もんむす・くえすと! ぱらどっくすRPG  きつねのお話   作:ケルル(ハーメルン始めました)

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前回のあらすじ…キリス「締まらないねぇ…。」


16,秘宝の洞窟

 

「着きました!」

「如何にも洞窟ですよって感じの見た目だね。にしては入口が倒壊しないように整備されているが。」

 

 

 イリアスベルクを出たさくら達はとある洞窟の入り口前に立っていた。恐らくここが目的地としていた秘宝の洞窟なのだろう。キリスはその洞窟を物珍しそうにジロジロと凝視する。

 

 

「それにしても遠すぎますよ…。元の姿であれば飛んで一瞬で来られるのに…。」

 

 

 イリアスはここまでの道のりについての不満を漏らしていた。自身の小さな姿が歯痒いのか、それとも単純に気に入らないのだろうかまでは分からない。いずれにせよイリアスの口より愚痴が出ていたことだけは事実だ。

 

 

 そんなイリアスのことをキリスは全く気にも留めず、さくらに話しかける。

 

 

「で、さくら君。何処にもきつね君の姿が見えないようだが、的外れだったかな。」

「あ、それなら大丈夫だと思います。」

 

 

 さくらは特段慌てている様子もなく、嘘をついているわけではなさそうだ。平然とした態度で洞窟の入り口を指さす。

 

 

「きつねさんなら恐らく、七尾さんと一緒にこの洞窟の奥にいると思いますよ。」

「洞窟の奥?この洞窟の名を冠する秘宝と何か関係があるのかい。」

「…それについては、あまり広められると不味いので言えません…。」

 

 

 尋ね人については自信をもって回答していたが、キリスの質問にはだんまりになっていた。恐らく言いふらされると不味い何か、若しくはそれ以外の話せない裏の事情でもあるのだろう。

 

 

「どうせ海神の鈴辺りでしょう。隠してもこの私にはすべてお見通しですよ。」

 

 

 さくらがあまり言いたくなさそうにしていると、横からイリアスが介入してきた。イリアスの一言にさくらは自身の二つの尻尾をピンと逆立てる。よく見れば、冷や汗のような汗が滝のように滲み出てきている。

 

 

ソ、ソンナワケナイデスヨー(そんな訳ないですよ)ボクハソンナモノシリマセン(僕はそんなもの知りません)。」

「それで誤魔化しきれると思っているのですか貴方は…。」

 

 

 視線をイリアスより逸らして何とかその場を乗り切ろうとしているが流石に無理だったようだ。イリアスは顔を逸らしているさくらにジト目を向け続ける。

 

 

「しかしこの洞窟…、もしかしてこれはダンジョンというやつなのだろうか。」

「そうですキリス様!あまり名を知られているわけではありませんが、中には魔物も宝箱もありますよ!」

「逃げましたね…。」

 

 

 キリスは独り言のようにぼそりと呟いたが、さくらはここぞとばかりに大袈裟にその会話に飛びついた。先程の会話の流れを脱却するチャンスだとでも思ったに違いない。イリアスはその様子に察して苦笑いしていた。

 

 

「そ、そうなんだねさくら君。教えてくれてありがとう。」

「いえ、滅相もないです!これからも分からないことがあればどんどん聞いてください!」

「しかしここがあのダンジョンというものか…。」

 

 

 勢いがすごいさくらに押されつつも、キリスはさくらに感謝の言葉を告げる。さくらは鼻が高そうに、胸を張っていた。キリスはさくらの言葉を聞いた後に口角が上がり、嬉しそうな様子であった。

 

 

「勇者に引き続き、異界の要素が出てきたね。…早速中に入っても?」

「大丈夫ですよ。変な事さえしなければ大丈夫です。」

 

 

 キリスはウキウキな内心を隠せずにさくらに問いかける。さくらが返答するとキリスはその口元が笑った状態のまま、顔をさくらから洞窟の方へと向けた。

 

 

「では探索といこうか。まだ見ぬ冒険と財宝が、私たちを待っているからね。」

「お宝、お宝♪」

「欠片一つ見過ごしてはいけませんよ。この洞窟の財宝は全て私の物なのですから。」

「僕たちの間違いではないですかね…。」

 

 

 さくらがイリアスの言葉に思わず呟いたが、イリアスの耳には届いていないのかイリアスの反応はなかった。そしてそのままさくら達は秘宝の洞窟へと入っていった。

 

