こうという訳である。

 

 

 

暫くして陸海軍の基地航空隊が次々にニューカレドニアに到着すると艦隊はラバウルを経由して本土へ戻った。

三ヶ月にも渡る長期航海だから念入りに整備をしなければならない。

 

長大な補給線は護衛艦隊により守られる。

補給線が伸びるにつれ、護衛兵力が足りなくなるが着々と増強されつつある。

既に一個護衛艦隊の規模は護衛空母一隻、軽巡二隻、駆逐艦十二隻、海防艦八隻に増強されている。

六個護衛艦隊だが、護衛空母を二隻にする案もあるがどうなるやら分からない。

 

何にしても、来年の二月から三月頃までの数ヶ月は兵站を整える期間となる。

一航戦と二航戦にバトンタッチするから我々五航戦と四航戦、三航戦は暫く休めそうだった。

 

 

 

 






第三航空戦隊
空母
龍驤
零戦二十四機 艦攻一〇機 艦爆一〇機

重巡
青葉 衣笠

軽巡
多摩

駆逐艦
八隻

支援隊
特設水上機母艦 國川丸
タンカー 三隻
輸送船 三隻
駆逐艦 三隻
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