転生特典、お売りします。   作:のうち

6 / 9
特典回収と壊れた再会

「売るだけが商人じゃない。時には、買い戻すこともある。

なにせ我々の“欲望”は、時として持ち主すら持て余すものだからね」

 

今日は“買取”の日。

私のもとに現れたのは、かつてこの店で特典を買っていった――いや、横流ししていた男だった。

 

転生者。おそらく十年以上は異世界を渡り歩いた末路の姿。

全身から“終わった人間”の匂いがする。

 

「売るわ。もう使う気も起きない」

 

彼が差し出したのは、使用履歴がある悪魔の実ひとつと、未使用状態の英霊召喚契約書、そして――

 

「おっと、それは……“地雷”だ」

 

一つ、見覚えのある仮面ライダーの変身アイテムを見て、私は軽くため息をついた。

いまだに変身中毒者が出るあのベルトだ。

回収価格を伝え、無言のうちに契約書を交わす。

 

「で……今回はどういう理由で、手放す気になったのかい?」

 

「俺が手に入れた力は……全部、他人の人生をぶっ壊した。

何人かは、俺が巻き込んで死なせた。もう……お遊びに見合う代償じゃない」

 

なるほど。

善悪の分別がつくようになったなら、まだマシだ。

 

彼が帰ったあと、私が買取品の整理をしていると、突如――

 

「チェッカーフェイスッ! このクソ店、今日も悪趣味な営業中かァッ!?」

 

壁を蹴破る勢いで現れたのは、一人の女――

エレーナ・ウィルソン。

 

赤と黒のボディスーツ。ツインマシンガン。顔は常に笑っているが、目が笑っていない。

シンフォギア世界において、FIS組の装者たちの保護者を名乗る――

元・男の転生者にして、女デッドプール。

 

「いやぁもう最悪なんだよ、最近の転生者ァ! どいつもこいつも百合百合してる女の間に割って入って、

『実は俺が本当の愛を与えてやる』みたいなクソ男転生者が後を絶たねえ!」

 

彼女の声は怒りに満ちていた。

それもそのはず、彼女は――

**「百合に挟まる男転生者を優先的に狩る傭兵」**なのだ。

 

「で、こっちとしては依頼もあるし仕事もあるしで、ガキども(FIS組)も守らなきゃならねえわけよ!

こっちの正義感、もうブラック企業並み!」

 

彼女は勝手に椅子に腰かけて、グレネードを机に並べ始めた。

 

「それで? 今日の買取はどんなゴミ拾いだったんだ?」

 

「“元”転生者が、反省して帰ってきた。

しばらくは戦力になりそうもないが、素材にはなる」

 

エレーナはふんっと鼻を鳴らす。

 

「どうせまた似たような連中が来るだろ。“俺は異世界で本物の愛を知る”だの、

“女の子同士の恋愛は男の庇護で真に完成する”だの。マジで吐き気がするんだよ」

 

私は笑いながら、コーヒーを二つ淹れる。

ひとつは自分用、もうひとつは――エレーナが持ってきた“予備の人格封印缶”に。

 

「今日も世界は壊れ、再生し、また壊れていく。

その端っこで我々が笑ってる……そんな日常だよ、エレーナ」

 

「……気が狂ってるよな、あたしたち」

 

「とっくに、だろう?」

 

グラスがカチリと鳴った。

 

それが、私たちに残された最後の“乾杯”の音だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。