夏の灯火を蛍は見る   作:ミスブルー

4 / 4
降霊術の一種とされている。「ひとり鬼ごっこ」と呼ばれることもある。
ぬいぐるみ、自身の爪、刃物、塩など道具を用いて呪文を唱えるなど儀式のような様相を呈する
いつ頃からは定かではありませんが、関西や四国地方ではコックリさんとともに良く知られる怪談の一つ。

近年爆発的に拡散したことから、ネットを経由して広まった都市伝説の一つであり、ある大学のサークルが都市伝説の拡散の仕方を研究するために流したという説も囁かれている。

まことしやかに今も語られている怪談である


ひとりかくれんぼ

「久我さん何かあっても無断で学校休む人ではなかったはずですのよ」

 

茨はあたしに話してくれた。

昨日あたしが彼を振ったことが原因だろうかと言った事を気にしてかそう話してくれた。

 

「いちいち気にしてたらきりがありませんし」

あたしは「そうだね…」と話す。

 

確かに気にしすぎるのは良くないかもしれない。

 

「ただ…人形が無くなったと言うお話は少し気になりますわね…もしかして久我さん…あの人形で何かを…?」

 

茨は最後にそう話した。

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「僕じゃないよ?」

 

あたしは牛頭天王の所の神社、八阪神社へ訪れた。

開口1番にあたしの姿を見て言った。

 

「まだあたし…何も言ってないんだけど」

 

「いいや語っているよーーーきっとコイツだって。ぶん殴ってやろうと」

 

「ちょっと…!」

 

「ならどうしてキミは可憐な戦姫達じゃなく僕に聞きに来たのかな?」

 

「…ーーー今日も魔法使いから健康を食べた?」

 

「?ーーー食べたよ。もちろん魔法使いだけじゃなくこの街を穢してる人間からもだけどね」

 

「その食べた魔法使いは男の人?」

 

「女の子だよ」

 

久我扇が学校を休んでいる。

それは牛頭天王に健康を食べられたからだと思ったけど違ったようだ。

 

「誤解が解けて何よりだよ」

 

「じゃあ…人形は?」

 

「人形?」

 

「あたしの通ってる学校に人形があるのは知ってるよね?」

 

「美術室の?もちろん。

とても綺麗な人形だ。

あと数年もすればあれは自然と自我を持つだろうね」

 

なんか聞きたくない話を聞いた。

それは怖い。

 

「人形がどうしたんだい?」

 

「無くなったの今日」

 

「…。それは知らない話だねーーーでもさすがに今日明日で勝手に歩いたりはあの人形には無理かな」

 

嘘は言ってなさそうだ。

というか数年後には勝手に歩けたってこと?

それは怖い。

焦土だよ。

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

好きな人は転入生だった。

でも好きになっても断られてしまった。

 

諦めきれるかと言われたら、いいえだ。

 

灰色と瑠璃色を合わせたような長い髪、独特の瞳と柔らかな声に惹かれてしまった。

 

他者を好きになるのは魔法のようで麻薬のようで呪いのようで……。

 

美術室にある日本人形。彼女が見ていたのを見ていた。

あの子を自分のものにしたい。

だけど出来ない。

 

 

なら、どうする?

 

自分の手にある人形を見つめる。

そうして思い付いた。

 

 

自分自身を呪う馬鹿な遊びをして彼女を隠してしまおう。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「おなかいたいーー!」

 

月夜の叫び声が屋敷に聞こえ響いた。

体調が悪いのかな?あたしは思い楠乃葉に尋ねる。

楠乃葉は「女の日」だと淡々と答えて読書に戻る。

 

黒い棒人間が月夜の部屋を行ったり来たりしていた。

 

自分の仕事をあの式達にやらせているんだろう。

 

学校に行くと今日も久我扇は来ていなかった。

 

人形も見つからないままだ。

外を眺めると雲行きが怪しい。

雨が降るかもしれない。

7月の雨はジメジメしているそうだ。

 

 

〜〜〜

 

学校が終わると

外に出て月夜が鞄を漁る。

 

「あ、ごめん忘れ物。先帰ってて」

 

「わかりましたわ」

 

そうして先に帰るあたし達。

けど月夜は夕方になっても帰って来なかった。

雨か降ってきた。

既に夜になろうとしていた。

そんな時、あたしのスマホにメッセージが届いた。

 

 

 

ーーーーーーーー

 

月夜:学校の教室に1人で来て

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

あたしは立ち上がると外へ出た。

友達が危機だと感じたから。

 

