第五航空戦隊記   作:ジャーマンポテトin納豆

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遠き西海岸へ

 

 

豪州作戦終了後、我々は陸軍部隊、陸戦隊や降伏したブリスベン守備隊、シドニー守備隊から接収した各種米英軍装備類を輸送船に積み込む作業に追われていた。

 

なんせシドニーだけで十三万を超える大軍である、完全撤収と言ってもそう簡単には行かない。

それに山本さんから内密に、と言うことで聞いた話だが、豪州にはどうやら陸軍中野学校出身者を現地諜報員として残して情報収集を行うらしい。

豪州が条約を破棄して、と言うことがあれば事前に察知し叩く、という事だろう。

 

なんにしても、撤収する陸兵達と大量の鹵獲兵器を一か月で豪州から完全撤収させなければならない為、艦隊も大忙しである。

ブリスベン守備隊、シドニー守備隊は降伏時に多数の戦車や野砲、対戦車砲を有していた。

それに加えて解囲の為に攻撃しにきた米豪軍は道中で爆撃を食らい、多数の装備を放棄しながら撤退した。

それらを丸々鹵獲しており現時点で、

 

M1ガーランド半自動小銃 五万四三〇〇丁

M1カービン自動小銃 六二〇〇丁

トンプソン機関短銃 三二〇〇丁

M1918BAR自動小銃 三四〇〇丁

M1903狙撃銃 二四〇〇丁

M1917機関銃 三二〇〇丁

M1919軽機関銃 五二〇〇丁

M2重機関銃 三五〇〇丁

M1911拳銃 二万一〇〇〇丁

Mk2手榴弾 41万個

M7擲弾発射器 一三〇〇丁

対戦車ロケット弾発射器 二二〇〇門

M1火炎放射器 四三〇丁

M2火炎放射器 二六〇丁

爆薬

 

六〇mm迫撃砲 三四〇〇門

八一mm迫撃砲 三一〇〇門

一〇七mm迫撃砲 六九〇門

計七二〇〇門

 

三七mm対戦車砲 二九〇門

五七mm対戦車砲 三二〇門

三インチ対戦車砲 一三〇門

計七四〇門

 

M1897 75mm野砲 五二〇門

155mmカノン砲 一二〇門

M1 4.5インチカノン砲 二二〇門

計八六〇門

 

M1 七五mm榴弾砲 二六〇門

M2 一〇五mm榴弾砲 二四〇門

M3 一〇五mm榴弾砲 二三〇門

M1918 一五五mm榴弾砲 四二〇門

M1 一五五mm榴弾砲 三四〇門

M1/2 二〇三mm榴弾砲 五〇門

M101 一〇五mm榴弾砲 三五〇門

計一九〇〇門

 

九〇mm高射砲 八七〇門

四〇mm高射機関砲 三三〇門

 

M3軽戦車 二二〇輛

M5軽戦車 一六〇輛

M4中戦車 四二〇輛

計八〇〇輛

 

装甲車両 九七〇輛

トラック 一三〇〇輛

ジープ 四二〇輛

 

これら陸上兵器だけでも、陸軍の歩兵師団が丸々三つか四つは編成出来てしまう数だ。

よくもまぁ、これだけの数を送り込んだものだ、とアメリカの物量に呆れるしかない。

 

これに加えて大量の弾火薬や砲弾、燃料、医薬品、部品等々を丸々鹵獲したわけだ。鹵獲したのは良いがその管理が大変だと悲鳴が上がっている。

とりあえず食料や水は幾ら缶詰とは言えども保存、管理が面倒なのでシドニー、ブリスベン市民や各部隊に配給して消費させる。メニューはパンや肉類が豊富だから食うに困る事は無い。

食糧品の一部や水濾過材、濾過器は研究資料として本土に持ち帰られた。

 

しかしどうやらこの運び込まれた兵器や武器弾薬、燃料医薬品、食料などは次期反攻作戦の為の備蓄であったり、あちこちに配備する為のものであったらしい。

鹵獲した文書によるとソロモン諸島攻略作戦の為のものであるらしく、習熟訓練を繰り上げて配備したエセックス級航空母艦二隻、同じく習熟訓練を繰り上げて配備したインディペンデンス級航空母艦二隻、護衛空母三隻でガダルカナル島攻略を1943年末にやる予定であったらしく、豪軍もこれに参加する予定だったようだ。その出鼻を挫いた意味は大きい。

多分、反攻を許していたらそのままずるずると後退を重ねることになっていた。

 

 

P-51戦闘機 十二機

P-47戦闘機 二十三機

P-40戦闘機 三十一機

P-38戦闘機 十九機

P-39戦闘機 十四機

B-17爆撃機 三十七機

B-24爆撃機 三十九機

B-25爆撃機 二十五機

A-20攻撃機 二十一機

スピットファイア 七機

ホーカーハリケーン 六機

ブレニム 四機

ハリファックス 三機

モスキート 六機

ランカスター 二機

計二四九機

 

P-51戦闘機はどうやら一個中隊が派遣されるに留まっていたらしいが、鹵獲した書類によれば少なくとも更に五個中隊七十二機を豪州に派遣する予定だったらしい。

鹵獲した十二機は迎撃に出ることもなく、一度の実戦も経験することなく、完璧な状態で鹵獲されたのである。

P-47も同様で、更なる増援を送り込む予定だったらしいが我々が豪州に来る方が早かったらしい、配備が間に合わなかったようだ。

 

B-17、B-24、B-25は反撃戦力としてあったらしく、実際に我々に対して爆撃を行なっている。

英軍機の数がかなり少ないがどうやら派遣する余裕か、或いは時間が無かったようである。

数少ない英軍機も我々の爆撃機で破壊されたようで、破壊された機体は流石に持って帰る手間を考えて、再利用可能な部品などを回収してからスクラップとして輸送船に積み込だ。

 

 

数も凄まじく、我々の生産能力では数年掛けても用意出来ない物量だ。

鹵獲した兵器の予備部品やそれらの弾薬、砲弾、燃料も凄まじい量が鹵獲された。

燃料だけでも高品質航空燃料が丸々10万t分が手に入ったのだから我々は諸手を挙げて喜ぶ他無い。

しかしそれだけの量を輸送するだけでも凄まじい労力を必要とする。だから手隙の輸送船と護衛艦隊を総動員してようやくなんとかなっている状態だ。

 

豪州は連合国から脱落したが、米海軍潜水艦は当たり前のように活動しているから輸送船団の道中の安全を確保しなければならない。

その為に我々五航戦だけでなく、一航戦や二航戦、三航戦までも駆り出してやっているのだ。

 

「鹵獲兵器に、B-17とB-24が多数、他にもいろんな航空機、それに新型戦闘機が三十五機か」

 

「はい。B-17とB-24の研究分はすでに本土の方に以前鹵獲したものがあるので、余っている分を合わせて爆撃隊を新しく編成するとか。ついでに言うと陸軍と取り分で揉めています」

 

「はぁ……」

 

思わずため息を付いてしまった。

んなもん仲良く半分こでいいじゃないか。鹵獲したB-17とB-24はこれまでの分を合わせてそれぞれ五〇機以上あるんだぞ、そんな喧嘩するほどのことじゃないだろうに。

相変わらずの陸海軍に頭を抱えながら、豪州撤収作業を終わらせる。

丸々一ヶ月掛けて全ての部隊、全ての機材、全ての砲弾薬、全ての資材、我々が持ち込んだものは全て撤収し、更に鹵獲した武器や兵器もしっかり持って帰ったのであった。

 

新型戦闘機は、海軍教導航空隊、陸軍明野飛行学校教導隊として新たに編成され、日本各地や各地の飛行場を飛んで回り、敵機の性能を掴み、どのように戦えば良いのかという研究に利用されることになった。

それ以外の戦闘機は新しい航空隊として編制され、各地での戦闘に赴くことになる。

 

 

 

ーーーーーーーー

1943年十二月。

我々五航戦はというと長期作戦に参加した為、四航戦をラバウルに残して全ての航空戦隊は一度本土に戻って休養と整備、補充を受けていた。

 

豪州撤収作業中に修理を完了した隼鷹と飛鷹は戦列に復帰していた。

幸い機関部などに損傷は到達しておらず、飛行甲板と格納庫の修理をするだけで修理は事足りるぐらいの損傷だった。

 

