もんむす・くえすと! ぱらどっくすRPG きつねのお話 作:ケルル(ハーメルン始めました)
≪お知らせ≫こんにゃくの性別を男性から女性に変更させていただきます。
今後の物語に支障が出そうですので…。
「むふふ…。」
「………。」
「…さくらがにやけっぱなしで気味が悪いです。キリス、貴方が何とかなさい。」
「そう言われてもねえ…。私ではどうしようもできないさ。」
財宝の洞窟より旅立ったさくら達は今、今まで来た道を戻り、イリアスヴィルより南のタルタロスまでの道を歩いていた。イリアスより苦情が出ているが、キリスは困った態度を見せるも対処はしなかった。
当初、さくら達は財宝の洞窟を出た後、イリアスポートと呼ばれる港に向かう予定だった。しかしきつねの話を聞いて、イリアスポートに行く前にイリアスヴィルの南にあるタルタロスに向かうことになった。
「地図を見る限り、あともう少しで到着するはずだから、今しばらくの辛抱さ。もう少し耐えてくれ。」
「私は寛容ですからね、いいでしょう…と言いたいところですが早く到着してほしいものです。」
イリアスはキリスの言葉にげんなりとした態度を示す。イヤそうな感情を隠さずもせずに顔もしかめっ面になっていた。
そんなイリアスを気遣ったのかまでは分からないが、後ろからついてくるぷることわんこがブーメランや好きな食べ物の話へと話題を変えた。拙くとも一生懸命に話しかけるぷることわんこの姿はどこかほんわかとした空気であった。イリアスはそんな空気に癒されたのか、機嫌の悪そうな顔も段々と元の笑顔あふれるものへと戻っていった。
因みにさくらはどうなのかと言えば、完全に浮かれている様子であった。キリス達の先頭を行くのはまだいいとして、スキップをしながら進んでいた。ピューピューと若干空気を多く含んでおり、しっかりとした口笛が吹けていないようであるが、さくらはそんなことを気にしてはいない様子だ。キリスは口を引きつらせながらも、その視線は手に持つ地図をとらえており、さくらに何か言うことはなかった。
そんなこんなで着々と歩いていると、さくら達の視界に二人の人影が見えてきた。
それは最初見えたときには米粒のような大きさであり、その二人が誰か判別することは出来なかった。しかし段々と近づいていくことで、その姿がくっきりと見えてきた。
その二人はきつねの里にてさくらとキリスを見送った、たまもとこんにゃくだった。
たまもはその手に扇子を持ち、口元を隠していた。対するこんにゃくはさくら達に大きく手を振っており、「お~い!」とこちらに声を掛けていた。
「あれは…たまも様!」
「あ、ちょっと…行ってしまいました。」
「何となく予想は出来てはいたけれどね…。正に予測可能、回避不可能といったところだろうか。」
さくらはその二人の内一人がたまもであると視認すると目を輝かせ、自身の二つの尻尾を左右に振りながら走っていってしまった。イリアスはその様子に呆気に取られているようだ。キリスはそれを察していたようで、苦笑いしていた。
さくらはあまりにも走る勢いが付きすぎて、途中で転んでしまった。「ふぎゃ!」と情けない声が出ていたが、大きな怪我はなさそうで直ぐに立ち上がった。立ち上がって自身に付着した砂埃を手でパッパッと軽く払ってから再びたまもの元へと駆け出した。今度は大丈夫なようで転ばずにたまもの元へと行けたようだ。たまもの前へとさくらは来た後、たまもに話しかける。
「たまも様、お久しぶりです!」
「うむ、息災じゃの。元気にしておったか?」
「それはもう、元気が有り余るくらいです!こんにゃくさんも久しぶりです。」
「うん!久しぶりさくら!」
さくらが心底嬉しそうにたまもに話しかける。たまもはそんなさくらの様子に嬉しそうにスッと目を細めて笑っていた。隣にいるこんにゃくもさくらに話しかけられたことに元気に返事していた。
さくらがたまもと話していると、キリス達も追いついたようだ。キリスがたまもに対して話しかける。
「久しぶりだねたまも君。きつねの里振りかな。」
「そうじゃなキリス。さくらの仕事ぶりはどうじゃったかの。」
「いやはや、圧巻と言わざるを得ないね。勇者や魔王など、まだまだ私も知らないことだらけではあるが、その度に分かりやすい解説を添えて解説してくれるものだからね。お陰様で心行くまで異界の旅路を楽しませてもらっているよ。」
「そうか、それは良かったのじゃ。」
「えへへ…。」
キリスはたまもに仕事について聞かれて、率直の感想を伝えていた。それを横で聞いていたさくらは少し恥ずかしそうに顔を赤らめ、頭をポリポリ掻いていた。
「してさくらよ。話の前に一つ、聞きたいことがあるのじゃが良いかの。」
