もんむす・くえすと! ぱらどっくすRPG  きつねのお話   作:ケルル(ハーメルン始めました)

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前回のあらすじ…キリス「え、(勇者の儀式はこれで)終わり?」
      さくら「(これ以上は)ないです。」


9,遭遇

 

「…。」

「キリス様。そんなに気を落とさないでくださいよ。」

 

 

 勇者の儀式が終わったが、二人はまだイリアス神殿の中にいた。さくらの方は特に何ともなさそうであるが、キリスの方が問題であった。勇者の儀式が終わってから何処かテンションが低そうであった。

 

 

「…、私はそこまで気にしていないさ。大丈夫だとも。」

「そ、そうですか。」

「(いや、その見た目で気にしてないだなんて、そのようなことあります?)」

 

 

 さくらが疑問に思ったこともごもっともなことであろう。キリスの顔は若干下に向き、先ほどから発する言葉もどこかしら力がない。おまけにキリス本人が周りに発する圧もあり、周りの人は二人から少し距離を取っていた。キリスの態度は客観的に見ても、気にしているとしか考えられないと思えるものであった。

 

 さくらはこの状況に対して何かしらの対処をしなければいけないと考えた。現にイリアス神殿内にいる人たちからは何かしら冷たい視線が飛んできている感覚があり、指こそ刺されていないが何やらひそひそ話も増えてきたような感じがする。とにかく、何かしらアクションを起こさなければ何も変えることはできない。ということでさくらはキリスに話す。

 

 

「キ、キリス様、そういえばなのですけど。」

「…なんだいさくら君。」

 

 

 下を向いていたキリスがその顔をさくらに向ける。その表情は包帯に隠れていて分からないが彼が発する圧だけは感じられる。キリスがさくらに顔を向けたことにより、その圧はさくら一人に集中することとなった。それに対して圧倒されながらも、さくらは口を閉じることなく話し続ける。

 

 

「ここイリアス神殿では創世の女神イリアス様が祀られているのですよ。」

「…そうか。」

 

 

 会話は途切れてしまうがさくらは何とか自分たちに纏う重い雰囲気を変えるのに必死である。

 

 

「ここで自身の願いを込めてイリアス様に祈りを捧げると叶うかもしれないなどの噂話が出回っているんです。」

「…。」

「そこでですね。ここで何か祈って行ったりは…。」

「しない。」

「…え。」

 

 

 キリスはさくらの申し出を即座に断った。さくらは友達内で出回っているのかもしれないイリアス神殿での噂話をあてにしたのかもしれない。信憑性があるないは置いておいて、キリスはさくらの提案を蹴った。しかもさくらの話を一方的に止めてまで食い気味に否定した。

 

 

「ど、そうしてです。何か駄目な事情でも。」

「…いや、ない。私がしたくないのだから否定させてもらった。」

 

 

 二人の間に再び沈黙が走る。その空気は先程よりも重いとさくらは感じている。何とかしてこのどうしようもないこの場の雰囲気を変えようとした策も失敗に終わった。腕を組み先ほど以外の打開策を考える。何かいい案はないかと、必死に考えるさくら。

 

 そんな状態の彼にキリスは気にせずに話しかける。

 

 

「さて、これ以上用がなければここを立ち去りたいのだが…。さくら君、何かやり残したことはあるかい。」

「も、もうちょっと待って下さい。」

「…なんだい、先ほど言っていた祈祷かい。」

「それもありますが…。」

 

 

 言動から察するに、キリスはイリアス神殿を早く立ち去りたいようだ。その理由は不明であるが、さくらにその思いを隠すことなく伝えている。しかしさくらはそれをすぐには肯定しなかった。そのまま外に出てしまえばキリスから未だ滲み出る圧が不審に思われるかもと考えているからだ。さて、さくらがキリスに回答して少し経った後、何か思いついたようだ。さくらは先ほどまで下を向いていた顔を上げて、キリスを見つめた。

