東方種変録   作:大神 龍

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第百十六話

「……ここは?」

 

 目を覚ました私は、呟く。

 

「白玉楼の中。お前達が泊まるはずだった――――お前の泊まる部屋だ」

 

 香の声が響き、私は、理解する。

 

「……そう………夢じゃ……無いのね」

 

「……そうだな」

 

 私はゆっくりと起き上がる。

 

 かけられていた布団がファサ…と音を立てて倒れる。

 

「……皆は…?」

 

 ふと思い、私は香に聞く。

 

「外で準備してる」

 

「…何の?」

 

 準備…するようなモノはあっただろうか?

 

「宴会。した方が…良いだろ?」

 

 宴会…

 

「なんで?」

 

「そりゃ、弔うためにも。あいつだって、しんみりしてるより騒がしい方が良いはずだ」

 

 ……確かに、迅真は、騒がしい方が良い……のかしら?

 

「……私も、何かした方が良い?」

 

「いや、お前はもう少し寝てろ。準備が終わったら迎えに来る」

 

「……そう」

 

 私は香に言われるままに横になろうとし――――

 

「…ねぇ香。なんか、体が小さい気がするんだけど」

 

「ッ!……そりゃ、封印したからな」

 

「……なんで封印したの?」

 

「…憶えてないか。お前、あの後すぐ倒れて、それと同時に暴走し始めたんだ。それを止めるために、迅真のバッグの中にあった封印札を使った。貰い物だったみたいだけどな」

 

「…そう。分かったわ」

 

 暴走…久しぶりね…私がそんな状況になるなんて。何億年ぶりかしら。

 

「準備が終わったら起こす。それまで寝てな」

 

「えぇ…ねぇ、あの剣は?」

 

「それなら、お前の頭の上だ」

 

「…ありがと」

 

 香は私の言葉を聞いて、行ってしまう。

 

 私は枕元の黒い剣――――ダーインスレイヴを掴み、手元に引き寄せると、抱きしめる。

 

 闇で覆ってるし、私に傷がつくことは無いでしょ。

 

「……はぁ。なんか、すごい長い間迅真と居た気がするわ…数百、数千年くらいしかいなかったのにね…」

 

 迅真に最初に会った時から今までを思い出しながら、私は眠りにつく――――。

 

 

 * * *

 

 

「ルーミア。起きれるか?」

 

 ルーミアの肩をゆすり、起こそうをする香。

 

「ん……香…?」

 

「あぁ。宴会の準備は出来た。参加するか?」

 

「…うん、参加する。久しぶりにお酒飲む」

 

「…そうか。歩けるか?」

 

「…大丈夫。そこまで弱ってないわ」

 

 そう言ってルーミアは立ち上がると、外へ向かって歩いて行く。

 

「……やっぱり、ショックが抜けきってないな……俺に会う前の顔をしてる」

 

 さっきルーミアが起きた時もそうだったが、半目になっていた。

 

「時間が、癒してくれればいいんだが……」

 

 香は何とも言えない表情でルーミアの後を追う。

 

 

 * * *

 

 

 すでに外は賑わっており、何人かで固まって騒いでいたり、料理を運んでいたりしている。

 

 すでにかなりの量の料理が置いてあるのだが、誰がそんなに食べるのだろうか?

 

「ほれ、ルーミア。好きな所行って来い。気分転換くらいにはなるだろ。思い詰め過ぎると昔みたいになるぞ」

 

「…分かったわ。行ってくる」

 

 ルーミアはそう言い、近くにいた白狼たちの元へと行く。

 

 

 * * *

 

 

「ん?あ、ルーミア…だっけか。もう起きても大丈夫なのか?」

 

「えぇ、大丈夫。えっと、白狼、暁、一、で合ってるかしら?」

 

「あぁ、合ってる」

 

「それで問題ないです」

 

 三人は答え、それを聞くと、ルーミアはその場に座る。

 

「どう?楽しんでる?」

 

「ん~……まぁな。一応は」

 

「無理をしているのも何人かいるだろうがな」

 

「そうですね…」

 

「あっはは。そりゃそうでしょうよ。普通騒げないって。貴方達も無理しなくていいのよ?」

 

「そう言うわけにもいかないだろ?」

 

「まぁね。あ、そうだ。コレをあげるわ。迅真の作ってた要らないモノ」

 

「なんだそりゃ」

 

「要らないモノって…断言してから渡すようなモノじゃないと思いますよ?」

 

