もんむす・くえすと! ぱらどっくすRPG きつねのお話 作:ケルル(ハーメルン始めました)
さくら「はい!…え?」
「魔王様に言われたからにはやりますけど、見つかるのでしょうか…。」
「どうかね…。私はそもそもここ一帯の地理が分からないから、手助けできそうにないね。」
さくらとキリスは現在、イリアスヴィルより出て道なりに沿って歩いていた。二人が話している内容は前回アリスに頼まれたことである。
さくらはアリスの旅のサポートをする気であった。しかし何を思ったのか、アリスは宿屋を飛び出していったイリアスの監視をさくらに勅命として出したのであった。
「イリアス様、何処に行かれたのでしょう。空でも飛べたら探しやすいのに…。」
さくらは若干げんなりしていた。それは恐らく、これから探すイリアスのことを思って頭が痛くなっているのだろう。イリアスを探すと一言に言っても、それは簡単なことではない。何せ情報が、イリアスは先程イリアスヴィルを飛び出した、という物しかなのだから。またイリアスには背中に天使の羽が生えていた。もし空を飛んでいたりでもしたら捜索範囲はさくらが現在いるイリアス大陸だけでは収まらないだろう。
テンションの下がっているさくらを横に、キリスは「そうだなぁ…。」と言いながらさくらに話しかける。
「イリアスは旅に出ると言っていたね。」
「そうですが、それが何かありましたか。」
「まぁ聞いてくれさくら君。旅に出るというのであれば、まずは色々な準備が必要だ。」
「しかしあの様子であれば…、旅に出るのに必要な物も持っていないであろう。」
「であれば、自称女神は一度旅支度を揃えるために、恐らく最寄りの店にでもよるだろうさ。」
「自称女神って…、キリス様はあの言葉を信じていないですね。」
「信じるも信じないのも個人の自由、ってね。」
最後の言葉にキリスは、自信ありげにさくらのことを指さしながら答える。キリスのイリアスに対する不信は置いておいて、キリスの話すことには一定の筋が通っているだろう。イリアスはイリアスヴィルの宿屋で見かけたとき、特に何か持っているわけではなさそうであった。背中にリュックを背負っているわけでもなければ、手提げバッグをその手に持っているわけでもなかった。特殊な機構のポケットを持っていないとすれば、イリアスは正しく、手ぶらで動いていると考察できる。
ここまでの話を聞いていたさくらは、腕を組んでその場で考える。
「旅支度…、旅支度…。そうですね…。」
ブツブツ言いながら考えるさくらであった。そうして少ししているうちに何か案が浮かんだようだ。頭を上げてキリスの方を見つめる。
「イリアスヴィルを旅立った人の多くは、最初にイリアスベルクに行きますよ! そこで備品や装備などの必需品を買っていきます!」
「そこだ、さくら君。そこにイリアスがいるに違いない。」
さくらは目を輝かせながらキリスに話す。対するキリスはさくらの言葉に左手で指パッチンのパチンという音を鳴らして応える。何ともノリのいいコンビである。
「では早速行きましょう!」
「あぁ。…と言いたいところだが、そのイリアスベルクは一体どこにあるんだい。」
「今僕たちが歩いている道をそのままに北上していけば、見えてきますよ。」
「よし、では行こうか。」
さくらも行先が決まったことから先ほどまでの暗い表情は鳴りを潜めていた。光が差し込んでいるかのような満面の笑みを浮かべながら元気いっぱいに歩き出した。キリスはそのような様子のさくらの後に続き歩き始める。
二人のことを優しい風が包み込む。それは二人の頬を撫でるような風であり、とてもやさしい物であった。その風は道の周りに咲く花を揺らしていた。
キリスはその様子を見ながら、この世界のことについてさくらに質問していた。キリスからすればここは自身の常識が全く通用しない世界。しかしそれは言い換えれば、今まで自分が考えもしなかったことが当たり前となっていることでもある。
質問は初め、道の周りに咲く花や向こう側から通りかかる人や魔物など、目につくものから始まった。そこからキリスは話を聞いていく中で疑問に思ったことを聞き返し、さくらがそれに答える形で二人の旅路は進んでいった。一人であればともかく、話し相手がいる旅の楽しさは想像以上なものとなるだろう。話に夢中になることにより、イリアスベルクまでの道のりも和気あいあいとしたものとなり、時間もあっと言う間に過ぎていった。空の中心に居座り二人を見守る太陽も、いつの間にか静かに輝く月へとすり替わっていた。