 洞窟内は先程いた外よりも光が差し込まないことから薄暗く、所々に壁に立てつけられた松明の明かりが点々と等間隔でほのかに洞窟内を照らしていた。ゴロゴロとした岩は壁沿いに退かされ、歩きやすいように表面の岩は揃えられていた。意外にも誰か来ることが多いのかもしれない。また洞窟内の空間は広く、仮に大人数で訪れたとしても身動きできるほどであった。

 

 

「…かなり整備されているんだね。正直、もう少しあれかと思っていたが。」

「ダンジョンを名乗るくらいですからね。ある程度のレベルにはしておかないといけません。」

「なるほどねぇ…。」

 

 

 キリスはさくらに話しかけながらも、洞窟に入る前と同じように周りをキョロキョロと見渡していた。そうして辺りを見渡しているとキリスの視線が一つの箱に向かう。その箱は赤を基調とするもので、箱の縁を金色で装飾されたものであった。湿っぽい洞窟の雰囲気と合わず、異彩を放ってそこに存在していた。

 

 

「…もしかしてだがさくら君、あの明らかに目に留まるあれが…。」

「そうですキリス、あれこそが宝箱です。では早速中身を拝見いたしましょうか。」

「それ僕のセリフ…。」

 

 

 キリスの質問にさくらではなくイリアスが回答していた。さくらは悲しそうにしていたが、イリアスはさくらのことは気にも留めずに宝箱の前へと向かっていった。イリアスは機嫌がよさそうに鼻歌も歌い、スキップしながら歩いて行った。

 

 イリアスは宝箱の前に来るとその場で屈んだ。目をキラキラと輝かせながら両手をこすり、舌なめずりもしている。

 

 

「さて、中身は何でしょう。この私が吟味するのですから、さぞ豪華絢爛なものが入っているに違いありませんね。」

 

 

 イリアスは期待を込めて、その宝箱を力任せに開いた。鍵はかかっていないようで、その勢いのままに蓋が上がった。

 

 しかし宝箱に入っていたのは宝石のついた指輪や宝の地図などではなかった。そこにいたのは白色の肌色で黒色の髪色に服をまとった少女だったのだ。その少女は宝箱を開けたイリアスに手の平を大きく見せて叫んだ。

 

 

「いないいない……ばあ!」

「きゃ!…な、何をするのです!」

 

 

 イリアスはその少女に驚いて、腰を抜かしてその場に尻もちをつこうとした。しかしイリアスはその少女に手を掴まれたことにより、倒れることはなかった。イリアスはその少女に引っ張られて宝箱に身体が連れ込まれてしまう。やがて腰までイリアスが宝箱に入ると宝箱は蓋を誰も触れていないのにも関わらず、自ずと閉じてしまった。

 

 よく見ればその宝箱の中から青色のような液体が漏れだしている。また、宝箱の縁にいつの間にか猛獣の口に生えていそうな、鋭利な牙がびっしりと隙間なく生えていた。これはつまり、イリアスは罠にかかってしまったという事だろう。

 

 

≪ミミックが現れた!≫

 

「…!…!」

 

 

 イリアスは宝箱より出ている足を必死にジタバタと必死に足掻いていた。しかしミミックはイリアスを逃す気はない様で、実際イリアスは宝箱より出てくる気配がなかった。

 

 

「まずいです、イリアス様がミミックに食べられちゃいました!」

「大変だ!」

「今助けるよ!」

 

 

 さくら達は顔を青くしてミミックに食われてかけているイリアスに駆け寄る。3人はイリアスの宝箱より出ている足を掴むと、ミミックから助け出すために引っ張り出した。綱引きの様に引っ張っているが、宝箱より聞こえるイリアスの声が大きくなる。痛いとでも叫んでいるのかもしれないが、ミミックに頭を食われている状態では声が鮮明に聞こえない。よってさくら達にその意志が伝わることはなかった。

 

 

「せーので行きましょう!ぷるこさん、わんこさん!」

「分かった!」

「せーの!」

「「「引っ張れー‼」」」

 

 

 わんこの掛け声とともにさくら達は先程よりも力を入れてイリアスのことを引っ張る。するとミミックに力勝ちしたようで、イリアスのことをミミックから引っ張り出すことに成功した。かなり力を入れていたことから、3人とイリアスはその勢いのままに後ろへと吹き飛んで行った。