 

 

「キリス様。」

「なんだい。」

「僕はちょっと祈ってきます。僕に任されたこの仕事も長くなるでしょうし。その旅路の無事を祈る意味も込めて。」

「…そうかい。では祈ってくるといい。私は先程も言ったが…。」

「あ、それなのですけども。」

 

 

 さくらはキリスの発言が終わる前に何やら自身の懐をガサゴソと漁っている。何かを探しているようだ。やがて目的の物を見つけたようでそれを取り出す。取り出したそれは全体的に黄色に茶褐色の斑点模様がある葉を包みとしたものであった。その葉はいわゆる竹皮と言うものではあるが、キリスはそれが分からなそうに首をかしげていた。

 

 

「何かを取り出したようだが…、それは何だい。」

「これですか?これはですね…。」

 

 

 さくらはキリスに見せつけるようにその竹葉の包みに結ばれた竹紐の結び目を解いた。そしてその葉の包みを剥がすと、そこには3個のおにぎりと沢庵が入っていた。そのおにぎりは完璧な三角形とは言えないながらも、その握り手が一生懸命に込めた思いが伝わるようないびつな形である。また3個のうち一つは赤い塊が外から見えており、鮭か鱈子であるかなど、そのおにぎりの具がなんであるかを連想できる。

 

 

「おにぎりと沢庵です。」

「おに、ぎり?たくあん?…なんだいそれは。」

 

 

 キリスはさくらがおにぎりを見せても首をかしげるだけであった。どうやらキリスはおにぎりを知らないようだ。さくらの示す意図が推測できないようで困惑している。

 

 

「このおにぎりというのはですね…食べ物ですよ。」

「食べ物…。ということは先程食べた野菜と同じということかな。」

「まあそういうことです。」

 

 

 野菜と同じ食べ物という説明にキリスは納得がいったようで、手をポンと叩き理解ができたということを頷きながら示した。さくらは理解が追いついたキリスの様子を見て話を続ける。

 

 

「僕は奥で祈ってくるので、それを食べて待っていてください。」

「良いのかい。これさくら君の分ではないのかい。」

「大丈夫ですよ。食べたくなってもきつねの里に戻ればいいだけの話なので。」

「それは先程使用していたハーピーの羽?とやらを用いるのかな。」

「はい。だから大丈夫ですよ。」

 

 

 そう話しながらさくらはキリスに手に持っていたおにぎりと沢庵を渡す。キリスはそれらを渡された後、3個並んでいるおにぎりの内一つを手に持ち見つめて…、見つめて? …包帯があるのでその目元までは分からないが、興味深そうに顔を向けていた。

 

 

「ありがとうさくら君。ではこのおにぎりとやらを食べながら待っているとするよ。」

「はい。では行ってきますね。」

「(良かったです。キリス様の機嫌が落ち着いたようで…。)」

 

 

 キリスに見送られてさくらはイリアス神殿の神父の方へと歩き出す。キリスの興味は勇者の儀式から完全におにぎりの方へと移ったようだ。これによりキリスから発していた圧も消え失せたので、さくらは言葉にこそしないが内心ほっとしていた。さくらは入口とは反対方向に進み、神父の近くに来た。神父からの視線を感じるのでさくらは一応話しかけることにした。

 

 

「こんにちは神父様。」

「…お主は先程の狐の少年か。ここに戻ってきてまだ何か用かね。」

「いえ、これから旅に出ますので、旅路の無事をイリアス様にお祈りしようかと。」

「うむ。良い心がけであるぞ少年。」

 

 

 さくらとしては普通に話しかけただけであるのだが神父の方は何故か感激を受けていた。さくらはその大げさな態度に少し困惑してしまう。そんな様子を気にせずに神父は話を続ける。

 

 

