東方種変録   作:大神 龍

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第百十三話

「「「「「「「「迅真《さん》!!!」」」」」」」」

 

 

 

 ほとんど全員が叫ぶ。が、妖忌、リッパー、妃香梨、光の4人は瞬時に桜の方を向き、武器を構える。

 

 

 そこにいたのは白く腰まである髪に、青い瞳。白いノースリーブシャツにジーンズを穿いている少女。圧倒的にこの場、この時代に合っていない『異物』。

 

「アッハッハ!!いやぁ、あっさり死んじゃったね!そんなに脆いならサクッとやっちゃえばよかった?でもそれじゃあつまんないか。大勢の仲間の前で、且つ油断している時にドスッと一撃。それで絶望する顔が最高だね!ねぇ君達。どう思う?」

 

 言葉は無かった。

 

 一瞬にして迫る数千数万の必殺レベルの攻撃。

 

 全て直撃。土煙が上がり、視界を遮る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひっどいなぁ。私はまだ何もしてないじゃない。これはお返しだよ」

 

 声が響いた瞬間、一人一人の周りに出現する先ほど放ったのと全く同じ攻撃。

 

 しかし、全員はその全てを切り抜ける。

 

「アハハッ!良いね良いね!ちゃんと耐えてくれる!それでこそ敵にし甲斐があるね!ほらほら、来なよ!私が憎いでしょ?それとも恐怖で動けないの?それだったら期待はずれ「東雲流組手術『霊月崩天刃(れいげつほうてんじん)』!!!」うわぉ!」

 

 飛び出した俊の不意を突いた一撃は、しかし寸前で気付かれ、躱される。

 

「いやぁ、びっくりした。まさか「『氷:氷山』!!」さすがに連続は酷いよ!?」

 

 白狼の素早い連撃を二、三度凌いだと同時に目に留まらない速度でカウンターを放つ。それは白狼の顎の部分を掠り、それによって白狼は後ろへに、三歩下がって、膝をつき、瞬間放たれる横薙ぎの蹴り。

 

 その威力で白狼は数メートル飛んで行き、動かなくなる。

 

「ほらほら。早く回復させないと手遅れになっちゃうわよ?脳震盪(のうしんとう)はバカにできないらしいから。いつも瞬間的に治しちゃうから実感ないけどね」

 

「てめっ…!!」

 

 暁は少女に向かって走り出し、一は白狼に向かって走る。

 

「『ハッソウトビ』!!」

 

「甘い!!」

 

 高速の八連撃を掻い潜り、心臓に向かって掌底を一撃。

 

 それで一連の流れは途切れ――――ない。

 

「セイッ!!」

 

 いつの間にか側面に回っていた左右が渾身の正拳突きを放つ。

 

「腰が入ってない!!」

 

 しかし、蹴り上げる事で流され、そのまま流れるように反転しながら左右の鳩尾に肘鉄が入り、そのまま暁もろとも蹴り飛ばされる。

 

「封印『八百万大結界』!!」

 

 シルヴェル宣言と同時、八百万の結界が出現し――――

 

 

「無意味!!」

 

 

 ズガァンッ!と轟音を立てて砕け散る。

 

「嘘ぉ!!」

 

「あ、ちなみに、結界解除に能力なんて使ってないよ。タダの()()()()❤」

 

 ふざけんな。おそらく全員の思っている事だろう。今の数の結界をタダの物理攻撃で破壊するなんて、むちゃくちゃだ。

 

「えっと?もう終わりかな?じゃあこっちから行くよぉ?」

 

 言葉と共に、少女の姿が消え――――

 

 

「えいっ!」

 

「ッ!?」

 

 反射的に光は体を大きく反らす。それと同時に突き抜ける突風。

 

「ありゃ?避けちゃった」

 

「あまり、バカにしないでほしい…!」

 

 目の前の腕を掴み、そのまま体を捻って少女を引っ張ってよろけさせ、その勢いで起き上がった光は足払いで更に体勢を崩してから太刀で一閃する。

 

 しかし、前転され、あと少しの所で躱される。

 

「おりゃ!」

 

 だが、避けた先を予想していた妃香梨の踵落としが少女を襲う。

 

「おっとぉ!」

 