赤と緑の光がふよふよと光っていて灯りになった。

学校の正門を通ると思わず立ち止まり見上げる。

 

「二宮金次郎の銅像が無くなってる…?ーーーなんで…?」

 

気にするのは後だ。

教室ってことはあたしのクラスだよね。

校舎を見ると昼間と違う箇所がいくつもあった。

 

「どうなってるの」

 

教室に向かう途中、視界の隅を誰かが横切る気配を感じて振り返るも誰もいない。

誰もいないのに子供の笑い声ーーーひたひたと背後から足音が聞こえる。

 

でも誰もいない。

 

そして教室までがすごく遠く感じた。

 

いやーーー実際に遠くなっていた。

 

途中警備員の提灯の灯りが通り近付いてみたけどやっぱり誰もいなかった。

そもそも提灯を今使う?。

 

教室の前にたどり着いてあたしは気付いた。

 

これは罠だと。

 

銀狼もいない。カフカもいない。刃もいない。穹もいない。

 

あたし1人でこれはどうにかしなきゃいけない。

 

教室のドアを開けた。

 

「月夜、来たよ」

返事はない。室内は真っ暗だ。

あたしのテーブルの上に手紙が置いてあるのを見つけた。

赤い文字で『最初の鬼はサミュエル』と書かれていた。

 

「"最初の鬼はサミュエル"?…ーーーこれ…なに?」

 

思わず呟く。

それにこの赤い文字から鉄のような匂い…本物の血で書かれているようだ。

途端ーーー空気が変わった。

何か来る。

いや何かいる。

あたしは後ろを振り返る。

 

そこにはあたしより少し背の高い着物の女の人が立っていた。

顔は見えない。

でも右手には赤く濡れた包丁が握られていた。

 

『最初の鬼は私…汝の名前を…ーーー』

そこから先は聞こえなかった。

 

距離が離れていたのにあたしの目の前に立ってそのまま包丁を振り下ろしてきた。

咄嗟に剣を取り出し包丁を受け止めたーーーかと思ったけどそのままそれはすり抜けてあたしの腕を裂き床に血が飛び散る。

 

「…ッ!!」

 

咄嗟に身体を捻ったおかげで頭を避けれた。

あたしはそのまま椅子を蹴り飛ばすと着物の女の人は身体をぬるりと動かして椅子を躱した。

その隙にあたしは教室の扉まで転がりドアを開けて走り出す。

腕が痛い。

出血が止まらない。

 

あの包丁…普通の包丁じゃないかもしれない。

 

月夜はどこにいるの?

何よりあの着物の女の人見覚えがある気がする。

廊下を走り階段をいくつか降りて走った。

 

校舎にたどり着けない。

これもどうなってるのか。

分からない事だらけだ。

学校の事もっと聞いておけば良かった。

 

でもこれだけ走れば撒けたはず。

後ろを振り返ると誰もいない。

再び前を見た時、着物の女の人が目の前にいた。

 

「なんで…!」

 

反射的に包丁で切られると予想してそのまま後ろに大きく飛んだ。

あたしがいた場所に容赦なく包丁を振り下ろしていた。

 

この時あたしは初めて着物の女の人の全体像を見た。

 

この女の人…もしかしてあの人形?

 

「月夜はどこ?」

 

『…………』

 

聞いても返事はない。

撒いたと思っても追ってくるなら逃げられないかもしれない。

 

あたしはーーーまだ…死ねない。

 

死にたくない。

 

ならば…いつも通り戦うだけ。

 

〜〜〜〜〜〜

 

「ホタルが1人で出た…ですの?」

 

「あぁーーー駆けて出ていく姿をな。茨何か知っているかえ?」

 

「いえ…そういえばまだ月夜が帰ってきてませんわ」

 

「何か関わりがあったやもしれんな…

ーーー茨…妾達も出よう」

 

「出よう…って雨ですわよ?それにどこに?」

 

「決まっておろうーーーこれから考えるのだ」

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

あたしは息を付いていた。

こっちの攻撃はすり抜ける。

でも向こうの攻撃は威力を持ってあたしを殺しに来てる。

後退しても場所を変えても同じだった。

唯一学校の備品が物理的に防げた。

折れたモップをあたしは持つ。

どうしてそんな原理なのかはさっぱり分からないけど。

着物の女の人は包丁を振りあたしはモップで防ぐ。

状況は拮抗していた。

 

外に出る方法を見つけないと…!

