ロドス・ラズハ・アイランド   作:青瑠璃

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ソーンズとエアースカーペとパレットソード

 

〜ドクター目線〜

 

 コンコン。

 穏やかな日々が流れているロドス・ラズハの執務室に、一つのノック音が聞こえた。

「どうぞ」

 と私が返事をすれば、失礼するとロゴスが入ってきた。

「ロドスの時の情報があまりにも雑多に敷き詰められていてな、今更ながらこのような記録を取り出すことが出来たのだ」

 そう言いながらロゴスは私のデスクに一つのボイスレコーダーを置いた。恐らくメカニストと協力して記録をデバイスに読み込ませたのだろう。

「これは……?」

 ボイスレコーダーに目配せをして私が訊くと、ロゴスはいつも伏せ目がちな目を更に伏せてこう答えた。

「どうやらソーンズが、記憶喪失になる前に残したもののようだ。本人に聞かせていいか判断し兼ねたので、まずはドクターに持って来た」

「ソーンズが……」

 私はデスク上のボイスレコーダーに視線を落とす。記憶喪失になった人物がいきなり自分の記録を見たら混乱する可能性もあるだろう。だが、ソーンズなら、大丈夫そうな気も……と思いながらも、それは内容次第なのかもと私は答えをすぐに出せずにいた。

「聞いてみてもいいかな」

「うむ。本人に内容は聞かせてはいないが、そもそも覚えていないのだから構わないと言っていた」

「そっか」

 ソーンズらしい回答だなぁと思いながらも、妙にそのボイスレコーダーを聞くことを躊躇ってしまう。私は二年前と似たような状況に、緊張感を覚え始めていた。

「人はしばらく来ないだろうが、人避けをしようか?」

 ロゴスが心配したのかそう言ってはくれたが、私は首を振った。

「いや、あとで自室で聞くことにするよ」

 なんとなく、ここでは聞いてはいけない気がしたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがてその時が来た時には、もう時刻は真上を過ぎていた。

 私は少し早足で自分の寝室に向かい、握り過ぎて手汗がついてしまったボイスレコーダーを慌てて綺麗なタオルで拭き取った。ソーンズは、これで何を記録していたのだろう。私はベットに腰掛け、ボイスレコーダーの電源をオンにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コンコン。

 

「来たか」

 

「開いてる」

 

 今と全く変わらないソーンズの声が、ボイスレコーダーの方から聞こえてきた。次にはカツカツと足音が聞こえ……この歩き方も聞き覚えがあるなと私が思っていると、ソーンズの話し相手が喋り始めた。

 

「急に悪いな」

 

 エアースカーペだった。

 

「いや、構わない。それより何の用だ」

 

 この記録を、ソーンズがわざわざ残していた意図はなんだろうか。私はまさかの登場人物にますます緊張しながら、ボイスレコーダーの音声に耳を傾けた。

 

「パレットソードを作って欲しい」

 

 え?

 

「なぜ俺に言うんだ。武器についてなら俺より詳しい人間がいるだろう」

 

 まさかこの話をボイスレコーダーで聞けるとは思っていなかった私は、ソーンズの淡々とした口調を目の当たりに息をするのも忘れそうだった。

 

「色々聞いて回ったんだが、上手くいかなかったんだ。最初は街の武器商店、次はロドスにいる武器職人……それと……」

 

「何が上手くいかなかったんだ?」

 

「どんな武器も凍ってしまうんだ」

 

「凍る……?」

 

 その時、ボイスレコーダーの奥で何かがグツグツする音が入った。恐らくソーンズは、この時は煮沸の必要な研究か何かをしていたんだろう。ということはこの話は、ソーンズの研究室でしていたということになる。

 

「お前の武器は漏電する武器だろう。なんの話をしているんだ」

 

「パレットソードの話だ」

 

 沸騰している音が止まる。煮沸し終えた何かの火か熱を止めたのだろうということが伺えた。

 

「話が読めないな」

 

「アンタなら、凍らない武器を作れると思ったんだ」

 

「これから雪山にでも行くと?」

 

「いや」

 

「なら新しい武器に変えるのか」

 

「違う」

 

「だったらなぜ……」

 

「アンタは、息子が自分と同じ武器が欲しいと言ったら作ってやるだろう?」

 

 ソーンズが黙り込んだ。エアースカーペがずっと核心を言わないのは、この時はまだ自分に子どもがいることをロドスの皆には秘密だったからだろう。だが、どうしてもスノーグラウスにパレットソードをあげたかったエアースカーペは、とうとうそう言ったのだと思われた。ソーンズはその一言で、全てを察したに違いない。

