「……ここは?」
目を覚ました私は、呟く。
「白玉楼の中。お前達が泊まるはずだった――――お前の泊まる部屋だ」
香の声が響き、私は、理解する。
「……そう………夢じゃ……無いのね」
「……そうだな」
私はゆっくりと起き上がる。
かけられていた布団がファサ…と音を立てて倒れる。
「……皆は…?」
ふと思い、私は香に聞く。
「外で準備してる」
「…何の?」
準備…するようなモノはあっただろうか?
「宴会。した方が…良いだろ?」
宴会…
「なんで?」
「そりゃ、弔うためにも。あいつだって、しんみりしてるより騒がしい方が良いはずだ」
……確かに、迅真は、騒がしい方が良い……のかしら?
「……私も、何かした方が良い?」
「いや、お前はもう少し寝てろ。準備が終わったら迎えに来る」
「……そう」
私は香に言われるままに横になろうとし――――
「…ねぇ香。なんか、体が小さい気がするんだけど」
「ッ!……そりゃ、封印したからな」
「……なんで封印したの?」
「…憶えてないか。お前、あの後すぐ倒れて、それと同時に暴走し始めたんだ。それを止めるために、迅真のバッグの中にあった封印札を使った。貰い物だったみたいだけどな」
「…そう。分かったわ」
暴走…久しぶりね…私がそんな状況になるなんて。何億年ぶりかしら。
「準備が終わったら起こす。それまで寝てな」
「えぇ…ねぇ、あの剣は?」
「それなら、お前の頭の上だ」
「…ありがと」
香は私の言葉を聞いて、行ってしまう。
私は枕元の黒い剣――――ダーインスレイヴを掴み、手元に引き寄せると、抱きしめる。
闇で覆ってるし、私に傷がつくことは無いでしょ。
「……はぁ。なんか、すごい長い間迅真と居た気がするわ…数百、数千年くらいしかいなかったのにね…」
迅真に最初に会った時から今までを思い出しながら、私は眠りにつく――――。
* * *
「ルーミア。起きれるか?」
ルーミアの肩をゆすり、起こそうをする香。
「ん……香…?」
「あぁ。宴会の準備は出来た。参加するか?」
「…うん、参加する。久しぶりにお酒飲む」
「…そうか。歩けるか?」
「…大丈夫。そこまで弱ってないわ」
そう言ってルーミアは立ち上がると、外へ向かって歩いて行く。
「……やっぱり、ショックが抜けきってないな……俺に会う前の顔をしてる」
さっきルーミアが起きた時もそうだったが、半目になっていた。
「時間が、癒してくれればいいんだが……」
香は何とも言えない表情でルーミアの後を追う。
* * *
すでに外は賑わっており、何人かで固まって騒いでいたり、料理を運んでいたりしている。
すでにかなりの量の料理が置いてあるのだが、誰がそんなに食べるのだろうか?