 

 飛んで行った先でイリアスは目を回していた。先ほどの酸欠のような状態から脱出できたとはいえ、すぐに復帰は出来ないのだろう。ぷることわんこを下敷きにしてその場に気絶していた。

 

イリアスを引き抜かれたミミックは宝箱の蓋を開けて、さくら達の方を不機嫌そうな顔をして見ていた。

 

 

「…何よ、開けたのはそっちなんだから、大人しく食べられていきなさいよ。」

「だからといって抵抗が許されないわけじゃないだろう。お嬢さん。」

 

 

 ミミックがブツブツ独り言を言っていると、キリスが歩いて近づいてきた。右手は背中に背負う大剣の柄に伸びており、何時でも抜刀できるようにしていた。

 

 

「君が何か特段悪行を働いたわけでもないが…、まぁ私たちと出会ってしまったことが不幸であったと嘆くんだね。」

「…ひぇ。」

 

 

 キリスはミミックの傍まで近づくと背中の大剣を引き抜き、ミミックに向ける。剣先を鼻先に突き付けられたミミックは白い肌を更に青白く染め上げて無意識に両手を挙げていた。ミミックの顔は引きつっており、冷や汗がポタポタと流れ落ちていた。

 

 

「ちょっと待って下さいキリス様!」

 

 

 キリスがミミックに大剣を向けていると、さくらがイリアスの傍より駆け出してきた。そしてキリスの近くまでくると、乱れた息を整えてから話しかける。

 

 

「殺してしまってはいけないです!」

「しかし襲われたのは事実だろう。という事は、彼女は私たちの敵ということだ。敵には一切の油断なく戦うのが常識ではないかな。」

「でも僕たちが彼女の寝床を開けてしまったようなものですよ。自分のテリトリーが荒らされて怒らない人はいません。」

 

 

 さくらはキリスにそこまで言うとミミックの方に視線を向ける。怯えているミミックを見て話しかける。

 

 

「ミミックさん、ここはどうか引いてくれませんか。貴方の宝箱を開けてしまった僕たちが悪かったので。」

「…た、ただで引く気はないわよ。」

 

 

 ミミックは体を若干震わせながらも、さくらのことを睨みつける。何か条件を出すのだろう。未だ大剣を突き付けるキリスのことをミミックは一瞬睨んでさくらを見る。

 

 

「…私、宝箱だからキラキラしたものに目がないの。その中でも金色に輝く小さなメダルを集めるのが、私のちょっとした楽しみなのよ。それを一枚私に渡してくれたらやめてあげてもいいわ…。」

「…もしかして、小さなメダルってこれのことですか?」

 

 

 ミミックの言葉を受けて、さくらは懐に手を入れてガサゴソとお目当ての物を探している。そしてさくらが懐より取り出したのは、金色の硬貨であった。女性の顔が絵柄として印刷されたそのメダルをミミックに見せると、彼女は目を輝かせてさくらの方に半身を乗り出す。

 

 

「そう、それよ!早く渡しなさいよ。」

「あ、はいどうぞ。」

 

 

 さくらはミミックの突然の興奮状態に困惑しながらも、彼女に近づいてそのメダルを渡す。ミミックはそのメダルを手に持ち見つめていた。しばらくそのままに凝視していたミミックだが、ハッと我に返ったようだ。恥ずかしそうにさくらにモジモジとした態度で話しかける。

 

 

「…取り乱したわ。ありがとね、これを私にくれて。」

「いえいえ、別に僕には必要ないので大丈夫ですよ。」

「…そう、じゃあまたね。」

 

 

 ミミックはさくらにそう声を掛けると、宝箱の中に入って蓋を閉じてしまった。そこから何かしてくる様子はなく、完全に戦意を喪失させることに成功したのだった。

 

 

≪ミミックの戦意を失わせた!≫

 

「…甘い、甘いねさくら君。イリアスベルクで買ったあまあま団子にかかっていた蜜のように甘い。それではいざ覚悟を決めなければいけない場面の時に苦労することになる。」

「いいんです。これが僕の戦い方なのですから。」

「…そうか、まぁ自覚しているならいいとも。」

 

 

 キリスはさくら小言を言っていたが、さくらは全く気にせずに自信を持っているようにも見えた。キリスはその態度に、それ以上言うのは止めたようだ。

 