考えてるうちに再び包丁を振りあたしは防ぐ。

 

サムになって戦う。

そう決意した時、油断した。

この女の人ずっと右手しか使ってなかった。

そしてあたしの手にはサムになる道具が無かったからだ。

 

着物の女の人は左手に銀の金槌を握っていた。

あたしの右肩を目掛けて振り下ろされる。

それを避ける事が出来なく直撃する。

肩の骨が砕ける音が分かった。

その痛みにあたしは声を上げる。

 

痛いなんてものじゃない。

目尻に涙が浮かんだ。

それでもあたしは諦め無かった。

 

包丁を突き立てようとした所に左手で床のタイルと壁のコンクリートごと引き剥がし投げて軌道が逸れて包丁は床に突き刺さる。

 

その瞬間にあたしは一か八かに賭けて窓ガラスに飛び込んだ。

ガラスが割れてあたしは宙に放り出されて重力に従って落ちていく。

着物の女の人は落ちていくあたしを追いかけはせず見ていた。

 

ここはあたしの勝ち…そう思いながらあたしは落ちていった。

 

 

〜〜〜〜〜

 

「楠乃葉分かってますの?夜の学校は立ち入り禁止ですのよ」

 

「だからこそ絶好の隠れ場所だ。ここより他あるまい」

 

茨は学校を見上げる。

昼間とは全然違う。

悪寒みたいなのを感じた。

 

「本当にホタルはここにいるんですの…?」

 

「生徒が入ってく姿を見たとあるからな…何よりーーー」

 

楠乃葉は足元を見て落とし物を拾う。

それを懐にしまう。

 

この学校の夜は正真正銘お化け屋敷と化す。

夜に忍び込んだ生徒が次の日に死んでいたなんて話は時々ある。

だから夜になる前に生徒や教師は学校を下校そして退勤する。

 

「武器を敢えて落とさせたか…ゆくぞ」

 

「何がです?というか本気ですの……?ーーー仕方ありませんわね…」

 

茨は気にせず校舎に入って行く葛乃葉の姿を追いかけ続いていく。

 

〜〜〜〜〜

 

 

一瞬気絶していた。

さすがにあの高さから飛んだから死んだと思った。

あたしは生きていた。

でも右足…折れちゃったかも。

赤と緑の光があたしの右足に寄り添ってくれていた。

それを見て少し嬉しさを感じる。

もしかしたらこの子達のおかげで生き延びたのかもしれない。

 

「ここは…」

 

見渡す。

学校の裏側のようだ。

 

月夜は教室にいなかった。

あの着物の女の人に追われながらも学校中の思い当たる所を回った。

でもどこにもいない。

それに学校の中がこんなに広いなんて予想出来なかった。

 

あとはどこか…と考えていた時、しゃらんと響く音が鳴った気がした。

 

 

 

唐突に友達の言葉を思い出した。

 

 

『「祇園行ったんだ」』

『「観光してるって感じだね」』

『「和って感じだったよ」』

『「そういえばこの学校にも祇園に関係する建物があるんだよ」』

『「そうなの?どこに?」』

『「あそこだよあれ」』

 

廊下を移動して止まり友達は窓を指していた。

目立たないような場所で古そうな神社。

 

『「あそこだけ建て替えが遅れてあんな感じなんだって。社の中は綺麗なはずだよ」』

『「でもどうして遅れたの?」』

『「なんでか建て替えするのを忘れちゃったんだって」』

 

 

ーーー建て替えを忘れられた神社

 

 

 

どうして忘れてたんだろう。

あそこに月夜はいる。

あたしは立ち上がり剣を杖代わりにして向かう。

 

社に辿り着く。

学校から見るより社は大きく見えた。

社の扉を開けると深淵の真っ暗闇。

中に入ると扉が勢いよく閉まった。

あたしは痛みを堪えて見据える。

 

 

「驚いた。サミュエル目が良いんだな」

 

久我はここにいた。

 

そして隣には拘束されている月夜もいた。

 

「久我くん…ここで何してるの?」

 

「君に会いたかったから。君の彼氏さんが羨ましかったから」

 

「………」

 

ほんとは彼氏じゃないけど…なんて言えない。

 

「あたしに何をさせたいの?月夜を離して」

 

「………。ほんとに目が良いんだなサミュエル」

 

「…何が言いたいの?」

 

「ここにいるこいつが見えるんだな、そう言った」

 

久我が右手を挙げると月夜が悲鳴をあげる。

 

スカートの太ももから血も流れている。

 

月夜の体調が良くないことも分かる。

 

久我もそれを分かっているはずだ。

分かってやっているんだ。

 

右足は折れてるけどまだ左足がある。

蹴り上げて一撃で久我を仕留めれれば。

そう考えたが動けなかった。

 

「そうだサミュエル。動くなよーーー見えているならな」

 

久我と月夜を取り囲むような黒い靄…そこに胴体と顔と手足を形成するように人骨が連なっていた。

 

「妖怪…?ううんーーー式…???」

 

「霊峰の家で習ったのか?

