幻想少女達の不器用恋愛事情   作:ニア2124

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なんとか投稿出来ました。

今回はいつもと違って少し少ないです……なんだか極端ですね汗


レミリアの場合 エンド

赤い館の裏庭にひっそりと立っている墓石。

 

 周りには門番の咲かせた色とりどりの花が生けられており、その場にポツン、と立っている墓石は綺麗な花々とは似ても似つかなかった。

 

 少し地面の盛り上がった土には一つの小さな十字架が立っている。

 

 この墓が誰の為に建てられた墓なのかは、博麗神社の巫女も、白黒の魔法使いも知らない。知っているのは紅魔館の連中のみ。

 

 前に白黒の魔法使いが大図書館の司書に、何の墓なのかを聞いてみたが、ただ神妙な表情を司書は返すだけだった。

 

 最早巫女と魔法使いの間では【紅魔館の七不思議】の一つにまで認定される程の謎。そんな謎の多い墓石だが、鴉天狗が取材と言う名の潜入を試みた結果一つだけ明かされた秘密がある。

 

 季節は冬。幻想郷にも寒風と共に雪が降り始める中、何時もより少しの厚着をした少女が地面に積もった雪の上を、傘も差さずにゆったりとした歩調で歩いていた。

 

 一歩歩く度に軽快な音の鳴き雪が聞こえ、淡々と墓石へ向かっていく。その姿を首にマフラーだけを巻いた何時もどおりの格好の鴉天狗が、寒そうに白い息を吐きながら見守っている。

 

 墓石の一歩手前にたどり着くなり、膝を冷たい雪の上に落とし、白い息を吐きながら懸命にただ、墓石に積もった雪を払い落とす。

 

 少女の真っ白な手が、寒そうに青白く染まるが、嫌な顔一つせず無表情で雪を払い続ける。

 

 墓石に刻まれた文字が見え始めた辺りだろうか、少女はそこで払う手を止め、膝を地に付けたまま雪の寒さにかじかんだ両手を暖めるように二度三度、擦る。

 

 その後、墓石を拝むように両手を合わせ、目を瞑りながら小さな声で一言、言葉を投げかける。

 

 その光景に鴉天狗は驚愕した、あの少女が、あの”紅魔館の当主”が一つ寂しく、裏庭に立った墓石に跪いたのだ。何時もは傲慢で、我が儘な少女が。

 

 数十秒、いや数分かもしれない。それ程の時間を跪いた少女は突然に立ち上がると満足そうに微笑みながら来た道を戻っていった。

 

 念入りに周りを見回し、誰もいない事を確認した鴉天狗は上空から静かに墓石の目の前に降り立った。写真機を片手に持ちながら。

 

 これは大スクープになるかもしれない、なんて考えながら肩まで掛かった黒髪を揺らしながら、墓石へ顔を覗かせる。

 

 何秒間かその墓石と睨めっこをする鴉天狗。空から舞い落ちる雪が髪の上を降り積もっていくのを感じるが、それを無視して唯唯墓石を目を細めながら睨みつける。

 

 次第に飽きたのか、写真機を胸の辺りに構えていた彼女だったが、溜息を一つだけ零して詰まらなさそうな表情を浮かべながら降ろし、鴉天狗は雪の降る空へと羽ばたいていった。

 

 墓石に書かれていたのは、名前では無く真ん中に大きな文字で”親愛なる執事へ、早く戻ってきて下さい”とだけ書かれていた。

 

 

    

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 彼が死んでからどれくらいの月日が経ったのだろう。

 

 彼の死は紅魔館住民の連中には失ったものが大きすぎて、以前までの活気は未だ取り戻せずにいた。

 

 咲夜は彼の骸を紅魔館の裏手に埋めた。パチュリーと小悪魔は彼の墓石を作った。美鈴は色とりどりの花を咲かせた。フランドールは盛り上がった地面に、首掛け型の十字架ネックレスを立てた。そしてレミリアが、彼の墓石に文字を彫る。

 

 全員が寂しげな表情を浮かべ、彼を忘れようと努力する姿は酷く痛ましい。

 

 食事の時間に彼の名前を不意に出そうものなら、空気は重苦しくなる。だけども、そんな中一番明るく振舞ったのは意外にも――――レミリアだった。

 

 彼の死で一番悲しむのは、レミリアだろう。誰もがそう思ったが意外にも、そんな素振りは見せず、何時もどおりの不敵な笑みで笑っていた。

 

 彼が自決した後に流した涙を入れなければ、レミリアがそれ以外に涙を流した覚えは無い。

 

 皆は自分が当主だから、と無理に強がって、明るく振舞っているのではないかと心配した。だが、実際レミリアにそんな事を聞ける筈もなく、口を閉ざした。

 

 次第に月日が流れ、季節は変わり幻想郷にも冬が訪れる。

 

 雪が降ると同時に赤い館の主は”雪合戦がしたい”と言った。その言葉に咲夜の表情から苦笑いが零れる。その隣に彼はいない。

 

 紅魔館の広い庭でパチュリーと小悪魔を除いた、咲夜とフランドール、美鈴と妖精メイド数十人がせっせと互いの自陣に別れ、白い積雪に手を突っ込み、野球ボール大の球体を作る。

 

 白い息を吐きながら、マフラーや手袋等の防寒着を着て投げ合う様は微笑ましい。だが、その輪の中に彼はいない。

 

 結果的に咲夜とレミリアの方のチームが勝ち、満足げな表情を浮かべながら、美鈴を除き、雪に濡れた洋服を着て紅魔館の中に入る。

 