南太平洋に睨みを効かせる存在が四航戦だけというのは心許無いが、一月まで我々は一旦休養となるからそれまではラバウル航空隊と連携してもらう他に無い。

ラバウルには陸海軍合わせて二〇〇機ほどの航空機があり、その内一四〇機が戦闘機、六〇機が爆撃機や陸攻となる。

四航戦の艦載機を合わせればざっくり三八〇機となる。これを相手取るには少なくとも空母五隻は必要だから心配は要らないだろう。

 

ニューカレドニア島には五〇〇機ほどの航空機を陸海軍で終結させており、此方も簡単に手出しは出来ない。

あまり心配はしなくても良いとは思うが念の為早めに戦線に航空戦隊を復帰させたいところであるが、乗組員、搭乗員の疲労を考えるとそう易々と戦線に出ることは難しい。

 

 

 

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本土で休養と補充、整備を受けながら母艦航空隊や乗組員達は訓練に勤しんでいる。

もう暫くすれば六、七航戦が実戦配備に付けるようになるからそうなれば戦力的に余裕が出て、我々が休養をしていても前線には常に三個航空戦隊を出せる事になる。

六航戦と七航戦は来年、1944年一月半ばに半年間の習熟訓練を終える予定だ。あと一ヶ月である。

 

それと同時に伊吹型航空母艦も続々と就役しつつある。

一番艦『伊吹』が習熟訓練中、二番艦『摩周』が艤装工事中で一ヶ月後に就役し習熟訓練に入る。三番艦『室根』は横須賀海軍工廠、四番艦『塩見』は呉海軍工廠、五番艦『生駒』は佐世保海軍工廠でそれぞれ建造中だ。

 

民間造船所では三菱重工長崎造船所と川崎重工の神戸造船所にて翔鶴型航空母艦がそれぞれ一隻づつが建造中だ。

これ以外だと横須賀と呉の海軍工廠で大鳳型航空母艦の三番艦と四番艦の建造が始められたところである。

 

この四隻の就役は早くて1945年十一月〜十二月、実戦投入が可能になるのは少なくとも1946年二月〜三月となる。

もしかすると戦争自体に間に合わない可能性もあるが、終戦となった場合は四隻を就役させ戦力として配備し、艦齢的に二〇年を超える老朽艦となる赤城、加賀、艦体が小さく将来予想される新型高性能機運用に難がある飛龍、蒼龍の4隻を退役させる案が持ち上がっている。

まぁ赤城が1945年時点で艦齢二〇歳、加賀に至っては二十四年になるのだから退役の話が持ち上がるのは当然である。

 

あちこちに古さが目立ち、高性能化が進む艦載機運用も改装して無理矢理どうにかしている感は否めない。だから四隻を退役させ、より新しく近代的な空母に置き換えていくのである。

それに比べて翔鶴型、大鳳型の二艦種ならば新型機の運用も十分に可能だし、将来的に実用化されるジェット機の運用も可能だろう。まぁ、その時はその時で新型空母に置き換えられていくのだろうが。

 

アメリカとの戦争がいつまで続くか分からないが、早く終わらせるに越した事は無い訳だ。

あとはどれだけ外交交渉で成功を収められるか、に掛かってくるがそれは政治の領分だ。

軍隊が政治に関わっても良いことなど何も無いのだからな。

 

 

 

 

 

 

オーストラリアとの貿易も再開され、ボーキサイトや鉄鉱石、銅、金、鉛、亜鉛、ニッケル、マンガン、タングステンなど様々な鉱物資源が大量に手に入るようになった事で戦略規模で我々の方針に良い方向に影響があった。とくに影響があったのは陸軍で、海軍に資源の配分を取られがちであったがそれが解決した。

停滞していた近代化計画が再び進められ、特に砲兵戦力と軍全体の機械化が現実的になり始めた。

 

日本本土に備蓄される物資量も格段に増え、輸入が途絶えた場合に備えている。上手く行けば半年以内に、一年分ぐらいの備蓄は望めるだろう。

他にも航空機、火砲、戦車、トラック、装甲車の生産数が増えたり伸びたり、中々良い方に進んでいるし国内の不足していた資源事情も解決しつつある。

 

海軍に影響があったのは、正面戦力の拡充ではなく後方戦力である護衛空母や松型駆逐艦が新規に建造が認可され、輸送船やタンカーの建造数もかなり増やされた。

お陰で兵站面での負担が軽くなりつつあるのは喜ばしいことだ。

 

 

 

 

 

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束の間の平穏は、束の間でしかなかった。

 

「司令、連合艦隊司令部より緊急電です!」

 

「読み上げてくれ」

 

「はっ!トラック及びマーシャル諸島に敵機動部隊来襲、空襲さる、です!!」

 

 

 

停泊中だった五航戦は、即応待機中だった最低限の乗組員を除いて上陸中であった。

それを緊急で招集したのである。

 

五航戦司令部、及び各艦艦長を翔鶴会議室に招集して緊急作戦会議を開く。

 

「現在、米機動部隊はマーシャル諸島及びトラック諸島に対して攻撃を仕掛けています。現地航空隊は迎撃に徹しているようですが数的不利により状況は芳しくありません」

 

「敵機の数は?」

 

「少なくともトラック、マーシャル双方に三波に分かれ、総数四〇〇機ほどだそうです」

 

「敵空母の数は?」

 

「索敵機が撃墜され、発見には至っておりませんので不明です」

 

一方的な状況、ということだろう。

トラック諸島は太平洋に於ける重要拠点だ。だから零戦を主戦力として一五〇機ほど、それに烈風を五〇機ほど加えた戦闘機隊を中心として、そこに一式陸攻、天山、彗星が二〇機づつが存在する。

合わせて二六〇機ほどの基地航空隊が存在する訳だが、それが奇襲を食らったとは言え防戦一方にならざるを得ないという事は、敵はかなりの規模ということになる。

 

そんな状況では反撃は出来ないだろう。

幸いトラック諸島の各飛行場には鉄筋コンクリート製の航空機用掩体壕が多数ある。

出撃は出来なくとも戦力温存ぐらいは出来る。上手くやれば反撃することも可能かもしれないが、滑走路を短期間の内にどれだけ修復することが出来るかどうか、だ。

 

「ざっくりだが、多分正規空母に換算して八〜九隻と言ったところだろう」

 

「……ついに米軍の本格的な反抗が開始されたということですか」

 

「分からん。実際、正規空母自体はいくらアメリカとは言え四隻か五隻が良いところだろう。それに軽空母を組み合わせたのかもしれん」

 

「とすると、正規空母二隻に四〜五隻の軽空母で機動部隊を二つ編成し、攻撃を仕掛けてきた、という事ですか」

 

「もしやり合うなら最低でも二個航空戦隊は欲しいところだな」

 

この時期、エセックス級航空母艦は四番艦までが就役している筈だ。

四番艦が習熟訓練を終えているかどうかは疑問だが、無理矢理戦線に出そうと思えば出せる。言わば実戦訓練というわけだ。

インディペンデンス級航空母艦は確か九番艦まで全て就役している。

少なくとも七番艦ぐらいまでは就役して習熟訓練を終えている筈だから、もう一隻を習熟訓練を切り上げて編成することも出来る。

こうなるとエセックス級と合わせて少なくとも十二隻は存在する筈。ざっと計算してトラック、マーシャルに六隻づつが来襲している筈だ。

となるとこの米機動部隊はそれぞれ四〇〇機前後の艦載機を有している筈だし、基地航空隊との戦闘を加味して減っているとしても三〇〇〜三五〇機はあるだろう。

 

合流されれば一個航空戦隊だけでは戦うのは戦力的に厳しい。

ラバウルには四航戦があるし、その気になればトラック諸島なら駆け付けられるだろうが、翔鶴型航空母艦や赤城、加賀に比べて艦載機数に劣る四航戦の空母では尚更だろう。

 

米軍の兵力としては、多分、エセックス級4隻にインディペンデンス級7~8隻、と言ったところか。

全航空戦隊が出て行けば叩くことは出来るだろうが……。

 

 

「上からは何か言ってきているか?」

 

「四航戦には待機命令が出されたようですが、我々には今のところ何も」

 

「角田さんの性格を考えれば待機命令を出すのは妥当か」

 

「角田少将なら放っておいたら突撃してしまいますからね……。戦力差を考えたら待機命令が出されるのも致し方ありません」

 