 キリスが口を慎んだ直後、後ろより気配を感じた。二人はその気配のする方向に振り向くと、上半身に青色の粘液が纏わりついているイリアスがいた。その態度には怒りを隠している様子は全くなく、眉の両端を吊り上げ、唇を噛みしめていた。

 

 

「宝箱に潜む陰湿な魔物よ、出てきなさい!この女神を食らおうとするその精神、万死に値します。この私直々に裁きの雷を落としましょう!」

「ちょ、ちょっとイリアス様。もう戦いは終わりましたって。」

 

 

 イリアスはミミックの宝箱に近づこうとするが、その顔をみたさくらがイリアスの前に立って接近を阻止している。さくらはイリアスに押されてはいないが、このままではらちが明かないと思ったのだろう。キリスに向けて話しかける。

 

 

「キリス様も何とかしてくださいよぉ!僕だけじゃイリアス様を止めきれそうにありません!」

「どうにかしろといわれてもねぇ…。」

 

 

 キリスはさくらの言葉に戸惑っているようだが、最終的に根負けしたのかその場でため息をついていた。そして自身の周りに漂う4個の光に向けて話しかける。

 

 

「…頼めるかい、君たち。」

「………!」

「………」

「………」

「…!…!」

「…分かった、分かったから。後で食べようと思っていたあまあま団子をあげるから。」

「……!」

「はいはい、よろしくね。」

 

 

 キリスが何やら光に向けて一方的に話しかけていると、光達はキリスより少し離れた場所に移動した。そして4個の光は寄り添うようにお互いが触れ合うくらいに近くに集まって、その場に留まっていた。

 

 少し経つと4個の光の内、水色の光がイリアスに向かってフヨフヨと浮かんで行った。そしてイリアスの傍にまで寄ると、突如大きな水の塊が出現した。シャボン玉のように宙に浮かぶそれはイリアスに近づいていき、やがてイリアスを取り込み始めた。

 

 

「何をするのです…ゴボゴボ………。」

 

 

 イリアスはその水に囚われまいと必死に暴れていたが、その抵抗も虚しく全身を飲み込まれてしまった。取り込まれてもイリアスは全身全霊で藻掻いていた。手で口を抑えながらも足を無我夢中に動かしていた。

 

 しばらく足掻いていたイリアスだが、突然水の塊から吐き出されるようにしてイリアスは解放された。その場で膝をつきゼエゼエと息を切らしていると、今度はさくらがいる方向とは反対から暖かい風が吹き始めた。その風上には緑色と赤色の2個の光がフヨフヨと浮いていた。空中に炎が生み出されており、それが風と共にイリアスの方へと揺らめいている。どうやら炎に風を通すことで暖かい風を生み出しているようだ。

 

 そして残る茶色の光はイリアスの頭の上にいた。するとイリアスの両脇の地面が盛り上がり、やがて手の形をしたものが生成された。その手の先には現代でいうところの櫛のような物が握られていた。その手はイリアスの水で濡れている髪の毛を優しく掴むと、櫛を髪に通し始めた。それは正に、私たちが通勤・通学する前に髪を解かす動作と似ているものであった。

 

 暖かい風に吹かれながら土でできた両手に髪をとかされたイリアスは、髪の毛に付着した水分も次第に取れていき、最終的にはミミックに銜えられる前の状態へと戻っていた。水の塊に全身を飲まれたことによって、体に纏わりついていた青色の粘ついた液体も取れたようだ。

 

 イリアスの姿が整った状態になると、光達はイリアスより離れてキリスの元へと戻っていった。キリスの胸元に4個の光は近寄り、緑色の光に関しては胸にスリスリとこすりつけるようにしていた。

 

 

「想定とは違うが…、細かいことは気にしない方が良いか。皆、お疲れ様。」

 

 

 キリスは懐よりイリアスベルクにて購入したあまあま団子を取り出した。すると光達はそれに群がり、野営の時と同じように食べているようだった。

 

 一方、イリアスはその場にポカンとしていた。先ほどのことが突然すぎて、脳の理解が追いつかないのだろう。その場で棒立ちして固まっていた。

 

 そんなイリアスにキリスは歩いて近づき、あんぐり開けたその口に光達に上げた物とは別のあまあま団子を突っ込んだ。

 

 

