「売るだけが商人じゃない。時には、買い戻すこともある。
なにせ我々の“欲望”は、時として持ち主すら持て余すものだからね」
今日は“買取”の日。
私のもとに現れたのは、かつてこの店で特典を買っていった――いや、横流ししていた男だった。
転生者。おそらく十年以上は異世界を渡り歩いた末路の姿。
全身から“終わった人間”の匂いがする。
「売るわ。もう使う気も起きない」
彼が差し出したのは、使用履歴がある悪魔の実ひとつと、未使用状態の英霊召喚契約書、そして――
「おっと、それは……“地雷”だ」
一つ、見覚えのある仮面ライダーの変身アイテムを見て、私は軽くため息をついた。
いまだに変身中毒者が出るあのベルトだ。
回収価格を伝え、無言のうちに契約書を交わす。
「で……今回はどういう理由で、手放す気になったのかい?」
「俺が手に入れた力は……全部、他人の人生をぶっ壊した。
何人かは、俺が巻き込んで死なせた。もう……お遊びに見合う代償じゃない」
なるほど。
善悪の分別がつくようになったなら、まだマシだ。
彼が帰ったあと、私が買取品の整理をしていると、突如――
「チェッカーフェイスッ! このクソ店、今日も悪趣味な営業中かァッ!?」
壁を蹴破る勢いで現れたのは、一人の女――
エレーナ・ウィルソン。
赤と黒のボディスーツ。ツインマシンガン。顔は常に笑っているが、目が笑っていない。
シンフォギア世界において、FIS組の装者たちの保護者を名乗る――
元・男の転生者にして、女デッドプール。
「いやぁもう最悪なんだよ、最近の転生者ァ! どいつもこいつも百合百合してる女の間に割って入って、
『実は俺が本当の愛を与えてやる』みたいなクソ男転生者が後を絶たねえ!」
彼女の声は怒りに満ちていた。
それもそのはず、彼女は――
**「百合に挟まる男転生者を優先的に狩る傭兵」**なのだ。
「で、こっちとしては依頼もあるし仕事もあるしで、ガキども(FIS組)も守らなきゃならねえわけよ!
こっちの正義感、もうブラック企業並み!」
彼女は勝手に椅子に腰かけて、グレネードを机に並べ始めた。
「それで? 今日の買取はどんなゴミ拾いだったんだ?」
「“元”転生者が、反省して帰ってきた。
しばらくは戦力になりそうもないが、素材にはなる」
エレーナはふんっと鼻を鳴らす。
「どうせまた似たような連中が来るだろ。“俺は異世界で本物の愛を知る”だの、
“女の子同士の恋愛は男の庇護で真に完成する”だの。マジで吐き気がするんだよ」
私は笑いながら、コーヒーを二つ淹れる。
ひとつは自分用、もうひとつは――エレーナが持ってきた“予備の人格封印缶”に。
「今日も世界は壊れ、再生し、また壊れていく。
その端っこで我々が笑ってる……そんな日常だよ、エレーナ」
「……気が狂ってるよな、あたしたち」
「とっくに、だろう?」
グラスがカチリと鳴った。
それが、私たちに残された最後の“乾杯”の音だった。