もんむす・くえすと! ぱらどっくすRPG きつねのお話 作:ケルル(ハーメルン始めました)
「はやくはやく!こっちですよ!」
「は、はやいよぉ…」
「待ってください、さくら先輩…」
鳥のさえずりが聞こえ、動物たちも穏やかに過ごす中、森を駆ける妖狐が三人いる。一人ははやる気持ちを隠せずに駆け抜けている。そして、その後ろを追いかける二人はきつそうな表情を浮かべながらも懸命に追いかける。しかし前を走るさくらに追いつけることはなく、少しずつ差が離れてしまう。
「~♪」
先頭を走るさくらは二人のことを最早考えていないのか。一人さっそうと駆けてゆく。やがて二人との間はかなりのものとなり、きつねとかむろはさくらを見失ってしまう。二人は見失ってしまうと、乱れた息を整えるために一度その場にとどまる。
「ぜぇ、はぁ…。」
「…きつね先輩、水どうぞ。」
「持ってるから、大丈夫、だよ。」
二人は水を飲みながら近くに座り込みあたりを見渡す。先ほどまで追いかけていたさくらを探しているのだろうが、しかしその姿は見えない。そこにあるのは木々が生い茂る音、風が優しく肌をなでる触感、そして鳥の鳴き声がきこえるだけだ。
「…これからどうする?」
「どうしますかきつね先輩。さくら先輩も見失ってしまいましたし…。」
二人は悩む。見失ってはしまったが、先に行ったさくらを追うべきか。それとも諦めてきつねの里に戻るべきか。本を片手に興奮しているさくらを追いかけるというのが人情というものではあるのだろう。しかしだからといってもう見失ってしまったさくらを追うことは難しいことだ。どちらと決断することもできず、二人とも悩んでいると近くから足音が聞こえてくる。その足音は段々と近づき木々より一人の妖狐が姿を現す。
「…ここにいましたか。探しましたよ、きつね、かむろ。」
………
「「七尾様!」」
きつねとかむろは七尾と呼ばれた彼女に駆け寄る。上半身が人の体で、下半身が狐の魔物である彼女、七尾は駆け寄ってきた二人を受け止める。そうしてかむろが七尾に対して質問する
「七尾様、こんなところでどうされたのですか?」
「いえ、さくらときつね、そしてかむろの三人に対して用があり、探していたのです。」
「僕たちに用…?なんです?」
七尾はどうやら三人に用があったらしい。しかし思い当たることがないきつねは首をかしげている。かむろも同様に心当たりがないのかきつねと同様首をかしげる。その様子を見ていた七尾は続けて話をする。
「実はたまも様から探し物を頼まれていまして。何か古い本が一冊書庫よりなくなったそうです。」
「………。」
きつねはさっと目をそらした。その古い本というのに心当たりがあるからだ。その古い本というのはおそらく、自分が今朝書庫より持ち出した本のことだろう。しかもその本は見てすぐわかるほどに年季を感じる見た目であった。
「きつね、どうしたのですか。何か心当たりがあるのですか。」
「い、いえ…何でも…ないです。」
七尾に突然言い降られてしまいきつねは困惑することしかできなかった。わざわざ自分たちに用があると言ってから話したことがこの内容とは、確実に本を持ち出したのが自分たちであるとばれていると思っているからだ。
しかしまだ、逃れられる余地はある。何故ならその古い本を現在持っているのはきつねでもかむろでもなくさくらだ。たとえ自分が本を書庫より持ち出した、とばれていたとしても、この場に肝心のさくらがいない。つまりは責任を一部くらいは押し付けられるだろう。そういうふうに何とか持っていけないかときつねが頭を回している様子を見て、七尾はつぶやく。
「…そういえばですが。」
「たまも様が捜索を命じたのは私だけではないのですよ。」
七尾はそう話す。その言葉はきつねにでも、かむろにも向けられた言葉ではなかった。実際七尾は二人に目線を合わせいったものではなく、宙に広がる空を見ながら言い放ったものであった。はてさて、その言葉にはどのような意味が含まれているのだろうか。
…それは間もなく聞こえてくる一つの悲鳴により明白になることであろう。
「ギャー!」
森の奥より一人の悲鳴が響き渡る。それは先ほどきつねたちが追いかけていた声の性質に酷似しており、きつねにはその悲鳴が誰のものであるかは理解していた。そうして立ち尽くしているうちに赤い尻尾をはやした一人の妖狐が森林の隙間より顔をのぞかせる。
「…なんじゃ、もう二人は捕まえておいたのか。」
「えぇ、その細い目ではとらえきれないほどのこの鮮明な視界を上手く使い、あなたよりも早く見つけておきましたよ。」
「ぐぬぬ…。良く言うわ。その巨体ではこの森など満足に動けぬじゃろうに。」
「あらあら。」
さて、この場にきていきなり七尾と喧嘩している彼女であるが、彼女の名は八尾という。きつねの里には現在、たまもを除けば尻尾の数が七本以上あるのは七尾と八尾しかいない。つまり二人はこのことだけで考えればかなりの実力者であることが考えられる。二人は互いをライバル視していることもあり、お互いに言い合うくらいの仲ではある。
「きゅうぅ…。」
「あわわ、大丈夫ですか。さくら先輩。」
今作の主人公であるさくらは八尾の肩に担がれている。所々衣服に焦げ跡がついていることから、何かしらの術を八尾に使われたのだろう。頭に大きなたんこぶを作り気絶している姿を見れば、八尾に少々お灸を添えられたことが容易に想像できる。主人公がこれでいいのだろうか。
「さて…きつねの里に戻りましょうか。」
「そうじゃな。目的のものは見つけたからのう。」
「…あれ。ここは?」
どうやらさくらが目を覚ましたようだ。目をこすり、そして周りを見渡し、どういう状況かを飲み込もうとしている。
「さくら、目を覚ましたようですね。」
「さくら、おはよー。」
「さくら先輩、大丈夫そうで何よりです。」
「しかしさくらよ。何故にあの本を探していたのかの?」
「そ、それです、ね…。」
「あー。それ前にさくらから聞いたんだよね。さくらはねぇ…。」
「それ以上言わないで!お願いだようきつねくん…。」
七尾も八尾も目的は達したときつねの里に向けて歩き始めた。彼女達からすればすればいい迷惑であったこの件も終わりを迎えたのだろう。きつねの里にもどり、自身のすべき仕事に嫌でも取り組まなければならない。ため息も出そうな状態ではあるが、とりあえずこの三人が無事であることに二人は安堵している表情を浮かべていた。勿論三人が説教されるのは確定だが。
「!何か眩しい光が」
さて、ゆっくりと歩きながらきつねの里に向けて帰る一行であるが、ここでこの件はまだ終わったわけではなかった。一行が背を向けた森が突如として、神々しい光に包まれたのだ。
どうやら…まだこの件は解決したわけではないらしい。
続きは帰ってから投稿します。