東方種変録   作:大神 龍

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第百四話

 月の民の処理を終えた迅真は、平原から離れた竹林で月の民から掻っ攫ったアイテムを見ていた。

 

「ん~……何だろ。この羽衣以外特にめぼしいモノが無いな……しけてるな。もう少し良いモノを落とせってんだ」

 

「そんなむちゃくちゃなことを言わないでくださいな」

 

 突然声をかけられ、迅真は少し驚く。

 

「なんだよ。って言うか、誰だよ」

 

 声をかけて来たのは、先ほどかぐや姫とルーミアと共に逃げたはずの女性。

 

「私は八意永琳。それより、貴方は何をしているの?」

 

「物色。何か面白そうな物が無いかなって思ってたんだが……想像斜め上に何もなかったな。使えね」

 

「それを言われると、少し傷付きますね」

 

「……その、何だ。すまん」

 

 確実にやってしまった感が漂ったので、迅真は謝る。

 

「ふふ。冗談です。まぁ、私が作ったって言うのは本当ですが、そんなに傷付いていませんよ。それに、そこにあるのは全部試作品です」

 

「……試作品だと?」

 

「はい。今は月で改良しているはずなので、それの数倍の威力はあるかと」

 

「へぇ?数倍か……面白そうだな。いつか月に行って見たいもんだ」

 

「ふふ。でも、そんなに面白いものは無いと思いますよ?」

 

「そうか…それは残念だ」

 

 迅真はそう言うと、散らかしていたアイテムを全て収納すると、立ち上がる。

 

「んで?お前はなんでここにいるんだ?」

 

「そんなの、ここが一番安全そうだからね」

 

 そう言ったのは永琳ではなく、その後ろにいたルーミア。

 

「なんだ。それなら問題ないな。じゃあ、ここの主にはもう話を付けたのか?」

 

「まぁね。って言うか、迅真の前にいるじゃない」

 

 は?と迅真が呟くと、ルーミアが笑顔で下を差す。

 

 なので、下を向いてみると――――

 

「兎の妖怪…?」

 

 くせっ毛の黒髪にふわふわそうなうさ耳。桃色の袖に赤い縫い目のある半袖のワンピースを着ている小さな少女。

 

「因幡てゐ。因幡の白兎って人間は呼ぶよ」

 

「因幡の白兎…?マジか。そんなすごいウサギが…こんなちっこいのなのか」

 

「すごい失礼な事を言ってる自覚ある?」

 

 ジト目で睨まれ、迅真は頬を引きつらせながら目を逸らす。

 

「とにかく、その子と話した結果、この竹林で暮らすことを許可してもらったわ。だから後はこの二人が勝手にするでしょ。もうやることないわ」

 

「そうか…じゃ、そろそろ行くかね。都でそれなりに楽しんだしな。またぶらぶらと旅を続けますかね」

 

「あら、もう行くの?もう少しゆっくりしていきなさいよ」

 

「していく理由になるようなモノが無いが?」

 

「別に、私達が住む家を一緒に作ってくれても良いでしょう?」

 

「いやだね。面倒臭い。俺は建築は自分かルーミア以外の為にする気は無いんだ」

 

「それは残念。ところで、なんでする気が無いのかしら?」

 

「さっき言っただろうが。面倒。それだけだよ」

 

 輝夜の疑問に雑に答えると、下から再びてゐがひょっこりと現れ、

 

「え~?それならやってくれても良いんじゃないか?」

 

「なんだとこのウサギ。その耳引っこ抜くぞ」

 

「ひどいなぁ。この耳は自慢なんだぞ!」

 

「はいはい。だったら余計引っこ抜かなくちゃだな」

 

「なんでそうなるウサ!?」

 

「強引なウサギ要素だな。今思いついたのか?」

 

「なんでお前はそんなに私をいじめるのさ…私、何かしたウサか?」

 

「なにも?しいて言うなら、昔ウサギにボコられたことがあってな…それが原因かもな」

 

「完っ全に八つ当たりウサ…それで私達に矛先を向けないでほしいウサ」

 

「……お前、それで定着させる気か?」

 

「印象は大事ウサよ。覚えておいた方が良いウサ」

 

「そ、そうか……まぁ、印象には残るわな……うん。何というか、見た目に合ってていいんじゃないか?」

 

 もうなんというか、対応が面倒になって来た迅真。

 

「で、迅真さんは本当にもう行くんですか?」

 

 永琳がそう言って来るので、少し考えた後、

 

「そのつもりではいるよ。まぁ、基本的にルーミア次第だけどな」

 

「私に投げないでよ。私は迅真が決めると思ってたのに」

 

「えぇ~…」

 

「…で、どっちなんです?出来れば手伝って欲しいんですけれど」

 

「……はぁ、分かったよ。少しだけ手伝ってやる」

 

 迅真が折れ、それと同時に永琳と輝夜がガッツポーズをとるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「これでいいか?」

 

 時間にして3時間くらいか。すでに迅真は眠気に襲われて、足元がおぼつかない状態でも何とか建築を進め、とりあえずは完成させた。

 

「はぁ……もう帰る。寝る」

 

「いやぁ…手伝って貰ったらすぐに完成するとは思わなかったわ」

 

 輝夜が心の底から驚いているような声を上げながらこちらへと来る。その後ろには永琳もいた。

 

「ふん。もう二度とやらねぇ」

 

「そんな事言わないでよ…ありがとう」

 

「ありがとうございます」

 

「割に合わんな。何時か絶対に借りを返してもらうからな」

 

「いつか必ずします」

 

「憶えていたらね」

 

「おう。絶対憶えていてやる。覚悟してろよ」

 

「まぁ怖い」

 

「笑顔で言ってちゃ説得力ねぇよ」

 

 ベチッ!と、輝夜にデコピンを放つ迅真。

 

「うぅ……ひどいじゃない」

 

「ははは。全然力入ってないから良いだろうが。じゃあ俺は本当に帰るぞ」

 

「うん。分かったわ。じゃあ、またいつか」

 

「また会える日を楽しみにしています」

 

「まったね~」

 

「おう。何時かまた会おうぜ」

 

「さようなら。またいつかね」

 

 そう言って、彼らは別れを告げて行ってしまうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「さてと。この家ともお別れか」

 

 翌日。迅真は家の前でそう言った。

 

「服とかは持ってるんでしょ?なら良いじゃない。行きましょ」

 

「そうだな」

 

 家は売り、お金は布に変えた。だが、全部使ったわけではなく、一部は残していた。

 

「今度はどこに行こうかね」

 

「いつも通り目的も無くぶらぶらと、でしょ?」

 

「それもそうだな」

 

 二人は笑いながら都を出て行くのだった。

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