ロドス・ラズハ・アイランド   作:青瑠璃

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我が子がもし眠れないと言いに来たら(ムース&イウニ、ムース&セネト編)

 

〜ムース&イウニ編〜

 

「ううっ……ここがロドスだと分かってても、一人で通路を歩くのは怖いです……」

 少し遅い外勤任務から帰ってきたら、ロドス・ラズハは足下の非常灯しか点いていなかったのです。ここはお化けなんていないし、突然誰かが襲ってくることは……あるかもしれないけど、そんなに変な人はいないはずだし、大丈夫大丈夫、とムースが薄暗い通路を歩いている時でした。

 ガサゴソと暗がりから物音がしてムースはビックリしました。も、もしかして本当にお化けが出たりして……。

 でもでも、ムースはロドスの前衛オペレーターですし、怖いものが出てきたらやっつければいいのです! と何度も自分に言い聞かせて前に進むと、お化けはとても小さかったのです。

「子ども……ですか?」

 ムースは子どもお化けに聞いてみました。すると子どもお化けの形が突然変わって声をあげたのです。

「ムースママ!」

「へっ」

 出てきたのは角のある男の子……イウニくんでした。お化けじゃなくて安心したムースは一気に力が抜けてその場に座り込んでしまいました。

「ムースママ、大丈夫?」

 イウニくんがムースのところに来て心配してくれました。そうでした。ムースはイウニくん、セネトちゃんのママ。ここはムースがしっかりしなきゃです。

「大丈夫ですっ。それより、イウニくんは一人でどうしてこんなところを歩いていたんですか?」

 イウニくんは外勤任務はなかったはずなのに、とムースは立ち上がって聞いてみました。そしたらイウニくんは目をキョロキョロさせました。

「その……眠れなくて」イウニくんは答えてくれました。「みんながいなくなっちゃう夢を見て……ちょっと散歩してたら、眠くなるかなって」

「そうだったんですか! ムースも気持ち分かります」

 あの日のこと、ムースは何度も目が覚めて眠れないことが沢山ありました。そんな時、サンドレコナーさんがそばにいてくれて、手を握っていてくれたことがありました。

「ムースママも怖い夢見るの……?」

 イウニくんがおそるおそる聞いてきました。ムースはイウニくんの前では正直でいようと思ったんです。

「はい、ムースも怖い夢、見ます」ムースは頷きました。「そういう時、どうしたらいいかサンドレコナーさんが教えてくれました。こうしたらいいんです」

 ムースはイウニくんに向かって手を出しました。イウニくんは少し迷いながら、ムースの手を握ってくれました。

「こうするの……?」

「はい!」ムースは笑ってみせます。「このままムースの部屋に行きませんか? イウニくんとセネトちゃんに読み聞かせたかった絵本があるんですよ!」

「うん、行く!」

 ムースと手を繋いで歩き始めたイウニくんは、もうすっかり元気になったみたいでした。ムースは嬉しくなって暗い通路を歩きます。さっきまで暗くて怖かった通路が、全然怖くなくなったのが不思議でした。きっと、二人だからですね。今度はセネトちゃんにも絵本の読み聞かせをしたいと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜ムース&セネト編〜

 

「そうして、王子様とお姫様は末永く幸せに暮らしましたとさ……おしまい」

 この前イウニくんに読み聞かせた絵本を、セネトちゃんのお部屋でも読んであげました。セネトちゃんはベットの上で目をキラキラさせていました。

「もう一回聞かせて、ママ」

 セネトちゃんはそう言いました。もう遅い時間なのに、全然寝ようとしないんです。

「でも、そろそろ寝ないと……」

 ムースは時間を確認します。夜の九時を過ぎていました。ロドス・ラズハの消灯時間は夜の十時ですが、イウニくんとセネトちゃんくらい小さい子はそろそろ寝る時間です。

「……寝たら怖い夢見るから嫌だ」

 セネトちゃんがムースの袖を掴みながら言いました。セネトちゃんの顔が暗いです。

「怖い夢ですか……」

 イウニくんもセネトちゃんも、色々嫌な経験をしています。沢山傷ついています。病気とも闘っています。あの日の戦いのことも……。そう思うとムースも悲しくて辛くなってきます。ムースも辛かったから、気持ちはとても分かりました。

「分かりました。もう一回読みますね!」

 ムースはセネトちゃんをどうやって元気にするか分かりませんでした。だからムースはもう一回絵本の読み聞かをしてみます。明日は休みだし、セネトちゃんのそばにずっといようと決めました。

「ありがとう、ムースママ」セネトちゃんは小さく笑ったようでした。「ねぇ……このまま、ママって呼んでも大丈夫?」

 そう言われてムースはビックリしました。ムースはイウニくんとセネトちゃんのママになるつもりでしたから。

「ムースは構わないですよ。でも、こんなママ、ちょっと頼りないですよね」

 平気なフリして喋ってみたけど、最後の方は声が震えた気がしました。本当に頼りないとか、ムースのこと嫌いとか言われたらどうしよう。ムースはママなのに、泣いちゃうかもしれないです……。

「ごめん、ママ」すると、ムースはセネトちゃんに頭を撫でられていました。「ママも悲しいよね。泣かせたかった訳じゃないんだよ」

「な、泣いてないですよ……!」

 ムースは慌てて取り繕ってみましたが、セネトちゃんは心が読めるアーツを使うんでした。ムースが泣きそうだったの、気づいていたんだと思います。

「……ごめんなさい。ムース、本当は泣きそうでした」

 ムースは落ち着いて話してみました。セネトちゃんの前でも、嘘はつきたくないですから。

「で、でも! ムース、セネトちゃんにママって呼ばれるのすごく嬉しいです! こ、こんなムースを頼ってくれるし……それに、絵本も真剣に聞いてくれますから……」

 ムースは必死になってセネトちゃんに大好きだよって伝えたかったんです。けどちょっと喋り過ぎたかな、とセネトちゃんの顔を覗き込んだら、そこには笑った顔がありました。

「うん、セネトも、ムースママのこと大好き」

「セネトちゃん……!」

 ムースは嬉しくなってセネトちゃんとハグし合いました。小さくて、温かい。とても優しい気持ちになれるハグでした。

「じゃあ、もう一回絵本を読みますね」

「うん!」

 ムースはセネトちゃんにもう一回絵本の読み聞かせをしてあげました。そしたらどんどん眠くなってきたみたいで、ムースが最後まで読み終わらない内に、セネトちゃんはぐっすりでした。

「おやすみなさい、セネトちゃん」

 ムースの子どもたちは、今日も可愛らしいのでした。

 

 おしまい

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