「最近は若人のイリアス様に対する信仰がめっきりと減っておってのう…。儂も色々とやっておるのじゃが、それも今一つでのう。」

「そ、そうなのですね。」

「お主のような若人が敬虔な信徒となれば、イリアス様もさぞお喜びであろう。」

 

 

 そこまで話すと神父は両手を合わせ、祈りを捧げる姿勢を取った。

 

 

「話は長くなってしまったが、儂もお主と共に祈ろうぞ。」

「ありがとうございます。」

 

 

 神父が祈りを捧げると、さくらもその隣で目を閉じ、手を合わせて自身も祈りを捧げる姿勢を取った。そうして心の中でイリアス様に対する言葉を浮かべる。

 

 

 (イリアス様、イリアス様…。)

 (僕はこれから魔王様の旅をサポートするという大きな使命を持ち、旅に出ます…。)

 (どうかこれから長くなるであろう旅路を見守っていただけると幸いです…。)

 (…あと僕のたまも様に対する恋心も見守っていてください…。)

 

 

 若干の私欲が混じっている気がするが、さくらはこれから始まる旅の無事を祈っていた。そうして幾らか時間が経過した後、二人は顔を上げる。

 

 

「一緒に祈ってくれてありがとうございます。」

「感謝されるほどたいそうなことはしておらんよ。儂からも祈ろう。お主の旅路にイリアス様の祝福があらんことを…。」

 

 

 神父に祈りを捧げられながらさくらはイリアス神殿をでる。イリアス神殿の外は雲一つない晴天であり、さくらを包み込むその風は、まるでさくらの旅立ちを見守っているかのようであった。さくらは今一度気を引き締めて、これから始まる大仕事に気合を入れなおした。

 

 さて、イリアス神殿を出たさくらは周りをきょろきょろと見まわしていた。もしかしなくても、さくらはキリスのことを探しているのだろう。おにぎりを渡して待っていてくださいと言って別れた後であり、何処にいるかは分からないことから探しているのだろう。そうして周りを見渡しているとイリアス神殿前の柱によりかかっているキリスを見つけた。

 

 

「キリス様~。」

 

 

 さくらはキリスに声をかけてから、彼の元へと歩いていく。どうやら声をかけられたキリスもさくらのことに気づいたようで、さくらの方へと顔を向ける。

 

 

「おや、さくら君、用は済んだのかな。」

「はい。しっかりとお祈りしてきました。」

「よし。では行こうか。」

「あ、待って下さいその前に…。」

「まだ何かあるのかい、さくら君…。」

 

 

 キリスはイリアス神殿でのやることがすべて終わったと思い、イリアス神殿に背を向けて歩こうとした。しかしそのキリスをさくらが呼び止める。呼び止められたキリスは、表情こそ分からないが、少しめんどくさいと考えていることが分かるような声音でさくらに応答する。

 

 

「何かあるようならもう一度戻ってやってくるといい。ここまで待っていればこれ以上、いつまで待っていても同じだとも。」

「いえ、そうではなくてですね。」

「では何だい。花摘みにでも行きたいのかな。」

「そうではなく。キリス様の口元にお弁当が付いていますよ。出発する前に取った方がいいのではありませんか」

「…お弁当?」

 

 

…どうやらキリスの口元にお弁当(米粒)がついていたらしい。

 

 

………

 

 

 

「…なるほど、先ほどのお弁当とはおにぎりに使用されていた米という物のことだったのか。」

「そうですよ。もしかしてお弁当そのものが口に付着していると本当に考えていたのですか。」

「率直に言われてそう捉えてしまうのは、仕方がないことではないかな。」

 

 

 キリスとさくらはイリアス神殿から歩き出し、イリアスヴィルの方へと来ていた。二人は先程さくらが話していた「お弁当」という物について話していた。キリスはさくらの発言に本当に口元にお弁当の箱が付着していると考えたようだ。勿論そのようなはずはなく、ここでの「お弁当が付いている」というのは「口元に米粒がくっついている」の言い換えである。

 

