俺には、世界を移動する能力がある。
……そして俺は、バカなことをして各世界でおっ死んだ転生者たちの遺物――つまり、「転生特典」を拾っては、それを売って生計を立てている。
笛吹きの神の掌の上で転がされる、愚かな人間の一人だ。
おや。君たちも、私と同じ存在に出会ったことがあるようだね。
そう、シンフォギアのマルチバースをことごとく破壊して回っている、デッドプールの皮を被ったおしゃべり女のことだ。
つい最近も、私が回収する予定だったゴーストライドウォッチを霊体のセレナ・カデンツァヴァナ・イヴに渡して蘇生させるなど、暴挙の限りを尽くしていた。
アマゾン細胞やバクスターウイルスのばら撒き未遂もあった。奴の特典管理は、正直ザルだ。
たとえば――ナスターシャの身体が弱かった原因を知ってるか?
それは、ナスターシャの父親として転生していたチャールズ・エグゼビアが、死ぬ間際に自らの能力を無理やり彼女に渡したからだ。
あるいは、立花響の先祖の女性にウルヴァリンの能力を与えたまま放置したこともあった。
そのせいで「魔法少女事変」の時に、響が自分の先祖と戦ったり、父親を殺しかけたりと、危ない場面が何度もあった。
……マジで、酷い。
たまに神から召集されて、過激な思想を持つ転生者やその集団を掃討する任務に駆り出されることがある。
その報酬として、倒した転生者たちの特典を貰えることもあるんだが――
ある時は「すべてが王の財宝」と称されたが、ほとんど中身が空だった。とはいえ、商品管理には便利で重宝している。
――さて。今日のところは、私の商売について話そう。
私がお茶を飲んでいた時のことだ。
「見つけた……あんたが、私に力をくれるのか?」
そう言って私に話しかけてきた女性の手には、特別なチケットが入った封筒が握られていた。
私はカップを置き、立ち上がり、帽子を取り、頭を下げる。
「……いらっしゃいませ。ようこそ“チェッカーフェイス”へ。
貴女が何を望み、何を必要としているのか――今宵はそれを、共に選んでいきたいと存じます」
再び帽子を被り、名乗る。
「失礼、挨拶が遅れました。私の名前は店の名と同じく、“チェッカーフェイス”。お見知りおきを。
さあ、まずはテーブルのカタログをご覧ください」
私が指を鳴らすと、床にゲートが開き、机とテーブルがせり上がってくる。
私は椅子に腰かけ、彼女に商品の説明を始める。
「……これにします」
「かしこまりました。支払いは金銭に限らず、救済措置もご用意しております。内容をよくお読みの上、ご記入ください」
私は、支払い方法や購入手続きに関する書類を彼女に差し出す。
「なお、支払いの滞りや規約違反があった場合には、商品をご返却いただきます。
ご自身で返却に来ていただけるのが理想ですが、同意いただけない場合には、少々強引な手段を取る可能性もございます。
また、返品やキャンセルについては、購入書類をお持ちいただければ、代金は全額返金いたします」
説明の間に、彼女は書類への記入を終えていた。
「ご購入、おめでとうございます。
これより始まる貴女の特別な人生に、多くの幸福が訪れますように――」