「いつまでボーっとしているんだい自称女神。さくら君がカタを着けてくれたんだからこれ以上、この宝箱に恨みをぶつけてもしょうがないんじゃあないかい。」

「こんなもので、この私が、懐柔されると、思っているの、ですか♪」

「全然懐柔されているじゃあないか…。」

 

 

 キリスは団子の美味しさに目を輝かせるイリアスから顔を逸らし、さくらの方へと向ける。さくらはそれに戸惑いながらも反応する。

 

 

「えっと、助けていただき、ありがとうございます…?」

「やったのは私ではないから、お礼の言葉はあいつらに言うといい…。それよりも奥に進んでもいいんじゃあないかい。」

 

 

 さくらはキリスにお礼を言うと、キリスは自身の手に握られた団子付近に漂う光達を指さして答える。さくらはそれを受けて光達に改めてお礼を言いながら頭を下げると、光達は一度団子から離れてさくらの顔付近に移動した。フヨフヨとしばらく漂っていると満足したのか、キリスの持つ団子の方へと戻っていった。

 

 そんな光景に呆気を取られるさくらであったが、ハッと直ぐに意識を取り戻したようだ。先ほどのキリスの最後の言葉に対して返答する。

 

「そうですね、では行きましょう!」

 

……………

 

 さくら達は先程の宝箱の前から立ち去り、洞窟の更なる奥へと向かうため進んでいった。この洞窟はダンジョンであるので、宝箱があちこちに配置されていた。それに対してイリアスが懲りずに中身を確かめようとするのだが、さくらがそれに待ったをかけて全員で構えることで、ミミックが出てきても対処できた。それ以外にも下半身が蜘蛛の魔物が襲ってきたりはしたが、キリスが大剣を振り回したりさくらが忍術を用いることで撃退できていた。

 

 そんなこんなでさくら達は何度か行き止まりに行きながらも洞窟の最奥にまで来ていた。ダンジョンの最奥というはつまり、そこの守護者となるボスがいる。この洞窟も例外ではなく、片方が外れて壊れかけた鉄格子の奥にその姿が見えた。

 

 片方の半身を人とし、もう片方の半身を獣とした魔物が、そこにはいた。ケンタウルスの様であるが、その足は狐を連想させるような見た目であった。狐を模した足で四足で立っており、黄色を主体とした体毛で覆われた狐の下半身の後ろにはその者の格を示すような狐の尻尾が七本ゆらゆらと揺れていた。きつねの里にてたまもの右腕を自称する七尾が、財宝の洞窟のボスとしてここにいたのだ。

 

 ただしここで考えなくてはいけないのは、さくら達はあくまでここにいるはずのきつねに相談をするために来たことだ。財宝が目的な冒険者とは違い、戦いを目的としているのではなく、相談が目的である。

 

 だからこそだろうか。七尾がさくら達のことに気づいても取り乱さずに殺気などを送らずにいたのは。さくらが纏う雰囲気から察したものもあるかもしれないが。何にせよさくら達に気づいた七尾は微笑みながらさくらに話しかけていた。

 

 

「おや、さくらにキリスではありませんか。きつねの里ぶりですね。」

「七尾様、ご無沙汰しております。」

「久しぶりだね七尾君。」

 

 

 微笑みながら話す七尾にさくらとキリスは挨拶を返す。七尾はさくらの後ろにいるイリアスとぷることわんこ達3人に視線を送ってからさくらに再度話しかける。

 

 

「しばらく見ないうちに旅の連れを増やしたようですね、さくら。」

「えぇとそれはですね…。」

「さくらは私の連れです。そこを魔物ごときがはき違えてはいけませんよ。」

 

 

 さくらがイリアス達のことを七尾に説明しようとすると、後ろよりイリアスがサラッと七尾のことを侮辱しながら前へと出てきた。その言葉に先ほどで微笑んでいた七尾は顔をしかめる。

 

 

「いきなり出てきたと思ったら失礼ですね…。誰なのですか貴方は。」

「私こそ、創世の女神たるイリアスです。崇め奉ってもよろしいのですよ?」

 

 

 イリアスは七尾の問いに胸を張りながら答える。しかし七尾はイリアスの答えに対してハッと鼻で笑う。

 

 

「女神の名を騙る天使が現れようとは…、昨今の天使は堕ちたものですね。」

「言わせておけば…、女神に対する態度がなってませんよ。」

「はいはい、七尾君も自称女神もそこまでにね。」

 