 

「私としてはむしろ、ぼかさずに直接言ってくれてもいいけどね。」

「外で口元にごはんつぶが付いていると、そのまま話しまうのは少しキリス様に失礼かと思って…。」

「…なるほど。すまない、あまりそのような言い回しは得意ではなくてね…。」

 

 

 キリスはそう言いながら手で頭を掻く。どうやらキリスの話に嘘はなさそうで、キリス本人も少し恥ずかしそうにしているようだ。

 

 

「しかしおにぎりと沢庵は絶品だったとも。おにぎりの中にはそれぞれ何か入っていたが、特に中にオレンジ色の物体が入っているものが一番好みであったね。」

「オレンジ色?…あぁ鮭のことですね。おにぎりの具はおかかと昆布と鮭でしたけど。」

「なるほど。あれは鮭というのか。おかかと昆布というのが他二つに入っていたものなのだね。」

「鮭もおかかも昆布も知らないのですか。一体前の世界では何を食べていたのですか。」

「色々とさ、色々。」

 

 

 さくらはキリスの食事情について興味があるように視線を向ける。しかしその視線にキリスは答えることなく、回答を曖昧にしてしまった。

 

 

「ところで何だがさくら君。」

「何です?」

「君がたまも君より任された仕事についてなのだが…。」

 

 

 キリスはこれ以上この話題について話したくないのだろうか。ここまで話していたことを一蹴し、さくらに新たな話題で場の雰囲気を転換する。

 

 

「さくら君は任されていた二つの仕事の内、一つは達成したという認識で大丈夫かな。」

「そうですね。勇者の儀式については先程の状況をたまも様に報告すれば完了です。」

「なるほど。ではもう一つの方…、もう一つの方…、すまない何だったかな。」

 

 

たまもよりさくらに委任された二つの仕事についてキリスはさくらに尋ねる。

 

 

「魔王様の旅のサポートですね。」

「そう、それだ。すっかり忘れていたよ。」

 

 

 キリスの回答が若干芝居掛かった様子ではあるが、さくらはあまり気にしない。キリスはそうさくらに話した後、手を顎付近に当てて考える仕草をし始めた。今の会話で何かあったのかとさくらは気になった。

 

 

「キリス様、何か考え事ですか。」

「…いや、今聞いておいた方がいいか。」

「?」

 

 

 考える仕草をしていたキリスは、さくらより話しかけられた後、考える仕草をやめてさくらの顔を正面に捉えた。キリスの呟いた一言はどうやら、さくらには届いていないようだ。

 

 

「魔王との旅とは簡単には言うが…、具体的に決まっていることは何かあるのかい。せめて集合場所とかは。」

「いえ、僕も任されて即日きつねの里を発ったのでそこまで詳しくは分かりません。」

「…つまりは行き当たりばったりの旅になるのかい。」

「…ごめんなさい。」

「別に謝らなくてもいいさ。ただどうしようか…。」

 

 

 キリスは頭を抱えた。さくらは仕事を任されたと先ほどまで胸を張っていた。しかし実際はただ任されただけで情報提供は愚か、収集なども行っていなそうであることを、キリスは察した。

 

 

「で、でもですね。魔王様についての情報ならありますよ。」

「そうであれば初めから話してほしいなさくら君。」

「す、すいません。」

 

 

 頭を抱えていたキリスはその言葉を聞いて、やれやれとでも言いたそうに肩をすくめた。反対にさくらは申し訳なさそうな顔をしている。

 

 

「それで?その情報とやらは魔王の特徴かな。」

「そうなりますね。僕は直接お顔を見たことがありますので。」

 

 

 さくらは先程の悲しい顔とは打って変わって、自信満々と言った態度となった。その流れのままに、さくらが知っている魔王の特徴をキリスに伝える。

 

 