「ほれ、ルーミア。好きな所行って来い。気分転換くらいにはなるだろ。思い詰め過ぎると昔みたいになるぞ」
「…分かったわ。行ってくる」
ルーミアはそう言い、近くにいた白狼たちの元へと行く。
* * *
「ん?あ、ルーミア…だっけか。もう起きても大丈夫なのか?」
「えぇ、大丈夫。えっと、白狼、暁、一、で合ってるかしら?」
「あぁ、合ってる」
「それで問題ないです」
三人は答え、それを聞くと、ルーミアはその場に座る。
「どう?楽しんでる?」
「ん~……まぁな。一応は」
「無理をしているのも何人かいるだろうがな」
「そうですね…」
「あっはは。そりゃそうでしょうよ。普通騒げないって。貴方達も無理しなくていいのよ?」
「そう言うわけにもいかないだろ?」
「まぁね。あ、そうだ。コレをあげるわ。迅真の作ってた要らないモノ」
「なんだそりゃ」
「要らないモノって…断言してから渡すようなモノじゃないと思いますよ?」
「それはどうかしら。あくまでも私達にとって要らないってだけだし。例えば、このブレスレット。コレは速度上昇。二倍くらいに跳ね上がるわ。次にこの指輪。能力の超常的上昇。回数制限だけど、使えば5分間は通常の5倍は出る。最後にこの髪飾り。コレは少し特殊で、能力の上昇じゃなくて、付与。力を込めて、1分間だけ確実に相手にダメージを与えられる、未来予知に等しいそんな能力が付与される。使ってみた結果、なんか光の帯みたいのが見えたわ。それを辿れば当たる。そんな感じよ」
「…最後の一個だけ、意味分からないんだけど?」
「説明が難しいの。使ってみれば分かるわ」
「そう言うもんかなぁ…」
「そう言うモノ。一応三つとも袋で渡すわね。帰ってからどれを取るか考えてね」
「ん。ありがとな」
「どういたしまして。じゃあ私はそろそろ行くかな。じゃあね」
「あぁ、また後で」
「また後でな」
「また後でよろしくお願いします!」
ルーミアはそう言って席を離れる。
「……これ、本当に要らないものなのか?」
「さぁ?」
「ん~…くれたから良いんじゃ?」
「いや、でもあの性能だぞ…?おかしくね?」
「貰える物は貰っといて損は無いだろ」
「ん~………」
まぁ、帰ってから考えよう。彼らは結局その結論に至った。
* * *
「三人とも、騒いできたらいいのに」
白玉楼のキッチンで、ルーミアがそう言う。
「いや、何かこう、落ち着かなくって」
「左右さんがすごく働いてて、正直座ってるだけは心が痛いです」
「二人とも、そんなに気にしなくていいぞ。騒いで来ればいいだろ?」
「「左右(さん)が働いてるから落ち着かないんだ(です)!」」
俊、絆、左右の三人は、言いながら料理を作って行く。
「…三人とも。誰もそんなに食べないと思うんだけど?どうするの?余ったら」
「「「持って帰ろうかと」」」
キリッ!とした表情で答える三人。
「そんなにいい食材があるようには思えないけどね」
「あくまでも他人が作ったってのが良いんだ。自分のも持って帰るが」
「人が作ったのは自分が作ったのより確実にうまく感じるからな」
「それに、香さんが特殊は野菜をくれたんです」
「そ、そう…あ、そうだ。貴方達にはこれをあげましょう」
ん?と三人が振り向くと、ルーミアの手には三つのアイテムがあった。
「左右君にはこれね。腕時計。例えどんな状況でも時を刻み続ける時計。どんな衝撃にも耐えるわ。隕石レベルはちょっとヒビが入っちゃうけど。ちなみに能力観賞は全く受け付けないわ。時止め無視。一応盾にも使えるかな」
そう言って、左右に黒い腕時計を渡す。
「で、俊君にはコレ。銃…だったかな。名前は『
俊には、黒い銃。
「最後に、絆君にはコレ。『闇羽の首飾り』。これは付けてるだけで夜も昼並み――――むしろ、それ以上見えるようになるわ。で、毎度の様にこれにも身体能力強化が付いてるわ。今回は防御力上昇。霊力を込めると壁が出来るわ。ただ、攻撃の威力と比例して霊力を持っていかれるけどね」
絆に黒い羽の付いた首飾りを渡す。
「貰っていいのか?」
「いいのいいの。まだたくさん残ってるし。私も把握し切れてないわ」
「そんなにあるのか……」
「迅真さん、どれだけ作ったんですか…」
「気が向いたら作ってたからね。さて、じゃあまた向こうに行って話してこようかな。三人とも、料理はほどほどにしておいてね」
「「「了解
ルーミアはそれを聞いて、再び宴会場へと向かった。
結果はどうであれ、助かったのは事実。感謝することは悪くない。迅真もその方が嬉しいだろう。彼女はそう思い、自分の使えない彼の形見を配り歩く。
別に、使わなくても大丈夫ですよ?まぁ、使って下さると私が狂喜乱舞して呼吸困難で倒れますので!遠慮なく使っても捨てても大丈夫です!!