「キリス様、辺りも暗くなってきましたし、今日の所はここで休みませんか。」
「確かにそうだね。いつの間にか陽も沈んでしまっているし。」
「分かりました。では野営の準備手伝ってください!」
「勿論だとも。では早速始めよう。」
さくらがキリスに確認を取った後、二人は道の脇に逸れて野営の準備を始めた。さくらは自身のポケットから、その中には当然入らないようなテントを出して組み立て始めた。
対するキリスは…戸惑っているような様子であった。そんなキリスは、組み立てたテントが吹き飛ばないために四方に杭を打ち込んでいるさくらに話しかける。
「さくら君…さくら君。私は何をすればいいんだい。申し訳ないがキャンプは初めてでね…。」
「え?…えっと。じゃあ、あそこにある木の桶を使って、水を汲んできてもらえませんか。」
「分かった。他にはあるかい。」
「そうですね…。焚き火用の薪として使いたいので、何本か流木があれば拾ってきてくれませんか。」
「心得た。では行ってくるよ。」
そこまで聞いたキリスは木の桶を片手に、道沿いにある河川の方へと歩いて行った。それを見送ったさくらは自分が今やっている作業に再び手を付けた。四つの杭を打ち込み、テントは無事に組み立て終わった。その後は焚き火の準備であろうか。手頃な石を捜索し、良さそうなものがあれば拾ってその腕で抱え込みながら運んでいた。
そうしているうちにキリスは木の桶と、何本かの材木を持ちながらさくらの方に戻ってきた。さくらも足音でキリスに気づいたようで、キリスに向かって手を振っている。
「お疲れ様です。どうでしたか?」
「戻ったよさくら君。さて、薪に適している材木との注文だったが…、これで大丈夫そうかな。」
キリスは水の入った桶を一度置いた後、その隣に抱えて運んできた材木を下した。それらは木の枝のような細くて短い物ではなく、太くてがっちりとしているものであった。
「大丈夫ですよ。では焚き火を準備しちゃいますね。」
「良かった。ならいいんだ。」
「ところで、こんなに良い木材。何処にあったんですか。」
「あぁ…、水を汲んでいるときに直ぐ傍にあったものだよ。」
「凄い偶然もありますね…。」
さくらが感心しながらも作業の手を止めてはいなかった。キリスと話しながらさくらは、先ほど集めていた石を円状に配置していた。それが終わった後、さくらはキリスが持ってきた材木の中で一番太い物を円状に並べた石の真ん中に置いた。そうしてその上から放射状にその他の薪を乗せていった。いわゆる並列型と呼ばれる置き方でさくらは薪を積み上げていった。
「手際がいいね。何度か経験が?」
「そうですね。何度か仕事で野宿するときにやっていますので…、てぃ!」
キリスがさくらの手際に興味を示しながら質問する。さくらはそれに回答しながらも薪を積み上げていく。積み上げ終わった後、さくらは手を組み気合の込めた言葉を言い放った。そうすると積み上げた薪たちに火が灯り、薪が燃え始めた。焚き火が無事に完成したところでさくらはキリスに向かって振り替える。
「さて、これにて準備完了です!」
「お疲れ様さくら君、ほとんどやってもらって悪いね。」
「大丈夫です。次回より本格的に手伝ってもらいますので…さて。」
さくらはその声と同時に懐から何かを取り出す。それは白い袋で何かが入っているようだ。袋より取り出すとそれは、魚が串に刺さったものであった。
「キリス様、キャンプで食べるご飯のおいしさは知っていますか。」
「いや、正直に言って分からないな。やったこともないね。」
「え! 勿体ないですよ。これを知らないだなんて人生の半分損してます!」
「そんな大袈裟な…。」
キリスの知らない様子にさくらは驚愕する。さくらが先ほど出した魚の刺さった串を焚き火の脇に突き刺す。何本か刺した後、地面に座る。そうした後にさくらはキリスに着席を促す。
「焼けるまで時間がかかるので座っていた方がいいですよ。」
「そうかい。では遠慮なく。」
そう言われたキリスはさくらに言われるままにその場に胡坐をかいて座る。二人は座ったままに魚が焼けるのを待っていた。串に刺さった魚が焚き火に当てられてゆっくりと焼かれていく。強火で焼いているわけではないのですぐに焼けるわけではないが、ジュウジュウと音を立てて焼かれている。
