対ホロウ六課のゲヘゲヘ言ってる不審者おじさん。   作:なんとほくと

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 不審者おじさんの武器はガッチガチのガントレットです。
 武闘派不審者おじさん!


不審者おじさん、戦う。

 

 

 晴れた空、流れる雲。打ちつける波の音に、横合いから吹き付ける潮風。その風によって流れてくる潮の香。ポート・エルピス。普段であれば漁師や釣り人、売店の喧騒で賑わっている筈のこの場所は、今や自身の息遣いと波風の音しか聞こえぬほどに静まり返っている。

 それもそのはず、このドーマンポートはHIAのVRによって再現された仮想世界なのだ。しかし、仮想世界とはいえど。

 

 「ふむ....」

 

 この肌を撫でていく心地よい風。よくぞここまで再現したものだと嘆息する。

 

 「....では、そろそろ始めるとしよう。」

 

 艶のある絹の様な髪を靡かせ、刀を手に携えたキツネのシリオン、“星見雅“が言葉を掛けてきた。どうやら、先程の嘆息を合図と見做したようだ。

 

 「日島。お前とこうして、互いを高め合える日が再び訪れるとは思ってもみなかった。蒼角には後で馳走してやらねばな。」

 

 そう言いながら柄に手をかけ刀身を抜いてゆく。どうやらこの戦いは最早避けられぬ様だ。どうして虚狩りと手合わせをする羽目になったのか。発端は些細なことであった_

 

 

 

 ・・・・

 

 

 

 時刻は昼過ぎ、柳ちゃんと書類を片していたときにそれは起こった。

 とてとてと実に可愛らしい様子で蒼角が走ってくると、目を輝かせながらこう質問してきたのだ。

 

 「ねぇねぇナギねえ!」

 

 「どうかしましたか?蒼角。」

 

 「ボスってとっても強いよね!どんな敵もバッサバッサと切っちゃうの!でも、日島おじさんもとっても強い!どんな敵の攻撃もぜーんぶ受けきっちゃうの!」

 

 「それで蒼角思ったんだ!」

 

 「ボスと日島おじさんが戦ったらどっちが勝つのかなって!」

 

 

 

 その瞬間、穏やかな昼下がりの心地良い気分が一瞬にして凍りついた。

 「日島、今度空いている時間にでも手合わせを.....」と以前から週に8回のペースで言われているというのに。

 このままではまずい、非常にまずい。雅ちゃんに「蒼角のため」という大義名分を与えてしまう。

 あっ、悠真くんこっちみて笑ってんじゃないよ、なぁ身代わりになってくれないか。

 そう心の中で現実逃避しながらそっ〜と目線を逸らすと、雅ちゃんが目をこれでもかと輝かせながらこちらを見つめていた。

 

 「げっ」

 

 そう声を漏らしても仕方がないだろう。まるで蛇に睨まれた蛙。今にも書類仕事を放り投げてしまいそうな程に、雅ちゃんが興奮している様がありありと伝わってきた。なぜなら、耳がこれでもかとピコピコ揺れている。それはもう耳の動きで風でも巻き起こってしまいそうなくらいに。

 

 「そ、蒼角ちゃん?その話はまた今度に」

 

 ダァンッ!と音が鳴り響く。

 

 「ならば」

 

 デスクに両手を叩きつけて立ち上がり

 

 「迷う事はない。」

 

 死刑宣告同然の

 

 「今決めよう。」

 

 その言葉口にするのだった。

 

 

 

 

 ・・・・

 

 

 

 そして、現在。

 こうしてHIAのVR機器の中で"虚狩り"の刀と対峙しているのであった。

 

 

 「まったく!少しはっ、手加減してよっ、雅ちゃん!?」

 

 一の瞬きの内に十は迫り来る斬撃。その悉くをその身で受け、逸らす事に専念する。記憶すら曖昧な程に昔の、投薬実験によって手に入れてしまった超常的な硬さ、それを遺憾無く発揮していく。今こうして地面に膝をつかずに立てているのは間違いなく、防御に専念した賜物であった。

 

 「ふっ、必要とは思わないがな。」

 

 「言ってくれる、ねっ!上司からのっ評価が高くてっ、感動しちゃうなぁっ!」

 

 一閃、また一閃。

 切り結ぶごとに迫り来る凶刃が速く、鋭くなっていく。このままではどこかのタイミングで着いていけなくなるだろう予感が身を過ぎる。

 事実、今既に受けきれずに幾つかダメージを負ってしまったし、彼女はまだ本気をだしていない。

 

「無尾」

 

 それを刀に憑依させた状態の斬撃を耐える等、現実であればモロに喰らうだけで出血は避けられないだろう。

 ならば本気を出す前に沈める、これしかない!

 

 「ふんぬっ!」

 

 「くっ_」

 

 絞り出した一発で刀の横合いから拳を当て弾く。

 姿勢を崩した今が攻め時であろう。この仮想空間がどれだけ彼女の刀を再現できているのか、自身の堅牢さを再現できているのか分からないが、ここを逃せば無尾を憑依させた斬撃で間違いなく消し飛ぶ。今攻めなければ勝機は無_

 

 

 

 ・・・・

 

 

 

 「プロキシさん、失礼します。_あぁ、やっぱりここにいたんですね。」

 

 ガチャっ、と語り口を閉ざすかのように金属製の音を立てながら扉が開かれた。

 

 「日島隊員、先程スコット前哨基地のレイさんから私と貴方宛に『調査隊の護衛をしてほしい』と要請が有りました。H.A.N.D.からの承認も得ていますしこれから向かいますよ。では。」

 

 どうやら零号ホロウの仕事が舞い込んできたようだ。H.A.N.D.を強調したのとあの部屋を出ていく後ろ姿を見るに上から釘でも刺されたようである事が容易に想像できる。うん、今度あんぱんでも買ってやろう。

 

「ぐへへ、柳ちゃんと2人っきりかな?仕事ならしょうがないなぁ。と、いう訳ですまない2人共、この話の続きはまた今度に」

 

 「えぇ!?つ、続きはどうなったの!?お預け!?」

 

 「まぁまぁリン、落ち着いて。日島さん、僕達の助けは必要かい?」

 

 どうやら身を案じてくれているようだ。まぁこの手の物はH.A.N.D.が表向きには仕事している事を示す為の小規模な調査だろう。これでT.O.P.S.も黙ってくれればいいがそうはいかないだろうなぁ。

 

 「いや、今回は小規模なものになるだろう。君たちの手を煩わせる程でもないさ。」

 

 部屋を出て行こうとすると後ろから声が掛かる。

 

 「分かりました。でも小規模とはいえ調査するのは零号ホロウだ。十分にお気を付けて。...また話を聞かせてください。」

 

 「えぇ〜。お願い!決着はどうなったのかだけでも!」

 

 本当にこの子達は。

 あの時からちっとも変わらないな。

 

 「ふっ、普通に惨敗したさ。_じゃあまた。」

 

 そう言って扉を閉じると、向こうから「うそぉ!」と声が聞こえてきた。

 謎に評価が高く無い?相手は虚狩りだよ?

 

 「お待た、じゃあ行こっか!」

 

 「ええ、行きましょう。....? 何か良いことでもありましたか?」

 

 「......なーんにも。まぁ、強いていうなら。...ぐへへ、柳ちゃんと2人きりってところかな?」

 

 

 

 




 

 アストラさん引けました。
 歌が良いですよね。
 終結スキルを発動するとついつい最後まで聴きたくなります。
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