もんむす・くえすと! ぱらどっくすRPG きつねのお話 作:ケルル(ハーメルン始めました)
「えいえいおー。」
「着きました!」
さくらとキリスはきつねの里より転移した。向かう先はイリアスヴィル。イリアス大陸の中央にある村である。村と聞いてしまえばそこまで発展していないように感じるがこの村の奥にはイリアス神殿と呼ばれる建物がある。
「この村の奥にあるイリアス神殿にて、勇者の儀式が行われます!」
「ふぅん。ここがイリアスヴィルねぇ。」
イリアスヴィルは一つの村ではあるが、その知名度としては村と言えるものを余裕で越えている。その理由としては村の特産品というよりはやはり、その村の奥にあるイリアス神殿祖存在が大きいだろう。
「ところで…。さくら君の仕事の主題ともなっている、勇者の儀式というのは何なんだい。」
「あ、それはですね…。」
イリアス神殿とはその名の通り、創世の女神イリアスを祭る神殿のことである。他の場所にもイリアスを称える神殿などはあるが、ここはその本拠地と言える場所である。他にはサン・イリアもあるが、世界中のイリアス教徒が巡礼しにここへと赴くのだ。
創世の女神イリアスと言えば世界を創り、人を創り、悪しき邪神を討ち滅ぼした偉大なる女神とされている。人々を庇護し魔物を打ち払う、全知全能の神とされており、その偉大さから多くの人間からの信仰を集めている。
しかし、この世界の創世の女神イリアスは30年前の大異変と呼ばれるタルタロスの出現より、現世への降臨を行っていない。それにより世界に対する影響力が薄れており、かつてほど熱心には信仰されていない。その影響か戒律も厳格化されておらず、一般の人はおろか、神職者である者たちまで魔姦の禁などの戒律を守っていない。よって、世界では人と魔物が交流しあうことは最早日常の一場面と化している。
ところでこの世界における勇者とは、創世の女神イリアスが人々の平和を乱す魔物、ひいてはその魔物を統べる魔王を討伐するための存在として生み出す存在のことである。勇者になる方法としては、現世に降臨した創世の女神イリアスより洗礼を受けることである。勇者の英雄譚として有名なものは勇者ハインリヒが一つ挙げられるだろう。
さて、ここまで長く書き記したが、詰まるところ勇者の儀式とは、勇者となる者が創世の女神イリアスの洗礼を受ける儀式なのだ。
「…と、ここまで長く語りましたが、勇者の儀式について何となく理解できましたか?」
「あぁ。何となくではあるけどね。」
さくらは上記のとてつもなく長い説明をキリスにしていた。キリスは異界より召喚されたことからこの世界の常識を知らなくても仕方がない。
「しかしキリス様、何処か楽しそうじゃありませんか?」
「そう見えるかい。まぁ、実際そうなのだけどね。」
さくらの疑問に対してキリスは答える。実際、キリスは楽しそうだった。イリアスヴィルに来てからというもの、キリスは周りに映る景色全てを物珍しそうにキョロキョロと見まわしていた。また、彼の眼の包帯とマフラーの隙間から見える口元からは口角が上がっており、そこから彼は笑顔であることが推測できる。
「テンションが上がらないと言えばそれは嘘となるとも。私の世界では魔物というものは存在しなかった。そのような存在が私たち人間と手を取り合って生活しているというこの景色。それはまるで、絵本の中に紛れ込んだようなものだからね。」
「そちらの世界では僕たち魔物はいないのですか。」
「あぁいなかったとも。だからこそ目に映る景色全てが、私にとって未知の物なのさ。」
「へぇ。魔物がいない世界ですか。ちょっと気になります。」
さてキリスがハイテンションになっているのはさておき、キリスとともに歩くさくらも若干ではあるが張り切っているように感じる。さくらの尻尾が激しくというわけではないが、いつも以上に左右に揺れている気がする。
「しかしさくら君もテンションが上がっているのかい。昨日よりも浮足立っている気がするが。」
「あ、分かりますか。」
「その様子を見ていれば感づけるとも。」
キリスにそう言われたさくらは恥ずかしそうに頭を掻いた。少し照れているのか若干顔も赤くなっているようだ。