「何でも聞いてください。今制作途中のものから果ては身長でも、何でも答えますよ‼」
「そんな簡単に何でもと言ってしまってもいいのかいさくら君…。」
さくらはたまもの言葉に少し前のめりになっていた。先程よりも目の輝き具合が増しており、それはさくらの周りが少し輝いているような錯覚に陥るほどであった。キリスがさくらの言葉に若干呆れているようであったが、さくらは全く気にも留めていなかった。
たまもはそんなさくらの様子を見ながら、さくらの後ろを指さした。その指の先はさくらとキリスに置いてかれていた、イリアスとぷることわんこがいた。3人で仲良さげに会話していた。
「さくらよ。何故イリアスを連れているのじゃ。それも小さくなっとるイリアスを。」
「イリアス様のことですか。それでしたら魔王様の指示で監視を頼まれまして。」
さくらはたまもにイリアスの連れている理由を伝えた。イリアスヴィルではイリアスの横やりが入り、いらぬ誤解が生じてしまったようだが、今回はしっかりと伝えられたようだ。しかし魔王、つまりはアリスの指示であると聞いたたまもは眉をひそめる。
「魔王様が、じゃと?」
「そうです。イリアスベルクの宿でそう言われまして…。」
さくらがたまもに対して説明していると、イリアスがさくらに追いついたようでさくらの後ろに立った。イリアスはたまもに対して睨みを利かせ、威圧しているような態度を取り出した。対するたまもは再び扇子で口元を隠していた。
「さくらに対し何の用です性悪狐。つまらないものであれば許しませんよ。」
「自分の部下に会うことに何故面白さを問われなきゃいかんのじゃ…。理由など別に何でもいいではないかの。」
「いいえ、全く良くはありません。何せこの私の貴重な時間を削ってまでここに赴いてきたのですから。1分1秒たりとも無駄にすることは許しません。」
「その性格、聖魔大戦のときから何一つ変わっとらんのう…。」
たまもはイリアスの言葉に呆れている様子だ。さくらはイリアスが横入りしたことによって、少し離れた場所からイリアスのことをこんにゃくと一緒に見守っていた。イリアスとたまもが話していると、隣からキリスがこんにゃくに向けて話しかける。
「ところでこんにゃく君。突然で申し訳ないのだが質問してもいいかな。」
「私に答えられる範囲であればいいよ!」
「では…。イリアスヴィルで耳に挟んだことなのだが、こんにゃく君の名前にもなっているこんにゃくというものは食べ物の一種と聞いた。それは本当かい。」
「そうだよ!私はおでんの中のこんにゃくが好きだから、こんにゃくって言うの!」
「そ、そうか。好きな物より名を頂いているんだね…。」
こんにゃくはキリスの質問に、胸を張って答えた。キリスはその勢いに少し押され気味になっており、顔も引きつっていた。
「でも僕たちの中では全然おかしいことではないですよ。実際、僕の名前もそのようなものです。」
「そうなのか。ではそうなると、さくら君は桜が好きなのかい。」
「勿論です。因みに好きな理由としては、たまも様と初めて会ったのが桜の木の下でしたので、まるで運命みたいに感じて好きになったんです。」
「…まぁ、人の名前に文句は出さないよ。少し扱いが軽い気がしなくもないけれどね…。」
キリスはさくらの話を聞いていた。キリス的にはさくらとたまもの出会いについて、これ以上質問すれば恐らく暴走すると考えたのか、言葉を濁すようにして会話を終わらせた。
さくら達の会話がひと段落ついてキリスがイリアスの方に視線を向けると、イリアスの目が吊り上がっているのが遠目に見えた。恐らくたまもが何か気の触ることを言ったのだろう。その会話は先程よりも大きな声になっており、少し離れたところにいたさくら達にもはっきりと聞こえた。
「ぐぬぬ…その気に入らない性格は小さくなっても変わらずですか…。」
「小さいのはお互い様じゃろ…。気に入らないのであればあの時の様に、裁きの雷でも落としたらどうじゃ。」
「…いいでしょう。お望みとならば仕方ありませんね。」
イリアスはそう言うと片手をたまもに向ける。どこか得意げな顔でイリアス十八番の技を大きな声で宣告する。
「さあ、神の雷に討たれるのです!裁きの雷‼」
≪イリアスはたまもにさばきのいかづちを放った!≫
≪たまもにダメージを与えられない!≫
「あ、あれ?こんなはずでは…」
「…どうしたのじゃイリアス。これではさくらが作ったマッサージチェアなるものの方が、刺激があるのう。」
「言うではありませんかたまも。今に目に物を見せてあげます!」
イリアスはたまもに対して自慢の技を繰り出したはずが、手より出たのはまるで静電気のように小さな雷であった。たまもは一瞬呆気にとられるも、直ぐに気を取り戻して、イリアスのことを挑発する。イリアスはその言葉に青筋を顔に立てて再び手のひらをたまもに向ける。
