東方種変録   作:大神 龍

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第百六話

 四本の銀光。

 

 ガガガガキッ!と削るような音と共に妖忌の斬撃が振り抜かれる。

 

「チィッ!!『大地よ!穿てッ!』」

 

 瞬間、迅真の足元の地面が隆起して槍のような形状を取ると共に妖忌を狙おうとするが――――

 

 

 シュッ!!

 

 

 軽く振るわれた短刀が土に触れると同時に土に宿っていた神力が霧散し、ただの土くれになってしまい、自重(じじゅう)で崩れて行く。

 

「んなっ!!」

 

 迅真の驚きに答えるように、妖忌は口を開く。

 

「神の力は人の思いの結晶。だとしたら、人の思いを断ち切るこの白楼剣は神の力をも断ち切る事ができる」

 

「嘘だろ…ッ!!」

 

 キンッ!カキキキンッ!!と数度の刃の衝突の後、霊力を行使し瞬時に霊剣を作り振るうが、白楼剣に当たると同時に霧散する。

 

「これもダメか!!」

 

「霊力も思いの結晶。それで構成された刀など、無いも同じ」

 

 ならば!と思い迅真は魔法を使う。

 

「来い!魔装錬器!」

 

 言葉と共に迅真の左手に一本の刀を掴む。

 

 それと同時に迅真の姿は男性から女性へと変化する。

 

「使いたくは無かったんだけど…『ノモブヨ、ヲシ、ハシタワ、ドケダ、グンミーチャ、デー、リブラ』!!」

 

 瞬間、迅真の身体を包み込む様にピンク色の光が包み込み、光が収まったころにはフリルをふんだんに使った衣装に変わっていた。ただ、先ほど女性に変身していたため、違和感がないどころかめちゃくちゃ似合っていた。

 

「めちゃくちゃ恥ずかしい……短期戦でケリを付けてあげるんだから!」

 

 言葉使いまでも変化した迅真は即座に妖忌に斬りかかる。

 

「ッ!!速い!」

 

 先ほどの速度の数倍の速度で移動する迅真に妖忌は驚くが、数度の鍔迫り合いの後、すぐさま適応する。

 

 が、

 

「200%!!」

 

 ガギィンッ!!と割れる様な金属音と共に火花が散り、ダーインスレイヴによって妖忌の剣が弾かれる。

 

「単純に……威力の増加か。それに加え速度上昇。だが、動きさえ覚えていれば対応できるものでしかない」

 

「それはご丁寧に説明どうも!!」

 

 迅真は素早く魔装錬器で追撃の突きを放つが、白楼剣に弾かれる。

 

「くぅ!!」

 

 迅真の呻きと同時に妖忌は距離を取ると、刀をしまい、居合の型を取る。

 

「『未来永劫斬』!!」

 

 音を超えて迫る妖忌に対処が間に合わず、まともに上空へ放り出される。

 

 瞬間、ズガガガガガガガガッ!!と、視認できないほどの速度で全身を切り刻まれる迅真。

 

 剣戟が止まった後、そのまま重力に引かれるまま地面に落ちる。

 

「カハッ!ケホッ!ケホッ!!」

 

「ふむ。まだ、死なないか」

 

「……ここは…日が当たらない」

 

「…そうだが、それがどうした」

 

「……なのだとしたら、よ。体をゾンビに変えたとしても、問題が無いわけ」

 

「…ほぅ?『ぞんび』なるものは分からんが、つまりは、斬られても死なない、という事か?」

 

「それは違うわ。死ににくく、且つ痛みを感じずに動き続けられるだけよ」

 

「中々面倒な生物だの。しかし、その程度なら余裕だの」

 

「なら…受け続けてみなさい。人体の限界を突破して撃ち放たれる連撃を」

 

――――500%

 

 空気を突き破り音を置き去りにして迅真は飛び出し、ダーインスレイヴを振り下ろす。

 

 ガィンッ!!と鈍い金属音。

 

 続けて魔装錬器による横薙ぎ。

 

 しかし、すかさず振るわれた白楼剣によって止められてしまう。

 

「『傀儡』」

 

 その言葉に妖忌は咄嗟に迅真の剣を弾くと距離を取る。

 

 しかし、

 

「そこにはもう仕掛けてあるわ」

 

 ヒュッ!!と風を切って背後から何かが迫り、瞬時にそれを弾く妖忌。

 

「ぬぅ!?」

 

 背後からの奇襲。それは、先ほど打ち合っていた迅真。だが、目の前にいる迅真の目に光が無い事に気付く。

 

「説明はフラグだからね。省かせてもらうわ」

 

 そう言って背後の迅真が襲い掛かってくるが、妖忌はその正体が大方分かっていた。

 

「(分身、といった所か。私の半霊とはまた別物…それを先ほどの『傀儡』の術で操っているのだろう…ならば)」

 

 妖忌は瞬時に刀をしまい、先ほどの様に居合の型を取ると、分身へと体を向け――――

 

 

 

「『現世斬』!!」

 

 

 

 体がぶれて見えるほどの速さで突撃するとともに刹那に放たれた一つの斬撃。それは迅真の分身を容易く切り裂いた。

 

「ッ!!…へぇ?」

 

 驚きに目を見開くも、すぐに冷静になり、詠唱しつつ地面を強く踏む。

 

 直後、妖忌を覆う様に形成されていく土。それはドーム状となり、迅真のいる所に一つだけ穴を作る。

 

「『烈火球(バースト・フレア)』!!」

 

 穴の中へと滑り込む様に入って行き――――

 

 

 

 

 

 ゴゥァッ!!

 

 

 

 

 

 青白い炎が見えると同時に穴は即座に閉じられる。

 

 中は蒸し焼き状態。普通に生物なら死滅する――――はず。ただ、問題があるとすれば、奴が熱を斬るとか法則完全無視な事をしないとは限らな――――

 

 

 ヒュッ!!

 

 

 咄嗟に前へと飛び出すと同時に後ろ髪を刀が掠める。

 

「なんで生きてるのよ!!!」

 

「『空間』を斬れば避けられるだろう?」

 

 いや!普通無理だから!!とか突っ込みたいが、ここはあえて飲み込む。

 

 そして、迅真は二つの剣を構え、次の攻撃に出る。

 

 炎を纏い、一撃にかける斬撃。

 

焔刃(えんじん)刹那陽炎(せつなかげろう)』」

 

 空気が揺らぎ、迅真が消える。直後、妖忌の胸に十字の傷が――――

 

 

 

 

 

 ギィィィンッ!!

 

 

 

 

 

――――刻まれない。

 

 一瞬の驚き。それにより、妖忌に反撃を与えてしまう。

 

「空観剣『六根清浄斬』」

 

 強烈なカウンターによって迅真の身体は宙を舞う。

 

 突如、妖忌の姿は5つに分身し、上空へ飛ぶ。

 

 そして、ほぼ同時に振るわれた5つの斬撃は

 

 

 

 

 キュガッ!!

 

 

 

 

 そのエネルギーがそのままその5つの分身体全てに返って行く。

 

「――――切り札は最後まで残しておく。重要だな」

 

 自らの全力に打ち砕かれた妖忌を見下ろし、彼は元の姿に戻りそう言うのだった。




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