そんなよく見えているのにサミュエルは俺を見ることはなかったな」

 

「??」

 

久我があたしを見て言った。

 

見られた瞬間、黒い靄の骨が動き鈍器のような形状へ変わった。

それがあたしの背中を上から叩いた。

あたしは床に叩き付けられる。

苦悶の声があたしの口から出る。

 

「ーーーどうして……こんなことを?」

 

久我はあたしの質問に答えない代わりにあたしの頭を黒い靄が押さえ付けて骨の鈍器があたしを叩く。

ひとしきり叩いた後、久我は口を開いた。

 

「好きだったーーーでも一緒になれないなら壊すんだ。

サミュエル…待っていたよサミュエル。

ほら聞こえるか?もうすぐお前のお迎えが来るんだ」

 

お迎え?。

全身打ち付けられて思考が回らない。

そう思った時に社の扉が開き着物の女の人が立っていた。

 

着物の女の人もいたんだった。

 

 

金槌を持ち、包丁がゆらりと輝く。

万事休すかな。

着物の女の人からは顔を見えないけどあたしを見て言葉を発した。

 

『最初の鬼は私…汝の名前を…名乗れ』

 

「…!」

 

言うと着物の女の人は包丁をあたしの背中ーーー心臓部位目掛けて振り下ろす。

 

「…ホタル…!あたしは…ホタル…!!。

グラモス鉄騎…ファイアフライIV…星核ハンターのホタル…!!」

 

残った体力を使い自分の本当の身分を大声で告げた。

 

その包丁はあたしの胸を刺すギリギリのところでピタリと止まった。

 

着物の女の人の動きが止まった事に訝しんだ久我が声を掛けた。

 

「人形。どうした。なんで止まった。サミュエルだぞ」

 

人形…やっぱりこの着物の女の人はあの美術室にあった人形だったんだ。

着物の女の人はピタリと止まった身体を動かしてあたしからゆっくり離れる。

 

「おい…何してる?人形?…まさかさっきの名乗りは本当に?…

サミュエルじゃないのか?。

それに月夜の奴のスマホの連絡先にはサミュエルって記してあるぞ」

 

「…………」

 

月夜はそれに対して答えず無言を貫いた。

月夜はあたしの事を守る為に登録名を変えてくれてたんだ。

着物の女の人は久我に身体を向けた。

 

『汝の名を…名乗れ』

 

着物の女の人は久我に向けて言った。

久我はそれに対して答えなかった。

代わりに腕を動かし黒い靄が動き人骨が動き剣のように変形し着物の女の人に襲い掛かるが着物の女の人は金槌で骨を散らした。

さらに着物の裾で月夜を覆っていた良くわからない膜を払い飛ばした。

血塗れになった姿で月夜は床に倒れる。

受け止めたいけどあたしも身体が限界だったからそれを見ているしかない。

骨が散らばり黒い靄が粉砕されて久我だけになった。

そこで初めて久我が狼狽えた。

 

「よせ!やめろ!俺はお前に意識を与えた人だ!久我扇だ!ほら!正しいだろ!」

 

着物の女の人は『私が勝ち』と呟いた。

 

そして久我の悲鳴が社の中に木霊する。

包丁で切り裂かれ、金槌で肉体の形状が変わるまでぐちゃぐちゃにして血飛沫が上がるのを着物の女の人は気にせず続けた。

 

何度も何度も…何度も。

 

月夜もあたしもその光景にはさすがに目を背けた。

 

どれくらい時間が経ったか。

満足したのか気が済んだのか着物の女の人はゆらりと金槌と包丁を下げた。

月夜とあたしをじっと見つめる。

 

二人とも動けないから逃げることも出来ない。

でも着物の女の人は何をする訳でもなく佇むように立ちあたしと月夜を見ていた。

あたしは這いつくばりながら月夜に近付く。

 

「月夜…ごめん大丈夫?」

 

