もんむす・くえすと! ぱらどっくすRPG きつねのお話 作:ケルル(ハーメルン始めました)
たまも「そうじゃな。」
さくら「あひぃ…。」
「遂にはさくら君、昨日帰ってこなかったな…。」
翌朝、キリスは呟く。彼が言った通り、さくらはたまもの元へと血相を変えて走り去った後戻ってこなかったのだ。キリスは心配になりながらも彼の帰りを待っていたが、このようなことは初めてではないのか、同室のこんにゃくは落ち着いていた。
落ち着いているのかもはや慣れているのかもはや分からないなと、未だ布団で夢見心地な彼、こんにゃくを見て思う。その驚きの矛先は自身が知らない物だけでなく、さくらとこんにゃくの二人にも向けられていた。
それはさくらが部屋を飛び出してキリスとこんにゃくの二人となり、幾らか時間が経ったときであった。
「そういえば、こんにゃく君はどこで寝るんだい。この部屋にはどうやらベッドか、代わりとなるソファがないようだが。」
「なんでベッドとソファ?布団敷くから大丈夫だよ!」
「布団?それはベッドの亜種みたいなものかな。」
こんにゃくはキリスにそう話しながら、炬燵を畳み始めた。その後に部屋の隅にある布団を部屋に敷き始めた。キリスは布団と言うものを初めて見るのか、敷布団や枕を手に取り、物珍しそうに目を輝かせて見ていた。
「なるほど。ベッドに付属している骨組みがこの布団とやらでは必要ないのか。これならば場所も選ばないし、何よりも搬入などの手間も必要ないな。」
「難しいことは分かんないけどすごいでしょ!」
キリスが布団に感心しているとこんにゃくは何故か誇らしそうに腰に手を当ててムフーと息をついていた。そうしながらもキリスは布団を触っていると、何かに気が付いたのかこんにゃくに話しかける。
「そういえば…この布団は二組しかないようだね。」
「?そうだね。」
「さくら君とこんにゃく君で二人とも使うと考えると…私はどこで寝ればいいんだい。」
キリスが気になった点としては、こんにゃくが部屋に敷いた布団は二組しかないということだ。二人が元々使用している部屋であることを考えると、布団が二組敷かれるのは何も変なところはない。しかし今回はキリスがいる関係で、この部屋に合計で三人寝泊まりすることとなる。そうなれば布団が二組しかないことは途端に不可解なこととなってしまう。
こんにゃくはそれを聞き少し固まってしまったが、すぐに再起動しキリスに話しかける。
「大丈夫!さくらは帰ってこないから!その布団使っちゃって!」
「帰ってこない?それはどういうことかな。」
部屋を飛び出したさくらは今夜この部屋には戻ってこない。その事実を聞かされたキリスは首を傾げた。その理由を聞いたが、先ほどまでどのような話にも元気に返答していたこんにゃくは珍しく言い淀んでいた。あまり話したくないことなのだろうかとキリスはさくらと話していた内容を思い出した。
「なるほど。帰ってこないというのはさくら君が話していた、明日から始まる大きな仕事とやらが関与しているのか。」
ちがうかいとこんにゃくに話すキリス。そうしてしばらく経った後、こんにゃくはその質問に対して回答した。
「そ、それも関係あるよ!」
「…それも?」
それもというのはどういうことだろうか。まだまだ疑問が絶えないキリスであった。その点に関しても質問するがこんにゃくは「明日も早いし早く寝よう!」と言い放ち、部屋の明かりを消すとすぐさま布団に潜り込んでしまった。
こうなってしまっては質問も何もできないなと諦め、キリスも布団に潜り込んだ。ベッドとは違う感触を楽しみながら、キリスも深い眠りへと落ちていった。
「しかし今思えば、部外者には話せない事情というものもあるな。」
そして話は冒頭に戻り翌日の朝、キリスは布団で半身を起こしながらそう考えた。よくよく考えれば自身はたまたまここに来ただけのよそ者である。そうなれば当然に話せない事情と言うものは存在する。こればかりはどうしようもない。
「仕方がない。さくら君にでも直接聞くことにでもしようか。」
そう言うとキリスは立ち上がる。キリス的には正直自身が関与するものでなければどうでもよかった。さくらが話さなければ、それ以上問い詰めるつもりもなかった。唯々単純な興味がキリスにはあったのだ。
キリスは立ち上がった後、部屋の隅に立てかけられた大剣を背負い部屋を出る準備を始めた。するとキリスの周りに四色の光が漂い始める。
「あぁ。君たちもおはよう。」
キリスはそう話しながらその光を撫でる…?いや、緑の光に手を添えた後、人の頭を撫でるかのように手を水平に左右に振り始めた。他の三色の光も彼の手に近づいた。まるで子供が大人に、私の頭も撫でてとお願いしているかのようであった。
