東方種変録   作:大神 龍

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第百十二話

 ヴェルは涙目になりつつ、宣言する。

 

「追放『ズヴァット・レグナ』」

 

 瞬間、桜の動きが遅くなり、それと同時に雨の如き弾幕が超高速で襲い掛かる。

 

「じゃあ俺も!禁忌『レーヴァテイン』!!」

 

 レイは生み出した燃え盛る剣を手に桜をに斬りかかる。

 

「アハハッ!!ぜぇんぶ切り刻んであげる!!」

 

 リッパーは目にも留まらぬ速度で桜の枝を小さく傷つけて行く。

 

「『ハッソウトビ』」

 

 暁の言葉と共に武者が現れ、桜に斬りかかる。

 

「復活したばかりで死ぬわけにはいかないのよ。もう少し好き勝手やらせてもらうわ!」

 

「俺もこんな事で死ぬわけにはいかないんだ。多少強引でも帰らせてもらう」

 

 妃香梨と光は共に武器を手に桜を襲う。

 

「正直俺、戦闘向きじゃないんだが…」

 

 愚痴る一。だが、それでも武器を片手に桜と対峙する。

 

 

 

 しかし、

 

 

 

「なんだ!?さっきから一向にダメージを与えてる気がしない!!」

 

「触れると同時に消えてね!?」

 

「ダメです!!壊すより再生する方が速いです!!」

 

 一か所折れたら二本になって再生し、二か所折れたら四本になって復活し。それは無数に数を増やし、さらに大きくなる。

 

「迅真!どうするんだ!?」

 

「くそっ!紫!後どのくらいかかる!?」

 

「10分あれば確実に終わります!」

 

「分かった!10分持ちこたえろ!」

 

「「「了解!」」」

 

 各々武器を手に桜へ襲い掛かる。

 

「『ファイアーウェーブ』!それを纏わせて――――『炎:烈火』!!」

 

「『ハッソウトビ』!!」

 

「『ダークスレイヤー』!!」

 

「せいっやぁ!!」

 

「東雲流組手術『翔旋月花(しょうせんげっか)』!!」

 

「絆「神槍『『スピア・ザ・グングニル』』!!!」」

 

「霧怖『紅き霧は全てを喰らう』」

 

「フッ!」

 

「ハァッ!!」

 

「無情『手加減の無い力』」

 

 一斉に放たれる攻撃。それはゆっくりとだが、確実に西行妖を押していく。

 

「『未来永劫斬』!」

 

焔刃(えんじん)陽炎(かげろう)』!!」

 

 同時に放たれた刃は、しかし決定打とはならない。

 

 

 

 

 が、

 

 

 

 

 突然、桜が動きを止める。

 

「…なんだ?」

 

 呟いたのは迅真。

 

 それにつられて数人は視線を泳がせるが、特に異変は無い。

 

「…紫。どれだけ終わった?」

 

「…60%といった所です」

 

「…そうか…」

 

 一瞬、嫌な予感が脳裏をよぎり――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「迅真!紫を守れぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 白狼の言葉を聞くよりも一瞬早く、迅真は紫に駆け寄り――――

 

 

 

 

 

「っらぁ!!」

 

 いつの間にか紫の背後に迫っていた桜の根をぶった切る。

 

「何人か、少数で良い!こっちで紫を守ってくれ!こいつ、優先して紫を狙って来た!!」

 

 迅真が言葉を言い終わるより早く全員は動き出す。

 

 それと同時に迫る桜の枝。

 

 迅真が三本切り落とすと同時に何本もその隣をすり抜け、

 

「オラァ!」

 

 白狼が更に二本持っていく。しかしそれでも桜の猛攻は止まらず、

 

「フンッ!!」

 

 左右が桜の枝を五本踏み抜く。

 

「えい!!」

 

 妃香梨が残った枝を切り捨てる。

 

 だが、斬っても斬っても桜は襲い掛かる。

 

「クソッ!!『光化静翔(テーマソング)』!!」

 