四航戦とトラック諸島の基地航空隊を合わせれば数の上では互換になれるが、既に戦闘状態にあるトラック諸島の基地航空隊が滑走路が破壊されたりして戦えなくなるのも時間の問題だ。

今から駆け付けても四航戦だけで戦う事になるのは明白だ。損傷するだけなら御の字、最悪四航戦全滅という事態も有り得る。

ましてや米海軍は今まで日本海軍相手にボコボコにされて追い回されてきていた。復讐に燃えているに違いなく、四航戦を取り逃す筈がない。

空母戦力の補充能力に乏しい我々は、空母だけでなく艦載機、母艦搭乗員をそう簡単に失うわけには行かないのである。

 

「多分、我々にはこのまま待機命令が下る筈だ。今から出撃しても間に合わんだろうからな。しかし問題はここでは無い」

 

「問題は敵が次に来襲する可能性があるのはどこか?この攻撃の意図はなんなのか?という事ですな」

 

参謀が地図を広げ、皆で囲む。

 

「次に来襲する可能性が高い場所は、ラバウル、ガダルカナル、ニューカレドニア、バヌアツの四箇所と思われます。どこも我々の航空戦力が集結しており、叩く事が出来れば少なくとも戦術的には有利に立てます」

 

「敵の目的だが、多分時間稼ぎと我々に対して圧力を加える事だろう」

 

「では上陸は無い、と?」

 

「恐らくな。私ならトラック、マーシャル、ギルバートは地上兵力が要塞化された基地に立て籠もっている。であれば無視してニューカレドニアかガダルカナル辺りに戦力を一気に叩き付ける」

 

「そうすれば豪州を再び連合国入りさせることも狙える、と言う事ですか」

 

「うむ。豪州が日本との条約を守る確証は無いからな」

 

ニューカレドニア、ガダルカナルは我々にとって南太平洋での戦略上要衝地だ。

ここを叩かれるか、奪われれば戦略に大きな狂いが生じかねないし何より米軍にとってニューカレドニアとガダルカナルは南太平洋反攻作戦の足掛かり、拠点にすることが可能な位置にある。

少なくともオーストラリアが連合国から脱落した今、豪州を対日戦に於ける反攻作戦の拠点にすることは出来ない。

 

再び連合国に参加する可能性もあるが、そうならなかった場合にニューカレドニア、ガダルカナルは必要になってくるだろう。ならば米軍は必ずニューカレドニアとガダルカナルに大規模な上陸作戦を仕掛けてくる。

 

会議が進む中、連合艦隊司令部から即応待機命令が下った。

やはり今から行っても間に合わないと踏んだのだろう。

 

 

「トラック、マーシャルの状況は?」

 

「飛行場は破壊され、港湾設備にも少なくない損害が発生しております。飛行場が使用可能となるまで少なくとも三週間は掛かるとの事です。艦隊が投錨出来る状態にするには撃沈された輸送船を撤去しなければなりません。燃料タンクや弾火薬庫も大部分がやられてしまったのでそれらを全て元の状態にするのに少なくとも半年は掛かるかと」

 

半年。

この日数は到底容認出来る期間ではない。米海軍相手にこれだけの日数を与えてしまえば恐らく、十分な数の高速空母機動部隊とそれに付随する艦隊を揃えて来るだろう。そうなれば我々の戦力的優位性は無くなる。

であればトラック諸島、マーシャル諸島は捨てる方が良い。

 

復旧するにしても前線哨戒基地ぐらいに留めて中部太平洋方面からの敵侵攻を警戒監視することに注力するべきだ。

この二か所があれば少なくともソロモン諸島やニューギニアが直接叩かれる事にはならない。

 

「敵の上陸は無いのだな?」

 

「はい、今現在敵部隊の上陸は確認されておりませんし、後から出撃した偵察機からも敵輸送船団を発見したという報告は上がっておりません」

 

「ならば一過性の攻撃で間違い無いな。米軍にトラック、マーシャルに上陸して占領する意図は無い」

 

飛行場を破壊し、敵機の妨害も無く上陸出来るのに今このタイミングで輸送船団を接近させていないという事は上陸の意図は無いと判断して良いだろう。

それにトラックには陸海軍合わせて基地要員や守備隊が二万名ほどがいるし、トラック諸島の主要な島には頑強な要塞を始めとした防御陣地が構築されている。攻略には最低でも三個師団、確実を期すなら五個師団は欲しいところだ。

トラック諸島に戦力を割くより、より重要なニューカレドニア、ガダルカナルに戦力を叩き付ける方が最善策だろう。

備えるべきは次の攻撃と、本命に対する防備だ。

 

 

 

翌日、山本さんに呼ばれて話をすることになった。

 

「敵の次の目標はどこだと思う?」

 

「攻撃だけならばラバウル、攻略であればニューカレドニアかガダルカナルでしょう」

 

「だろうな。我々もそう認識しているが問題はどこにどれだけの兵力を配置するか、だ」

 

「順当に行くならばラバウルになりますが敵艦隊が来襲した場合、即応が出来るかどうかが疑問です。停泊中を狙われたら我々がやった真珠湾のようになります」

 

「ふむ。ポート・モレスビーはどうかね?」

 

「無いとは言えませんが、来るならガダルカナル辺りを奪い返したらになるでしょう。でないと敵中に孤立します。常識的に考えれば周りから陸海空全てで袋叩きにされますから」

 

「ならば艦隊をどこに置く?」

 

「それが問題です。トラックは先の攻撃で壊滅状態。マーシャルも同様です。パラオは距離が遠く即応性に難がある。ラバウルは近過ぎるし敵来襲の可能性が高い上に複数の航空戦隊が停泊できるほどの能力はありません。どうしても二箇所に戦力を分散せざるを得ない状況です」

 

ラバウルは自然の良港であるシンプソン湾に面しており、港も十分なものが元からあり、更に我々によって整備拡充されたが七個航空戦隊全てを停泊させることが出来るほどの広さは無い。

十分な防備体制が敷かれているのは湾奥のラバウル市街地や飛行場周りだけで、湾の入り口付近や湾北側は防備体制が無いに等しい状態だ。

そこに艦隊を停泊させれば空襲から潜水艦による雷撃と、狙いたい放題になってしまう。

かと言って湾奥に七個航空戦隊全てを停泊させるのも難しい。主力艦ぐらいなら問題無いが、では軽巡や駆逐艦、輸送船はどうするのかとなってしまう。

ラバウル近郊のココポという町に面したブランチ湾があるにはあるが、あそこも泊地としては向いていない。

 

ラバウル近郊で泊地として利用出来そうなのはデューク・オブ・ヨーク諸島だ。

アタフ島を主島とし、他に幾つかの島がある。

島と島に囲まれた場所で出入りに必要十分な水深と幅の水道が複数存在する。泊地として利用するに十分だろうが、問題はラバウルと離れている為、防衛、防空体制を整えるのが難しい事だ。

デューク・オブ・ヨーク諸島には陸海軍部隊がゼロなので、泊地として利用するならある程度防衛、防空体制を整えておかなければならない。

 

話が逸れるが、現在日本占領下にあるニューギニア島やニューブリテン島が属するビスマルク諸島、ソロモン諸島などは開戦前はオーストラリアの委任統治領であったのは良く知られている事だろう。

では先の日豪講和条約にて、豪州領土から完全撤兵をする内容の条文が盛り込まれていたからニューブリテン島からも完全撤兵するのが筋であろう。

しかし戦略上、この地域からの完全撤兵は難しく、最終的に租借料を払う事で地域一体の島を我々がそのまま占領を続ける事になったのである。

租借期間は戦争終結まで、租借料は全て合わせて二億円で日豪政府は合意した。

だから我々はニューギニアやビスマルク諸島、ソロモン諸島をそのまま使えているのである。

 

 

 

「トラック諸島を再び泊地として使えるようにするより、ラバウルとデューク・オブ・ヨーク諸島を泊地として使えるようにする方が現実的だろう」

「トラック諸島とラバウルに戦力を分散することも、出来ればしたくは無い。米機動部隊と戦う事になるなら下手に一六〇〇kmも離れた位置に艦隊をそれぞれ、と言うのもな」

 

「承知しました。であればラバウルとデューク・オブ・ヨーク諸島に艦隊を置く為には最低限、対空砲やある程度の艀を入れないとなりません」

 

「飛行場建設もせねばな」

 