「魔王様はアリスフィーズ16世様というお方で、本名をアリスフィーズ・フェイタルベルン様と言います。」

「今代の魔王様は黒のアリスの再来と言われるほどの実力をお持ちなのですよ。」

「黒のアリス?とは誰だい。」

「歴代魔王様の中で最も悪逆非道の魔王と呼ばれている、アリスフィーズ8世様の通称のことですね。黒のアリスの乱という歴史的な転換点とも言える事件を引き起こした人物です。」

「黒のアリスの乱か…。また後で聞かせてくれるかな。」

「勿論ですよ。さて話を戻しますね。」

 

 

 二人は話しながら歩き続ける。歩む足は止まることを知らず、イリアスヴィルの入り口付近にある宿屋付近にまで戻ってきた。

 

 

「魔王様は様々な種族の起源をその身に宿していますが、アリスフィーズ16世様はその中でもラミア、主に蛇の血統がその身に色濃く特徴として現れています。」

「…聞きたいことは色々とあるが、そのアリスフィーズ16世様という方はラミアという種族なのかい。」

「そうですね。ラミアでもあります。」

「よく分からないな。ラミアでもあり、また他の種族でもある。中々に難解だ。」

「そこまで深く悩まなくてもいい気がしますけど。」

「…そうか、ではそうしておこう。」

 

 

 ここまでさくらが魔王について、その身体的特徴を中心に説明してきた。その話を聞きながらではあるが、キリスの声が若干上擦いている気がする。

 

 

「ところでだが…、ラミアというとあれだろう。」

「あれ?あれとは何です。」

「私も本で読んだだけではあるのだが、ラミアという種族は人間の上半身に蛇の下半身をその身に持つのだろう。」

「まぁそうですね。ラミアというか大体の蛇系統の魔物はその認識で間違っていませんよ。」

「なるほどなるほど。…ふふふ。」

 

 

 キリスは質問をした後に突然と笑い出した。微かに見える口元の口角は上がっており、何かしらに期待している様子だ。というよりも勇者の儀式のときもこのような感じであった。

 

 

「突然笑い出してどうしたのです。というよりも何故か既視感があるような…。」

「この世界にきて魔物というものを初めて見たが、本当に童話に出てきそうなものだった。たまも君やさくら君の尻尾や耳も感動を覚えたが、魔王となればさらに凄い物なのだろう。ふふふ…。」

「キリス様―。戻ってきて下さいよキリス様―。」

 

 

 キリスは自身の世界へと突入している。この作品の主人公はさくらであるはずなのだが、キリスも中々におかしいと客観的に考えられる。そんな一人妄想の世界に入り込んでいるキリスを、さくらは肩を揺らしてこちら側に戻そうと試みる。さくらは一応魔物であるので、キリスを揺さぶるその力は人間よりも強い物であった。キリスの体がグワングワン揺れている。

 

 揺さぶられているキリスは初め、平気そうであった。しかし段々と顔色が青くなり、明らかに気持ち悪くなっていることが読み取れる。

 

 

「キリス様―大丈夫ですかー。」

「ギ、ギブださくら君。私が悪かった。だから、そろそろやめてくれないとまずブフゥ!」

 

 

 キリスより変な音がしたことからさくらは掴んでいたその手を放し、キリスから距離を取る。一方キリスは過呼吸になってはいるがそれ以上にはならなかったらしい。

 

 

「ゲホ、ゲホ。さくら君、君は少し、加減という物を、覚えたほうが、いいね。」

「(落ち着かせるためとはいえ、ちょっとやりすぎました…。)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題(しばらくお待ちください)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、少しやりすぎだ。」

「確かにちょっとやりすぎましたけど…、元はと言えばキリス様の暴走の暴走が原因なのですよ。」

「む、確かにそれは私に落ち度があるけれど、ねぇ。」

 

 

 先程かなり危ない状態となっていたキリスは時間経過により平常状態へと戻っていた。その際にキリスはさくらへと抗議していたが、さくらは確かに自分が悪いがと反論していた。そうして言い争っている内に、キリスは疲れたのかさくらに待ての合図のように手をかざした。

