「ルーミアから聞いた話じゃ、西行妖が暴れてるって話だったんだが…なんだ?どうなってんだ?」
香の疑問。それに答えたのは、地面に埋まっている少女。
「西行妖は封印されたよ。でもね、私がすぐに解いた。だから今は暴れる前。嵐の前の静けさって奴だね」
「へぇ?そりゃふざけたことしてくれやがったな。所でよぉ、お前、一度ルーミアと迅真の二人と会ってるだろ」
「どうしてそんな事を?」
「単純な興味。ルーミアに言われたからな。『諏訪大戦の時に会った』ってよ」
「…なんだ、知ってるんじゃない」
「どういう風に会ったんだ?聞かせてくれよ」
「ただの案内人。戦場へと送ってあげただけよ?結局誰も死ななかったけどね」
「そうかそうか。じゃ、話は終わりだ。死ね」
「お断りっ☆」
音速で放たれた拳を軽く受け流す少女。
「じゃあ、ついでだから名乗っておこう!私は
ひらりと高く飛び、白華は西行妖の前に立つ。
「さ。少年少女の皆様?私を全力で楽しませなさい。でないと皆、死んじゃうわよ?」
言葉と共に生成される剣。
「弾幕としては、こっちが好きなのよ。じゃ、散れ」
前方180°に放たれる剣の弾幕。
「やらせるかよ」
しかし、その全ては断ち切られる。
切ったのは香。今まで、迅真との戦いですら使っていない太刀を抜き、感知されないほどの速度で切り捨てていた。
「何百年も鍛え続けた剣だ。ちょっとやそっとじゃ斬れないって事は無いぞ」
黒く煌く刀身。それは燃えるような熱さを纏い、凍るような冷気を纏い、斬られるような風を纏い、痺れるような雷を纏い、目を覆いたくなるような光を纏い、全てを飲み込む様な闇を纏い、空間が歪み、時の流れが不安定になっていた。
「
「ふぅん。面白い刀。あんな刀、お姉ちゃんの作ってた杖以来だね」
にやにやと笑いながら刀を観察する白華。
香はゆっくりと構え、
「霧咲流剣術【焔ノ型】『
世界が歪む。
次の瞬間、
ゴゥァッ!!と、視界いっぱいに炎が広がる。
「うわぁ!!って、熱くない…?」
数センチ先が見えないほどの炎が吹き荒れているにも関わらず、熱さは感じない。
誰もが疑問に思った次の瞬間、
フッと、炎は消える。
「…なんだこれ」
誰が呟いたかは分からない。だが、辺りは明らかに先ほどと違っていた。
「一面焼け野原かよ…」
黒く、黒く続いて行く大地。その中でも西行妖は立ってこそいたが、花は全て焼けきっていた。
「ここの空間を全部炎で焼いて燃やしたくないものだけを選んで空間を切り取るとか、中々の腕ね」
「ま、生きてるわな」
所々が焼けている白華を睨みつつ、香は刀を構える。
「お、おい!ちょっと待ってくれ!!」
「ん?なんだ?」
声を上げたのは白狼。
「俺も一緒に戦わせてくれよ!」
「……いいが、頑張って付いて来いよ?」
「分かった!」
白狼を皮切りに、他の人もやる気を出す。
「よし、じゃあ次は全員だ。十四対一だが、許せよ?」
「いくらでも来なさい。私を楽しませられるなら結構!」
飛び出したのは俊。
「『死の境地』。東雲流組手術『霊月崩天刃 式《れいげつほうてんじん しき》』!!」
白華を霊力を纏って蹴り飛ばし、落ちて来た所をもう一度蹴り飛ばす。
「『炎:列火』!燃え尽きろ!!」
白狼の火を散らしながら振るわれる剣をまともに受け、白華は横に飛ぶ。
「フンッ!!」
左右の渾身の拳は白華の内臓を揺らし、
「ッ!!」
光が太刀で打ち上げる。
「『ハッソウトビ』!!」
暁の八つの剣閃が更に飛ばし、
「霧怖『紅き霧は全てを喰らう』
リッパーから生まれた紅い霧に包まれた彼女は浅く浅く切り刻まれ、
「無符『魂無き器』」
周囲を真也が生み出した様々な色の弾幕が包み込み、
「獄戒『ドロォルトゥ・ヘルベッテ』!」
「恋符『マスタースパーク』!!