空母は停泊中、艦載機の発着艦が難しい。

カタパルトを装備していれば話は変わるが、現時点で我々の空母はカタパルトを装備していない。

だから飛行場が無いと停泊中の母艦航空隊は訓練も出来ないし、いざと言う時に艦載機を出して戦う事も出来ないのである。

 

「五航戦と六航戦、七航戦をまずラバウルに派遣する。それと同時に輸送船団を伴いデューク・オブ・ヨーク諸島の泊地化を進める。飛行場設営も同時に急速に進めなければならないから、必要な人員、物資をリストアップして二週間以内に事を進められるように」

 

「はっ。では、設営隊と防空の為に米軍から鹵獲した九〇mm対空砲を頂けますか」

 

「分かった。他には?」

 

「厚さ二cm一m×二mの大きさのコンクリート板一〇万枚を用意して頂きたい」

 

「何に使うんだね?」

 

「飛行場の滑走路にします。均した上に板を敷けば舗装された立派な滑走路の出来上がりです。一〇万枚なら縦一〇〇〇m、横五〇mの滑走路を四本作ることが出来ます」

 

「なるほど。だがすぐに一〇万枚を用意するのは無理だ。急ぎで用意しても二万枚ぐらいが限界だな」

 

「構いません。後から送って頂ければ十分です」

 

「他にはあるかね?」

 

「燃料タンクや物資倉庫を用意する余裕はありませんから、その代わりにタンカーを一〇隻、輸送船を一〇隻頂きたい」

 

「妥当だな。分かった、手配しよう」

 

「ありがとうございます。他に必要なものがあれば随時連絡させて頂くという事でよろしいでしょうか?」

 

「うむ。では燃料に関してはブルネイとバリクパパンで載せてから行くように」

 

「承知しました」

 

「それとトラックとマーシャルは飛行場と水上機基地を最低限復旧させて、君の言う通り哨戒基地とする。それ以外の余力は全てニューカレドニア、ソロモン諸島の防備に回す」

 

この決定の二週間後、我々は五航戦、六航戦、七航戦をまず率いてラバウルへ向かった。

 

 

 

 

三つの航空戦隊はそれぞれ、シンプソン湾に六、七航戦が停泊し、五航戦はデューク・オブ・ヨーク諸島に錨を下ろした。

今回のこの艦隊は三個航空戦隊から成る空母一〇隻、戦艦六隻、重巡六隻を主力とする第一機動艦隊として編成され、私はその司令官に任命された。

一航戦、二航戦、三航戦、四航戦から成る第二機動艦隊も同時に編成された。こちらの司令官には南雲中将が充てられた。

 

まずデューク・オブ・ヨーク諸島に工兵隊と、ラバウル守備隊から一個連隊を借り受けて上陸させた。

アタフ島、ムオリムイ島に面した大きな環礁内を『東環礁』、その隣に位置する『西環礁』。

アタフ島とマカダ島の間にある『北西水道錨地』、アタフ島にある『アタフ湾』、アタフ湾と東環礁を繋ぐ『中央水道』。

東環礁と西環礁を繋ぐ『ユタン水道』。

とざっくりそれぞれ呼称を定め、事前に測量隊によって泊地、水道、湾内の大型艦停泊可能地を判別した。

 

「東環礁」は最長部五km最大幅二kmと広く、実際に艦艇の停泊が可能な場所は最大長さ四km幅二kmほどあり、水深も深いので十分に停泊出来る。

「西環礁」も小さいながら水深も十分で縦横2kmづつぐらいの大きさがあり、こちらも停泊地としては十分だろう。

北西水道錨地は水深が浅い為、駆逐艦や軽巡洋艦の投錨地に向いている。

アタフ湾は浅瀬が半分を占めており、こちらも小型艦の投錨地となるだろう。

東西両環礁内に入る為の水道は複数あり、二つの環礁が繋がる水道もある。この二つの環礁を繋ぐ水道は「だいたい二〇〇mぐらいはあるので往来が出来る。

ただし今のままでは浅い場所が多く、座礁の危険性が高いので掘り下げるべきだろう。 

他にも西環礁に繋がるカバコン島、カーダナー島に面する小さな湾部も小型艦を主に少数なら大型艦が停泊出来る。

とは言え大きい泊地では無い為、精々一個航空戦隊か、頑張っても二個航空戦隊を停泊させるのが限界だ。

 

五航戦は私が泊地設営の責任者である為、ラバウル泊地ではなくこちらに共に停泊することとなった訳である。

 

 

 

「まさか泊地設営をやる事になるとは思いませんでしたなぁ……」

 

「提案した私が言うのもアレだが、私もだよ」

 

上陸する設営隊や陸軍工兵隊を眺めながら瑞鶴艦橋で参謀長達とぼやき合う。

今は1944年一月、日本本土は寒空が広がっているだろう。

だが、南洋のここは年中気温が高く、今だって四〇度を超えている。鋼鉄製の軍艦は熱射に晒されて下手に触ろうものなら火傷してしまう。砲身や銃身は見た目は変わらなくとも表面温度は軽く七〇度を超えているだろう。なんせ目玉焼きがあっという間に出来てしまうからだ。

 

艦や砲座、銃座には至るところに「太陽に照らされている場所は容易に触れるべからず」と張り紙がされ、艦内放送で定期的に注意を促しているぐらいだ。

 

環礁内に入る為の水道を掘削する作業も並行して行われており、今は東環礁と西環礁の入り口となるそれぞれ一箇所づつを進めているが、最終的には九箇所の掘削工事を行う予定だ。

その為の機材も輸送船で運んできてあるので、二週間もすれば東西環礁は掘削工事を完了する。

 

「上陸した部隊はどうか?」

 

「敵もおりませんから特に問題は。四日後ぐらいには対空砲陣地の設営に取り掛かれます」

 

「早いな」

 

「まぁ、営舎自体が組み立てれば良いだけのものですから。三五〇〇人分と言っても建てる数はたかが知れていますからね」

 

今回の作戦の為に、予め本土から壁、床、扉、窓枠、窓などに分けて作っておいたものを輸送船に載せてきてある。

これはそれぞれを組み立てれば良いだけのもので、用途に合わせて壁の枚数を増やしたり、減らしたりすれば建物の大きさを変えられるという寸法だ。

 

これでジャングルから木を切り出さなくても建物が簡単に建てられてしまう。基礎の部分は必要となれば後からコンクリートなりで別の場所に作ればいい。

 

西環礁には輸送船とタンカー、五航戦支援隊を入れる

東環礁には五航戦本隊から「瑞鶴」「翔鶴」「瑞鳳」「金剛」「榛名」「摩耶」「鳥海」「天龍」「龍田」「由良」の一〇隻と、第六一駆逐隊、第六駆逐隊を入れる。

他の駆逐隊はアタフ湾と北西水道錨地、ユタン水道に一個駆逐隊づつがそれぞれ停泊となる。

 

東環礁と西環礁は確かにトラックやマーシャル、クェゼリン、パラオと言った泊地に比べれば手狭だが、敵潜水艦から狙う事は難しい上に小さな島が囲むようにあるので空や海からの敵に対して防備を固めやすいという利点があった。

 

空から来る敵機は泊地をぐるっと囲むように米軍から鹵獲した九〇mm高射砲、四〇mm高射機関砲、二〇mm対空機銃を配備することで防御を固める。

最初はとりあえず仮設で配置し、後々から高射砲と高射機関砲に関しては周囲を鉄筋コンクリート製の防御壁で囲んだ対空砲陣地を拵える予定だ。

二〇mm対空機銃は鹵獲したトラックの荷台に載っけて対空トラックとして運用するものが三〇基、地面に備え付けるものが一二〇基となる。

掘ったり均したりした時に出た土を土嚢袋や中身が空っぽのドラム缶の中に詰めて対空砲や高射機関砲、対空機銃の周りにぐるっと囲んで積み上げる。

近くから適当な植物を根っこごと持って来て植えたり偽装も入念に施して見つかりにくくするのも忘れない。

偽装網を被せたり砲身に偽装網を巻いたり、ヤシの葉やらバショウ科の葉を持って来て偽装網の上に被せたりもする。

 

 

陸軍の一個歩兵連隊も常駐してくれるように山本さん達が手配してくれたから地上戦に関しても何とかなる。

基本的にデューク・オブ・ヨーク諸島に属する島は平坦であり、飛行場を建設するには適しているが防御するには砲撃や爆撃から身を隠す場所が少ない為、不向きな地形だ。

そこで堅牢なトーチカや複数のトーチカを組み合わせた複郭防御陣地を構築することで砲爆撃に耐えつつ敵地上部隊を迎撃することになる。

 