「ふふっ。大丈夫だとも。他のみんなも今撫でるから。」
緑色の光が彼の手から離れた後、私も私もと言いたいのか他の光も彼の手に近づく。そうして彼は他の光のことも撫でて(?)いた。
………
幾らか時間が経って、光たちを撫で(?)終わった後にキリスは、さくら達の部屋を出て居住区より出ていた。そうして歩き続け、きつねの里の中心にあるたまもの家へと向かう。
「しかし、この里はとてもいい。私の故郷よりも活気があって羨ましいほどだ。」
キリスは歩きながら周りを見ながらそう呟く。その脇にはクワを持ち、汗を拭いながら畑に勤しむ人や、台車に商品用の物の荷物を入れて元気よく走り抜けていく魔物がいる。
「…魔物はあれだこれだと教え続けられてきたが、やはり私はそうは思わないな。」
「ごめんなさ~い!通りま~す!」
そのように周りを見ていて気を取られている彼の後ろから声が聞こえる。キリスは振り向くと台車を引きながらキリスに向かって走ってくる銀尾が一人いる。キリスは道の脇に移動しぶつからないようにした。
「ありがとう~!」
「こちらこそすまないね。お仕事お疲れ様。」
銀尾はそう言いながら走り抜けていく。そうして商店について店に待機していた銀尾と協力して台車から荷物を下ろしていく。とてもきつそうな作業ではあるが、それでも仲間の銀尾と笑いながら作業している。
「百聞は一見に如かず、だったかな。やはり実際に見なければ見えてこないものもあるな。」
歩き続けて数分後、キリスはたまもの家の近くへと到着した。先日見た建物であったのと、村の中心にあることから印象に残っていたのか、キリスは間違えずに来られたようだ。
「さてどうするかね。」
キリスはその場で腕を上に組み、背筋を伸ばした。今のキリスにはやることというやることが特にはない。さくらが何かしら自身に何か命じているならまだしも、その彼は今キリスが目の前にいる建物の中にいるという。はてさてどうするかと考えているとその建物の扉が開き、男女のペアが出てきた。
「じゃからそれが起きたら先より言う通りにするのじゃ。」
「そうおっしゃられてもたまも様、それは現場判断ということになってしまいますよ…。」
出てきた二人組というのはやはり、たまもとさくらであった。何やら話し合いながら家より出てきた。今日より始まる仕事な話であろう。しかしキリスはそれよりも気になることがあった。
キリスの目に留まったのは彼らの顔である。顔と言っても別に変なものが付着しているというわけではなく、その対称さが気になった。
さくらの顔はがりがりになっているにもかかわらず、反対にたまもの顔は昨日見たよりもつやつやしているように感じた。
キリスは意外に感が良かった。昨日突然と飛び出したさくら。一夜通しても部屋に戻ってこなかったこと、そしてこの二人の外観的変化。ここから導き出される結論にキリスは。
「なるほどなるほど。」
「あ、キリス様おはようございます。」
「さくら君。」
「昨日はごめんなさい。突然と部屋を飛び出してしまって…。」
「昨日はお楽しみでしたね、というやつだったのだね。」
「うぐぅ。キ、キリス様⁉」
微塵も隠そうともせずに本人たちに言い放った。
………
「びっくりしましたキリス様。そこまで大きな声で言わないでくださいよ。」
「いやぁ、すまないねさくら君。二人を見た途端に何故か言いたくなってしまったんだ。」
失敬失敬と頭をこつんと手でたたきながらキリスは申し訳なさそうに謝罪する。それに対してさくらは半泣きになりながらキリスに抗議する。
「しかしだ。こんにゃく君もいつものことだと言い張っていたよ?」
「こ、こんにゃくさんまで。」
「はいはい。話はそこまでじゃ。」
打ちひしがれるさくらを他所に、たまもが一度会話の流れを止める。
「キリスも面白がるのもそこまでじゃ。」
「私としてはもう少しイジリ倒してもいいのだけれどもね。」
「さくらもこの程度でいじけるでないわ。」
「うぅ、たまも様ぁ…。」
たまもはそこまで言って一度手を叩きさくらをみる。
「分かったらさっさと準備するのじゃ。」
「分かりました。たまも様。」
「仕事…。そういえばなんだが。」
さくらはたまもに言われて一度自身の部屋に戻るのか、きつねの里の居住区の方向へと走っていく。キリスはその会話を聞いて思い出したのか、たまもに昨日より疑問に思っていたことを質問する。
「何じゃ、キリスよ。」
「そのさくら君が今日より行う、大きな仕事とは何だい。」
「そうじゃな、そういえば話しておらんかったの。」
