日は落ち、月は昇る。
大地を照らす満月は、今日は一段と強く、大きく輝いているような気がした。
「……なんか、眠くなってきたな」
「そうね」
「いやいやいや。待ちなさいよ。それで貴方達が寝ちゃったら護衛をさせた意味が無くなっちゃうんだけど!?」
そそくさと寝ようとする迅真を叩きながらかぐや姫は文句を――――というか、悲鳴を上げる。
「なんだよ…どうせ来るのは深夜なんだろ?俺はそれまで寝るんだ。別に構わんだろう?」
「構うわよ!むしろなんで構わないと思ってるのよ!!ちょっと!本気で寝るの!?おーい!起きて~!?」
かぐや姫の必死の言葉を聞こえない様に迅真はバッグから取り出した耳栓を装備する。
「えぇ~…?本気で寝るの?嘘でしょ?」
そんな馬鹿な…と言いたげな表情でかぐや姫は諦める。
「別に、私がいるんだから問題ないわ。それに、いざという時に迅真が動けないのは問題だもの。まぁ、月の民ごときが私に勝てるなんて思ってないけどね」
「……さすが、『原初』の妖怪の言葉は重いわね……出来ればそれが私に向けられないと良いんだけど」
「私の迅真を奪おうとするのなら容赦なく消し去るわ。言っておくけれど、不死なんて私からしたらちょっと『殺しにくい』だけよ?盾にはならないからね?」
「……友人は許される範囲かしら?」
「それくらいなら譲ってあげましょうか。でも、それ以上は踏み込ませないわよ?」
「分かったわ。まぁ、もしかしたらもう会わないかもしれないけど」
「どうかしら。もしかしたら迅真から行くかもしれないから私は何とも言えないわ」
「そうなの?なら、楽しみにしていましょうか」
かぐや姫はふふふ。と笑い、月を見上げ――――
「――――来たわ」
「そうか」
かぐや姫の声に反応するように迅真は起き上がる。
「あら?起きてたの?」
「いや、意識は落ちてたから寝てた。仮眠、とも言えないくらいか。むしろ中途半端に寝たせいで悪化したかもしれん」
「何言ってるのよ。そもそもあなたは寝る必要なんてあんまりないでしょ?」
「人間としては必要なんだよ。精神的に」
「そう言うモノなのね。なら仕方ないわ」
「なんか、やけにアッサリだな。なんでだ?」
「精神的なモノは妖怪には重要なのよ。分かるでしょ?」
「……あぁ、そうか。存在的なソレか」
「そういう事」
「なるほどな。さてと。敵さんはお見えになるか?」
「そろそろって感じよ」
「そうか。じゃあかぐや姫。最後に一つ」
「…何かしら?」
「お前の本名を教えてくれ。『なよ竹のかぐや姫』は地上で付けられた名前だろう?月の名前を教えてくれよ」
「……『
「蓬莱山輝夜ね。了解。覚えたぞ」
「ほら、二人とも、そろそろ到着するわよ。準備は出来てるの?」
「何時でも。今からでも十分だ」
「私も何時でも。というか、その言葉は私が言うんじゃないの?」
「こういうのは言ったもの勝ちなのよ」
「なによそれ…まぁ良いわ」
そう言って、輝夜は唯一の戸の方を向く。
「敵襲!敵襲!!」
まるで会話が終わるのを待っていたかのような襲撃。
直後、戸の向こうから強い光が来て、視界を明るく染め上げ、それと同時にバンッ!バンッ!バンッ!!と勢いよく全ての戸が開かれる。
「これが戦意を喪失させる光か……精神に侵入してくる魔術かと思ったけど、ただの威圧感か。拍子抜けも良い所だな」
「馬鹿にしてるのか、て感じよね。まぁ、普通の人間はその威圧感に気圧されて何も出来なくなってるけどね」
目の前に広がる光景。それは外を守っていた兵が全員倒れている光景。そして、目の前には無数の人影。光によって正確な数は分からないが、十人は軽く超えているだろう。
「姫様。お迎えに上がりました」
「……そう」
代表の様に前へ出たのは長い三つ編みの銀髪に、青をベースにして、真ん中に赤い十字が書かれているナース棒のようなモノをかぶっており、服装は上半身が、右が赤。左が青の服。下半身は色を左右逆にしたスカートを着ていた。その手には物騒な弓が握られていた。
「かぐや姫!行かないでおくれ!」
突然出て来たのは、おそらく竹取の翁――――おじいさんだろう。
「翁……ごめんなさい。私は月の人間だから……」
「そんな…そんな事を言わず、ここにいてくれ!お願いだ!!」
「ごめんなさい…翁。私はここに残りたい。けれど、月はそうはさせてはくれない。だから、これを」
そう言い、輝夜は何かを渡す。
「では、私はこれで。さようなら」
輝夜はそう言うと、月の民の方を向き――――
翁を含め、辛うじて起きていた人物は瞬時に気を失い、それと同時に輝夜の隣にいた女性が他の月の民を射抜く。
「今よ」
「おう。行ってくる」
迅真はそれだけ言うと、テレポートを使用し、二人の前に出現する。
「逃げていいぞ。俺が時間稼ぎをしてやる」
「貴方は――――」
「永琳。早く行くわよ」
輝夜は素早く永琳と呼ばれた女性の手を引いて逃げて行き、その後ろをルーミアがついて行った。
「さてと。これで後は時間を稼ぐだけ…だが、ここだと都に迷惑を掛けるか。移動するぞ」
そう言うと、迅真は詠唱済みの魔法陣を起動し、転移をするのだった。
人気投票は今日までですので、投票してくださる方、よろしくお願いします!