飛行場設営は二週間と割とすぐに終わった。

ガダルカナル島のように深いジャングルがある訳でもなかったので切り開くのに時間が掛からなかったからだ。

まずアタフ島に一〇〇〇mの長さを持つアタフ飛行場が開かれた。

切り開いて、均してコンクリート板を敷く。隙間にはコンクリートを流し込んでおけば埋められる。

滑走路が出来るとすぐに格納庫と倉庫が建てられ、三週間目に入るとアタフ飛行場の二本目の滑走路建設に取り掛かった。

歩兵連隊からも人手を借りてこちらは一〇日で終わらせ、続いてカーダナー島の飛行場建設に取り掛かる。

こちらも一〇〇〇m級滑走路を二本、十字に備える大きな飛行場であり、ざっくり二週間ちょっとで滑走路の建設を終えられた。

次に兵舎や格納庫、掩体壕などの施設を建てていく。

 

飛行場建設が終わる頃にはアタフ島、ユタン島、第二ユタン島、ムオリムイ島、カバコン島、ケラワラ島に、環礁二つを囲むように配備された対空砲や高射機関砲、対空機銃の配置はとっくに終わり、防備を固めていた。

配備された九〇mm高射砲は全て合わせて二五〇門にもなる。

 

アタフ島 三〇門

アタフ飛行場 三〇門

アタフ湾 二〇門

ユタン島 一〇門

第二ユタン島 二〇門

ムオリムイ島 一〇門

カバコン島 一〇門

ケラワラ島二〇門

カーダナー島二〇門

カーダナー島飛行場 三〇門

マカダ島 二〇門

北西水道錨地マカダ島沿岸部 二〇門

 

以上のように配備され、陣地構築も済んでいる。

 

四〇mm高射機関砲は連装砲架のものが四十九基、単装砲架のものが四十三基、二〇mm対空機銃は最終的に一五〇基にまで増える事になった。

基本的には防空関連のものは環礁周りと飛行場周りに配備をしており、守りを固めている。

 

艀船、タグボート、駆潜艇六隻、海防艦三隻などがデューク・オブ・ヨーク諸島泊地に配備されている。

 

対空砲や高射機関砲、対空機銃は全て鹵獲品だから負担は少ない。

問題は砲弾供給だ。今まで鹵獲した分が大量にあるとは言え、減るばかりを見るのは不安だし、何よりこの数の対空砲を自前の物で代替出来ない。となれば砲弾を作るしか無いが、かと言ってそれにリソースを割けるだけの余裕は我々には無い。

どうしたものかな。

 

 

 

 

デューク・オブ・ヨーク諸島の泊地化が終わる頃、私はラバウルに居た。

デューク・オブ・ヨーク諸島とラバウルは距離にして精々五〇km程度しか離れておらず、飛行機なら十分程度で到着する距離だ。

 

ラバウルには五航戦を除く全ての航空戦隊が揃っており、その光景は壮観である。

 

ラバウルは過ごし易いとは言えない気候だ。

特にラバウル東飛行場は昼夜関係無く、常に気温が二十八度から三〇度になるのは当たり前、四〇度を超えることもあるほど。

それに加えて湿気も多く、近くに水源が無く、井戸を掘ろうにも出てくる水は油っ気の多い飲料に適さない水しか出てこない。

それに加えてシンプソン湾沿いの滑走路の延長線上に花吹山(現ダブルブル火山)があるというのが過酷さをより増していた。

花吹山はだいたい週に一度、噴火して高さ五〇〇〇mぐらいの噴煙を噴き上げる。周囲はたちまち火山灰やらの砂ぼこりに覆われてしまう。

だからラバウルは過ごし易いとは言えないのだ。

 

 

シンプソン湾には連合艦隊旗艦『大淀』の姿もあった。

我々は大淀艦内の作戦会議室に集められていた。

 

「さて諸君、今回こうして集まってもらったのは他でも無い米軍の次なる作戦に備える為だ」

 

「先のトラック、マーシャルへの米軍来襲は我々の予想よりかなり早く、次も自ずと我々の想定より早くなるのは明白です」

 

「米軍の目的は恐らく戦力がある程度整うまでの牽制と時間稼ぎかと思われますが、問題は次の標的となり得る場所です」

 

「米軍の目標はニューカレドニアかガダルカナル島であると考えておりますが、敵の来襲時期が不明です」

 

「敵がいつ来るのか、に関してはどれぐらいの兵力を揃えてから、かを推測する必要があります」

 

「となると何時頃になる?」

 

「早くて三月頃、遅ければ五月以降になるでしょう」

 

「敵戦力は?」

 

「五月まで待てば米海軍はエセックス級を九〜一〇隻、インディペンデンス級を九隻揃えてくると推測されます。護衛空母も含めれば最大で合計三〇隻の高速空母機動部隊を揃えられるでしょう」

 

「ふむ。どれぐらいの航空兵力になるだろうか?」

 

「概算ですので、正確なことは申し上げられませんがトラックとマーシャルに来襲した敵機を見る限り、恐らくエセックス級は一〇〇機、インディペンデンス級は五〇機程度の艦載機を有していると思われます。ですので最低でも一三〇〇機、最大で一七〇〇機ぐらいの艦載機を揃えてくるものと考えます」

 

「とすると、五月まで待てば米軍は我々と十分に戦えるどころか、我々を上回る戦力を揃えてくるという事だな」

 

会議室が騒つくが、それも仕方が無い。

我々の艦載機数は一航戦から七航戦までの空母二〇隻を合わせても約一三〇〇機。来月に配備される伊吹型航空母艦二隻を加えてもざっくり一四五〇機。戦力差としては五分五分といったところだろう。

これに護衛空母が一〇隻も加われば戦力差は完全に逆転する事になる。今まで一方的に戦力有利のまま戦争を進めていたのだから騒つくのも無理はない。

 

一航戦

『赤城』 艦載機数一〇四機

烈風四十八機 天山二十七機 彗星二十七機 彩雲四機

『加賀』 艦載機数一〇四機

烈風四十八機 天山二十七機 彗星二十七機 彩雲四機

『伊吹』 艦載機数五十四機

烈風二〇機 天山十五機 彗星十五機 彩雲四機

 

烈風一一六機 天山六十九機 彗星六十九機 彩雲十二機

計二六二機

 

二航戦

『飛龍』 艦載機数七十六機

烈風三十二機 天山二〇機 彗星二〇機 彩雲四機

『蒼龍』 艦載機数七十六機

烈風三十二機 天山二〇機 彗星二〇機 彩雲四機

『室根』 艦載機数五十四機

烈風二十六機 天山十二機 彗星十二機 彩雲四機

 

烈風八十八機 天山五十二機 彗星五十二機 彩雲十二機

計二〇六機

 

三航戦

『龍驤』 艦載機数四十八機

烈風二〇機 天山十二機 彗星十二機 彩雲四機

 

四航戦

『隼鷹』 艦載機数六十四機

烈風二十八機 天山十六機 彗星十六機 彩雲四機

『飛鷹』 艦載機数六十四機

烈風二十八機 天山十六機 彗星十六機 彩雲四機

『祥鳳』 艦載機数四十四機

烈風三十六機 天山四機 彩雲四機

 

烈風九十二機 天山三十六機 彗星三十二機 彩雲十二機

計一七二機

 

五航戦

『翔鶴』 艦載機数九十六機

烈風四〇機 天山二十八機 彗星二十四機 彩雲四機

『瑞鶴』 艦載機数九十六機

烈風四〇機 天山二十八機 彗星二十四機 彩雲四機

『瑞鳳』 艦載機数四十四機

烈風三十六機 天山四機 彩雲四機

 

烈風一一六機 天山六〇機 彗星四十八機 彩雲十二機

計二三六機

 

六航戦

『慶鶴』 艦載機数九十六機

烈風四〇機 天山二十八機 彗星二十四機 彩雲四機

『紅鶴』 艦載機数九十六機

烈風四〇機 天山二十八機 彗星二十四機 彩雲四機

『白鶴』 艦載機数九十六機

烈風四〇機 天山二十八機 彗星二十四機 彩雲四機

 

烈風一二〇機 天山八十四機 彗星七十二機 彩雲十二機

計二八八機

 

