ロドス・ラズハ・アイランド   作:青瑠璃

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我が子がもし眠れないと言いに来たら(サンドレコナー&イウニ、サンドレコナー&セネト編)

 

〜サンドレコナー&イウニ編〜

 

 夜。ロドス・ラズハの私の自室で休暇を取っていると、周囲警戒用のカラクリ羽獣が反応を示した。

 何事かと周囲を見ても変化はなく、気のせいかと思いたかったが、私のカラクリ羽獣が狂った試しは今のところない。もしかして外に何かいるのではと少しだけ扉を開けると、カラクリ羽獣で確認する必要がないことに気づいた。

 イウニが部屋の前で座り込んでいたのだ。

「私の部屋の前でどうして……」

 困惑しながらイウニに声を掛けたが反応がない。もしや怪我でもしているのかと明かりをかざしてもそのような様子はない。熱もないしただ眠っているみたいだった。

「……イウニ」

 揺さぶって声を掛けてみると、その真っ赤な瞳がパッと開いてイウニが飛び起きた。反応が遅れたら額同士がぶつかるところだった。

「ご、ごめんなさい、サンドレコナー!」

 それから私から目を逸らしてそのまま床にうずくまり、何を言い出すのかと思えば謝罪の言葉。私には謝ってもらう理由が思いつかない。

「謝罪の理由はなんだ? そんなところで寝ていたら風邪を引くだろう」

 私はそう訊くと、イウニは気まずそうに目を逸らし続けた。私は、懐にあるカラクリ羽獣を取り出した。

「これをあげよう。追従型ではないから安心するといい」

 こんな時どうしたらいいか分からず、前にドクターにカラクリ羽獣を渡した時にとても喜んでいたことを思い出し、イウニにも同じことをしてあげた。イウニはようやく体をこちらには向けたが、目は合わなかった。

「ありがとう、サンドレコナー……」

 イウニは小さな声で礼を言いながらカラクリ羽獣を受け取った。こういう時のために、追従型のないカラクリ羽獣を用意して置いて正解だったみたいだ。

「早く部屋に戻りなさい。朝起きて君が部屋にいなかったら皆が心配する」

「うん……」

 とイウニは答えるものの動きが緩慢だ。普段のイウニならもっと活発に動いていただろう。私は追従型のカラクリ羽獣も取り出した。

「このカラクリ羽獣がイウニの部屋まで付き添う。それでいいか?」

 そして私がカラクリ羽獣を飛ばすと、イウニの周りをパタパタと羽ばたいた。

「ありがと、サンドレコナー」

 ようやく言葉がはっきりしてきて、もう大丈夫だろうと思った矢先、イウニが私に抱きついてきて驚いた。まだ寝ぼけているのではないだろうか?

「あ、ああ、どういたしまして……」

 なんとか私がそう返事をすると、イウニはなんてことないかのように歩き出して行った。念の為カラクリ羽獣はイウニに付き添ってもらったが、何事もなく部屋に帰ったみたいである。

 ……私が、動揺している? イウニにハグをされただけで……。

 しかしそんなに遠くない昔、母に抱擁されたことをわずかに思い出した気がして、イウニの行動を否定出来ずにいた。私も、こう思うことがあったとは。ロドスやドクターに出会って変わったのは、イウニだけではないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜サンドレコナー&セネト編〜

 

 朝。

 ロドス・ラズハでの生活も二年も経てばすっかり慣れてくる。私は今日の予定を確認し、自室を出て変化にすぐに気づいた。

 誰かがうずくまっている。

「おい、そこにいるのは……」

「ん……?」

 毛先が赤い黒髪に黒い瞳をした少女。セネトだった。

「なぜここに……?」

 私はセネトに疑問を投げかけたが、彼女はまだ寝ぼけているのか答えはしなかった。ボーッとしている。

「部屋を間違えたのか。もう朝だ」

「ん……」

 セネトの返事は曖昧だが、促すとなんとか立ち上がりはする。体調が悪そうな訳ではない。まだ眠いのではないだろうか。

「いつから私の部屋の前で寝ていたんだ?」

 セネトと手を繋ぐのも慣れてきた。セネトを部屋に送り届ける間、私がそう訊ねてはみたものの、最終的には分からないと返ってきた。元々口数が少ないので、首を振っただけなのだが。

「君は成長期なのだから、座ったまま寝ると体に負担が掛かるだろう」

 と言いながらも、私は前にも似たようなことがあったなと思い出していた。そうだ。イウニもなぜか私の部屋の前にいた。詳細は聞けず終いだったが、もしかすると。

「恐ろしい夢でも見たのか」

 私の推測を聞いてみると、セネトが急に立ち止まった。反応からして図星だろう。

「それならすぐにノックしなさい。カラクリ羽獣なら貸してあげられる」

 マホガニーとツルギはカラクリ羽獣を見て喜んでいたし、子どもがぬいぐるみを抱えるのと同じようなものだと考えていたが、セネトは私の言葉にも首を振った。

「ただ、サンドレコナーとぎゅってしたかっただけなの」

 とセネトに言われて気づいた。あの日イウニが抱擁してきたのも、セネトがこうして私の部屋の前で寝ていたのも、ただ体温を求めていただけだったのだと。

「それは……気づかなくてすまなかった」

 この子どもは、まだ小さいのだ。だから、私やムースを頼ってくるのだ。

 私は膝をつき、セネトにそっとハグをしてみた。セネトはその小さな腕で抱き返してくれた。そう。彼女たちの求めるものはいつも囁かなものだった。それは、カラクリでは埋められないのだろう。

 と思ったのだが。

「セネトも、カラクリ羽獣欲しい」

 ……前言撤回。

 彼女も彼も、必要最低限しか求めないと考えていたが、子どもの成長というのは早いものである。欲しいものを口にすることが出来るようになったのは、セネトの第一歩だと思った。

「分かった」

 私はセネトにも追従型ではないカラクリ羽獣を渡した。セネトは何よりも喜んでくれていた。カラクリ羽獣がこのように子どもの拠り所となることを、先代たちも喜んでくれるだろうか。

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