「言うではありませんかたまも。今に目に物を見せてあげましょう!」
「何をしているんだい全く…。少し目を離した隙にたまも君に喧嘩を売って…。」
イリアスが次の攻撃を仕掛けようとすると、キリスがイリアスに近寄ってきた。何をするかと思えば、キリスはイリアスの両脇から手を通して、脇の下辺りをガシっと掴んだ。
そしてイリアスをそのまま持ち上げてしまった。キリスはイリアスより頭1個分しか身長は変わらなかったのでそこまで高くは上がっていなかったが、イリアスの足は宙にプランと浮かんでいた。
イリアスはキリスから逃れるため、その場で足をジタバタとして暴れだした。
「放しなさいキリス!この神聖な一騎打ちに水を差すというのですか貴方は!」
「一騎打ちも何もなかっただろうに…。そもそも、自称女神がたまも君の挑発に乗って一方的に仕掛けたように見えた気がするけどね…。」
キリスは暴れているイリアスを放すことはなく、逆に冷たい態度で返していた。イリアスが暴れる中、キリスは手で押さえながらもたまもの方に顔を向ける。
「すまないねたまも君。うちの自称女神が迷惑をかけたみたいで。」
「いやそれは別にいいのじゃが…。キリス、イリアスのことを自称女神と言うが信用していないのかの?」
「それはそうさ。突然現れた少女が自分は女神だと宣言してもそれは信じるに値しないとも…とそれはいいんだ。さくら君に何か用があったんじゃあないかな。」
「そうであったな。イリアスのことで忘れてしもうたわい。」
たまもはキリスの言葉にハッとした表情をした。そしてキリスが持ち上げているイリアスより視線を逸らすと、さくらの方に視線を向ける。さくらはたまもが向けるその視線に瞬時に反応して、たまもに近寄る。
「何でしょうかたまも様。」
「さくらよ。頼みたいことというのはこれじゃ。」
たまもは懐より一枚の紙を渡す。それは手紙のようで、何か文章が書かれていた。
さくらがそれをたまもより受け取ると、たまもは続けて説明する。
「七尾よりさくらはこれよりセントラ大陸に向かうと報告を受けての。そこでサン・イリアに行ったときにコーネリアにこれを渡してほしいのじゃ。」
「サン・イリアの城の地下図書室にいるコーネリア様にですね。分かりました。このさくら、コーネリア様にしっかりとお届けいたしましょう!」
たまもの話にさくらは自信満々と言った感じで、胸に手をポンと当てて応えていた。たまもはそんなさくらの様子に優しい笑みを浮かべた。それはまるで母が子供に見せるような優しいものであった。
「では頼むぞさくら、ウチはまだやることが山積みでのう…。しばらく顔も出せそうにないわい。」
「あはは…。たまも様も体調にはお気をつけてくださいね…。」
……………
「こんにゃく君、この地図だと付近に大きな黒点があるのだが…、これがタルタロスというやつなのかい。」
「そうだよ!」
さくらとたまもが話している間、キリスはこんにゃくに地図を指さしながら質問していた。キリスが指を指しているのは、地図上にある大きな黒い点のようなものであった。それはまるで地図に黒いインクを垂らしてしまったかの様に不自然なものである。
因みにキリスはいつの間にかイリアスのことを放しており、持ち上げられていたイリアスはぷることわんこに泣きついていた。
「タルタロス…。地獄や奈落の意味があるのは知っているが…、一体これは何なのだろうか…?」
「分からないなら実際に見たほうが早いよ!」
「え?あ、ちょっと!」
キリスがブツブツと独り言を呟いていると、こんにゃくはキリスの手を引っ張って駆け出して行った。彼女の手の引きはとても強く、また不意打ちであったことからキリスは対抗できずにそのまま連れ出されてしまった。そのまま2人はその地図の黒点がある方向に向かって走って行ってしまった。
キリスはこんにゃくに引っ張られながらもついていくと、遠くに穴のようなものが見えてきた。穴というのは比喩表現ではなく、地面に大きな穴が空いているのだ。それは近づくにつれて段々と大きくなっていき、キリスがその傍に来たときは、城一つよりも大きな大穴がそこには広がっていた。
「………。」
「ここがイリアス大陸の南のタルタロスだよ!これでも他のタルタロスと比べると一番小さいんだって!」
「これが一番小さいのかい⁉」
キリスはタルタロスを目にしてしばらく固まってしまった。あまりの大きさに口をあんぐりと開けてその場で呆然としていた。こんにゃくの言葉にハッと意識を戻したが、それでも更なる追加情報に、頭を抱えてしまった。
