対ホロウ六課のゲヘゲヘ言ってる不審者おじさん。 作:なんとほくと
最近擬似的激戦試練にハマっております
敵の攻撃の回避を要求されるのがすきです。
盤岳さんのデザインも良すぎてこのゲーム堪らねぇぜ!
それにしても狛野くんでっっっ....
「なに?占いができるようになった?」
「そう!へっへーん、前々からやってみたかったんだよね。『あなたの今日の運勢は!』ってやつ!ちなみに今日のお兄ちゃんの運勢は凶!」
「わぁ!お弟子ちゃんの術法の腕がどんどん上がっていってます...!今度福福のことも占ってください!」
適当観の朝は、だいたい台所で腕を振るっている潘の料理の匂いから始まる。少なくとも、雲嶽山の末っ子弟子であるリンの場合はそうだ。
みんなで食卓を囲んで料理を待っていると、なにやら今日は妹弟子が新しく習得した技を見せてくれるらしいと大姉弟子も大喜び。その尻尾もぶんぶんと揺れていた。
「ほう。なら一度見せてみるといい、お前さんの師匠が練度の程をみてやろう」
「師匠に占うとなると何か緊張するね。じゃあいくよ....!今日の運勢は〜
....おお!"大大吉"!さっすが師匠!」
「何々〜?『何をしても事を成せる、生き別れの兄弟とも再開し、金運が開く。万事が上手くゆくだろう』だって!」
「お弟子ちゃ〜ん!釈淵さんも占ってあげてください!」
「いいよ、この妹弟子にまっかせて!何々─────
いつのまにかいなくなっていた福福が最近ツイてないと嘆いていた釈淵を占ってもらおうと連れてきて、どっ!と食卓が賑やかになる。
当の儀玄本人も、弟子達に囲まれて嬉しそうにゆらゆらと笑っている。どうやら本当に我らが適当観の主が、とんでもなく幸運なめでたい日のようだ。
「いいなー師匠。そんないい日、私だったらスクラッチしまくってるよ!」
「ふ、所詮占いは占い。信じるも吉、信じないもの吉さ。それに......ふむ、やはりリン、お前さんには術法の才があるようだ。しっかり励むといい」
師匠に褒められてご満悦なリンはこれでもかと胸を張り、ドヤ顔を披露する。そうしている内に
「おーい!料理ができたぞ!今日はかわいい妹弟子の頼みで肉が多めだ」
「わぁ....!」「やったぁー!」
香辛料のいい香りと共にジュウジュウといい音が運ばれてきて、テーブルに乗せられると満面の笑みを浮かべている福福の口からよだれが溢れる。
これが適当観の朝。そのなんの変哲もない、一日の始まりである。
.....しかし、その適当観に今、新たな脅威が迫っていた───
──すいませーん、リンとアキラくんはいるかいー?」
それが今適当観の門をコンコンと叩いた。2メートルはあろうかといった背丈とふくよかな体。そしてなによりも新エリー都イチの不審者フェイスを待つ男、日島である。
───────────────────────
ジリジリと熱い日射しが照りつける澄輝坪。山中に連なるそのレトロな街の一角、雲嶽山を本山とする僧達の拠点。適当観にて
「ぐふっ...ぐぅうう!─ねえこれっ、いつまで続ければいいんだ!」
「なに言ってる、まだ半日と少ししか経ってないぞ。どれ、昔のように術法の手解きでもしてやろうか?」
「数年やって結局基本のキも上手くいかなかったの知ってるでしょ!勘弁して!」
ところどころボロボロになった対ホロウ六課の制服に汗を滲ませ、ブルンブルンと悩ましく贅肉を揺らして片腕立て伏せをしている不審者と、それの上に立ちながら青溟鳥を愛でている雲嶽山の宗主という、意味不明な不思議空間が出来上がっていた。
それと言うのも、雅から頼まれたファンタジィリゾートからの土産を持って来ただけなのに、その新エリー都どころか犯罪者でも中々居ないであろう風体から、『邪な者である』と儀玄や、福福ら雲嶽山の面々に判断されてしまったあなた。
有無を言わせず仕掛けてくる四人の猛攻を10分間耐え続け、適当観が壊滅せぬ内に届いたパエトーン兄妹の必死の説得によって、ようやく事態が落ち着きを取り戻したのだった。