「…やはりたまも君関連かな?」
「勿論です!」
キリスの発言に突然のめり込みながらさくらは話す。先ほどよりも二つの尻尾はブンブンと勢いをつけて揺れていた。
「今までたまも様に様々なお仕事を任せられてきましたが、ここまで大きなものは今までにありません!」
「つまり!ここまで重要なものを任せられるということは、それほどの信頼をして頂いているということで…。」
「(始まったな…。)」
たまものことを話題に出したからこそさくらは止まらなくなってしまったのだろう。さくらの口は止まることを知らず、キリスは前に怒られた経験があるからか無理に止めることはしなかった。
さて怒涛の勢いでさくらがキリスに話していると、一人の女性がこちらに気づいたのか笑顔で近づいてきた。
「こんにちは、見ない顔だけどこの村に何か用?」
その女性は僧侶…、僧侶の格好であった。全体的に青を基調とした服装であり、白い手袋に僧侶がしそうな縦長の青い帽子をして、その手に赤い宝玉と金色の装飾が付けられた杖を持っていた。
「こんにちは!僕たち勇者の儀式に興味があって見に来たんです。」
「あら、そうなの。だったらこの村の奥にあるイリアス神殿でもうすぐやるわ。」
さくらはその女性に元気よく話しかけていた。そして自身の目的を打ち明けて女性からそれに対する説明を受けていた。
「…さくら君、失礼だがそちらの女性はどちら様かな。」
「あ!ごめんなさい紹介しますね、キリス様。」
「なになに?後ろの人もお連れの人なの?」
さくらは忘れていたとばかりにキリスに向き合った。キリスにとって名の知らない彼女も、さくらがキリスに紹介すということでキリスに視線を向けた。
「彼女はソニア様です。この村に住むお方で、この村の奥にあるイリアス神殿で神殿僧侶として仕えている人です。」
「よろしくね。えっと…。」
「キリスだ。どうかよろしく頼むよ。」
「キリスね。よろしく!」
彼女はソニアというらしい。手に持つ杖を元気よく回しキリスに挨拶する。
「…。」
キリスはソニアに声を挨拶された後、一言話した後は黙っていた。その理由としてはソニアの格好にあった。
「(この格好で僧侶…?私の感覚がおかしいのか…?)」
キリスは直接じろじろと見る真似はしなかった。しかしソニアより顔をそらして考える。ソニアの服装として別に肩を出していたり、何か見えてはいけないものが見えていたりとそういうわけではない。
キリスがソニアの服装として違和感を抱いたのは、ソニアの腹部と胸部の部分の服である。なぜならばその部分だけタイツのような素材となっていたからだ。これにより腹部はへそのラインが外から見てもくっきりと分かるようになっている。さらに左の胸部には黄色で十字のデザインが描かれていた。
キリスは困惑し続けているが、ソニアの様子も少しおかしいことにキリスは気づいた。彼女はキリスに挨拶した後、キリスのことをじろじろと見つめていたのだ。そんな視線に見えていないはずなのに気づいたキリスは何か自身に落ち度でもあったのかと気になった。
「失礼だがソニア君。」
「何かしら?」
「先ほどから私のことをじろじろと見つめているようだが、何か気に障ることでもしてしまったかな。」
「いえ?そうじゃないわ。」
ソニアは手に当てていた手を下ろしてキリスの質問に答える。
「別に大したことじゃないわ。」
「そうかいなら良かった。」
「ただちょっと服装が独特だなーって思っただけよ。」
「(君ほどじゃないと思うが。)」
キリスはソニアの言葉を聞いて少しの圧を周りに出した。自身の格好は彼女ほど特殊ではないと考えているからだ。
さてここでキリスの服装を再確認しておこう。着ている服としてはいわゆる旅人の格好をして背中に大剣を背負っている。周りに光が浮いているのは一度置いておいて、注目すべきはその目元と手から肘の部分であろう。その部分は包帯で覆われているからだ。つまりキリスは着ている服事態は変でなくとも、それ以外に身に着けている装飾品が少し異質であると言えよう。
ここまで長く書いたが、さくらはソニアの言葉を聞いて率直にこう思った。
「(キリス様もソニア様も、二人とも恰好が変…。)」