「お腹痛い…腰も痛い…」

 

「助けるの遅れてごめんね」

 

「うん…ありがと」

 

「……。この女の人はーーー」

 

「女の人て…人形だけど…」

 

「え…あーうん…ーーーなんで何もしないのかなって…」

 

「…………」

月夜はその質問には答えなかった。

代わりに答えたのは

 

「…茨と楠乃葉にさっき連絡したよ。

すぐ来るって」

 

「そっか…」

 

数分後、再び社の扉が開く。

 

「まるで殺人事件現場だな…」

 

「血の匂い…すごいですわね…二人とも無事ですの?ひどい傷ですわ…!!!」

 

楠乃葉と茨がやって来た。

 

「…久我がやってくれたのよ」

 

月夜が言うと茨はさらに怒った。

 

「やっぱり。久我はどこにいますの?逃げましたの?血みどろに変えてやりますわ!」

 

もう血みどろになってるんだよね…。

なんてジョークは言えない。

 

「茨ーーー社の周りを見てみるがよい」

 

「周りって」

 

見てようやく状況が分かったらしい。

 

「そしてこれが…あの男の末路であり呪いを起こし残して死んだということか」

 

楠乃葉は着物の女の人を見て言った。

自分のことを言われたのが分かったのだろうか着物の女の人の首が一瞬、楠乃葉を見た。

 

「呪い…?」

 

あたしは身体を起こした。

 

「ホタル大丈夫ですの?」

 

「うん…ゆっくりとだけど大丈夫」

 

「異世界人って頑丈だったり治りが早いと言いますけど本当ですのね」

 

「茨、そなたがそれを言うか。そなたも妾も月夜も別世界の者であろうに」

 

「そうですわね…それでこのお人形さんですけれど」

 

「それならホタル、そなたがこの演目を終わらせよ」

 

「あたし…?どうして?」

 

ひとりかくれんぼ

降霊術の一種とされている。「ひとり鬼ごっこ」と呼ばれることもある。

ぬいぐるみ、人形、自身の爪、刃物、塩、血など道具を用いて呪文を唱えるなど儀式のような様相を呈する。

自分自身を呪う遊びだ。

終わらすには心臓を取り出し私が勝ちと宣言する。

楠乃葉はそう説明してくれた。

 

その対象になったのがあたしと久我だった。

普通だったら人形は大きくならないし喋ったりもしない。

本物の包丁や金槌を持ってもいない。

ただの降霊術。

でもここは魔力が満ちた地球。

予想外の事が起きても不思議じゃない。

久我は恐らく自分の名前とあたしを呪う対象にした。

でもあたしの名前をサミュエルと付けた。

この名前は偽名だ。

正しく降霊術が行われなかった事で呪いは術者本人に返ったということだ。

だからあたしは助かった。

でも着物の女の人は立ち竦んでいた。

あたしを見ていた。

呪う対象の名前が違ってもあたしに呪いを掛けようとしたのは間違いない。

 

だからあたしが終わらせるのは理に適っているらしい。

 

「楠乃葉…どう終わらせたらいいの?」

 

「これだーーーそなたのであろうホタル」

 

「これってーーー」

 

楠乃葉が懐から出したのはサムになるための大事な物だった。

 

「どこにあったの…?」

 

「学校の入口に落ちていた。恐らくこの学校からすればさぞ都合が悪い物なのだろう。

今ごろ対策最中…といったところか」

 

「…??」

 

「ーーーさぁホタル。

呪いと向き合え。女の人形はそなたを待っている。

いつまでもこやつも待てない。

呪い終わった人形の居場所はない。

ひとりかくれんぼで使われた人形は燃やすのが終わり方だ」

 

楠乃葉にそう言われてあたしは着物の女の人に顔を向けた。

 

「ごめんね。綺麗な人形さん。今…ひとりかくれんぼをーーーーー『終わらせます』

 

サムになった姿にみんな小さく声を上げた。

そういえば初めて見せた姿だったかも。

着物の女の人に腕を向けて炎を発すると一瞬で全身が炎に包まれて黒くなって灰に変わっていく。

 

『これで私が勝ちです』

 

外は雷雨だ。

あたしの心には空虚のようなものが残った。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

この学校では生徒が犯罪以外の魔法関連で何かがあった場合自己責任と言うことらしい。

久我は呪いを行って失敗した。

学校で広まったのはそれだけ。

社を見ると建て替え工事が始まっていた。

無事に工事が進んでいるところを見るとあの牛の骨を被った男が何かをしたのかも。

 

