もんむす・くえすと! ぱらどっくすRPG きつねのお話 作:ケルル(ハーメルン始めました)
「告白…。」
「そう!告白です。」
さくらの口から出た単語にキリスは困惑する。何故ならその言葉を上手く理解できなかったからだ。頭を抱えてさくらを見つめる。
「申し訳ないが。」
「はい。」
「強くなることと告白することの関係性が分からない。どうか私にもわかるように説明してくれ。」
「分かりました!」
さくらはキリスの言葉を聞いた後にその場で立ち上がる。勢いがあまりにもついていたからか、彼らが入る炬燵が少し持ち上がる。そして湯呑がぐらつく。キリスはすかさずに手で持ち上げることによりこぼすことを回避した。
「まず告白について話すんですけど。」
「あぁ。」
キリスは炬燵より少し体を乗り出した体制へとなっていた。危なかった、もう少しでこぼすところだったと、安心するキリス。しかしそんな彼を全く気にせずにさくらは話し続ける。
「僕はたまも様が好きです。」
「開幕出力全開で話すね、さくら君。」
最早たまもに対する好意を包み隠さずに話してしまうさくら。彼はキリスに驚く隙すら与えない。
「でも、たまも様は僕よりも遥かに強いお方なのです。」
「そうか、しかしその純粋無垢な好意とやらを真っ直ぐにたまも君に伝えては…。」
「それじゃダメなんです!」
キリスが発言するもさくらは炬燵をバンと叩きそれを遮る。湯呑が零れないかひやひやしながら見守るキリス。
「たまも様と僕の間にはとてもじゃありませんが、実力などの歴然とした差があります。」
「…。」
先ほど炬燵を叩かれたことにより口を途中で出すよりも一度最後まで聞いた方がよいと判断したキリスはさくらの話を取りあえず聞くことにした。
「魔王様に仕えた経験などは到底追いつくことはできません。」
「しかし!」
「実力だけであれば少しでもたまも様に追いつくことは可能なはずです!」
「…なるほど。」
「そうしてたまも様にお似合いの男になって…。」
「…ふぇへへ。」
「待て待て。そこで妄想に浸るんじゃない。」
………
「よし、こちら側に戻ってきたな。」
「すいません。つい…。」
炬燵に再び入りなおし、少し恥ずかしそうにするさくら。そんな彼をみて少し呆れるキリス。たまもに対する思いを語ったかと思えば、突然と自分の世界に入りだしてしまったさくら。彼をこちらに引き戻し一度お茶を飲んでキリスはさくらに話す。
「先ほどの話を端的に纏めてそこから解釈すると…、さくら君、君はつまりたまも君に釣り合うほどの男になり、そうしてから告白したい…。」
「そのような解釈であっているかい。」
「はい…、そういうことです。」
キリスはそうさくらに話すと顎に手をあて、何やらぶつぶつ独り言を言い出した。先ほど暴走してしまったからか、さくらはキリスに対して気まずそうだ。
「…あの、僕は変なことを言ってしまったでしょうか。」
あまりにもキリスが深刻そうに考え込んでいるため、さくらは自身の発言に段々と自信が持てなくなってきた。ここまで困らせてしまうとはと、少し態度も落ち着かなくなってしまった。
しかしそんなさくらに対してキリスはあっけらかんとした態度で話す。
「いや、別に何もおかしなことはないさ。」
「でも、キリス様を困らせてしまいましたし…。」
「今考えたことは全く別のことさ。さくら君の話とは違うことであるとも。」
キリスはさくらを心配させないためにかそのように話すも、さくらはまだ不安そうな顔をしている。そんな様子を見てキリスは言葉を続ける。
「そもそも、だ。」
「は、はい。」
「男子が本気で女性のことを恋焦がれる話をしておいて、それはおかしい、そんなものはいけないことだと否定する輩が普通いるかい。」
「それは、いないと思います。」
「第一、本気でたまも君のことを思っているのだろう。その思いを少なくとも私は馬鹿にはしないさ。」
さくらはその言葉を聞いて唖然とした。そうしてしばらく経った後に目を輝かせ始めた。この思いを恥ずかしがらずに伝えて、それをキリスは否定しなかった。その事実がとても嬉しかったのだろう。その視線には若干尊敬の眼差しが混じっているように感じた。
「ただし。」
「はい!」
「だからといってこのような召喚術に安易に頼ることは感心しないな。」
「それは…、そうですね。」
………
後にキリスよりさくらは多少の説教を受けた。魔法の使い方から始まり、そこから魔術の危険性や召喚術の怖さなどの話を小一時間されていた。さくらはいつの間にか正座で話を聞いており、耳もシュンと折りたたんで説教されていた。
「全く、私だからよかったものの。これが悪意のある存在だったらどうしていたんだい?」
「面目ないです…。」
「ただいま!」