たまもはさくらが走り去ったことを確認し、キリスに向き合う。
「近頃イリアスヴィルにて勇者が誕生するという噂を耳にしたのじゃ。」
「勇者…、勇者ねぇ…。」
キリスは勇者という単語を聞き、腕を組み考え始めた。彼の世界にも勇者という伝承か、若しくはその人物でもいたのだろうか。
「其方の世界にも勇者がいたのかの。」
「あぁそうだとも。私の世界でも有名さ。」
キリスはそう話すとたまもの方に再度向き合った。
「そうだな…。世界を脅かす邪悪な存在がいて、それを打ち負かすことにより世界を救う。勇者とは、そのような伝承上の存在のことだろう。」
「うむ。大方そのような認識で構わんのじゃ。」
たまもはキリスの言葉を聞いて頷いた。多少の認識の違いはあれど、勇者が世界の役に立つ存在であることの認識には差異が無いようだった。
「さくらが今日より遂行する仕事というのは、新しく誕生する勇者の情報集めが一つじゃ。」
「生誕する勇者がどのような存在かを見極めるということかな。」
「そうじゃな。大きくはそうなるの。」
キリスがたまもの話を聞き頷く。どのような世界でも勇者というのは絶対的な存在だ。その彼らの多くが偉大な力を秘めていることがほとんどである。キリスは、たまもはおそらく、勇者が役に立つ存在であるのなら、上手く取り込もうとしているのだなと考えた。
「そしてもう一つの仕事の方が重要なのじゃが…。」
「もう一つの方が大事なのか。それは何なんだい。」
「どうやらイリアスヴィル付近に魔王様がおるとの情報があるのじゃ。」
「…なるほど?」
先ほどまで勇者の話をしていたかと思えば今度は魔王の話を出してきた。話の内容がどのように転ぶか分からないキリスはたまもの話を口出しせずに聞くことにした。
「魔王様は力を奪われた白兎を追っておるのじゃが…。」
「イリアス大陸のイリアスヴィル付近にまで来ておるとの情報が先日はいったのじゃ。」
「…。」
「してイリアスヴィルにて魔王様と合流し。」
「魔王様が困ったときに助力するというのがもう一つの仕事じゃ。」
「…。」
キリスはその話を黙って聞いていた。キリスは今知らないが、たまも達は魔王直属の部下である。魔王様の役に立つために各地の情報を集めたり、仕事を手助けしたりするのがたまも達の役目である。
「してキリスよ。お主にも頼みたいことがあるのじゃ。」
「頼みたいこと?それは何だい。」
先ほどより優しい雰囲気をしていたたまもだったが、身にまとう覇気を変えてキリスのことを見つめた。心なしか視線も鋭くなっているように感じられる。これにキリスは眉をひそめながら聞いていたが、その表情を変化させて、たまもの瞳をしっかりと捉える。
「これらのさくらの旅路を、どうか手伝ってほしいのじゃ。」
「…まぁ、別に構わないが。」
キリスの返答がたまもを満足させるものであったのだろう。先ほどまで纏っていた覇気を無くし満面の笑みを浮かべるたまも。キリスはその反応に対して苦笑いする。
「随分と大げさだねたまも君。そこまで私がこの首を縦に振らないと考えていたのかい。」
「まぁそうじゃな。お主はまだよく分からんしの。」
「ははは。まぁ仕方のことだな。私はここに昨日呼び出されたのだから。」
「まぁ…承諾してくなかったら、その身に纏う魔力を問い詰めて、そこから脅すつもりじゃったがの。」
「…それについて、今は何も言うつもりはないとも。」
たまもはカッカッカッと大きく笑うも、キリスは先ほどまで見せていた表情を曇らせた。しかしよく見れば、たまもは笑ってはいるが、キリスに対する鋭い視線は変わっていなかった。
「…。」
「…。」
「たまも様、キリス様、お待たせしました!」
二人が視線で火花を散らしあっているうちにさくらが戻ってきた。しかしさくらが持っている荷物としては武器を背負っているくらいでそれ以外は何も持っていないという身軽なものであった。
「そんな荷物で大丈夫なのかい。さくら君。これから始まる旅にしては、随分と身軽に見えるが。」
「大丈夫です。異次元式ポケットを持っているので、そこにいろいろと入れています。」
彼はそう話しながら自身の衣服より小さなポケット型の形状の物を取り出した。どうやらここに旅に必要な備品を入れているらしい。
「うむ。旅支度は大丈夫そうじゃな。」
「はい!たまも様。全力でお仕事を遂行してきます。」
「キリスよ。さくらの面倒、しっかりと見るのじゃぞ。」
「言われなくてしっかりと見るさ。」
準備が整ったさくらはたまもに挨拶を済ませて自身のポケットを漁る。そうして手に白い羽を手に持ち、それを空に掲げて言い放った。
「では行きます!ハーピーの羽!」