 

「……そうかもな」

 

 長い沈黙のあと、ソーンズがそう答えた。すると足音が聞こえた。多分エアースカーペがソーンズに一歩近づいたのだ。

 

「もう頼めるのはアンタしかいないんだ、ソーンズ。特殊な……その、体質で」

 

 エアースカーペの淀んだ言葉に、はぁと小さくため息を吐くソーンズの顔が想像出来た。

 

「必ず出来る訳ではないし、望んだものとは違うものかもしれない。それでいいのか」

 

「出来る限りのことはしたんだ。その時は……諦めてもらう」

 

「そんなに我慢がきくのか?」

 

「我慢は、させてばかりだ」

 

 ソーンズはまた黙り込んだ。二人はそこまで多くを喋るタイプではないし、まだボイスレコーダーは続くんじゃないかと私は次の会話を待った。

 

「……分かった。詳細を聞かせてくれ」

 

「いいのか?」

 

「出来る限りのことはやってみよう」

 

「ありがとう、ソーンズ……!」

 

「……」

 

 そのエアースカーペの言葉に、ソーンズは何も答えなかった。エアースカーペは更に続けた。

 

「それと、俺たちに息子がいることは、まだ秘密にしていて欲しい」

 

「いずれはバレるぞ」

 

「時が来たら話す。アイツがロドスに来たいと言ったらな」

 

「そうか」

 

 それからゴトリと小さな音がした。ボイスレコーダーを持ち上げた音だと思われた。

 

「それと、この会話は念の為記録していたが、破棄した方がいいだろうか?」

 

「記録していたのか」

 

「急なお前からの訪問だったからな。言った言わないでトラブルになる前に録音していた」

 

「そうか……急に悪かった」エアースカーペは話し続ける。「出来れば、それをどこかに保管して置いてくれないか? いつかアイツに聞かせてやりたい」

 

「まだパレットソードの中身も出来ていないんだぞ」

 

「アンタならやってくれるだろ?」

 

 また短い沈黙が続いた。

 

「…………分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぷつりと録音を停止する音が聞こえ、私はボイスレコーダーの電源をオフにした。まさか二人は密かにこんな会話をしていたとは。私は息を吐きながら肩から力を抜いた。

 ボイスレコーダーへ視線を落としながら、これをどうするかなんてもう決めていた。スノーグラウスに渡そう。もしかしたらソーンズやエアースカーペにも聞かせたら何か思い出せるかもしれない。マホガニーやツルギも、聞きたがるだろうな。

 私はボイスレコーダーを鍵付きの引き出しに仕舞ってようやく自分のベットに寝転がり、目を閉じた。どうしてソーンズは、エアースカーペのパレットソードを作って欲しいという願いを叶えてみせたのか、今ようやく分かった。

 お互い、父親だったからだ。

 もし記憶喪失ではなかったら、と考えてしまう気持ちをどうにか押しやって私は寝返りを打つ。そこにはソーンズとエアースカーペが穏やかに話しながら子どもたちの成長を見守る姿があった。それは優しく、温かな夢だった。

 

 おしまい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





あとがき

これは、双星方舟〜ラズハ・シップ〜でソーンズがスノーグラウスのパレットソードを作った、という話からすでに考えてあったストーリーでした

まさか白き海で本当に錬金術師で現れるとは思いませんでしたよ、ソーンズくん……

発想を得たのはインディゴの資料からでした。インディゴの杖はどうやら特殊らしく、どういうことなのかと困った技術部の人間?がソーンズに相談したということから、スノーグラウスの特殊な体質を解決してくれる武器はソーンズが作ったということにしよう、と決めてはありました。物語上、原作キャラの、しかも1番重要なキャラを登場させたいという意味もあって

このような後日談でボイスレコーダーがドクターの元に届くのも書く予定で

それに、あのソーンズくんの神経毒を放つ武器は自分で作ったでしょうしね。武器くらい作れたらいいな、という単なる私の妄想捏造だったんですよw

まぁ多分ですが、ソーンズくんが作ったのは「凍らないアーツユニット」を作っただけで、外側のパレットソード自体は市販?のものか何かだったと思います。パレットソードが市販であるのか私には知りませんけどね……()

ということで白き海のストーリーはなんとか評価2でクリアして読み終わりましたから、いつかそのストーリーを反映させたお話も書きたいなと思いながら、まだ書きたいお話もありますからね、モチベが行方不明になるまではゆっくりと書いていきたいと思います

ここまでの閲覧ありがとうございます

ではまた
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