 妖精メイドを除く誰もが、物足りなさを感じていた。だけどそれを口にする者はいない。心の中に押し留めたまま、無理な笑顔を作っている。

 

 各々がそれぞれの配置に、フランは地下室へと、咲夜は主達の食事を作ろうと厨房へと、美鈴は門前へと、レミリアは”彼が命を絶った場所”へと。

 

 両開き戸を両手で押しながら開け、中の様子が顕になる。

 

 彼が死んだ時と全く変わらない玉座の間。以前と同じ赤色の大きな屋根付きベット、彼女の何倍もの背丈をした、金の色々な柄が書かれた赤の箪笥に、ガラス製のローテーブル。

 

 そして、一部分だけ赤黒く染まった赤色の絨毯。

 

 

 彼の死体をどかした事以外は、以前と全くもって一緒だった。

 

 ローテーブルも、箪笥も、ベットも何も変わってはいない。

 

 両開き戸を閉めると、レミリアは扉の手すりのすぐ下に付いている、サムターンを左側に百八十度回した。

 

 カチリ、と小気味の良い音を立て鍵が締まる様子を見て、レミリアは満足そうに一度だけ頷く。

 

 雪に濡れた服も着替えないで、小走りで向かった先は何通かの白い封筒の置かれたローテーブル。その一番上の封筒を手に取り、裏側を回して確認すると【十二月十四日】と綺麗な文字で、それだけ書かれていた。

 

 嬉しそうに口元を伸ばしながら、縦に細い封筒を片手にしっかり握り、ベットの上にダイブする。まるで、クリスマスツリーの下に置かれたプレゼントを手に持って、はしゃぐ子供の様に。

 

 慣れた手つきで鋭く尖った爪を使いながら封筒を開けた。もう待ちきれないと言わんばかりの表情で、レミリアは三つ折りに折られた手紙を開く。

 

 

 【お嬢様へ】

 

 夏は過ぎ、季節も巡ってすっかり冬ですね。

 十四日と言う事は、もうすぐでクリスマス。楽しみですね。

 私からは何のプレゼントも渡せません、ですが、きっと咲夜辺りが面白い物をくれますよ。

 そうです!! 幻想郷………でしたっけ? の他の人達も呼んでクリスマスパーティーをするのはどうでしょう。

 きっと楽しいですよ、私もこの幻想郷の住民達の顔を一度だけでも拝んでおきたいですし。

 

 

 

 内容は下らない世間話が延々と綴られているのみ。だけども、レミリアはそれを見て度々頷き、笑い、また笑った。

 

 彼が死んだ日の後。懐にひっそりと仕舞ってあった一通の手紙を手に取り、腫れた目で全体を通した。

 

 内容は彼も彼女(レミリア)を愛していたとの事。だが主が主ならば、従者も従者、思いを告げようと考えるも、臆し、伝えられずにいた。

 

 確かに彼は紅魔館住民に一線を置いて接している。だが、レミリアに対しては、恋情という意味合いで一線を置き接していた。

 

 たかが人間の自分が主を愛してはいけまいと、悩みに悩みながら。

 

 

 咲夜は彼の死を紅魔館の他の連中に伝えに行っており、レミリアは一人、彼の骸を見つめた後、声を上げながらまた泣いた。

 

 もし、あの時、自分が臆さず彼に思いを告げていればハッピーエンドだった筈。なのにそれを自分で壊してしまった、と酷く後悔し、泣いた。

 

 だが、内容の後ろの方に書かれた文に少女は目を奪われる。

 

 

 

 内容は――――もし自分が死んだとしても、私はお嬢様に付き従います。というもの。

 

 それを見て、少女は喉が枯れるまでまた泣いた、口元を押さえながら、頭を抱えながら。

 

 最初の数日は少女も酷く落ち込み、眠れない夜が幾つあった事か。

 

 そんなある日、目の下に大きなクマを付け、ローテーブルの上に置いてある封筒が目の端に入った。

 

 なんとなしに、レミリアは無感情で手に取る。封筒を裏返すと【七月二十九日】とだけ書かれている。だが、それだけで少女は察した、この字は彼のものだと。

 

 その場で少女は封筒を焦った手つきで破く。

 

 三枚折りに折られた手紙を開き、手紙に書かれた内容は、”返ってきましたよ”とただ、真ん中に整った文字でそう書かれていた。

 

 口を押さえその場に堪らず膝を付ける。

 

 頻りに少女の背中に付いた羽が、嬉しいのかパタパタと前後に動く。

 

 次第に嗚咽を漏らし、赤い涙が白い手紙を赤く染める。この場に居るのは、吸血鬼ではなく、愛する者が帰ってきて歓喜する一人の少女。

 

 すぐにレミリアは万年筆を持ち、手紙の返事を書く。内容は質問ばかり。

 

 その後日に、返事はすぐ返ってきた。

 

 死んだ彼との手紙の交換。それがレミリアの生きる糧となっていた。

 

 

 

 彼から来た手紙を何度も読み返し、ベットの上に横たわったまま手紙を大事そうに胸に抱える。

 

 一つ、幸せそうな笑みを零した後、少女はローテーブルに戻り、万年筆を手に取り、古ぼけた横線に並ぶ三十行程の白い手紙を重りに止めながら、筆を進める。

 

 

 クリスマスに、幻想郷の連中を集めてクリスマスパーティーをしよう、と心に刻み込みながら。

 

 

 




一応前回がバットだったんでハッピー? エンドを書いてみました。

ハッピー、というよりはトゥルーエンドって感じでしょうか?
同じことですね、ハイ。

バットエンドにしようかな~………とも思ったんですが、このエンドにしました!!
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