「南のタルタロスとこんにゃく君は言っていたが、他にもこのような地形があるのかい。」
「そうだよ!全部で6つ!」
「…なるほどなるほど、複数あるのか…。良ければ、それ以外にもタルタロスについて教えてくれないかい。」
「いいよ!ええっとねぇ…。」
キリスはこんにゃくにタルタロスについて説明を受けていた。聞けば、タルタロスというのは30年前に起きた大異変によって、世界各地に出現した6個の大穴であるという。それらはイリアス大陸に2個、セントラ大陸南に1個、セントラ大陸北に1個、セントラ大陸の南と北の間にある大海に1個、そしてヘルゴンド大陸に1個ずつ出現した。
それは前触れもなく突如としてできたものであり、これに恐怖する人も多かった。それもそのはずである。自身の住んでいる場所に、底の見えない奈落の穴が現れるのだから。
更に噂によれば、タルタロスが出現した周辺の村に住んでいる住民が消失するというものもある。そこに住んでいる人達からすればたまったものではないだろう。
また大異変後、イリアスがその姿を見せなくなったことも人々の不安を煽る一つの要因だと考えられるだろう。人々はイリアスの姿だけでなく、その声すらも聞こえなくなってしまったのだ。未知の事情が引き起こされ、そしてそれに恐怖しても縋る存在がいなくなってしまった。人々は当時、慌てふためき恐れおののいたことだろう。…張本人のイリアスは今、さくら達と共に旅をしているわけであるが。
「そうですか。一体誰がそんな奇妙なものを作り出したのでしょう…。」
「全くだ…。待て自称女神、いつからそこに?」
「貴方が彼にタルタロスのことについて教えを乞いていた辺りからですね。」
「ほとんど初めからじゃないか…。」
イリアスはこんにゃくの話に対して相槌を打っていた。キリスもそれに対して同調していたが、それはそれとして話の途中から参戦していたイリアスにツッコミを入れていた。
キリスはイリアスに話しかけながらもタルタロスをのぞき込む。キリスの背から頭をヒョコっと出す形で、イリアスとぷることわんこの3人もタルタロスをのぞき込んだ。その大穴は底が見えないほどに深く、どれだけ目を細めたとしても穴に何かあるかは見えることはなかった。
「凄いね…。」
「底が見えないよ!」
「正に地獄の入り口といった感じの見た目だな。仮に落ちてしまえば無事では済まないだろうさ。」
「地獄の門はこのようなものではありませんよキリス…。」
タルタロスをのぞき込んだキリス達は各々感想を言う。そしてこんにゃくからあまり身を乗り出していると危ないと制止の声がかかったことからキリス達は身を引っ込めた。
「しかしこんなものが世界に後5個もあるのか…。イリアスベルクで見た紫色のものと言い、この世界は終末を迎えようとしているのかねぇ。」
「私としては知らないことだらけで、頭が破裂しそうなのですが…。」
キリスは相も変わらずブツブツと独り言を呟いているが、イリアスは嫌な顔をして頭を抱えていた。ぷることわんこは何も分かっていなそうな顔で顔を捻っていた。
「お待たせしました~!」
4人がそれぞれの反応を示していると、さくらが駆け寄ってくる。手にはたまもより手渡された手紙が握られていた。
「お疲れさくら君、たまも君と話は出来たかい?」
「それはもう、しっかりと出来ました!おまけに追加のお仕事まで頂きました。」
「追加の仕事か、それは何だい。手に持っているその紙と何か関係があるのかな。」
「そうですね。これを届けるのが頼まれたお仕事です。」
さくらはそう言いながら先ほどたまもより渡された手紙をキリス達に見せる。その手紙は封がしてあったので中身を見ることは出来ないが、その手紙を郵送するのが次の仕事らしい。
「さくら、忘れてはいないでしょうね。セントラ大陸の聖山アモスの来訪が優先ですよ。」
「それは大丈夫です。お届け先はサン・イリアですので、その前に寄って行きましょう。」
イリアスはさくらの仕事に怪訝な表情を浮かべたが、さくらの言葉でそれを引っ込めた。そう話しているとたまもが近づいてきた。こんにゃくも傍に従えている。
「ではさくらよ、しっかりと励むのじゃぞ。」
「はい!僕にお任せください!」
「キリスよ。さくらに何かあったときは、頼むぞ。」
「任されよう。私も旅を楽しませてもらっているし、それくらいはお安い御用さ。」
「貴方にしては随分と過保護ですね…。」
たまもはさくらに激励の言葉を、キリスにはさくらの万が一について話していた。さくらは胸を張って答え、キリスはフッと口角を若干上げて笑った。
こうしてさくら達はたまもとこんにゃくに手を振られながら見送られた。来た道を引き返し、そして今度こそイリアスポートに向けて歩きだした。