 

 イリアスと七尾が睨みあっていると、突如として後ろよりキリスが腕を伸ばし、その手でイリアスの頭をガシっと鷲掴みにしてしまった。前触れもなく頭を掴まれたイリアスは、自身の頭を掴むキリスの手を両手で掴み、何とかして逃れようとジタバタする。しかしキリスは一向に離す様子はなく、段々とイリアスの頭からミシミシと軋む音が聞こえてきた。キリスはイリアスを掴む力を強めているようである。イリアスはキリスによって段々と持ち上げられており、ミミックに捕まった時と同じように足をその場でジタバタとさせていた。

 

 

「こんな自称女神(ヤツ)のことは置いておこう。七尾君、この洞窟にいるらしいきつね君のことを知らないかい。」

「え、ええ。きつねはこの洞窟にいますが、何か御用ですか。」

「いや、さくら君がきつね君に用があってね。」

 

 

 キリスはイリアスのことをその手に掴んだまま、七尾に話しかけていた。七尾はそんなキリスに対して少し表情が強張っていた。

 

 キリスの言葉に反応したのか、七尾の体の後ろからその頭をひょっこり出してきた。その顔はさくらと同じように頭に銀毛の耳を2つ生やしどこか楽しげな表情をしていた。きつねの里にてさくらを見送ったときにいた、きつねである。

 

 

「さくら、僕に何か用?」

 

 

 きつねはそう言うと七尾の後ろから出てきて、さくらの前に駆けて来た。さくらは困ったといわんばかりに眉をひそめた表情をうかべて、きつねに話しかける。

 

 

「実はですね、旅の貯蓄がちょっと心許なくって…。そこで僕の部屋から少しお金を持ってきてほしいんです。」

「え、でもそれなら僕じゃなくってさくらがいけばいいんじゃない?」

「何故だか分かりませんがハーピーの羽が使えなくてですね…。きつねの里に行けないのです。」

「ハーピーの羽が使えない…ですか?」

 

 

 さくらの言葉にそれを聞いていた七尾が反応する。眉をピクッと反応させてさくらを見つめる。さくらはその視線に気が付き、アハハ…と苦笑いする。きつねはふーん…と言った後にさくらに満面の笑みを見せる。

 

 

「そういうことなら任せてよ!じゃ、行ってきま~す。」

「よろしくお願いしますねきつねさん。」

 

 

 きつねは自信満々と言った感じで胸にポンと手を当てる。そうした後にきつねはハーピーの羽を懐より出してきつねの里へと向かっていった。

 

 さくらがこの場から去った後、七尾は先程よりも少し厳しい顔をしてさくらに話しかける。

 

 

「さくら、ハーピーの羽が使えないとはどういうことですか。場合によっては早急に手を打たなければいけません。」

「文字通りの意味です七尾様。本当に原因は不明なんですけど、きつねの里に戻れなくなったしまったのです…。」

「そうですか…、大変でしたねさくら…。」

 

 

 さくらは懐より自身の持つハーピーの羽を出して、その場で使えないことを実演して見せた。本当に使えないことが分かると、七尾は悲しそうに俯くさくらに近寄って、彼の頭に手を伸ばしヨシヨシと撫でた。さくらは満更でもないようで、彼の尻尾が左右にユラユラ揺れていた。

 

 七尾はある程度さくらのことを撫でた後、さくらの頭から手を離した。そして顎に手を当てて、ブツブツとその場で考え始めた。

 

 

「おかしいですね…。ハーピーの羽はその対象者、もしくはその対象者の所属するリーダーの赴いたことのある場所に行けるはずなのですが…。なぜできないのでしょう。」

 

 

 七尾が独り言のように呟いていると、キリスが「…話に横入りして申し訳ないのだが。」と話しかけてきた。

 

 

「どうしましたかキリス。」

「今七尾君が言ったハーピーの羽の二つの条件…それは本当なのかい。」

「それについては大丈夫ですよ。」

「そうか…なるほど。」

 

 

 キリスは七尾の言葉に頷いて返した。少し時間が経過した後、キリスがうねっていると隣でさくらが話しかけてくる。

 

 

「何か思いつきましたかキリス様。良ければ教えてほしいです。」

「…いや、そうだな…。…今から話す内容は私の想像なのだけども。」

 

 