 てっきりそのまま転がってくると思っていた妃香梨はいきなり蹴り上げて来た少女に驚き、足を振り下ろしている途中で後ろに下がる。

 

「合絆『フラン人形レーヴァテイン』!」

 

「断命剣『冥想斬』!!」

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!!」

 

 燃え盛る剣を持った人形が行く手を阻み、緑色に発光した剣が振り下ろされ、紅い槍が音を越えて放たれる。

 

 その状況に――――

 

 

「アッハハ!!最っ高だね!!だけどまだ足りない!!」

 

 

 笑いながら妖忌の緑色の剣を掴み、燃え盛る剣に叩きつけると、他の人形を掴んで向かって来る槍に向かって投げつける。

 

 しかし、それでも紅い槍は止まらず、少女に向かって突き進むが、

 

「でりゃぁ!!」

 

 バキンッ!と音を立てて踏みつぶされて折れる。

 

「アッハハハハハ!!!まだだよ!まだ終わりじゃないでしょ!?私を楽しませて!!全身全霊で、命を燃やして私を倒してみなさい!さぁ!さぁ!!」

 

 狂った様に笑う少女。それに呼応するようにリッパーは飛び出し――――

 

 

「紅狼『紅き狼は幻想を喰らう』!!」

 

 

 視界の全てが赤く染まる。

 

「アハハ!」

 

 リッパーは笑う。

 

 それは『恐怖』。少女が見せる幻影。恐怖を具現化し、全てを赤く紅く染める。

 

 その状態で振るわれる刃。それは、この世界でただ一か所だけ『白い』少女に迫り――――

 

 

 

「私に恐怖や狂気が効くと思わないでよ?」

 

 リッパーが吹き飛ぶ。

 

「アッハハ!!次は誰?まだ私と戦ってくれる人はいるの!?」

 

「東雲流組手術『翔旋月花(しょうせんげっか)』!!!」

 

 皆が恐怖の表情を浮かべる中、背後から俊が掌底を叩き込む。

 

「カハッ!…鎧通し…防御無視の一撃…悪くないわ…でも、威力が足りない!!」

 

 反転すると同時にサマーソルトキックを繰り出す少女。

 

 俊はそれをまともに受け、宙を舞う。

 

「…君は『無』に帰れ」

 

 真也の心無い言葉と共に差し出される右手。それが握られ――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何も起こらない。

 

「え!?そんな、確かに能力は発動したはず…!!」

 

「対象を誤ってたら何の意味も無いわ?ま、対象を選べるって言うのは私にとっては利用できるものでしかないけどね」

 

 不敵に笑う少女。その体は、先ほどの激闘を感じさせないほどに傷も、汚れも『無』くなっていた。

 

「うそ…僕の能力の対象を変更した…?そんな…」

 

 少女を消し去るはずだったその攻撃は、しかし、彼女のダメージを全て『無』に帰しただけだった。

 

 その事実は絶望的。戦闘能力は向こうが上。その上、こちらは疲労が蓄積しているのに向こうは全快。

 

「どうすりゃいいんだ…?」

 

 さっきの様子からして、向こうは本気を出していない。ならば、今の内に全力で叩き潰すのが最良か。

 

 そんな事を考えていると、

 

「もう終わり?なんかあっけないね。じゃ、皆おやすみなさい!」

 

 飛び出しながら放たれたその跳び膝蹴りは、白狼の治療をしていた一に向かい、一は死を覚悟し――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドガッ!と音を立てて打ち落とされる。

 

 

「おっと?」

 

 少女はそのまま地面に激突し、停止する。

 

 一を守ったのは、

 

 

 

「ったく、ルーミアに呼ばれて駆けつけて見りゃ」

 

 

 

 ダークブラウンのロングコートとカーゴパンツを着て、

 

 

 

「何なんだこの状況は」

 

 

 

 空色の髪をして、背中に一本の太刀を差した、

 

 

 

「とりあえず、こいつを叩きのめしゃ良いのか?」

 

 

 

 霧咲 香。花好きのニンゲンだった。




 友人を、仲間を、恋人を。誰も殺させやしない。

 そう誓った彼は、友人の死を前にして刃を抜く。

 その刃が斬るのは――――
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