そういえば結局、あの男がどうして健康を食べているのかは迷宮入りになってしまった。

一体何が起こってたのかな。

でもきっとそれは…あたしがやるべきことじゃないのかもしれない。

 

そう感じた。

 

 

 

 

ーーーーー

 

ホタル:穹、あたし今学校生活してるよ。

まだ帰れないんだけど…いつか一緒に

 

メッセージを送信できませんでした。

 

ーーーーー

 

 

 

うーん…。やっぱり送信はできないや。

 

そして祇園の祭りが始まる。

疫病退散を祈願した御霊会がその始まり。

沢山の人、道も街もお祭り騒ぎ。

あたしも月夜や葛乃葉や茨と祭のひとときを楽しんだ。

 

そうしてお祭りは終わりを告げる。

随分長くここで暮らしている。

みんなは元気かな?

 

でもここで暮らしのお別れは唐突に訪れた。

出会いや別れってそういうものだよね。

 

祭りが終わる頃

それがあたしの帰る時間だったから。

 

「ホタル、あなた透けてるわよ!」

 

「え…?」

 

自分の両手を見ると確かに透けていた。

この時、あたしはカフカや銀狼の声、刃の溜め息を聞いた。

あぁ…帰るんだあたし。

 

「ごめんみんな…あたしーーーもう帰らないと」

 

あたしはそう言った。

 

「唐突ですわね。でもそういうものなのかもしれませんわね」

 

「そうだねーーーその…えっと…楽しかったよあたし」

その言葉に楠乃葉は笑った。

 

「それなら良い。時間というのは進んでおるからな」

 

「ホタル!帰っても絶対生きて生き延びるのよ!」

 

「あたしは自分の運命を超えてみせるよ月夜」

 

「わたくしたちはあなたがここにいたことを忘れませんわ」

 

「!。うん…!ありがとう茨」

 

「妾はそこの二人と違い言葉を思いつかんなーーーこれだけ伝える。身体を大事にせよホタル」

 

「ありがとう楠乃葉」

 

あたしの周りを飛んでいた赤と緑の光が離れていく。

 

「それじゃ…またね」

 

楽しかった学校生活、怪事件にも巻き込まれて大変だったけど楽しかったお祭り。

消えたらあたしはどうなるんだろう。

ちゃんと帰れるか少し不安だけどそんな心配は必要なかった。

 

 

「…サミュエルさーん。…ホタル〜?」

目を開けると銀狼があたしの頬をぺちぺちしていた。

 

「銀狼…?」

 

「ようやく返事した。ボーっとするのもいいけど何か考え事してたわけ?」

 

「うーん…うん。夢を見てたのって言ったら信じてくれる?」

 

「え?それ何かの比喩?」

 

「そうかも…?」

 

「まぁいいけど。もしそれが面白い話なら聞かせてよね」

 

銀狼はスタスタと行ってしまった。

 

「刃…」

 

「…………」

 

「あたしどのくらいボーっとしてた?」

 

「………10秒程度だ」

 

「刃も何か喋った?」

 

「…いいや俺は何も言っていない」

 

「ーーーどうせしばらくすれば返事をするだろう…。なんてそう言ったじゃない刃ちゃん」

 

「…………」

 

刃は無言で何も言わず歩いて行ってしまった。

 

「カフカ」

 

「何か楽しい事でも考えてたのかしら?

銀狼がずっと呼んでたのよ」

 

「そうだったんだ。

うん、そんな感じ。聞きたいカフカ?」

 

「そうねぇ?おもしろそうだけどそれは私じゃなくもっと聞いてくれそうな子に話してあげるといいんじゃないかしら?」

 

「もっと聞いてくれそうな子?」

 

そう言ってカフカは去っていく。

 

もっと聞いてくれそうな子。

あたしはスマホを開く。

 

穹。

 

ーーーーー

 

ホタル:ねぇ、穹

今いい?

聞いてほしい話があるんだけど

 

既読

 

穹:よし聞くぞ

 

ホタル:穹!あのねーーーーー

 

ーーーーー

 

即答してくれる返事に思わずあたしは笑う。

 

夏の灯火を蛍を見た

 

End

 




ここまで読んでくれてありがとうございます。
今回はホタルが京都へやって来て学校生活を送ったり街を観光すると言った感じになりました。
そして題材になった怪談はひとりかくれんぼです。

ここまで読んでくれてありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。