そうして幾らか時間が経過したころだろうか。キリスが説教している間に陽は沈み、あたりはすっかり暗くなってしまった。そうすると、日々の労働を終えてそれぞれの家に帰る時間である。となればつまり、昼間に畑仕事に出ていた同室の彼、こんにゃくも帰宅する時間であった。
「こんにゃく君、お仕事お疲れ様。」
「キリス様!お疲れ様です!」
昼間に一度会っただけではあるが彼はキリスのことをしっかりと覚えていたようだ。キリスに対しても初めて会ったときと変わらずに元気に挨拶する。
そうして、こんにゃくは持っていたクワを外の物置に置き、部屋に備え付けられたキッチンで手を洗った。そうしてから手を拭きながら炬燵の中に入っていったが、ふと思い出したように、さくらを見る。
「さくら!」
「何です?こんにゃく君。」
「たまも様の元に行かなくていいの!」
「…あ!」
そう言われるとさくらは血の気が引いたように顔が真っ青になっていった。あわわわという感じで口に手を当ててすぐに立ち上がった。そうして立ち上がって彼は、部屋の扉をブチ破る勢いで開けて飛び出していった。実際、何個か金具のようなものが飛んで行った。
「…何だいさくら君。たまも君から何か招集でもされていたのかい。」
「いつものだから大丈夫!あんまり気にしないで!」
そう話すと彼は気にしていないのか、炬燵の上にある煎餅を食べ始めた。しかしキリスからしてはそう言われると少し気になってしまう。
「いつものと…、こんにゃく君は今言ったがどういうことかな。」
「あまり気にしない方がいいよ!」
キリスは勿論この答えでは納得できないのか、首をかしげていた。しかしこんにゃくはそんな様子は気にせずにキリスに煎餅を差し出した。
「ん!お勧めは醤油!」
「…まぁ、考えても情報が足らないな。その煎餅、頂こう。」
あまり納得は言っていない様子ではあるが、煎餅の持つ計り知れない魅力を見せつけられてしまったので、一旦考えないことにしたキリス。炬燵に再び入り、煎餅を堪能する。
そうして幾らか時間が経ち、キリスはふとこんにゃくに話しかける。
「そういえばなんだが…、こんにゃく君。聞いてもいいかい。」
「何!僕で答えられるなら答えるよ!」
「さくら君は明日から大きな仕事を任せられていると聞いたが、それはどの様な仕事か知っているかな。」
「えーとね!確か…。」
「勇者の洗礼の儀式の視察とか言ってたよ!」
…
……
………
「はぁ…はぁ…。」
先ほど部屋を飛び出したさくらは夜のきつねの里を駆ける。その身に流れる汗など気にせずに。その顔にはもはや余裕など残されていないが、その歯を食いしばりながらも懸命に走る様子を見れば、余程の事態であることが分かる。
さて、彼がその身体の限界をも気にせずに向かう先は彼の主人、たまもが住む、きつねの里の中心にある家である。そこに到着した彼は息を整える暇もなく、その扉を開け放った。そうして家の中に鎮座していた、人物に話しかける。
「たまも様!遅れて…しまい…申し…わけあり…ません。」
「おぉ、漸く来たのぅ。」
そこではたまもが待ち構えていた。妖美な雰囲気をまといながらも和服を着こなすその姿は、見る者全てを魅了するだろう。
「はぁ、はぁ。」
さくらはここまで休憩なしで走ってきたせいか、その場で膝をつき息を整えていた。やがて息が整うと彼は下駄を脱ぎ、後にたまもの前に座り込んだ。
「…たまも様。少々遅れましたがさくら。召喚に応じ、ここに参りました。」
「うむ。しっかりと来られて安心したぞ。」
「たまも様、明日のことなのですが…。」
「そうじゃな。じゃがそれよりも大事なことがあるじゃろ。」
さくらは明日から始まる仕事の打ち合わせを始めようとしていた。しかしたまもはそれ以上に大事なことがあるといった。
「大事なこと…?えぇと。…申し訳ないですがそれよりも大事なこととは何ですか。」
「それは昼にしっかりと言ったはずじゃぞ。」
そうしてさくらはその家にある、屏障具の奥に連れていかれた。そこには一つの布団が敷かれていた。夜に一つの布団に男女ペアが一つ。…この世界の常識からして何となくわかるだろう。
「…たまも様、えっと、もしかしてなのですが…。」
「察したかの。そう、仕置きじゃ。」
さくらは察した瞬間にはもうたまもに押し倒されていた。その腕を抑える手には見た目では考えられないほどの力が入っており、到底抜け出すことはできないであろう。
「…たまも様、そのいつも言わせていただいておりますが優しくして頂けると…。」
「そうじゃのぅ…。」
たまもはさくらの言葉を聞いてはいるが、それとは関係なしに舌なめずりをした。そうしてさくらに見せるその表情は、正しく捕食者が獲物を食らう瞬間に見せるものであった。
「そうじゃな…今日時間に遅れてなければ、考えんでもないぞ。」
「えっと…つまりは。」
「無理じゃ☆」
「たまも様、ちょっと待って…。」
「あひぃぃぃぃ……!!」