さくらの言葉にキリスは少しブツブツと呟いていたが、やがて何となくまとまったようで、さくらに顔を向けて話し出す。

 

 

「二つの条件の内…、仮に一つ目の条件が原因不明の故障により発動しなかった場合の話をしよう。その場合は二つ目の条件の方が優先されて発動するはずだ。」

「二つ目となりますと…グループのリーダーの方になりますね。」

「そうだね。…もし、もしもださくら君。私たちのグループのリーダーがさくら君、君でないのなら…どうだい。」

「…!そしたら行ける場所は、僕の行ったことのある場所では無くなります!」

「そうだ。そしてそれ以外にリーダーとしてあり得る候補となると…。」

 

 

 キリスはそこまで言うと自身の左手で頭を握られているイリアスの方に視線を向けた。イリアスはもう反抗するのは止めてその場で宙にプランとぶら下がっていた。キリスとさくらに視線を向けられると、イリアスはフッと不敵に笑った。

 

 

「羽毛の方が貴方たちより分かっているではありませんか。この私こそが、このグループのリーダーに相応しいという事を。」

「それのせいかもしれないって話を今しているんだけどね。」

 

 

 イリアスが鼻で笑うと、キリスはそれが気に入らなかったのか手に込める力をあげた。再びイリアスの頭からミシミシと音が鳴りだし、イリアスはジタバタと暴れながら涙目になっている。

 

 

「いた、痛いです!キリス、不敬ですよ、今すぐに止めるのです!」

「そんな言葉一つで止めるのならば、初めからこんなことやってはいないさ。」

「キリス様、イリアス様も痛そうですし、その…放してあげたらいかがです…?」

 

 

 さくらもイリアスの表情に、流石に哀れに感じたのだろうか。キリスに対して申し訳なさそうにしながらも、イリアスの開放を進言した。キリスはそれ以外にもぷるこやわんこ、七尾の突き刺さる視線が痛いと感じたのだろうか。イリアスを掴むその手の力を緩め、やがてその手からイリアスのことを放した。

 

 

「まぁ、今日はこの辺で勘弁してやろう。さくら君たちに感謝するんだな。」

「くっ…この女神たる私が何たる侮辱…。」

 

 

 キリスより解放されたイリアスが悔しそうに顔をゆがめていると、洞窟の入り口の方向からきつねが走ってきた。どうやらきつねの里より戻ってきたようである。さくら達の目の前まで来るとその場で止まって息を整えた。

 

 

「きつねさん、おかえりなさいです。」

「はぁ…はぁ…、ただいま。」

 

 

 きつねは膝に手をついて下を向いていた。やがて収まったようで、きつねはさくらの方へと顔を上げた。そして懐より硬貨が中に入っている財布を取り出してさくらに手渡した。

 

 

「はい、これで合ってる?」

「大丈夫です、この柄は僕の部屋にある財布ですから。ありがとうございます。」

 

 

 さくらはきつねより受け取った財布を受け取ると、きつねにお礼の言葉を言う。そしてさくらはその財布のがま口を開けて中身を確認していた。

 

 さくらが中の硬貨を数えていると、きつねは「あ、そうだった!」とその場で手をポンと叩いた。そしてそのままさくらに視線を戻した。

 

 

「さくら、この後何処に行くの?」

「え?イリアス様が聖山アモスに行くと仰っていたので、イリアスポートから船に乗って隣のセントラ大陸に移動しようと思っていますけど。」

「そっか。じゃあイリアス大陸を出る前に南のタルタロスに行って!」

「反対方向じゃあないですか…。」

 

 

 きつねの言葉にさくらは苦笑いしている。さくら達はこの洞窟を出てからは地図でいうところの北東の方向にあるイリアスポートという港に向かう予定である。対してきつねの言っているイリアス大陸のタルタロスというのは、イリアス大陸の南側に位置しており、一アスポートとは反対の位置にある。

 

 

「流石に今からそちらの方向に行くのはかなり時間がかかってしまいますよ。」

「たまも様がさくらに話があるって。」

「たまも様が僕に⁉行きます行きます‼このさくら、たまも様のためなら山越え海越え何処へでも‼」

「たまも君と分かった瞬間の手のひら返しの早さよ…。」

 




ハーピーの羽についてですが、このような形に納めました。この小説にある二つの条件はゲームの設定ではなく、オリジナル設定となっていますのでご注意ください。
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