七航戦

『大鳳』 艦載機数六十四機

烈風四〇機 天山十二機 彗星十二機 彩雲四機

『龍鳳』 艦載機数六十四機

烈風四〇機 天山十二機 彗星十二機 彩雲四機

『千代田』 艦載機数四十四機

烈風二〇機 天山十二機 彗星十二機 彩雲四機

『千歳』 艦載機数四十四機

烈風二〇機 天山十二機 彗星十二機 彩雲四機

 

烈風一二〇機 天山四十八機 彗星四十八機 彩雲十六機

計二三二機

 

 

七個航空戦隊

烈風六七二機 天山三六一機 彗星三三三機 彩雲八〇機

計一四四六機

 

以上の母艦航空戦力を現在我々は有している。

 

 

「敵がどれぐらい戦力を揃えてから出てくるのか、によって来襲時期は変わりますが、とりあえず三月頃の来襲に備えておくべきでしょう。五月頃になるのならばこちらもより準備を整えられますからそれで良しです」

 

「となればニューカレドニア島とガダルカナル島に戦力を集中し、我々はラバウルで待機。敵が来襲したら迎撃に打って出る、という事でしょうか?」

 

「いいや、逆だ。こちらから先に仕掛ける」

 

 

 

 

 

山本さんの作戦案に従い、我々は遠路遥々北米大陸西岸に来ていた。

 

「まさかアメリカ西海岸にまで戦争をしに来ることになるとはなぁ」

 

「サンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴを順々に叩いて、更にパナマ運河までやろうだなんて山本長官もとんでもないことをお考えになられましたね」

 

「まぁ、全航空戦隊を集中運用するから各個撃破されることは無いだろうが、にしてもちと作戦が大き過ぎな気もする」

 

山本さんの作戦案とは、米西海岸の主要軍港を叩き更にパナマ運河を破壊して太平洋への艦艇回航を容易ならざるものとする、という作戦であった。

この作戦には七個航空戦隊全てが投入され、さらに各艦隊の支援隊だけでは足りない為、タンカーを三〇隻加えその護衛に三個護衛艦隊を投入するという大掛かりな作戦だ。

私個人としてはどこか一箇所か二箇所ぐらいに絞るべきではないか、と思うが実際のところ米海軍が弱体な今しかこんな大胆な作戦をやれないと言うのもある。

今ならエセックス級四〜五隻、軽空母九隻を相手にするだけで良い。最大でも九五〇機程度だから艦載機数もこちらに利がある。

この空母を全部とまでは行かなくとも半分も叩ければ米軍の反攻作戦を丸々半年、下手をすれば1年は遅らせる事が可能だ。

だから山本さんと軍令部はGOサインを出したのだろう。

 

海軍の艦艇の殆どを投入する作戦故に情報は徹底的に統制されこの事実を知るのは軍令部の極一部と山本さん、そして各航空戦隊の司令官と参謀組までだ。

電文でのやり取りにこの作戦の事を載せる事すら禁じられており、水に浸かると溶ける特殊な紙を用いたやり取りのみが許されている。

 

 

 

この作戦を実施するにあたり、一番の問題は燃料だった。

開戦前、日本が消費する年間石油量は四〇〇万kLに達していた。民間需要が低い日本での石油使用量は大部分が軍官のものであり、海軍は特に艦艇燃料や航空機用ガソリンを大量に使っていた。

 

これを解決する為に最終的に開戦初期にパレンバン油田やブルネイ、バリクパパンと言った油田地帯を占領した訳だ。

ここから産出される精製済み燃料はそのまま直接前線に運ばれるか、日本本土に送られる。

日本本土には四〇〇万kLの重油、三〇〇万kLの高オクタン価航空燃料を蓄えている。

資源地帯を失陥しても最低限一年は十分に戦えるだけの量だ。

だがそれでも一年だ。

 

今回の作戦の為に空母二十一隻、戦艦十二隻分だけで二〇万t以上の重油が必要になり、これに巡洋艦、駆逐艦が加わると一個航空戦隊だけで八万トンの燃料が必要だ。七個航空戦隊ではおおよそ六〇万トン。

潜水艦や支援隊も含めれば七〇万トンは下らない。

 

戦闘行動があると想定して勘定しても、行って戦って帰ってくるのに少なくとも二回は補給しないとならない計算になる。

となると一万トン級のタンカーを一四〇隻は用意しなければならない訳だ。

 

しかし一筋縄では行かない。

というか、日本の船舶事情的に七〇隻の一万トン級タンカーを用意することは出来ても、実際には資源地帯と日本本土の往復輸送任務に就いたりしているので簡単には引き抜けない。

 

日本の輸送船舶事情は決して良いものではなく、保有する総トン数の内、六分の一ぐらいしか新しい輸送船やタンカーが存在しなかった。

商工省はそれを解決する為に多数の助成金を出したりして高速輸送船や高速タンカーを民間造船会社に助成金を出したがそれでもたかが知れている。

 

川崎型油槽船は最終的に三十六隻が建造されて就役しているが、海軍はこれとは別に三十四隻の川崎型油槽船を保有している。

内、二十一隻が各航空戦隊の支援隊に配備され、残る十三隻は燃料輸送任務に従事している。

 

出撃して、米西海岸でシアトルを最初に叩き、最後にパナマ運河を攻撃する訳だからざっくり七六〇〇kmを南下しなければならない。

 

ラバウルから出撃して片道八七〇〇km、往復一七四〇〇km。

これに南下する七六〇〇kmを足すと二五〇〇〇kmを艦隊はそうはしなければならない訳である。

これにもし敵艦隊が出てきたりして戦闘する分を含めて勘定するとなると、三〇〇〇〇万km分の燃料が必要になる。

 

都合、二一〇万トンの重油が必要になる訳だ。

川崎型油槽船を一四〇隻。我々にはどうやったって用意出来る数では無い。半分の七〇隻なら都合を付けられる。

なら七〇隻でどうにかやりくりするしか無い。

 

まず油槽船団は艦隊と共にシアトルまで向かう。

シアトルに攻撃を加える前に艦隊は一度給油をして、油槽船団と分離する。空になった油槽船団は護衛艦隊と共に本土に戻って重油を満載し、パナマ攻撃を終えた艦隊と再び合流して給油し、共に帰投するというスケジュールだ。

 

七〇隻の川崎型油槽船を丸ごと投入し、ようやく実現出来る作戦なのだ。

ハワイを占領していれば話は変わったかも知れないが、我々の手によって徹底的に破壊し過ぎたせいで未だに使えない状態にある。

飛行場と水上機基地ぐらいは稼働しているようだが、艦隊再建にリソースの大部分を割いている米海軍はハワイ再建に中々リソースを回せないでいるらしい。

米軍ですらそんな状態なのに、それより国力が劣る日本がハワイを使える状態に出来る訳がない。

そんな状態のハワイを獲っても負担になるばかりで役に立たないのである。

だからどうしてもこれだけの油槽船を用意しなければならなかったのだ。

 

 

この油槽船七〇隻に、爆弾や魚雷、食料水などを満載した三〇隻の輸送船と護衛艦隊に補給する為の油槽船二〇隻を加えて合計一二〇隻の大船団として編成され、これを四個の護衛艦隊で守る。

護衛空母四隻、軽巡四隻、駆逐艦三十二隻の護衛兵力となる。

補給部隊はこれで整った訳だ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

補給部隊から給油を受け、艦隊はシアトルへと最終進路を取った。

 

「最初の目標はシアトルです。ここにはシアトル・タコマ造船所があり護衛空母の大建造が行われているとされています」

 

「攻撃隊の発艦は〇三:三〇を予定し、二時間ほどの飛行の後にシアトル上空に到達する予定です」

 

我々五航戦からは、

 

第一波攻撃隊

翔鶴

烈風十五機 天山十六機 彗星十二機

瑞鶴

烈風十五機 天山十六機 彗星十二機

瑞鳳

烈風十二機

 

烈風四十二機 天山三十二機 彗星二十四機

計九十八機

 

第二波攻撃隊

翔鶴

烈風十五機 天山十二機 彗星十二機

瑞鶴

烈風十五機 天山十二機 彗星十二機

瑞鳳

烈風十二機

 

烈風四十二機 天山二十四機 彗星二十四機

計九〇機

 