「…さくら君、もういいのではないかな。」
「まだですよー。ですので口から垂れている涎を拭ってください。」
キリスはさくらに言われてハッとする。自身の口から涎が出ていたのだ。それに気づいたキリスは右手で涎を拭った。しかし焼いている魚を見てしばらく経つとまたキリスの口から涎が垂れてきた。
さくらは垂れてきているについて言及し、キリスがそれを拭う。そうしながら二人は魚が焼けるのを待っていた。魚の表面が段々と茶色に色付き、黒色の眼が白色になってきた。
そうして周りに香ばしい匂いを漂わせる。キリスの涎は最早滝のように流れている。さくらは焼き魚の様子を手で取ってみて確認する。そうしてしばらくジッと見つめた後、キリスに言う。
「良い焼き具合ですね。食べても大丈夫ですよキリス様。」
「待っていたよ。これほどまでに待ち遠しいと思ったことは何時振りかな。」
キリスは話しながらも早々と自分の焼き魚をとる。その焼き魚からは湯気が出ており魚がしっかりと焼かれていることが分かる。キリスは迷わずにその魚に齧り付いた。熱かったのか口をホフホフさせながら涙を流している。そうして食べた部分を飲み込んだ後、近くにあったコップに注がれた水を一気に飲み干した。
「美味いが熱いな、これは…。だが不思議と早く次を食べたいという要求に駆られるね。」
「普通に美味しいと言えばいいんじゃないですかね。」
キリスが焼き魚に舌鼓を打っていると、キリスの周りに漂っている光達がキリスの持っている焼き魚に近づいてきた。先ほどまではキリスの周りを回っていたのに、焼き魚に対して興味を持ったのだろうか。その様子に気づいたキリスはさくらに言う。
「さくら君、申し訳ないのだけれど焼き魚を彼らに一つ渡してもいいかい。」
「良いですけど…、食べられるのですか。その、光達は。」
「多分ね。ではこれにしようか。」
さくらに許可を取ったことで、キリスは焚き火の傍に突き刺さっている焼き魚を一つ取った。そしてそれを自身の食べている手とは逆手に持つと、キリスは光達に話しかける。
「よし、こっちは食べてもいいよ。」
それを合図に光達はキリスの左手に持つ焼き魚に群がった。食べているというよりもどちらかと言えば焼き魚が四色の光に包まれている光景がキリスの左手では広がっていた。ただ焼き魚のことはしっかりと食べているようで、光が焼き魚に接触した部分から徐々に削れてきている。
「なんて言いましょうか…。中々に奇妙な光景ですね。」
「そうだな。自分でやらせておいてなんだがこうなるとは…。」
二人はその光景を見ながらも、自分も更に食事を楽しもうと焚き火の傍の焼き魚に手を付けるのであった。
………
「これはもう少し焼いた方がいいかい。」
「ちょっと見せてください…。これなら生じゃないので後は個人の好みですね。」
キリスは焼き魚の焼き具合についてさくらに聞いていた。その串は最初から焼いていたものではなく、なくなりかけて追加した第2陣のものである。見た目は先程よりも茶色ではなく、焦げ目もついていない。
キリスは心配になったがさくら的には大丈夫だというので安心したようだ。
「まぁ、生ではないのならいいか…。」
キリスが齧り付こうとしたその時である。緑色の光が左手の焼き魚からキリスの顔付近に近づいてきた。先ほどまで焼き魚を食べていた(?)はずであるが、どうしたのだろうか。キリスがそんな様子を右手の焼き魚から目を離して見守っていた。
そうしているとどこからともなく強い風が吹いてきた。さくらとキリスの二人は風の方向に腕を向けて、風に耐える態勢を取った。その風はしばらく続いたが、やがて止まった。
「…突然の強風でしたね。大丈夫でしたか。」
「こちらは大丈夫だ。さくら君はどうだい。」
「こちらも大丈夫です。幸い何か飛ばされた物もないので一安心です。」
さくらは周りを見渡しながら話す。突然の強風に何か被害はないかと見渡しているようだが、やがて大丈夫と判断したのかキリスの方に向き合う。
「火も消えてなくて良かったです。」
「…。」
さくらはホッと一息ついたようだがキリスは緑の光を凝視していた。そして見つめてしばらく経った後、キリスは口を開く。
「…今のは君がやったのかい。」
「………!」
「なぜこのようなことを?」
「………。…!………!」
「…そうか。ありがとな。」
