蹴り飛ばした石ころは萃香の鳩尾に向かって飛んでいく。その石を萃香は受け止め、投げ返す。
迅真は投げ返された石を避ける。すると、後ろに立っていた鬼の頭に石が当たり、その鬼は飛んで行ってしまう。
「ふむ。閃鬼以上勇儀以下くらいかな?っと、こんなのんきに考察してる場合じゃないか」
すぐさま吹き飛んで行った鬼から萃香に視線を移す。しかし、その時にはすでに眼前に萃香が迫っていた。
焦った迅真は距離を取ろうと後ろに下がろうとする。だが、それよりも先に萃香の拳が迅真の肩目掛けて飛んでくる。しかし、迅真は素早く後ろに下がることから萃香の攻撃を受け止めることに行動を切り替える。そして、萃香の拳を受け止めた迅真は、そのまま萃香を後ろに投げ飛ばす。
殴った時の勢いが残っていた萃香はそのまま飛ばされるのだが、途中で霧になってしまった。
それを見た迅真は少し驚くが、すぐに対抗策を考える。しかし、考えている途中で、霧が迅真の後ろの方へと移動していく。
後ろか!と迅真が思うより早く、迅真は回し蹴りの要領で後ろに蹴りを入れていた。しかし、後ろに放った蹴りに当たった感触が無い。外したと気付いた時にはすでに遅く、後ろに顔が向くと同時に拳が飛んでくる。しかも、運の悪い事に回った方向と真逆の方向から。そして、ベキィッ!と言う音が鳴り響く。音の正体は骨の折れる音。しかし、折れていたのは迅真のモノではなく虚空から生えている萃香の腕だった。
「(っぶねぇ……二度ネタはやめといた方が良いだろうが、反射は間に合った。くらってたら再生に時間がかかって不利になってたかもしれねぇ。ったく、つえぇじゃねぇか。やっぱりそれなりに能力は使わないとダメだな。雑魚ならまだしも、閃鬼より強い奴には単純な物理じゃ効きそうにないわ。はぁ、仕方ない。アレをするか。正直頭が痛くなるから嫌なんだけどな)」
迅真がそう考えている間に萃香は迅真から少し離れた所に姿を現す。そして、破壊された自分の腕を見て、少し苦しそうな顔をする。
「っはは、やっぱり勇儀と閃鬼を倒した実力は伊達じゃないね。これは確かに楽しくなりそうだ」
「ったく、一日で四回も戦うとか、疲れるっつの。まぁ、やられる気はさらさらねぇけどな。じゃ、いくぞ?」
言うと同時に迅真は萃香に向かって走り出す。そして、それと同時になぜか迅真の影が刃に変化して萃香の元へ突き進む。萃香はそれを霧になって避けようと来る。が、
「残念なお知らせだ。お前の能力はすでに俺も使える。つまり、もう霧にはなれないぞ?」
と、呟く。そして、萃香の能力、『密と疎を操る程度の能力』を使って、今まさに霧になろうと――――自身を疎にしようとしていた萃香は元の場所に萃められ、迅真の影の刃と鬼のように重い拳を受ける。
カハッ!と萃香は血を吐きながら飛んでいく。が、それよりも速く迅真は萃香の飛んでいく方向へと走って行き、萃香を捕まえる。そして、萃香がまだ戦える状態かどうかを確認し、大丈夫だと判断すると距離を再び取る。
「ッハァ、ハァ……迅真、あんた、一体何者なんだ?私をここまで追い詰めるなんて、相当強いんだねぇ」
「お前だって強いじゃねぇか。燃えて来たぞ?」
「ハハ……もしかしてまだ本気じゃないのかい?」
「まぁな。まだ力は出せるぞ?」
「はぁ、なんか、底が見えないね。まぁ、だとしても私は戦うけどね……!」
萃香は言い終わると同時に迅真に走っていく。迅真はそれを迎え撃とうと右拳を後ろに下げつつ、萃香が来るのを待つ。
萃香は迅真の射程範囲内に入る。直後、迅真は前に出て萃香に殴り掛かる。萃香はそれを更に前に出ることで避けようとする。そして、それは目論見通り拳を回避することができ、あと少しで拳が迅真に当たる――――と思った直後、迅真の右膝が萃香を襲う。しかし、萃香は即座に霧となることでかわす。そして、後ろに回ると体を反転させて、迅真に殴りかかる。だが、突如迅真の前に出現した氷を足場にして、迅真はそれを避ける。
「うぇぇ!?今のを避ける!?」
と、萃香が驚いて声をあげる。そして、その間に迅真は体の向きを萃香の方に変え、氷の足場を蹴ってその反動を使って萃香に殴り掛かる。驚いていた萃香だが、咄嗟にその拳を両手を交差させることで防ぐ。しかし、そのまま周りを囲んでいる鬼が吹き飛ばされる勢いで飛んでいく。
そして、飛ばされなかった鬼たちが萃香の勢いを殺すように萃香を受け止める。しかし、それでも鬼に当たってから5メートルくらい飛ばされる。
「ほらほらどうした?まだ行けるだろう?って」
迅真は挑発的な口調で言っている途中でふと萃香を倒した後に待ち受けるものを思い出す。
「そうか、萃香で終わりじゃないのか。仕方ない。萃香、次で決めようぜ?ほら、来いよ。全力でさ!」
少し不満そうな表情になったが、すぐに笑みを作ると、笑いながらそう言ってくる。それを見た萃香は、
「良いねぇ。私もそろそろ決着を付けたかったんだ。じゃあ、遠慮なくいかせてもらうよ!」
そう叫ぶと、萃香の身体がどんどん大きくなっていく。そして、迅真が見上げるくらいの大きさになると、
「ミッシングパワー!さぁ!これを受けて耐えられるかな!?」
と言い、その巨大な拳で迅真を押しつぶすように殴り掛かってくる。そして、それが迅真に当たる――――!
ドゴォォォ!!と盛大な音と砂埃を巻き上げながらすべての動きは止まった。そして、その砂埃が晴れた所には、萃香の拳を両手で受け止めている迅真がいた。
にやり、と迅真は口角をあげ、萃香の拳を押し返すと、その場から音を置き去りにしながら跳躍し、萃香の鳩尾を殴り飛ばす。
ズバァァンッ!という空気を破るような炸裂音を発しながら、萃香の巨体が宙を舞うのだった。そして、それと同時に萃香の姿はだんだんと縮んでいき、元の大きさまで戻った所を、後ろに回り込んだ迅真が受け止める。
「っと、こりゃ完全に気絶してるわ。とりあえずルーミアの所まで戻るか」
迅真は萃香の状態を確認してからルーミアの所まで戻るのだった。