「それはどうかしら。あくまでも私達にとって要らないってだけだし。例えば、このブレスレット。コレは速度上昇。二倍くらいに跳ね上がるわ。次にこの指輪。能力の超常的上昇。回数制限だけど、使えば5分間は通常の5倍は出る。最後にこの髪飾り。コレは少し特殊で、能力の上昇じゃなくて、付与。力を込めて、1分間だけ確実に相手にダメージを与えられる、未来予知に等しいそんな能力が付与される。使ってみた結果、なんか光の帯みたいのが見えたわ。それを辿れば当たる。そんな感じよ」

 

「…最後の一個だけ、意味分からないんだけど?」

 

「説明が難しいの。使ってみれば分かるわ」

 

「そう言うもんかなぁ…」

 

「そう言うモノ。一応三つとも袋で渡すわね。帰ってからどれを取るか考えてね」

 

「ん。ありがとな」

 

「どういたしまして。じゃあ私はそろそろ行くかな。じゃあね」

 

「あぁ、また後で」

 

「また後でな」

 

「また後でよろしくお願いします!」

 

 ルーミアはそう言って席を離れる。

 

「……これ、本当に要らないものなのか?」

 

「さぁ?」

 

「ん~…くれたから良いんじゃ?」

 

「いや、でもあの性能だぞ…?おかしくね?」

 

「貰える物は貰っといて損は無いだろ」

 

「ん~………」

 

 まぁ、帰ってから考えよう。彼らは結局その結論に至った。

 

 

 * * *

 

 

「三人とも、騒いできたらいいのに」

 

 白玉楼のキッチンで、ルーミアがそう言う。

 

「いや、何かこう、落ち着かなくって」

 

「左右さんがすごく働いてて、正直座ってるだけは心が痛いです」

 

「二人とも、そんなに気にしなくていいぞ。騒いで来ればいいだろ?」

 

「「左右(さん)が働いてるから落ち着かないんだ(です)!」」

 

 俊、絆、左右の三人は、言いながら料理を作って行く。

 

「…三人とも。誰もそんなに食べないと思うんだけど?どうするの?余ったら」

 

「「「持って帰ろうかと」」」

 

 キリッ!とした表情で答える三人。

 

「そんなにいい食材があるようには思えないけどね」

 

「あくまでも他人が作ったってのが良いんだ。自分のも持って帰るが」

 

「人が作ったのは自分が作ったのより確実にうまく感じるからな」

 

「それに、香さんが特殊は野菜をくれたんです」

 

「そ、そう…あ、そうだ。貴方達にはこれをあげましょう」

 

 ん?と三人が振り向くと、ルーミアの手には三つのアイテムがあった。

 

「左右君にはこれね。腕時計。例えどんな状況でも時を刻み続ける時計。どんな衝撃にも耐えるわ。隕石レベルはちょっとヒビが入っちゃうけど。ちなみに能力観賞は全く受け付けないわ。時止め無視。一応盾にも使えるかな」

 

 そう言って、左右に黒い腕時計を渡す。

 

「で、俊君にはコレ。銃…だったかな。名前は『終焉(オワリノオト)』。これに最初からセットされてる弾丸は、絶対撃ったらだめよ?5発入ってるけど、これは、撃つと同時に対象の背後。むしろ後頭部にめり込んで飛んでくから。放った時点ですでに当たってるって言う弾丸。相手を殺す気じゃないと使ったらダメ。即死効果もついてるからね。普通の弾丸はもう一つ別のマガジン。コレを複製してもらいなさい。たぶん複製できるでしょ」

 

 俊には、黒い銃。

 

「最後に、絆君にはコレ。『闇羽の首飾り』。これは付けてるだけで夜も昼並み――――むしろ、それ以上見えるようになるわ。で、毎度の様にこれにも身体能力強化が付いてるわ。今回は防御力上昇。霊力を込めると壁が出来るわ。ただ、攻撃の威力と比例して霊力を持っていかれるけどね」

 

 絆に黒い羽の付いた首飾りを渡す。

 

「貰っていいのか?」

 

「いいのいいの。まだたくさん残ってるし。私も把握し切れてないわ」

 

「そんなにあるのか……」

 

「迅真さん、どれだけ作ったんですか…」

 

「気が向いたら作ってたからね。さて、じゃあまた向こうに行って話してこようかな。三人とも、料理はほどほどにしておいてね」

 

「「「了解(です)」」」

 

 ルーミアはそれを聞いて、再び宴会場へと向かった。




 結果はどうであれ、助かったのは事実。感謝することは悪くない。迅真もその方が嬉しいだろう。彼女はそう思い、自分の使えない彼の形見を配り歩く。






 別に、使わなくても大丈夫ですよ?まぁ、使って下さると私が狂喜乱舞して呼吸困難で倒れますので!遠慮なく使っても捨てても大丈夫です!!
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