 

 

「…もう面倒だ。取りあえずは全面的に私が悪いということで構わない。」

「そ、そうですか。」

「あぁ。それよりも、だ。」

 

 

 そこまで話すとキリスはさくらに向けていた手を下げて、その手で頭を掻き始める。

 

 

「これからの旅の方針を立てたほうがいいんじゃないかい。魔王様と共同の旅ともなれば、それなりに準備をした方がいいだろう。」

「そうですね。では一緒に考えましょう!」

 

 

 二人は今度こそ歩き出す。これから旅に出るということで、何を準備すればいいのか、若しくはどこへと向かえばいいのかを話し合う。旅の必需品などはさくらが持っていたり、又は購入の当てがあったりと問題はなさそうであった。しかしこれから向かう場所については、キリスはここに来たばかりであるので当然ではあるが、さくらまでも思いつかないようで難色を示していた。このままでは魔王と合流するどころか、そもそも見つけられないという事態に陥ってしまう。

 

 二人は腕を組みながら悩む。

 

 

「せめて魔王様の現在地についての情報が何か入手できれば良いのだが。」

「きつねの里を旅立つときに、魔王様はこのイリアス大陸に向かっておるぞと、たまも様に教えていただきましたが…。」

「それでは少し範囲が大きすぎる。私たちがいるこの大陸にいると言われても、その情報で合流は難しいだろう。砂漠の中から針を探すようなものであると私は考えるよ。」

「ですよねぇ…。」

 

 

 大した情報もなく、二人は頭を抱えて悩む。しかしいくら悩んだところで確信に迫れるような情報を持っていないので何か良い案は時間が経過しても出てくることはない。しかしそれでも諦めずに熟考する二人であった。

 

 そうして幾らか時間が経過した頃、二人の宿屋の中から何か声が聞こえる。

 

 

「ええい消えろ!この性悪女神め!」

「あなたこそ消え失せなさい、不浄なる魔王よ!」

 

 

 

「…宿内で何か言い争いが起きているみたいですね。」

「あぁ、物騒な客でもいるのかもしれない。巻き込まれる前に離れるとしよう。」

 

 

 イリアスヴィルにある宿屋で喧嘩でも起きているのだろうか。何やら騒がしい声が聞こえる。キリスはその声に反応し、巻き込まれる前にその場を離れようとする。

 

 

「魔王様の声もしますし、何かあったのかもしれませんね。」

「そうだな。…………ん?ちょっと待ってくれさくら君。」

 

 

 キリスと共にその場を離れようと、さくらも動こうとした。しかしキリスから待ったをかけられてその場で止まり、キリスの方を見つめる。

 

 

「なんですか。」

「…さくら君今何て言ったんだい。」

「え?…何かあったのかもしれませんって言いましたが。」

「その前、その前だよ。何か重要で聞き逃せないことをサラッと言っていなかったかい。」

「えっと…、魔王様の声もしますしって言いました…あれ?」

 

 

 キリスはさくらに、今話したことをもう一度復唱させた。さくらはその通りに復唱したが、さくらは何かに気づいたらしい。自然と話していた内容から何かを気づいたさくらの様子をみたキリスは問いかける。

 

 

「さくら君の話から考察するに…。今宿屋の方から聞こえる騒がしい声の内、片方は魔王様ということになるが大丈夫…。」

「そうです。ちょっと待っていて下さい!」

 

 

 キリスの話が終わるよりも早くさくらは動き出した。先ほどまで宿屋と反対方向を向けていた足先を方向転換し、駆け足で宿屋の前に向かう。そしてそのままに宿屋の扉を開けて飛び込むとさくらが目にしたものは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 肌色が紫色のまだ幼いラミアと背中に白い羽を生やした幼い天使が宿内で喧嘩している姿であった。

 

 

 

 

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