以上が五航戦からの出撃機になる。

全航空戦隊合わせて第一波攻撃隊と第二波攻撃隊はそれぞれ六〇〇機前後の攻撃隊を一度に出撃させることになる。

これほどの事は開戦以来初のことである。

 

攻撃隊は敵のレーダーを警戒して高度三〇mで進軍し、直前で高度三〇〇〇mまで一気に上昇する。

天山には八〇番陸用爆弾装備機と、八〇番陸用タ弾を装備する。

彗星は五〇番陸用爆弾か二十五番陸用爆弾二発だ。

飛行場、建造中の護衛空母、港湾設備を全て破壊する。

 

他にも目ぼしい獲物があれば片っ端からそれらを破壊する。

少なくともシアトル・タコマ造船所を破壊すれば護衛空母やインディペンデンス級を一度に大量建造するのは難しくなり、一時的とは言え数を揃えるのに苦労するだろう。ついでに停泊している船舶にも手あたり次第攻撃を加え、輸送能力もそこにある分は根こそぎ奪う。

シアトル・タコマ造船所は護衛空母だけでなく大量の輸送船、いわゆるリバティ船の建造も担う場所だ。

 

「第一次攻撃隊、発艦始め」

 

先頭の烈風から次々に発艦していく。

空中で三〇分ほど掛けて集合を終えてシアトルに向けて進軍していく。

 

高度三〇mの高さで飛ぶのは中々勇気がいる。

少しでも操縦を誤ったり、機体が何らかの理由で姿勢を崩せば立て直すどころか脱出する暇すらなく海面に突っ込む事になる。

だから超低空飛行は搭乗員への負担が大きい。しかし敵に見つかりにくいというメリットがある為、今回は最初の攻撃に限り実施することが決定された。

 

 

空気抵抗の関係でいつもより進軍に時間が掛かったが、二時間半を掛けて進軍してシアトル・コタマの五〇km手前で一気に高度を三〇〇〇mまで上昇させた。

どうやら敵の電探は高度三〇mで飛ぶ攻撃隊を捉えられていなかったようで迎撃機も出てこなかった。

 

そのまま速度を上昇させてまず最初に艦爆隊が敵飛行場に多数の爆弾を投下した。

周囲にあった飛行場は三〇分で使用出来ない状態となり、あとはもう自由に出来るとなれば天山による八〇番の水平爆撃と彗星による五〇番の急降下爆撃が在泊艦艇に行われた。

 

造船所には建造中の護衛空母が一〇隻以上も所狭しと並べられており、次々にそれらに攻撃を加えた攻撃隊は、三〇機程の烈風を上空警戒に残し残る烈風は飛行場施設や造船所施設への機銃掃射を次々に行った。

攻撃隊の皆が船台に乗っている動かない目標を仕留め損ねる訳も無く、次々に八〇番、五〇番が命中した敵護衛空母は船台の上で真っ二つに折れるもの、横に倒れて僚艦を巻き添えに大爆発を起こしたもの、多数の命中弾を受けて姿形が原型を留めないほどに破壊され炎上するもの、と様々な命運を辿った。

 

二波による、計三時間にも及ぶ攻撃でシアトル・タコマ造船所は完全に機能を喪失。建造中だった護衛空母は全て完全に破壊され、停泊していた巡洋艦や駆逐艦、潜水艦、輸送船も大部分を撃沈、撃破するに至った。

第三波、第四波攻撃隊は見送られ、艦隊は攻撃隊を収容した後に南下を始めた。

我々は敵機を数百機、地上撃破し護衛空母十四隻、巡洋艦二隻、駆逐艦七隻、潜水艦五隻、輸送船二十四隻を撃沈に至らしめた。

他、敵飛行場完全破壊三箇所、シアトル・タコマ造船所完全破壊を成功させ、無事に作戦の第一撃を完遂したのである。

 

 

戦果

護衛空母 十四隻

巡洋艦 二隻

駆逐艦 七隻

潜水艦 五隻

輸送船 二十四隻

 

敵飛行場三箇所 完全破壊

シアトル・タコマ造船所 完全破壊

 

 

損害

天山五機

彗星六機

 

搭乗員二十七名 戦死

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

艦隊は丸一日、南下を続けてシアトルに続いてサンフランシスコへの攻撃を実施した。

この攻撃も第一次攻撃隊と第二次攻撃隊に分けられ全力出撃となった。

 

流石にシアトルがやられたことで米軍も警戒していると踏んでいた我々は今回の攻撃の為に、天山に特殊新兵器を搭載して送り出していた。

この新兵器は分かり易く言えばチャフであり、一m四方の厚さ〇.一mmのアルミニウム箔を二〇〇枚、格納筒の中に入れてばら撒くというものである。この時代の電探はまだ単純な方で、こんな方法でも十分に騙せることが出来る。

格納筒は全長三.四m、幅一.三mの大きさで内部に二〇〇枚のアルミニウム箔が収められている。

このアルミニウム箔はワイヤーで繋がれており、母機に牽引されて空中を暫く漂うことになる。

 

これは単純に敵のレーダー波を反射して敵を陽動する為の物凄く単純な新兵器だ。

米軍は敵味方識別装置を既に実用化しており、これを攪乱するのは容易では無い。だがレーダーに反応がある以上は敵は迎撃機を差し向けなければならなくなる。仮にこれを搭載した機を六機用意すれば単純に一二〇〇機分の反応がレーダー画面に映ることになる。

戦場に絶対は無く、仮にこれが本物だったとすれば米軍は無防備にやられることになる。なので少なからず迎撃機をこれに向かわせなければならない訳だ。

 

偽物の敵かもしれないが、かと言って本物である可能性も十分にあり得る。

まぁ簡単な心理戦の様なものかもしれない。

 

今回はこれを各航空戦隊に二〇個づつ配備している。

天山がこれを牽引して適当なところで切り離して離脱、その隙に敵飛行場を攻撃するという作戦である。

 

今回各航戦からは四機づつが出され、だいたい十二機が纏まって飛び、それが四つ。

攻撃隊と合わせると六個の一〇〇〇機を超える梯団が一斉にサンフランシスコへ向かうことになる。

どれか一つに全ての敵機が誘引されるということは中々考えにくいが、仮に一〇〇〇機の戦闘機で迎撃に上がって来たとしても六つに分けて迎撃すれば精々一七〇機ちょっとの戦闘機がそれぞれに向かうわけである。

一七〇機の戦闘機など護衛に就いている烈風の数を考えれば多勢に無勢である。

 

陽動された敵戦闘機が来るまでにさっさと攻撃を終わらせて、さっさと帰ってくればいい。

 

 

 

 

サンフランシスコ攻撃も成功に終わった。

敵戦闘機の大部分は陽動に引っ掛かって一〇〇機ほどがそれぞれ第一波と第二波に襲い掛かって来たが、護衛の烈風にその殆どを撃墜されることになった。

こちらの損失は敵戦闘機との空戦で十六機の烈風が撃墜され、対空砲火で天山八機、彗星七機を喪失し、十三機が再出撃不可となった。

 

戦果はサンフランシスコの港湾設備や造船設備の全損、飛行場四箇所の全損、敵戦闘機約一〇〇機を空戦で撃墜。敵機数百機を地上破壊。

停泊していた巡洋艦一隻、駆逐艦四隻、潜水艦八隻、輸送船十九隻の撃沈戦果と相成った。

陽動された敵戦闘機の殆どは敵飛行場の近郊などに不時着したり、無理矢理滑走路に着陸しようとして大破するなどしたらしい。あとから発艦させて戦果確認をさせた彩雲によると沿う報告がされた。

 

 

 

撃墜された搭乗員は脱出したようであるが、洋上での脱出ではなく敵地上空での脱出だったようで捕虜となっている可能性が高い。

一応潜水艦による回収地点を設定して回収の為に第一〇一陸戦隊の回収要員を付近で待機させているが、上手く行くかどうかは分からない。まぁ生きているのならばそれでよい。

 

さてここでちょっとした問題が出てきた。

 

「司令、爆弾の在庫が心許無くなってきております」

 

「どれぐらいだ?」

 

「正直に申せば、一回分の攻撃も厳しいかと。特に陸用爆弾の数がサンディエゴ攻撃に必要な数の半分しかありません」

 

「対艦爆弾は?」

 

「そちらは十分にあります。ですが肝心の陸用爆弾が無いので敵飛行場や港湾施設を叩くことが出来ません」

 

「……補給をするしかあるまい。他航空戦隊はどうか?」

 

