「特典には資格が要る。だが、俺だけは――例外だったらしい」
その日、店の結界が破られた。
瞬間、空間に亀裂が走り、侵入者が現れる。
異様な目つきの若い男。手には、明らかに“持ち出し厳禁”のSランク特典があった。
「見つけたぞ……! お前が“回収屋”か……!」
声を張り上げ、男はベルトを装着――仮面ライダーのシステム、それも本来“人間用ではない”タイプだ。
「おいおい、それを使うのは早すぎる」
私が警告する間もなく、男は変身を完了した。
一瞬、力に酔ったように吠えたが――次の瞬間、異変が起きた。
「ッが……!?」
変身は解除。体から黒い煙が立ち上る。
肉体と特典が適合できず、内部から崩壊が始まった。
「資格がない。言っただろう、“力は売るが、資格は売れない”って」
私は指を鳴らし、ロックシードを起動。
戦極ドライバーを腰に装着し、変身――いや、起動。
「オレンジ! ロック・オン!
ソイヤッ! ハッハー!」
音声と共に、鎧武の姿が展開される。
私の体に、一切の拒絶反応はない。
これが、私の特異体質――
**「全ての特典に適合する」**という、特異で狂った存在証明。
「さて、処理を始めようか」
数合の打ち合いの末、私は彼を制圧し、ベルトと特典をすべて回収した。
魂は契約違反の証拠として“保留資産”に。体は灰と化す。
⸻
調査の結果、彼は別の回収者を殺して特典を奪い、私の店に強引にワープしたものらしい。
結界に穴を開けたのは、過去に漏洩した旧式特典の不完全な再構築版だった。
「これは後で潰しておかないとな。売った覚えもない“偽物”が流通してる」
私は結界を再構築し、鍵を二重にした。
一通りの処理が終わったころには、日も暮れていた。
⸻
「……閉店。今日はもう終わりだ」
私は黒コートを脱ぎ、帽子を外し、眼鏡をかける。
着替えた先は――川平のおじさん。
REBORNの世界における平凡なラーメン屋の常連、地味で愉快な中年男の仮面。
「変装完了、一般人モードっと、やっぱりチェッカーフェイス名乗るならこの格好じゃないとね。」
私は人気のない裏路地を抜け、ラーメン屋の暖簾をくぐる。
「おう、川平さん、いつものか?」
「おうよ。今日は塩。あっさりいきたい気分でな」
店主と軽口を叩きつつ、私は湯気の立つラーメンをすする。
世界の裏側で特典を巡る争いが続いていようと――
この時間だけは、“ただの男”でいさせてくれ。
「ああ、うまい……地球のラーメンってのは、やっぱり最強だな」
静かな夜。
私は麺をすする音だけを響かせ、世界の喧騒を一時、忘れていた。
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