「lastspell 合絆「元恋『片思いのファイナルスパーク』」!!」
シルヴェルの生み出した死をもたらす災厄級の猛毒に放たれるレイと絆の七色の二本の光。
そして、ボロボロになって落ちて来る白華に、
「転生剣『円心流転斬』!!」
妖忌は三度、円を描くような斬撃を当て、最後に横薙ぎで切り捨て、
「霊刀『
俊は、霊力製の弓と、剣を持ち、剣を矢のようにつがえると、
「『
超光速で穿たれる剣の矢。それは見事に白華の胸を貫き、
「霧咲流剣術【凍ノ型】『
香の上空に突き抜けるその一撃は、通った後を凍てつかせ、氷の塔を築き上げる。
「咲き誇れ、氷精の花」
塔は滑り出し、崩れて行き――――
ガシッ!と音を立てて止まる。その瞬間、少量の解けた水が飛び、生まれた氷で出来た大輪の花を彩った。
香は軽く跳び、地面に着地する。
「これで数分は大丈夫だ。紫。早く結界を修復しろ」
「は、はい!」
誰の声も出ない。香の絶技を見たからではない。疲れ切っているからだ。
「…ルーミア。そろそろ出てきても良いだろ?」
「最初からここにいるわ」
声のした場所は、迅真の居る場所。
「…私が居たのに、こうなるなんてね…何が宵闇の女王よ。好きな人一人守れないただのバカ。もういいかな。私は生き過ぎたわ」
「………そん…な、事……言う…………な…よ……」
か細い声で、聞こえる。
「迅真…?生きてるの?」
「まだ…何とか…な……だが………能力が…死んでる…から………時間の問題……だな…ルーミア……俺の…ダーインスレイヴ……受け取ってくれねぇか…?」
「なんで?それは貴方の剣じゃない。私は受け取れないわ」
「受け取って……くれよ…最期の頼み…だぞ…?」
「……いいえ、それは迅真が持ってて…?」
「じゃあ、取ってくれ」
「分かったわ」
ルーミアは闇を使い剣を取り、迅真に渡す。
「これで良い?」
「あぁ………ルーミア…言っておくことがある」
「なに?」
「…俺は、絶対お前の元に帰ってくる。じゃあな。『ダーインスレイヴ第二封印、王の
ダーインスレイヴが紅く光ると同時に迅真が消える。
「……え?」
反射的にダーインスレイヴを掴み、ルーミアは呆然とする。
「……迅真…?迅真…迅真!!なんで!?なんで行っちゃうの!!?」
闇で包み、ダーインスレイヴを抱きしめるルーミア。彼女は血が出ている事にも気づいていない。
「いや…いやよ!私を一人にしないでよ!!バカ…バカバカバカ!!…ばかぁ…」
静かに泣きはじめるルーミア。誰も動けないなか、音が響く。
――――ピシリッ
――――バキッ
――――バリィィンッ!!
振り返ると、血まみれの白華が立っていた。
「ハァ…ハァ…この程度で私は倒れないわよ?」
「…なら、さっさと潰す」
香達が構える。が、
「皆。私にやらせて」
ルーミアが前に立つ。
「…良いのか?」
「二度も言わせないで」
「………」
ルーミアの有無を言わさない視線に、香は下がる。
「待たせたわね。貴方は……私が確実に狩る。今は逃げたとしても、確実に、よ。確実に殺す」
「やれるもんならやってみなさい。今の本気でやらせてもらうよ」
二人はにらみ合い、ルーミアが先に動く。
闇は動き出す。愛した人の刃を携えて。
闇は動き出す。愛した人を殺した者の前に立つ。
さぁ、最古の王は目を覚ました。汝。自らの犯した罪を数えるがいい。