「恐らく我々と同様の状態にあるかと。やるならば一度、爆弾の補給をせねばなりません」

 

「補給にどれぐらいの時間が必要だ?」

 

「三時間、それだけ頂ければ一回分の爆弾は補給出来ます」

 

「魚雷は?」

 

「そちらは十分にあります。ただ、サンディエゴで敵艦隊との戦闘が予想されますので、それを考えた場合、幾らか補給しておきたいところです」

 

「宜しい。では補給に必要な時間を四時間に設定して陸用爆弾と魚雷の補給を行う。優先するのは陸用爆弾とする」

 

「はっ。ではそのように各航空戦隊に伝達します」

 

指揮下の五、六、七航戦は四時間の補給作業を開始し、それが終了すると交代して一、ニ、三、四航戦が四時間の補給作業を終えた。

合計八時間の補給作業を行ったことで、十分に戦える状態を整えることになったが、敵にもそれだけの猶予を与えたことになった。

 

 

 

 

補給作業の翌日、偵察機を放ちサンディエゴとその近海の偵察をすると、敵艦隊が待ち構えていた。

どうやら基地航空隊と共同して我々を迎え撃とうという魂胆らしかった。

 

これを同時に狙って撃破をするのは難しく、それをやると戦力を分散せざるを得なくなってしまう。

敵は、艦隊と基地航空隊を合わせて下手をすると二〇〇〇機は下らない一大航空兵力を有していることになる。我々の倍の航空兵力だ。下手をすればこちらが一方的に殲滅されることになる。

米陸軍が配備を進めているP‐47やP‐51はこの距離間であれば十分に往復が可能な航続距離を有している。

同時に相手をするのは可能な限り避けていきたい。

 

「サンフランシスコでやった様に敵機を陽動し、その隙に敵艦隊を丸ごと叩きましょう。少なくとも敵基地航空隊を同時に相手取ることはしなくて済みます」

 

「そうしよう。最悪、敵艦隊と敵基地航空隊との戦闘で航空機を消耗したとしてもサンディエゴとロサンゼルスは砲撃でも叩くことが出来る」

 

「承知しました」

 

明朝、太陽が昇る前に攻撃隊を発艦させた。

我々はまだ敵艦隊の偵察機に接触されておらず、その明確なアドバンテージを有することが出来ている。

 

その二時間後、我々が放った攻撃隊は敵艦隊への攻撃を開始した。

陽動は上手く行ったようで、敵戦闘機の大部分は明後日の方向に誘導されており、大した迎撃も受けずに済んだようである。

 

こちらの損害は全機合わせて57機の損失となり、人的損失は39名となった。この攻撃で最も損耗が大きかったのは戦闘機隊だった。

サンディエゴの防空に米陸軍航空隊である、P‐51やP‐47と言った新鋭機が多数投入されており、流石の烈風と熟練搭乗員達も苦戦を強いられたようだ。その奮戦もあってか攻撃隊本隊への損耗は抑えられた。

攻撃自体は成功し、サンディエゴ周辺の敵飛行場は全て無力化に成功。続く在泊艦艇への攻撃も成功。主力艦艇こそ戦艦1隻と巡洋艦2隻、駆逐艦6隻が停泊しているだけであったが、潜水艦13隻、輸送船23隻の撃沈破に成功。港湾施設に関しても大部分を破壊せしめた。

 

そして最後のパナマ運河への攻撃も成功し、各閘門を魚雷と八〇番徹甲爆弾を多数命中させて破壊。周辺の運河関連設備への攻撃も行い、復旧には最低でも7カ月以上は掛かるとされた。

 

この西海岸全域に対する攻撃で、全ての主要港湾都市と、そしてそこに停泊していた艦艇に大打撃を与える事に成功し、戦略、戦術共に大成功で終わった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

米西海岸への攻撃を成功させ、艦隊は一度日本本土へ戻る。

一か月半にも及ぶ作戦行動で艦艇は錆だらけ。艦体の整備に加えて失った航空機と搭乗員の補充と各種補給、そして休養を挟まねばならない。

 

「艦隊の状況は万全、次なる作戦、と行きたいところであるが……」

 

「本当ならこの機会に一気に講和や和平と持ち込みたいところなのだが向こうがウンともスンとも言わん」

 

「この後に及んで、まだ戦うと言うのですか」

 

「米国はそのつもりらしいよ。情報によれば東海岸では空母と戦艦が複数就役して訓練中らしい」

 

「なるほど、それら戦力が揃えば我々と十分に戦える、そう言う訳ですか」

 

「らしい。流石に我々も東海岸までは出て行けないからなぁ。その点、アメリカという国が羨ましいよ」

 

「ドイツは現状どうなのですか?確か、米東海岸まで進出して通商破壊をやっていた筈ですが」

 

「そっちもアテに出来そうにない。どうもイギリス周辺海域の封鎖と援ソ船団への攻撃に集中しているようでな」

 

ドイツは元々陸軍国家だ。

保有している潜水艦は日本とは比べ物にならないとは言っても、限りがある。ドイツとしてはイギリスの屈伏を優先し、対ソ戦は持久戦で持ち堪える、と言う腹積もりらしい。

 

イギリス海軍は空母戦力を太平洋に引き抜いて惨敗し、残っているのは僅かな護衛空母と戦艦のみ。現状最も不味い状態の英海軍相手に潜水艦で打撃を与え、数少ないアメリカからの輸送船も片っ端から撃沈して回れば上陸して、占領することも夢では無い、ということらしい。第二次アシカ作戦とかいうようで、そのための海軍戦力、特に空母を中心とした艦隊を派遣して欲しいという要請もあったようである。

流石に距離の問題と、スエズ運河制圧すら出来ていないことを理由に断ったが、自前の戦力だけでも英国上陸作戦を本当にやりそうな雰囲気がある。

 

ドイツ海軍は現在のところ、戦艦ティルピッツを筆頭に戦艦3隻、空母1隻、軽空母1隻、ドイッチュラント級2隻、重巡3隻を主力とした艦隊を有している。

一個艦隊として見れば十分な戦力を備え、現状の英海軍の状況を考えれば空軍兵力と合わせても練度は兎も角として十分に戦えるだけの戦力がある。なので機会を伺って、やろうと思えば十分に英国上陸作戦を実施することだって可能な戦力なのだ。

これに加えてイタリア海軍の戦艦4隻、空母2隻、重巡7隻が加わるので、独伊でだいたい2個艦隊+一個戦艦戦隊、一個巡洋艦戦隊ぐらいの戦力があると言う事になる。

 

ただ、万全を期したいという思いがあるからか、日本に対して空母と戦艦の派遣を要請したという事らしい。それに派遣が実現すれば日独伊三国同盟の結束の強固さをアピール出来るというのがある。

これに関して、海軍側は距離の問題もあるし、それにスエズを通れないから喜望峰ルートを取らざるを得ず、道中で敵潜水艦やアフリカ植民地軍の航空機に襲われる可能性も考慮して政府に不可能、という通達をしている。

それに損失した搭乗員や航空機の補充、艦艇の整備という問題もあり、現実的とは言い難い。

独伊両国は対ソ戦の事もあって海軍へ回す資材を少なくし、その大部分を陸軍に回している。なので海軍拡張を行う余力は少なく、少ない余力でやっているのが潜水艦と輸送船建造らしい。

 

だが日本としてもその要請を一切無視する訳にも行かず、結局輸送船5隻、燃料補給用タンカー1隻から成る、欧州での算出量が少ないタングステンなどの戦略資源を載せた船団を出すことになった。

この輸送船は船倉に物資を載せ、甲板上に仮設した格納庫に水上戦闘機と水偵を6機づつ搭載したものであり、更に高角砲2基、高射機関砲2基、対空機銃10基を載せた中々重武装の輸送船として改造されたものだ。

敵の攻撃を振り切る為に25ノットを発揮出来る高速輸送船団で、実働部隊側の私としてはだったらこちらにその輸送船を回せ、と言いたいところであるが政治の領分なのでどうにもならない。

 

船団の出航は1ヶ月後であり、喜望峰をぐるっと回ってドイツ占領下にあるフランス、ロリアンへ入港する予定らしい。

この為にドイツ海軍は潜水艦で索敵の網を張り、ポルトガル沖にまで駆逐艦と巡洋艦を護衛に寄越すようだが上手く行くかどうか、不思議なものである。

 

 

 

 

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