何やらキリスは緑の光に向かって話しかけている。しかし緑の光は話すというよりもその場で上下前後左右動き回っているだけである。しかしキリスはしっかりと返答している様子から会話は成立しているのだろう。
「…あのー、キリス様。先ほどから一人で何をブツブツ仰っているので?」
流石のさくらもこの光景に疑問を抱かずにはいられなかったようだ。キリスの会話が一区切り(?)ついたようなタイミングでキリスに話しかける。その時だった。
緑色の光に向かって茶色の光がぶつかってきた。ぶつかってきたというのは言葉のままで、離れていた距離に勢いをつけてぶつかってきたのだ。すると緑色の光はキリスの右手の方向に吹き飛ばされていった。そして吹き飛ばされた緑色の光は森林の中に消えて行ってしまった。
突然の展開に、さくらは口をあんぐり開けて固まってしまった。そんなさくらを再起動させたのはキリスの言葉だった。
「先ほどの突風だが…、どうやらアイツがやったらしいのでね。私が代わりに謝っておくよ。」
「いえ、それはいいんですけど…。」
何とか意識を戻したさくらだったが、それと同時に疑問が浮かんだ。何故あのような風を引き起こしたのか。しかし何故風の力が使えるのか。そもそもあれらは何なのか。疑問が一つ湧けばもう一つ湧くような連鎖状態にさくらは陥ってしまった。
さくらは取りあえず、一番最初に思い付いた疑問をキリスに問うことにした。
「えっと、その。何で風を引き起こしたのかとか言っていました?」
「あぁそれなら…。あいつが言うには私のためだとか。」
さくらの疑問にキリスは答える。キリスのためであるというが、突如として風を引き起こすことが為になるのだろうか。さくらは納得いっていない様子であった。
「先ほど聞いた魚があっただろう。」
「ありましたね。」
「あの魚は生ではないが食えると結論付けたが、彼女的にはもう少し焼いた方がいいと感じたらしい。」
「そこで自身の風の力で焚き火の火を魚に近づけて、しっかりと焼こうとしたらしい。」
「は、はぁ。そうなのですね。」
キリスはさくらに更なる説明を続けるがこれも今一良く分からないものであった。
しっかりと焼こうとして、焚き火の火を近づける。中々に意味不明である。
「一応注意で言っておくが、あまり深くは考えない方がいいぞ。」
「いえ、逆にどうしろというのですか。」
「あれは考えるよりも、そうであるとそのままに受け取った方がいい。そういうものだからな。」
「そうですか…。」
キリスがさくらの思考を止める言葉を投げかけたことにより、さくらはそういうものとして留めておくことにした。先ほどの出来事から微妙な空気になってしまった。そんな状況でさくらはキリスに声をかける。
「そうですキリス様。甘い物なんていかがです。」
「甘い物か。甘味は好きだぞ。」
そうしてさくらは懐をガサゴソといじくりまわし、ある物を取り出した。それは何やら白くて小さい円柱型の物体だった。キリスはそれが何なのか分からずに首をかしげていた。
「何だいそれは。」
「マシュマロです。これも聞いたことありませんか。」
「マシュマロ…マシュマロ、聞いたことあるような…。」
キリスは手を顎に当てて考えているようだが、しばらくして顎から手を放し顎を掻き始めた。どうやらキリスは何故マシュマロを自分が知っているかを思い出せなかったようである。
「ん―…。どこで知ったか思い出せないな。」
「まぁ難しいことはいいんじゃないですか。ここで初めて食べたことにすれば。」
「それもそうだな。」
さくらの言葉にキリスは深く考えるのを止めた。そうしてさくらと共にマシュマロを突き刺していく。一つの串につき一つ刺すのを繰り返し、それを8セットほど作った。それらを二人は手に持ち、火に直接当たるか当たらないくらいの絶妙な距離で焼き上げていく。
「甘い物だなんて久しぶりだな。」
「貴重なものだったのですか。」
「そもそもあまりなかったね。そういう意味では貴重であるともいえるな。」
二人は会話しながらもマシュマロが突き刺さった串を丁寧に回して焼いている。表面があぶられてもやりすぎて黒く焦げてしまわないように絶妙なタイミングで串を回転させる。何回かそれを繰り返し、二人の手元には表面が程よく茶色に色付いたマシュマロが握られていた。
「これは…、美味しそうだな。」
「絶対美味しいですよ! 早く食べましょう!」