「あんな師事に積極的なお師さんは初めて見るな。修行をつける時も基本的にオレたちに任せる感じなのに」
とは潘の言。それにつづいて
「きっとそれだけ今の変わりように思うところがあったって事だね。昔と比べて、なんか喋り方も変になってるもん」
「これを機に、元の姿を取り戻してくれると僕たちもありがたいんだけどね」
「それにしてもすごいですねあの人.....こんな暑い中もう半日はああして腕立て伏せしてます!福福でも3時間でキブしちゃいますよ!」
と強制ダイエットさせられている不審者をよそに、修行の合間に弟子同士の井戸端会議に乗じる潘とパエトーン兄妹と福福。
どうやら昔は痩せていたらしい不審者に過去の姿を取り戻してもらおうと、儀玄に無理難題を押し付けられたようだ。福福の尻尾は珍しいものを見たとでも言わんばかりにピンと立っている。
「それにしても、まさか師匠と知り合いだったなんてね。この前の依頼の時なんて『軍にツテがある』って言ってオボルス小隊のみんなを連れてきたし、どこまで交友関係があるのやら。」
「そのうちアストラさんとかモニカ様とか連れてくるようになったりするんじゃ?」
「そうなるととんでもない絵面になってしまうな。パパラッチに撮られたら新聞の一面を掻っ攫っていきそうだ」
「「「あはははは!」」」
謂れのない風評被害が不審者を襲う。なんたる理不尽。ただ少し顔が広いだけだと言うのに。あぁ哀れ、ひとえに不審者っぽすぎるせいだが。
「ぐふっ、違うん、だよ!小隊のみんなとは旧都陥落の時に知り合っただけだしっ!新エリー都に移り住むときのあれこれとかでっストレスが凄くて、気づいたらこんなワガママボディにっ!」
「無駄口を叩けるのはまだ余裕があるということか「違います!!」.....ふふ、全く。雲嶽山で姉上と馬鹿をしていた頃と見違えていたせいで、名前を聞くまでてっきりこの適当観に乗り込んできた不届者かと思っていた」
何とか弁解しようとするあなたから儀玄がトッ.....と背中から羽よりも軽さを感じさせる所作で降りる。
その白銀の長髪をはためかせ、琥珀を思わせる浅くも美しい黄色の瞳で見つめられ
「積もる話もある。昔のようにまた月下で語り合うとするか。なに、心配はいらん、泊まって行くといい」
「はい.........」
そう嬉しそうに宣言されてされてしまえば、あなたが逆らえる訳もなく、適当観でのお泊まりが確定するのだった。
─────────────────────
辺りも静まりかえり、蒼白の月明かりに照らされた海面が宝石のように輝く頃。
「ぐへへ...一応これけっこう恥ずかしいんだけどな....」
「何、昔はこうしてよく3人で寝ていただろう?気にすることはない」
あなたは優しく広がる闇夜の中、適当観の屋根、月明かりを鈍く反射する瓦の上で儀玄に膝枕されていた。
あなたは必死こいて儀玄の柔らかで、すべすべな太ももから意識を逸らす。
その様子を見て
(流石だな、雲嶽山を離れてしばらく経つというのに、忘我の境地を忘れておらんとは)
と勘違いされているとも知らずに。
しばらく悶々としていると、あなたの頭に、そっと手がかかった。
「もう昔の事に執着はしないととっくに決めていたはずなのに、どうしてだろうな、お前さんを見てるといろいろ溢れ出しそうだ」
「....そっか」
そっと頭をゆらゆらと撫でくる儀玄から、何かを堪えるような震えた声色に思わず身が引き締まる。
「これから放たれる言は、一夜の間違いだと思って水に流せ。いいな?」
「ぐへへ.....そりゃ骨が折れそうだねぇ」
「全く、お前さんが無事だと知ってどれだけ心が軽くなったか────
そうして、怒涛の時代を生き抜いた一組の男女の言の音とともに、エリーの夜は更けて行った。
まずい!これじゃ不審者おじさんを対ホロウ六課にぶち込んだ話じゃなくて雲嶽山にぶち込んだ話になってまう!
まぁいいかぁア!!