東方種変録   作:大神 龍

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バレンタインだけど、イベントはまだしないです。やるのは原作入ってからかな。うん。


第十三話

 先に動いたのは迅真。いつもは相手の出方をうかがうのだが、今回はルーミアが起きる前に倒すつもりだからか、先制を取る。

 

 まずは能力を使っていない拳。これを左手で受け止める。または躱せないのなら余裕で終わる。だが、閃鬼が姐さんと呼び敬語を使うほどの相手なのだ。これで終わる訳がない。案の定拳は受け止められ、反撃される。

 

 迅真はすぐさま能力を使用する。しかし、身体能力の強化ではない。特定人物への変化だ。その者はとある学園の都市。第一位、一方通行(アクセラレータ)と呼ばれるあらゆる方向(ベクトル)を操作する力を持つ人物。

 

 操るのは風。即座に勇義に向かって方向を操作し倍加した風の砲弾を放つ。同時に、拳を掴んでいる手に加わっている力の方向(ベクトル)を逆転させる。

 

 ドガベキィッ!!という鈍い衝突音と骨の破砕音が響く。そして、その音と共に勇義の身体は吹き飛び、左手はグチャグチャに折れていた。しかし、勇義は木に当たって止まるのではなく、ズガガガッ!という音をたてて踏ん張る。

 

「ンな!?今のを耐えるのかよ!」

 

「っっ!ふぅぅぅ……ハハハ……あんた、中々やるじゃないか。さすが閃鬼が認めるだけはあるね。じゃあ、次はこっちの番だよ!」

 

「チッ!今ので終わると思ったンだが……イイぜ!来いよ!」

 

 勇義は右拳を握り、迅真に殴り掛かる。その拳は音を突き破ってやってくる。しかし、迅真はその拳の側面を撫でるように右に流す。すると、その勢いを保ったまま勇義は回し蹴りを放つ。ヤバい!と迅真が思うよりも早く、迅真の身体は大きく仰け反りその蹴りをかわし、その勢いで後ろにバク転して距離を取る。

 

「避けるのかい?てっきりさっきの能力(ちから)で反撃をしてくるものだと思っていたんだけどねぇ」

 

「そういうわけにもいかねェんだよ。アレを使いすぎると色々と副作用があるからよ」

 

「そうなのかい?まぁ、あまり私には関係ないけどね」

 

「次はコッチから行くぞ?」

 

 迅真は言い終わると同時に言葉を紡ぎつつ前進する。その手にはいつの間にか一本の刀が握られていた。

 

「切り裂け!斬鉄剣!」

 

 迅真はそう叫びつつ刀を抜刀する構えになる。勇義は悠然と迅真の攻撃を迎え撃とうとする。

 

 そして、迅真と勇義が交差する。そのまま影は離れて行き、片方の影は崩れ落ちる。残っていたのは、迅真だった。

 

 それを見ていた閃鬼は、迅真に恐怖を覚えた。それは、今の一瞬。交差すると同時に迅真の手の動きが見えず、気付いたら勇義が無傷(・・)でやられていたのだ。

 

 

 

 そう。無傷で、だ。

 

 

 

 刀でやられた傷が無かっただけではなく、その前。グチャグチャになっていたはずの左手すら完治していた。まるで何も無かったかの様に。夢であったかの様に。しかし、確かにそれは事実だったのだろう。いつの間にか髪の色が薄くなり白に近くなっている迅真の雰囲気がそう伝えてくる。

 

「クフッ!カハッ!ゲホッゲホッ!……ハァ、ハァ……」

 

 苦しそうな声を出す迅真は、ゆっくり深呼吸を繰り返す。すると、だんだんと髪の色が戻っていく。そして、元の色に戻ると、勇義を抱えて閃鬼の方へ移動してくる。しかし、その足取りはふらふらとしてかなり危なっかしく、閃鬼は思わず迅真に近寄り勇義を受け取り、迅真を支える。そして、先ほど閃鬼がいた所まで戻ってくると、迅真はルーミアの所まで行き、その隣に座り、眠ってしまった。

 

 閃鬼は、おそらく体力が底を尽きたんだな。と思い、今は寝かせておこうかと考えたが、さすがにこのままは不味いな。と考え直すと、勇義を一度その場に降ろしてから、仲間に運ぶのを手伝って貰おうと助けを呼びに行こうとした。すると、

 

「閃鬼。大丈夫かい?」

 

と、いつからいたのか、そこには閃鬼の半分くらいの身長の、左右に二本の角を生やした少女がいた。

 

「萃香姐さん。何やってるんですか?」

 

「何って、閃鬼と勇義がそこの男を喧嘩をしてるのを見てただけだよ?まぁ、勇義がやられる直前に一撃私も貰いかけたんだけどねぇ」

 

 萃香はそう言ってカラカラと笑うが、閃鬼は迅真の力に先ほどよりも強い恐怖を覚えていた。自分は勇義にしか気付いていなかったのに、迅真は萃香にも気付いていたというのだ。迅真は自身の事を人間と言っていたが、本当にそうなのだろうか……鬼の自分ですら分からなかった事を気付いていた。その事実にただただ驚き、恐怖していた。自分と戦っていた時の迅真は本当は本気なんて全く出していなかったのではないか。そんな気がしてならない。

 

 閃鬼がそう考えていると、萃香が、

 

「そういえば、今村に何かをしに戻ろうとしていたように見えたけど、何をするつもりだったんだい?」

 

 その声で我に返った閃鬼は、

 

「あ、あぁ、そうだ。萃香姐さん。勇義姐さんとそこの二人を連れて行くのを手伝って貰いたいんですが」

 

「なんだ。そんなことかい。良いよ、手伝ってあげる。どこに連れて行けばいいんだい?」

 

「この二人は俺の家に連れて行きます。勇義姐さんはどこに連れて行くか考えて無かったんですけど萃香姐さんには勇義姐さんを運んで貰いたいんですが、良いですか?」

 

「あ~……分かった。勇義は連れて行くよ。ただし、後で閃鬼は私に付き合いな」

 

「はい。分かりましたよ」

 

 閃鬼と萃香は役割を決めた後に三人を担いで歩きつつ、

 

「そういえば、閃鬼。能力は使わなかったのかい?」

 

「一応最初に一度だけ。それ以降は使うだけの余裕が無かったです」

 

「そうは見えなかったけど?だけど、やっぱり私も勇義と一緒に遊ぶべきだったかな」

 

「やめてあげてくださいよ。迅真が少し可哀想ですって」

 

「そうかい?まぁ、閃鬼も勇義も楽しそうだったし、今日の所は諦めておこうかな」

 

「そうしてやってください」

 

 ケラケラと笑いながら話す萃香に苦笑いをしながら相槌を打つ閃鬼。二人はそんな会話をしながら、目的地へと向かって行った。

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