「そうだね。では…。」
二人がマシュマロを口に入れようとした、その時であった。何処から足音が聞こえた。そのなる音は小さなものではあったが、足音が複数あることから一人ではなく複数人いることが考えられる。またその音は段々と大きくなってきている。
「…キリス様。」
「あぁ。悲しいがマシュマロは一旦お預けだな。」
二人は音のなる方へと向き合う。
その手で持っていたマシュマロ串は一度地面に突き刺して、マシュマロが汚れないようにしていた。さくらは腰の日本刀を、キリスは背中に携えられた大剣に手をかけて迎撃の構えを取っていた。
足音が段々と大きくなっていく。ドタバタと鳴り響くその音は間違いなく二人に方向を定めて近づいている。さくらがキュッと日本刀の柄を強く握り締める。
そしてその音の正体が二人の目の前に現れる。
それは二人の少女だった。一人はイリアスヴィルでもいたような、全身がスライムで構築された少女だった。もう一人は小柄で頭に犬の耳を生やし、首に首輪をした少女であった。少女二人は息切れしながらもさくらとキリスの前に現れると、それぞれさくらとキリスの後ろに移動し、身を隠すようにその場で蹲った。
突然の行動に意味が理解できなかったキリスは、自身の後ろに隠れている犬耳の生えた少女に話しかける。
「すまないが君、一体全体どうしたんだい。現れては颯爽と私の後ろにしゃがみこんで。」
「………。」
キリスが話しかけた少女は話しかけても返すことはなかった。それどころか頭を両手で抱えてその場で少し震えている。その隙間から見える目元にはうっすらと涙が浮かんでいた。
埒が明かないと思ったのか、キリスは少女の方ではなくさくらの方に顔を向ける。
さくらはそれに気づいたのか、今度はさくらがスライムの少女に話しかける。
「どうしたのですか。何かあったのですか。」
「…私たち、追いかけられていたの。」
スライムの少女の方はさくらの話に対して言い返してくれた。これによりこの二人の情報を得ることができそうだ。さくらは内心ホッとしているとスライムの少女は続けて話す。
「私たちは3人でここら辺を歩き回っていたの。」
「そしたら、私たちと同じくらいの身長の四人組が突然現れて…。」
「「うが!金になる物おいてくのだ!」って言われたから逃げてたの…。」
「それは大変でしたね…。」
さくらはスライムの少女の話をきいて同情していた。かわいそうに思ったのかスライムの少女な頭をヨシヨシと撫でて励ましていた。スライムの少女は撫でられて嬉しそうな表情を浮かべていた。
「…3人と言ったか。もう一人の仲間は今どこにいるんだい。」
「…えっと、一緒に逃げてきたんだけど…。」
キリスは話を聞いていて「3人」という部分に疑問を覚えたようだ。それを口に出すとスライムの少女が答えてくれた。どうやら少女二人と離れてしまったらしい。
「大丈夫でしょうか。そのもう一人の仲間は…。」
「…待てさくら君。また足音が近づいてくる。」
さくらはもう一人の仲間のことを心配しているようだが、キリスはまだ警戒を続けていた。そしてキリスはまた近づいてくる足音を察知した。その音は先程よりも大きな音であり、リズムも不規則であった。
その音は四人に近づいてくるとやがて森林の隙間からその正体を現した。
「…え⁉ イリアス様⁉」
現れたその者はなんと、イリアスヴィルから立ち去ったイリアスであった。
その顔に最早女神の威厳という物はなく、涙や鼻水を流しながら必死に走るその姿は年相応の少女にしか見えなかった。
「逃がさないのだ~。」
イリアスがキリスの後ろに身を潜めると同時に、その後を追ってきたのか四人の少女が続けてその姿を現す。
初めに現れた少女は下半身が竜の鱗に覆われており、口から少量の火をふいていた。次に現れた少女は黒いマントを背中に身に着けた金髪の子であった。その次に現れた少女は下半身が蛇であるラミアで、その口から舌をチロチロと出していた。最後に現れた少女は頭に鬼の角のような角が生えた帽子をその頭に着ていて、その小さい身丈に合わない大きなハンマーを担いでいた。
四人組の少女がイリアスのことを追いかけていたがイリアスがさくらとキリス達に気が付いたようだ。イリアスはキリスにその勢いのまま真正面に抱き着くと力の限り大きな声で叫ぶ。
「さくらと魔王の部下よ! 早く、早くこの私を助けなさい!」