「さて、これで山に入っても良いのかな?」
迅真は先ほど倒した男――――最初にやってきた少女に聞いたところ、大天狗だそうだ――――を置きつつ、この男についてきた奴らに聞いてみる。
すると、ついてきた者達は、
「どうぞ。大天狗様の条件を満たしましたので、入ってもよろしいかと」
「そうか。ま、こいつの怪我は治しておいてやるよ」
迅真はそう言い、大天狗に手をかざしてぶつぶつと呟く。すると、大天狗の傷は癒えていった。
「これで傷は治したから、後は目覚めるのを待つだけだ。じゃあな」
そう言ってルーミアを呼び、一緒に山の中に入って行くのだった。
入ってすぐの所に分かれ道があった。それを見た迅真はボーッと考え、
「――――入ったは良いけど、どこに行く?」
「いつも通りだね。ん~……じゃああっちで」
と、ルーミアが適当に決め、その方向に進んでいく。
その上空に、彼らを見ている者がいた。
「ん?人間?あぁ、それでさっき大天狗様が……でも、なぜ山の中に入って来ているんでしょうか?……少し面白そうだから見に行ってみましょうかね」
その人物はそう言いながら、彼らを追うのだった。
しばらく進むと、何やら人影のような者と、建物のような影が見え始めた。
「村?でも、ここの場合は人じゃないよな。住んでるの」
「チラッと見えたけど、何か角的な物が生えてたよ?」
「……鬼か?じゃあ、そこは鬼の村か何かか?」
「知らないよ。行ってみれば分かるんじゃない?」
迅真とルーミアは、今目の前に見えているモノについてぼんやりと話しながら進んでいく。すると、前方から頭に角の生えた男が歩いてくる。
「おうおう、あんたら人間か?人間が鬼の所に来るなんて、一体どうしたってんだ?見た目からするに捨て子じゃねぇだろうに」
と、どこか心配しているような感じで話しかけられる。
「ん?あぁ、俺たちはぼんやりと旅をしてるだけだよ。面白そうなことに頭を突っ込んだり強そうな奴に喧嘩売ったりしながらな」
迅真はそう答える。ルーミアは強そうな奴に喧嘩を売ったり?という所に疑問を抱きつつも声には出さず黙っておく。角の男は、
「そうか。ってこたぁ、今ここで俺があんたに戦いを挑んでも良いって事か?」
と、にやりと笑いつつ聞いてくる。
「ん?まぁ、別にいいけど……一応能力は使えるって事にしとくが良いよな?」
「あぁ、かまわねぇよ。じゃあ、行くぜ?」
そう言うと、男は迅真に向かって突撃してくる。ルーミアは迅真に言われる前にサッとその場から逃げる。迅真はそれを確認する暇などなく、突撃してくる男の迎撃をする。
最初の一撃は拳。しかし、その速度は先ほどの大天狗の比ではなく、一瞬拳を見失う。が、迅真は素早く体をひねり、相手の背後に回って回避する。直後、その男はその体勢から確実に力があまり入って――――否、入れられないであろう蹴りを放ってくる。
「っ!?」
想定外の攻撃に体が反応せず、モロにくらう。それに加え、その一撃は予想を遥かに上回る威力で迅真は吹き飛ばされ、木に当たって止まる。その時辺りが赤く染まったが、迅真の傷口はすぐさま塞がっていく。
「カハッ!……はぁ、とんでもねぇ威力だな……死ぬかと思ったぜ。ふぅ……よし、じゃあもう一度だ。今度はちょっとやる気出す。負けねぇぞ?」
「くはは!さっきの一撃で飛ばされたのが良く言うね。ま、やってやろうじゃん?」
男は迅真が起き上がってくるのを待っている。迅真はそれに答えるように、すぐさま起き上がり、男に向かって
その一歩で瞬時に男の前にたどり着いた迅真は、音を置き去りにしながら攻撃する。男は先ほど迅真を吹き飛ばして油断してたのか、一瞬攻撃への反応が遅れたが、素早く対応しその拳を受け止めようとする。
だが、受け止めようとした瞬間、男の身体がふわりと宙に浮く。それに驚いた男は、一瞬力を抜いてしまう。直後、受け止め損ねた拳が男の顔に突き刺さる。
男はメキメキッ!という嫌な音を顔から響かせるが、どうにか踏ん張ってその場に止まり、反撃しようとする。
しかし、反撃をしようとした瞬間、先ほどよりも速く重い一撃が腹に突き刺さる。
さすがに二撃目は耐えられずに飛ばされる。その時、男は迅真の方を見ていた。それで見たものは、今さっき飛ばされる前に自分がいた所――――場所的に心臓の部分――――に迅真の拳があった。そして、そのまま飛ばされ何度かバウンドした後に木に衝突して止まる。男がバウンドした後には、へこんだ地面があった。
「ふぅ、これで大丈夫か?っつか、この速度は久しぶりすぎてちょっと辛いわ」
殴った後に迅真はそう呟く。もう終わったか?と思った時に、ゆっくりと吹き飛ばされた男が起き上がりつつ、
「ゲホッ!ゲホッ!くそ、あんた、なんだよ、その力は……はぁ、にしても、これ以上やると村の奴らも来そうだな……どうする?続けるか?」
と聞いてくる。それに迅真はにやりと笑い、
「そりゃこっちのセリフだ。やれるならやろうぜ?人が集まって来ようが関係ねぇよ。さぁ、楽しもうぜ?」
「くはは!面白い人間だ!良いぜ!やってやるよ!」
二人は高笑いしつつ、お互いに向かって走り出すのだった。
なんか迅真が戦闘狂になっとる。