 光の速さで放たれる斬撃は先ほどよりも斬る数を増やす。

 

「ぅぉぉぉぉおおおおおおおおお!!」

 

 光の速度。しかしそれでもまだ足りはしない。なら――――

 

 

「『世界(ザ・ワールド)』!!時よ止まれぇ!!」

 

 

 ガチンッ!と歯車の様な音と共に世界の全てから色は消え失せ――――

 

 

 迅真、絆、レイ、真也の四人以外は動きを止める。

 

「絆!レイ!俺自身を模倣しろ!!真也!能力を借りるぞ!!」

 

「え?わ、分かりました!」

 

「任せろ!!」

 

「良いけど…何するの?」

 

 何をするのか全く分かっていない三人の脳内に大量の情報が流れ込んでくる。

 

「分かったか!?」

 

「「「了解!!」」」

 

「んじゃあ行くぞ!!」

 

 迅真が前に出ると同時、迅真、絆、レイは闇を纏い――――

 

 

 

 

 

 

「「「「無情『無意識の闇』!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 放たれる真っ黒の弾幕。それは何の法則性も無く西行妖に襲い掛かる。

 

 それと同時に時間停止は解除され、世界は色を取り戻す。

 

 しかし、生み出された『無尽蔵』で『無敵』の弾幕は西行妖を切り刻み――――

 

 

 

 

「チェストォォォ――――――――ッ!!」

 

 

 

 ズガァンッ!!と音を立てて幹に突き立てられる刃。

 

 その瞬間、西行妖は動きを止め――――

 

 

「封印術式完了!!皆退いて!!」

 

 紫の声と共に全員西行妖から距離を取り、

 

 バチィッ!と一瞬紫色の光が走ると同時に西行妖は精気を無くしたように気配が弱まる。

 

 

「………終わったか?」

 

「…たぶん」

 

「……はぁぁぁ…やっと終わったか…」

 

 迅真の気の抜けた声で迅真がその場に座り込むと、全員の緊張の糸は切れる。

 

「はぁ…ったく。え~っと、迅真?そもそもなんでこんなことになってるんだ?」

 

「あぁ、そりゃ、この桜の能力で、幽々子――――あそこに倒れてる桃色の髪の奴の魂が吸われて、それで覚醒したこの桜が暴れ出したって訳だ」

 

「…なるほどな」

 

「はぁ…チクショウ。結局幽々子は守れなかったか…」

 

「別に、お前だけのせいでもないだろ?」

 

「いや、そうじゃないんだよ…さて。他に何か聞くことあるか?」

 

 ダーインスレイヴを支えにしながら迅真は立ち上がる。

 

「あー。そう言えば思い出したんだけどー、君は僕の事、気味悪がらないのー?」

 

 真也の質問。それに迅真は怪訝そうな顔をし、

 

「ハァ?お前の能力のどこに気味悪がる要素があるんだよ。無を操る程度の能力だっけ?それだけだろ?そのくらいで気味悪がったら俺の住んでたところで生きてられないッつの。って言うか、全く能力が効かない奴もいたんだ。更に言えば能力まで書き換えられる。それと比べたらちっぽけなもんだ。気持ち悪く何かねぇし気味悪くもねぇ。それでいいか?」

 

「……君は、良い所に生まれたんだね」

 

「んな訳あるか。俺は生まれてから数年間は研究所でモルモットだよ。経験なんかしない方が良い」

 

「…そう」

 

「あ~…湿っぽくなっちまったか。さて、じゃあ皆を元の世界に戻そ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ドスッ――――

 

 

 

 

 

 迅真の腹から枝が生える。

 

「…は?」

 

 誰も反応できなかった。

 

 誰も理解できなかった。

 

「迅真…?」

 

 誰かが呟く。

 

 そして――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 迅真はその場に倒れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメだよ。戦いが終わってもしばらく警戒し続けないとね」

 

 その声は、桜の方から響いた。




誰も残らない。何も残らない。

サクラは全てを飲み込む。サクラは全てを喰らう。

そして何も―――――
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